さかのぼること12/4
シフト制である自分の職場で当日出勤している職員全員で新型コロナウイルスの抗原検査を行うことになった。鼻に綿棒のようなものを突っ込んで試薬に浸し、その試薬を専用のキットに含ませる、というアレである。
定期的なPCR検査は行っていたがあれは唾液採取で、抗原検査で鼻に棒を突っ込むのはコロナの時代になってから初めてだ。5年以上前にインフルエンザの抗原検査を行ったような記憶がある。その時は陰性だった。
実をいうと発熱こそなかったものの、3日ほど前から鼻声で声枯れがしていた。周りから指摘はされていたが、前述のとおり熱はないし、倦怠感などはなく動けていたしまさかとは思っていた。検査開始15分後、待っていたのは陽性の判定だった。説明が難しいが検査キットに2本の線が現れると陽性で、自分のキットは2本目がうっすらとではあるが確かに出ていた。
頭の中が真っ白になる。新型コロナといえば大変な風邪症状で一歩間違えば重篤化して肺炎を起こし、人工呼吸器につながれて生死の境を彷徨う病気だ。鼻声とはいえ、自分には全く自覚がなかった。夕方だったがそのまま職場を退社した。
さて、落ち込んでいても仕方がない。目下のミッションは手遅れかもしれないが家族に感染させないこと、仕事の穴をいかに埋めるかということ、以上2点だ。家族に感染させないことについては皮肉なことだが前回のエントリーで紹介した今は無人の親族宅に引きこもるべく荷物をまとめて移動する。巷でいうホテル療養のようなものだ。ライフラインは通ったままだしネット環境も残してある。仕事の穴を埋めるということに関しては、ノートPCを1台とタブレットPCを1台籠城先に持ち込んだ。プリンターはともかくスキャナーは必要と感じたため急遽廉価モデルを購入することにした。キヤノンTS3530。購入先でお値段¥8350(税込み)。
味もそっけもない機種だがこれで十分。ノートパソコンへのWi-fi経由で実にスムーズ。実はエプソンの最下位モデルのほうが¥1000ほど安いのだがここ10年ほどは複合機はキヤノンと決めている。人生初のプリンターはエプソンのPM-700Cだった。その後NECやレックスマークのプリンターを購入した記憶もあるがそんなことはこの際どうでもよい。
さて、明けて12/5。確定診断を得るためにかかりつけのクリニックへ向かう。クルマを駐車場に停めると丁度ほかの患者さんへの対応で出てきた看護師さんがいて、事情を話し保険証と診察券を渡す。しばらくすると先生から電話がかかってきて「自主検査で陽性だったということで陽性と診断します。名古屋市に登録してください。」とのことだった。また鼻に何か突っ込まれるかと戦々恐々としていたのでこれはいささか拍子抜け。まあ時間の節約にはなったのでよしとする。
熱はないので声枯れや咳に対応する薬のみ処方してもらい隣接する調剤薬局で薬をもらい、親族の自宅に戻り本格的な籠城戦が始まった。職場とやり取りし、ときおり上司ともやり取りする。咳すらほとんどない。しいて言えば声枯れと鼻声、これに尽きる。後いつにもましておなかが減る。これには閉口した。
さて、同時に名古屋市の陽性者登録センターにアクセスし登録してみる。これで「本日の感染者数」の一員となるわけだ。するとセルフチェックでいつまで待機すればよいのかわかるサイトを案内される。発熱などしていればゼロ日は割り出しやすいがここ何日も熱はない。一方周囲から鼻声を指摘された日のことはよく覚えている。ということでその日を起点に待機期間を割り出したところ12/7と出た。明後日ではないか。実際にはマージンをとって12/8まで自宅療養することにした。
12/5から12/8までの4日間、仕事をするにはしたが努めて寝ることにした。新型コロナの回復を狙って、というのもあるが今年に入って本当に何もせず休息した実感がない。なにかしてもよいというのであれば釣りにでも出かけたところだがさすがにそれは憚る。代わりにと言ってはなんだが深夜に生中継されるFIFAワールドカップをタブレットPCで見ることにした。これは思わぬご褒美だった。
そうこうして12/9。念のため職場で抗原検査を再度行い晴れて陰性となり復帰した。悪夢を見せつけられた12/4からまる5日。今となっては夢のような療養期間をへて娑婆に生還することができたのは不幸中の幸いと言わねばならないだろう。今後の使い道悩むTS3530だけが残った。