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ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

アート・ペッパー/モダン・アート

2024-02-27 20:17:23 | ジャズ(ウェストコースト)

本ブログではタイトル通り黒人ジャズ、中でもハードバップを中心に紹介していますが、白人ジャズマンにも好きなアーティストがたくさんいます。中でもスタン・ゲッツ、ビル・エヴァンス、アート・ペッパーの3人はやはり別格ですね。彼らに共通して言えるのはアドリブの創造性の高さ、かつそれをあくまでメロディアスで聴きやすい演奏に消化しているところですね。3人ともまさに天才と言って良いと思います。今日取り上げるアート・ペッパーはデクスター・ゴードンら同時代の多くのジャズマンと同様に麻薬中毒で何度もキャリアを中断しましたが、1950年代後半は比較的順調に演奏活動を行っていた頃で(とは言えドラッグ絡みの小さなトラブルは絶えなかったようですが)、本作もその頃に発表された彼の代表作の一つです。後にブルーノートが版権を買い取ってCDで再発売しましたが、もともとはイントロというLAのマイナーレーベルに残されたレコードです。録音年月は1956年12月から1957年1月にかけてで、メンバーはラス・フリーマン(ピアノ)、ベン・タッカー(ベース)、チャック・フローレス(ドラム)です。

曲は全8曲でスタンダードが4曲、ペッパーのオリジナルが4曲という構成です。オリジナル曲では最初と最後に"Blues In"と"Blues Out"という即興のブルースが配置されています。ベースのみのデュオでペッパーのアルトが存分に堪能できますが、個人的にはやはりピアノとドラム入りの方が好きですね。疾走するリズムセクションをバックにペッパーがほとばしるようなソロを聴かせる”Cool Bunny”が最高です。スタンダードは”Bewitched, Bothered And Bewildered""When You're Smiling""Stompin' At The Savoy""What Is This Thing Called Love?"と全部有名な曲ばかり。選曲自体はベタですが、そこはさすがにペッパーで、独創性に満ちたソロで聴く者を魅了します。特に美しいバラードの"Bewitched"とスインギーな"When You're Smiling"が出色の出来です。ペッパーの陰に隠れていますが、ラス・フリーマンを中心とするトリオの堅実な演奏も聴きモノです。

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バド・シャンク・カルテット

2020-11-10 12:26:12 | ジャズ(ウェストコースト)

本日はバド・シャンクです。本ブログで取り上げるのは初めてですが、昔から大好きなミュージシャンです。50年代ウェストコースト・ジャズを代表する白人アルト奏者で、アート・ペッパーにはさすがに及ばないものの、ハーブ・ゲラーやチャーリー・マリアーノ、ジョー・マイニらと並ぶ実力の持ち主です。西海岸を代表するレーベルであるパシフィック・ジャズ・レコードの専属で、同レーベルから「昼と夜のバド・シャンク」「ジャズ・アット・カルテック」「バド・シャンク・プレイズ・テナー」等の名盤を残しています。本作は1956年1月に録音されたワンホーン・カルテットの作品です。実はシャンクには同年11月に録音された全く同名、同メンバーの作品があるのですが、そちらはバド・シャンクが床に寝そべった写真が使われており、マニアの間では“寝そべりのシャンク”の愛称で親しまれています。本作は白黒で描かれた特徴あるイラストが使われており、“イラストのシャンク”とも呼ばれています。

メンバーは上述のとおり“寝そべり”“イラスト”ともに全く同じで、クロード・ウィリアムソン(ピアノ)、ドン・プレル(ベース)、チャック・フローレス(ドラム)から成るトリオをバックに従えています。(このトリオについては以前に「クロード・ウィリアムソン・トリオ」でも取り上げています。)ただ、内容は微妙に異なっており、“寝そべり”の方がややアレンジ色が前面に出た良くも悪くもウェストコーストらしい作品なのに対し、本作の方がよりストレートなバップ色の強い作品で、個人的にはこちらの方が好きです。その象徴がマイルス・デイヴィスの名演で知られる“Walkin'”で、さすがに本家本元のような黒っぽさはないものの、なかなか熱のこもった演奏を聴かせてくれます。もっとも、シャンクに限らず同時代のアルト奏者は人種を問わずチャーリー・パーカーの影響を強く受けていますし、ウィリアムソンも“白いバド・パウエル”と呼ばれたほどの御仁ですから、バップ・スタイルの演奏に違和感がないのも当然と言えば当然です。

とは言え、バップの中に白人ジャズらしい洗練された雰囲気が感じられるのも事実で、ボブ・クーパーが作曲した“Bag Of Blues”はブルースと言いながらもやはり明るさが感じられますし、同じくクーパー作“Jubiliation”もドライブ感満点の演奏ながらもどこか爽やかな印象を受ける名曲です。ジミー・ヴァン・ヒューゼン作曲の“All This And Heaven Too"は他であまり聞いたことない曲ですが、とても美しいバラードで、シャンクのアルトの音色が胸に沁みます。ラストのブラジル風“Carioca”も楽しいです。“Nature Boy”と“Nocturne For Flute”ではシャンクはフルートを吹いており、アルトとはまた違う幻想的な雰囲気を醸し出しています。以上、どの曲も水準以上の出来で、ウェストコースト・ジャズの良い所ばかりを集めたような傑作と思います。

