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ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ステュ・ウィリアムソン・プレイズ

2014-01-09 23:06:42 | ジャズ(ウェストコースト)
ウェストコーストの白人トランペッターと言えば、真っ先に名前が挙がるのはチェット・ベイカー、次いでコンテ・カンドリあたりでしょうが、他にもショーティ・ロジャース、ジャック・シェルドン、ドン・ファガーキスト、そして今日ご紹介するステュ・ウィリアムソンなども忘れてはいけません。ウィリアムソンはバルブトロンボーンも吹くマルチ楽器奏者で、実際クリフォード・ブラウンのパシフィックジャズ盤「ジャズ・イモータル」にはトロンボーンで参加したりもしていますが、本職はあくまでトランペットです。ウェストコーストということで色眼鏡で見る人もいるかもしれませんが、実にケレン味のない演奏スタイルで、高らかに良く鳴るラッパが持ち味です。



1956年発表の本盤「ステュ・ウィリアムソン・プレイズ」はベツレヘムに残された彼の数少ないリーダー作の1枚です。共演はチャーリー・マリアーノ(アルト)、クロード・ウィリアムソン(ピアノ)、マックス・ベネット(ベース)、スタン・リーヴィ(ドラム)。ちなみにクロード・ウィリアムソンは実の兄でもあります。メンバーは全て白人ですが、端正な西海岸ジャズと思ったら大間違い。切れ味鋭いステュのトランペット、パーカー直系のマリアーノのアルト、“白いパウエル”と呼ばれるにふさわしい華麗なクロードのピアノ、激しく煽るスタン・リーヴィのドラム。前のめりのストレートアヘッドな演奏を聴かせてくれます。それでも何となく全体の雰囲気がカラッと明るい気がするのはウェストコーストならではでしょうか?あえてケチをつけるとすれば、11曲中8曲が有名スタンダードと言う選曲のベタさと、平均で3分ちょいと言う演奏時間の短さ。とは言え、それでも十分に傾聴に値すると言えるでしょう。お薦めはオリジナルなら“Slugger”“Sapphire”、スタンダードなら“Strike Up The Band”“The Things We Did Last Summer”です。
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アート・ペッパー・ウィズ・ウォーン・マーシュ

2013-02-27 23:17:55 | ジャズ(ウェストコースト)
白人アルト奏者アート・ペッパーは重度の麻薬中毒のため、キャリアの多くを棒に振っています。そのため、残された録音は50年代後半と70年代後半に集中していますが、私を含めジャズファンに人気が高いのはやっぱり50年代の演奏ですよね。ジャンル分け的にはウェストコーストジャズなんですが、その天才的なアドリブは同時代のどんな黒人ハードバッパー達に劣るものではなく、モダンジャズの歴史に輝かしい足跡を残しています。特に西海岸の名門レーベルであるコンテンポラリーには多くの名作を残しており、かの有名な「ミーツ・ザ・リズム・セクション」はじめ、「プラス・イレブン」「インテンシティ」等6作品をこの時期に吹き込んでいます。本作は1956年に録音された同レーベルへの初吹き込みです。



さて、アート・ペッパーのことばかり述べましたが、本作のもう一人のリーダーはウォーン・マーシュ。白人テナー奏者でリー・コニッツとのコンビでよく知られていますが、正直私の好みではあまりない。クールジャズだか何だか知りませんが、モソモソと起伏に乏しいアドリブは調子っぱずれにしか聞こえません。リズムセクションもロニー・ボール(ピアノ)、ベン・タッカー(ベース)、ゲイリー・フロマー(ドラム)とインパクトに欠ける面々ですし。ずばり本作の魅力はペッパーの輝かしいアルトに尽きるでしょう。冒頭の軽快なミディアムナンバー“I Can't Believe That You're In Love With Me”に始まり、マイナー調の“All The Things You Are”、急速調のテンポの中でペッパーのアドリブがほとばしる“Avalon”、自作のスローブルース“Warnin'”、そしてラストの幸福感に満ちあふれた“Stomping At The Savoy”。どの曲でもメロディアスなフレーズを連発するペッパーに酔いしれるべし!
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ア・スウィンギン・ギグ

2012-10-06 11:48:07 | ジャズ(ウェストコースト)

マイナーレーベル第3弾はタンパ・レコードです。西海岸に短期間存在したレコード会社で、20数枚のアルバムしか残していないという幻のレーベルですが、その中に全盛期のアート・ペッパーの録音が2枚含まれるということで熱心なジャズファンにはお馴染みかもしれません。ただ、それ以外の作品はほとんど無視されているというのが実情でしょう。1956年録音の本作「ア・スウィンギン・ギグ」も一応ジャケ帯では「ウェストコースト・オール・スターズ」と銘打ってるものの、その割にオールスターでも何でもないメンツばかりで正直購入意欲がなかなか湧きませんでした。



