ブルーノートお蔵入りシリーズ第4弾は先日の「ジュビリー・シャウト」に続きスタンリー・タレンタインです。タレンタインは当時のブルーノートが新たなスターとして猛烈にプッシュしていた存在で、1960年に「ルック・アウト!」をリリースして以降短期間に次々とリーダー作を発表します。本作「カミン・ユア・ウェイ」は1961年1月に録音され、レコード番号やカバーデザインまで完成しながら、なぜか発売されることはありませんでした。でも、内容は他のタレンタイン作品と比べても遜色ありません。
参加メンバーはトランペットが兄トミー・タレンタイン、リズムセクションがホレス・パーラン(ピアノ)、ジョージ・タッカー(ベース)、アル・ヘアウッド(ドラム)から成るいわゆる“アス・スリー”トリオです。この組み合わせは相当ウマがあったらしく、ホレス・パーランの「オン・ザ・スパー・オヴ・モーメント」も全くの同一メンバーですし、スタンリーの「ルック・アウト」も兄トミーが抜けただけです。全6曲、歌モノスタンダードが3曲、ジャズオリジナルが3曲です。前者では冒頭の“My Girl Is Just Enough Woman For Me”が素晴らしいですね。他ではほとんど聴いたことのないミュージカル曲ですが、スタンリーのソウルフルかつ歌心あふれるテナーが堪能できるショウケース的な1曲と思います。コルトレーンの演奏でも知られる“Then I'll Be Tired Of You”では兄トミーの美しいトランペットソロに続き、スタンリーが卓越したバラード演奏を聴かせてくれます。オリジナル曲では兄トミー作の典型的ハードバップ“Thomasville”、オルガン奏者ワイルド・ビル・デイヴィス作曲の“Stolen Sweets”の2曲が秀逸です。ボーナストラックで収録されている“Just In Time”もなかなかの出来ですよ。