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シェリー・マン/アット・ザ・ブラックホーク

2017-12-19 12:28:24 | ジャズ(ウェストコースト)
約3週間ぶりの更新です。しばらく間が空きましたが、決してジャズを聴いていなかったわけではなく、今日ご紹介するシェリー・マンのライヴ盤を聴きこむのに時間がかかったためです。モンクやマイルスのライヴ録音でも知られるサンフランシスコの名門クラブ、ブラックホークで1959年9月22日から24日の3日間にかけて収録されたこの作品。なんとCDにして5枚(!)というヴォリュームです。2枚組のライヴアルバムは珍しくありませんが、5枚組と言うのは聞いたことありませんね。別テイクや間奏を抜きにしても全19曲、4時間に迫ろうかと言う長さです。普通これだけ長いと聴く方もダレてきますが、本作に関してはそれもなくシェリー・マン率いるクインテットの充実した演奏が楽しめます。さすがに全てが名曲とまではいきませんが、Vol.1からVol.5まで満遍なく聴き所があり、飽きさせません。



さて、シェリー・マンと言えばスタン・リーヴィ、メル・ルイスと並んで西海岸を代表するドラマーで、50年代のウェストコースト・ジャズを語るには欠かせない人物です。アンドレ・プレヴィンのピアノをフィーチャーした「マイ・フェア・レディ」やバーニー・ケッセル、レイ・ブラウンと組んだ一連のポール・ウィナーズ名義の作品が代表作ですね。それらの作品はいかにもウェストコーストらしい明るく洗練されたものですが、本作の雰囲気は全然違います。メンバーを見るとジョー・ゴードン(トランペット)、リッチー・カミューカ(テナー)、ヴィクター・フェルドマン(ピアノ)、モンティ・バドウィグ(ベース)という面々で、ゴードン以外は全員西海岸で活躍していた白人ですが、ここで繰り広げられる演奏はまさにハードバップそのもの。選曲もタッド・ダメロン“Our Delight”、ベニー・ゴルソン“Step Lightly”“Whisper Not”、ホレス・シルヴァー“How Deep Are The Roots”、シブいところではローランド・アレクサンダーの“Cabu”と黒人ハードバッパー達の曲を取り上げています。“Poinciana”や“What's New”等の歌モノスタンダードもありますが、演奏はアグレッシブそのもの。もともと東海岸で活躍していたゴードンのブリリアントなトランペットもさすがですが、レスター派の歌心あるテナー奏者というイメージだったカミューカがブリブリと長尺のアドリブを繰り広げる様は圧巻です。

もちろん単にハードにプレイするだけではありません。スタンダードの“Just Squeeze Me”や“This Is Always”は正統派のバラード演奏ですし、マン自作の19分に及ぶ大曲“Black Hawk Blues”ではメンバー全員で腹にズシリと来るブルースを聴かせてくれます。その他ではヴィクター・フェルドマンがビル・エヴァンスばりのトリオ演奏を聴かせてくれる“Wonder Why”や、コール・ポーター作のスタンダードを軽快なミディアム・チューンに料理した“I Am In Love”も素晴らしい出来です。以上、選曲・演奏内容ともに文句のつけようのない傑作だと思います。
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デンプシー・ライト/ザ・ライト・アプローチ

2017-10-28 23:52:46 | ジャズ(ウェストコースト)

本日はアンデックスという西海岸のマイナーレーベルの再発シリーズからの1枚です。このシリーズからは以前に「ムーチョ・カロール」を取り上げましたが、そちらはアート・ペッパーも参加しているおかげでジャズファンにもそこそこ知られている作品でしたが、今回購入したデンプシー・ライトに至っては「誰それ?」と言うのが大方の反応でしょう。何でもオクラホマ出身のギタリストで、50年代の西海岸でプレーしていたそうですが、リーダー作はおろかサイドマンで参加している作品も全く心当たりがありません。調べるとベーシストのハリー・ババシンの「ジャズ・ピッカーズ」と言う作品に顔を出しているそうですが、その作品自体がレアだし日本では未発売と言うこともあって、まさに“幻のギタリスト”です。では、何でそんなレア作品を買おうかと思ったかですが、ずばり他のメンバーですね。リッチー・カミューカ(テナー)、ヴィクター・フェルドマン(ピアノ&ヴァイブ)、ベン・タッカー(ベース)、スタン・リーヴィ(ドラム)とくれば、ウェストコーストジャズに理解のある人なら思わず食指の動くメンバーではないですか?黒人ハードバップにしか興味がないんじゃ!と言う人からすればスルーなんでしょうが・・・