ただ、思い切って買ってみるとこれがなかなかいいんですな。いかにもウェストコーストらしい軽めのアレンジですが、曲もいいし演奏内容もいいし、無名だからと侮るなかれ!ですよ。一応メンバーを紹介しますと、ジョン・アンダーソン(トランペット)、デイヴ・ウェルズ(トロンボーン)、バディ・コレット(テナー)、ウィリアム・グリーン(アルト)、チャック・ジェントリー(バリトン)、ジーン・チプリアーノ(オーボエ)、ジェラルド・ウィギンス(ピアノ)、マックス・オルブライト(ドラム)、ベースはカーティス・カウンスとジョー・コンフォートが曲によって交代します。うちソロを主に取るのはアンダーソン、ウェルズ、コレット、ウィギンスの4人で後はアンサンブルがメインです。

曲はメンバーのオリジナルとスタンダードが半々。どれも3分前後の短い演奏ですが、西海岸らしい洒落たアンサンブルに乗って、各自が少しずつソロを取っていくスタイルです。自作曲ではアンダーソン作の切れ味鋭い“Crow's Nest”、ちょっぴりベイシー風の“Some Folks Like The Blues”、バディ・コレット作の陽気な“Sunset Drive”。スタンダードではスイングジャズ風の“Remember”、アンダーソンのアレンジが冴えわたる“One Morning In May”がお薦めです。カリフォルニアの青空をバックにブランコで遊ぶ子供達を写したジャケットもいいですね。ブランコの英語名はswingですから、タイトルとも引っかけたのでしょう。その名のとおりまさにスウィンギーな名演です。

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ショーティ・ロジャース/スウィンギング・ミスター・ロジャース

2012-09-02 23:00:10 | ジャズ(ウェストコースト)
本日紹介するCDは白人トランペッター、ショーティ・ロジャースが1955年にアトランティックに吹きこんだ「スウィンギング・ミスター・ロジャース」です。ロジャースは以前にも「ショーティ・ロジャース・コーツ・ザ・カウント」を取り上げたので2回目ですね。ロジャースはアレンジャーとしても活躍し、ビッグバンド形式の作品を多く残していますが、本作はジミー・ジュフリー(サックス&クラリネット)、ピート・ジョリー(ピアノ)、カーティス・カウンス(ベース)、シェリー・マン(ドラム)をバックに従えたクインテット編成です。



メンバーだけを見ればベースのカウンス以外は全員白人で、いかにもウェストコーストらしい軽めのジャズが展開されるかと思いきや、実際はそうでもありません。ロジャースは「コーツ・ザ・カウント」でカウント・ベイシー楽団を模倣したぐらいの大のベイシー好き。“Oh Play That Thing”“Martians Go Home”はどちらもロジャースのオリジナルですが、ベイシー楽団のレパートリーと言ってもおかしくないようなカンザス風のブルースです。“That's What I'm Talkin' About”もコテコテのブルース。かと思えば“Not Really The Blues”はブルースではなく、全員が快調に飛ばすドライブ感満点のハードバップ風演奏。スタンダードの2曲“Isn't It Romantic”“My Heart Stood Still”と自作の“Trickleydidlier”はいかにも西海岸っぽいアレンジ重視のジャズですが、いろんなスタイルが混在している所が興味深いですね。きっとウェストコーストジャズなんて評論家が勝手にジャンル分けしただけで、当のジャズメン達は純粋にスイングする音楽を求めていただけなんでしょうね。
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シェリー・マン/ボス・サウンズ!

2012-08-28 11:14:01 | ジャズ(ウェストコースト)
前回のフィリー・ジョー・ジョーンズに続きドラマーのリーダー作を紹介します。今回はウェストコーストジャズの中心人物でもある白人ドラマー、シェリー・マンの作品ですね。西海岸には他にメル・ルイス、スタン・リーヴィという名手がおり、ウェストコースト3大ドラマーと呼ばれたりしていますが、マンの場合はリーダー作が多いので知名度的には一番高いかもしれません。特にコンテンポラリー盤「マイ・フェア・レディ」、インパルス盤「123」あたりは定番ですね。



本作「ボス・サウンズ!」はウェストコーストジャズが全盛だった50年代半ばよりぐっと時代の下がった1966年の作品。アトランティックに移籍して最初の吹き込みとなります。メンバーはコンテ・カンドリ(トランペット)、フランク・ストロージャー(アルト)、ラス・フリーマン(ピアノ)、モンティ・バドウィグ(ベース)そしてマン(ドラム)からなるクインテット。カンドリ、フリーマン、バドウィグなど50年代からの盟友も参加していますが、新世代のミュージシャンであるストロージャーの存在が作品に新たな風を吹き込んでいます。

実際、6曲中ストロージャーが“Idle One”“Frank's Tune”の2曲を提供しており、どちらもアルバムのベストトラックと言ってよい出来。特にキャッチーなメロディが印象的な“Frank's Tune”は60年代ジャズ屈指の名曲でしょう(ジャック・ウィルソンの名盤「イースタリー・サウンズ」でも取り上げられてましたね)。静かに盛り上がるモーダルな“Idle One”も名演です。他にも哀愁漂うメロディが印象的な“Wandering”、フリーマン作の熱血ハードバップ“You Name It”など魅力的なトラックが並んでいます。冒頭の“Margie”だけはフリーっぽさを狙ったのか調子っぱずれの演奏なのが玉にキズですが・・・ウェストコーストと言えば、60年代以降はほとんど取り上げられることはありませんが、どっこいこんな硬派な作品もあるんだよということを知らしめてくれる貴重な記録です。
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