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ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

コンテ・カンドリ/リトル・バンド・ビッグ・ジャズ

2012-07-29 12:04:04 | ジャズ(ウェストコースト)
しばらく「JAZZ THE BESTお宝コレクション」シリーズばかり紹介していましたが、そちらもようやく一段落したので、今日は先日再発されたクラウン・レコードの紙ジャケコレクションからコンテ・カンドリ「リトル・バンド・ビッグ・ジャズ」を取り上げます。録音は1960年。参加メンバーはリーダーのカンドリ(トランペット)、バディ・コレット(テナー)、ヴィンス・グワラルディ(ピアノ)、リロイ・ヴィネガー(ベース)、スタン・リーヴィ(ドラム)となっています。当時の西海岸のオールスター的顔ぶれですね。



コンテ・カンドリは個人的には大好きなトランペッターの一人です。西海岸の白人トランペッターと言えばまずはチェット・ベイカーの名を思い浮かべる方が多いでしょうが、人気面はともかく実力的には決して引けを取らないですし、同時代の黒人トランペッター達と比べても遜色ない技量の持ち主だと思います。ビッグバンド出身だけあって音の大きさは折り紙つきですし、アドリブも申し分ないです。リーダー作にはあまり恵まれませんが、本作はアトランティック盤「ウェスト・コースト・ウェイラーズ」と並ぶ彼の代表作と言っていい名盤でしょう。全6曲を自作曲で固めるという意欲的な内容で、曲作りのセンスもあることがうかがえます。

曲は大きく分けて“Muggin' The Minor”“Macedonia”“Little David”の3曲がマイナー調のナンバー。他はマンボ調の明るい“Mambo Diane”、典型的ハードバップ“Countin' The Blues”“Zizanie”とアップテンポの曲が並んでいます。前者のメランコリックなムード、後者のハードドライビングなプレイ、どちらも甲乙つけがたい充実の出来です。各人の演奏もカンドリの輝かしいトランペットは言うに及ばず、意外と骨太なテナーを吹くバディ・コレット、ウィントン・ケリーばりのスインギーなピアノのヴィンス・グワラルディと聴き所たっぷり。タイトルはビッグバンド出身のカンドリを意識したものでしょうが、文字通り少人数でもガッチリした重厚なジャズを聴かせてくれます。
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バディ・デフランコ/スウィート・アンド・ラヴリー

2012-07-12 19:52:56 | ジャズ(ウェストコースト)

本日は白人クラリネット奏者バディ・デフランコを取り上げます。クラリネットはスイングジャズの時代こそベニー・グッドマン、ウディ・ハーマンなど多くのスタープレイヤーを輩出する人気楽器でしたが、ビバップ以降はすっかり目立たない存在となりました。ビッグバンドのアンサンブルや歌伴には欠かせない楽器ではあり続けたものの、スモールコンボでコンスタントにリーダー作を発表したとなるとこのデフランコぐらいではないでしょうか?



今日紹介する「スウィート・アンド・ラヴリー」は1954年から翌55年にかけて録音されたもので、デフランコが50年代前半にヴァーヴ・レーベルに集中的に吹き込んだ作品の一つです。サポートメンバーはソニー・クラーク(ピアノ)、ジーン・ライト(ベース)、ボビー・ホワイト(ドラム)。55年のセッションには通好みの白人ギタリスト、タル・ファーロウも加わっています。ジャズファン的に目を引くのがあの「クール・ストラッティン」のクラークの参加でしょう。実はクラークはブルーノートと契約する前は主に西海岸でプレーし、特にデフランコのグループには3年間も在籍しています。ドライビング感抜群のピアノソロはこの頃から健在ですね。

ただ、私的に注目したいのはむしろタル・ファーロウの参加。デフランコとクラークの共演は「枯葉」「イン・ア・メロウ・ムード」など他の作品でも聴くことができますが、正直軽薄になりすぎるきらいがあります。ただ、本作はファーロウのギターが加わることによりアンサンブルに厚みが増しています。オープニングのゆったりしたブルース“Getting A Balance”は3人の名人芸が融合した名演と言えるでしょう。続く“That Old Black Magic”“They Say It's Wonderful”はどちらも超アップテンポな演奏。デフランコの自在なクラリネットとクラークのノリノリのピアノが最高です。バラードの“But Beautiful”では珍しいクラークのオルガンが聴けたりもします。デフランコと言えばカラフルな美女ジャケでもお馴染みですが、グリーンの色調に統一されたクールなジャケットも印象的です。

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ショーティ・ロジャース・コーツ・ザ・カウント

2012-05-21 21:33:27 | ジャズ(ウェストコースト)
本日は西海岸で活躍した白人トランペッター、ショーティ・ロジャースが1954年にRCAレーベルに録音した名盤「ショーティ・ロジャース・コーツ・ザ・カウント」をアップします。ここで言うカウントとはもちろんカウント・ベイシーのことで、西海岸の白人達によるベイシー風ビッグバンドとでも言った趣です。一般に日本のジャズファンの間では昔から黒人ジャズメンを持ち上げ、白人ジャズメンについてはビル・エヴァンスやアート・ペッパーなどの例外を除けば一段低く見る傾向があります。いわく白人はスイング感が足りない、アレンジ重視でアドリブが弱い、などなど。実はかく言う私も以前はそうでした。でも、ジャズを幅広く聴くようになった今では白人の中にも数多くの名手がいることを知り、少なくとも肌の色で差別することはなくなりました。




このビッグバンドも当時の西海岸オールスターとも言うべき内容で、魅力的なメンバーが名を連れています。リーダーのショーティはじめ、テナーのズート・シムズ、ジミー・ジュフリー、ボブ・クーパーにアルトのハーブ・ゲラー、バリトンのバド・シャンク、トロンボーンのボブ・エネヴォルセンなど総勢21名。いずれも名手揃いです。リズム・セクションはマーティ・ペイチ(ピアノ)、カーティス・カウンス(ベース)、シェリー・マン(ドラム)。私の知る限り黒人はおそらくベースのカウンスと、トランペットのハリー・エディソンのみで後は全て白人だと思うのですが、決して本家のベイシー楽団に見劣りしない分厚いビッグ・バンド・ジャズを聴かせてくれます。

曲はベイシー楽団のレパートリーが中心ですが、冒頭ゆったりしたテンポの中でも分厚いサウンドを聴かせる“Jump For Me”、ベイシーばりのペイチのピアノから始まるアップテンポの“Doggin' Around”が特に素晴らしい。ショーティ自身も自作曲を3曲書き下ろしていますが、“Basie Eyes”“Over And Out”などはベイシー楽団のナンバーと言われてもいいぐらいスイング感に溢れたナンバーです。全部で12曲、どれも3分前後の演奏ですが、その分コンパクトにまとまっていて聴きやすいです。「白人はスイングしない」なんて偏見を持ってる人には是非聴いてほしい名盤です。
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