さて、実際の演奏はどうかと言うと、期待以上の出来でした。何と言ってもリッチー・カミューカが素晴らしいですね。彼は白人ではありますが、レスター・ヤング直系のコクのあるテナーを持ち味にしており、本作でも“9:20 Special”“Swingin' The Blues”“Taps Miller”と言った30~40年代のベイシー楽団のレパートリーでまさにレスターばりのプレイを聴かせてくれます。ヴィクター・フェルドマンも良いですね。本作の録音された1958年はイギリス出身のフェルドマンが、西海岸に移住してきて本格的にアメリカでの活動を開始させた年でもありますが、1曲目の“Something For Liza”のソロ一番手でいきなり素晴らしいピアノソロを披露してくれます。“Thanks For The Memory”“9:20 Special”ではヴァイブを手にし、マルチプレイヤーぶりも発揮しています。肝心のリーダーであるライトはと言うと、まあ可もなく不可もなくと言ったところ。同じオクラホマ出身であるチャーリー・クリスチャンやバーニー・ケッセルに影響を受けたとあって、彼らの流れを組む正統派のジャズギターを聴かせてはくれますが、正直そこまでインパクトのあるプレイではありません。主役はカミューカのテナーですね。ちなみにジャケットはドラムのスタン・リーヴィのデザインだそうで、何でも同じWrightと言うことでライト兄弟にかけたとか。はっきり言ってセンスないとしか思えませんが、それもまたご愛敬。ウェストコーストの隠れた秀作として一聴の価値はあると思います。

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ムーチョ・カロール

2017-07-27 12:18:41 | ジャズ(ウェストコースト)
本日は梅田のタワーレコードでゲットしたCDの中からのラテンジャズのアルバムをご紹介します。ジャケ帯では「アート・ペッパー/ムーチョ・カラー」と記載されており、ペッパーの棚に並んでいましたが、訂正点が2つ。まず、カラーは英語のcolorではなく、スペイン語のcalorです。英語に訳すとvery hotですね。第2点として、これはペッパーのリーダー作ではなく、あくまでリーダー不在のオムニバス作品と言うこと。発売元はアンデックスと言う西海岸のマイナーレーベルで、当時のウェストコーストの俊英達を集め、そこにラテン・パーカッションを加えたラテン・ジャズの企画モノです。メンバーはコンテ・カンドリ(トランペット)、ビル・パーキンス(テナー)、アート・ペッパー(アルト)、ラス・フリーマン(ピアノ)、ベン・タッカー(ベース)、チャック・フローレス(ドラム)と言った西海岸ではおなじみの面々に、ジャック・コスタンザとマイク・パチェコという2人のパーカッション奏者が加わった計8人の編成す。アレンジャーも4人いて、うちテナー奏者でも知られるビル・ホルマンが10曲中5曲を、後はペッパー自身が2曲、ベニー・カーターとジョニー・マンデルが1曲ずつ手掛けています。内容的にはラテン色を前面に出して編曲しているだけあって、終始パーカッションがチャカポコチャカポコ後ろで鳴っていますが、一方でそれ以外のメンバーはウェストコーストを代表する面々だけあって、魅力的なソロを繰り広げています。一番目立つのは何と言ってもアート・ペッパー。彼の切れ味鋭いアドリブはやはり天才と言うしかないですね。コンテ・カンドリのパワフルなトランペット、レスター・ヤング派のビル・パーキンスのテナーも捨て難いです。



全10曲。オリジナルとスタンダードが半々の構成です。オリジナルでお薦めは何といってもタイトル曲の“Mucho Calor”。ビル・ホルマンが作曲した名曲で、いかにもラテンと言った哀愁漂うメロディで、ペッパーも最高のソロを聴かせてくれます。同じくホルマン作の“Vaya Hombre Vaya”も疾走感溢れるアップテンポの曲で、ペッパー、カンドリらがエネルギッシュなソロを繰り広げます。一方でウッ!と掛け声の入るペッパー作の“Mambo De La Pinta”、パーカッションが主役の“Mambo Jumbo”あたりはちょっとラテンっぽさを狙い過ぎかな?ジョニー・マンデルの“Pernod”はパーカッションの入らない普通のバップです。

一方、スタンダードは“Autumn Leaves”“I'll Remember April”“I Love You”“Old Devil Moon”“That Old Black Magic”とよく知られたスタンダードばかりですが、こちらはちょっとラテン風のアレンジを利かせすぎて若干くどくなっているのは否めません。ただ、そんな中でもペッパーのソロはやはり素晴らしく、“I Love You”ではビル・ホルマンの仰々しいテーマ・アンサンブルの後に、目の覚めるような素晴らしいソロを聴かせてくれます。冒頭で「これはペッパーの作品じゃない」と言っておきながらなんですが、ペッパー抜きには語れない作品であることは間違いないですね。
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