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ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ア・ジャズ・ポートレイト・オヴ・チャーリー・マリアーノ

2025-03-07 19:38:52 | ジャズ(その他)

本日はチャーリー・マリアーノの幻の名盤を取り上げたいと思います。レジーナ・レコードと言うマイナーレーベルに1963年に吹き込まれた作品で、10数年前にたまたまCD化されていたものを買ったものです。チャーリー・マリアーノは白人アルト奏者として50年代は西海岸で活躍しベツレヘムに名盤を残していますし(「チャーリー・マリアーノ」参照)、何より日本人ピアニスト秋吉敏子の旦那として日本のジャズファンの間では大変有名ですよね。残念ながら2人は1967年に離婚してしまうのですが、この頃はまだ仲が良く、夫婦で活動して「トシコ=マリアーノ・カルテット」等の作品を残しています。

録音時の1963年もマリアーノは日本に在住していたようですが、本作はアメリカ帰国中にニューヨークで録音さたようです。メンバーですが主に3つの構成に分かれており、まずパターンAが、後にウェス・モンゴメリー作品で名を馳せるドン・セベスキーがアレンジを手掛ける13名の金管楽器(トランペット、トロンボーン、フレンチホルンが各4、チューバ1)を従えたミニオーケストラ編成。パターンBはこれまたドン・セベスキーが指揮する弦楽オーケストラ(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ハープ等)入りの編成。さらにギターのジム・ホール(ギター)も加わっています。パターンCはオーソドックスなスモールコンボで、マーヴィン・スタム(トランペット)、ジャッキー・バイアード(ピアノ)、リチャード・デイヴィス(ベース)、アルバート・ヒース(ドラム)を従えたクインテットです。

全9曲。順番はバラバラなのですが、説明がややこしいので楽器編成ごとに解説します。まずオープニングですがパターンAの"I Feel Pretty"で始まります。当時映画も大ヒットしていた「ウェストサイド・ストーリー」の挿入曲で、レナード・バーンスタインの書いたポップなメロディをマリアーノがゴージャスなブラスアンサンブルをバックに軽快にソロを取ります。次のブラス入りは6曲目の”Portrait Of An Artist"で、本作のハイライトと言っても良いナンバー。ドン・セベスキーが書いた組曲風の曲で、最初と最後はメランコリックなバラードですが、中間部はアップテンポに転調し、マリアーノが情熱的に吹きまくります。他はラストトラックの”The Song Is You"もおなじみの有名スタンダードをシャープなブラスアンサンブルで料理し、マリアーノも負けじと熱いソロを繰り広げます。

続いてストリングス入りのパターンB。こちらの注目は2曲目の"The Wind”でしょうか?西海岸の名ピアニストであるラス・フリーマン作曲で、チェット・ベイカーやシェリー・マンのアルバムでも演奏されていた哀愁漂うバラードをストリングス入りで雰囲気たっぷりに演奏しています。なお、この曲は後にキース・ジャレットも取り上げ、さらには何とマライア・キャリーの1990年のセカンドアルバム「エモーションズ」で歌詞付きで歌われました。マライア渋いチョイスですね。他にも4曲目”Goodbye"や7曲目”Deep In A Dream"と言った有名スタンダード曲がストリングス編成で演奏されていますが、こちらは正直やや辛気臭いかな。ジム・ホールのギターソロもちょっとだけ聴けたりはするんですが・・・

最後にクインテット編成のパターンCで、まずは3曲目"To Taiho”です。このTaihoとは、当時の大横綱である大鵬のことです。そう、巨人・大鵬・卵焼きのあの大鵬です。上述のようにこの頃マリアーノは日本に住んでいたので、大鵬の相撲を観戦してインスピレーションを受けたのでしょうか?ただ、曲自体はややスピリチュアルな雰囲気のモードジャズって感じで、ちょっとよくわからない変な曲です。それよりもおススメは5曲目”The Shout"。タイトル通りのファンキーなシャウトナンバーで、マリアーノ→マーヴィン・スタム→ジャッキー・バイアードとエネルギッシュなソロを繰り広げます。このスタムと言う人はスタン・ケントン楽団出身の白人トランぺッターですが、なかなかブリリアントなソロを聴かせてくれますね。8曲目"Pretty Little Nieda"はスウェーデン出身で西海岸で活躍したトランぺッター、ロルフ・エリクソンの曲で、ややミステリアスな雰囲気を持った佳曲です。以上、個人的にはパターンBのストリングスはイマイチですが、パターンAのブラスセクションとパターンCのクインテットはなかなかの出来で、掘り出し物の隠れ名盤だと思います。

 


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