本日はベツレヘムの再発シリーズから、LAの名門クラブ、ジャズ・シティで行われたライブ録音集をご紹介します。バードランド、ヴィレッジ・ヴァンガード、カフェ・ボヘミア等を擁するニューヨークに比べれば地味ですが、当時のLAにも多くのジャズクラブがあり、このジャズ・シティはその代表格だったようです。ただ、ウェストコーストジャズが50年代後半に下火になったのとシンクロするかのように、このクラブも1957年に閉店してしまいます。本作はその閉店を惜しんで、当時の西海岸の著名ジャズメン達が集まって演奏したライブを録音したものです。ただし、3曲とも全て異なるメンバーですので、おそらく同じ日のライブではなく別々に録音されたものと思われます。
まず、1曲目の“I'm Glad There Is You”はアレンジャーのラッセル・ガルシアが指揮するストリングスをバックに、ドン・ファガーキストがブリリアントなトランペットを聴かせるムードたっぷりのバラードです。途中で挟まれるハワード・ロバーツのギターソロも良いアクセントになっています。2曲目はミディアム・テンポに料理されたスタンダード“It Had To Be You”。こちらはフランク・ロソリーノ(トロンボーン)、チャーリー・マリアーノ(アルト)、ルー・レヴィ(ピアノ)、マックス・ベネット(ベース)、ローレンス・マラブル(ドラム)のクインテットによる演奏です。西海岸No.1の実力者ロソリーノのパワフルなトロンボーンと、当時はパーカー直系のバリバリのバッパーだったマリアーノの情熱的なアルトによるアドリブ合戦が繰り広げられ、12分近い熱演となっています。ルー・レヴィらリズムセクションも堅実なサポートを見せています。
そして締めはガーシュウィンのスタンダード“Lady Be Good”(というより同曲のコード進行をもとに書かれたバップ曲“Rifftide”)で、こちらはなんと総勢9人ものメンバーが17分にわたって熱演を繰り広げます。ソロ順で言うとペッパー・アダムス(バリトン)、ドン・ファガーキスト(トランペット)、ハーブ・ゲラー(アルト)、ハービー・ハーパー(トロンボーン)、ビル・パーキンス(テナー)、クローラ・ブライアント(トランペット)、クロード・ウィリアムソン(ピアノ)、カーティス・カウンス(ベース)、メル・ルイス(ドラム)で、中でも泉のようにフレーズがわき出てくる絶好調のハーブ・ゲラーと、バックでメンバーを煽り続けるメル・ルイスのドラミングがグッジョブ!ですね。マニア的には、録音の少ない黒人女流トランペッターのブライアントの参加にも注目です。以上、寄せ集め感はありますが、演奏はどれも素晴らしいですし、スタジオ録音が中心だったウェストコーストのジャズメン達がライブで熱く燃える様が体感できるのも非常に貴重です。もしウェストコーストジャズ=白人中心の軟弱なジャズ、と思っている人がいれば、そんな偏見を取り払うのに最適な1枚かもしれませんね。