goo blog サービス終了のお知らせ 

阪神間で暮らす-2

テレビを持たず、ラジオを聞きながら新聞を読んでます

野田聖子氏に聞いた 官僚セクハラ問題から総裁選出馬まで

2018-08-08 | いろいろ

より

*****
野田聖子氏に聞いた 官僚セクハラ問題から総裁選出馬まで

 辞職にまで発展した前財務次官のセクハラ発言問題は、霞が関や永田町の女性に対する感覚の古さや世間とのズレを浮き彫りにした。甘い対応の財務省に対し及び腰の政権内で唯一気を吐いたのが、総務大臣の野田聖子氏(57)だ。いまだ「政治分野に女性はいらない」という空気が漂う自民党にも公然と異を唱える。9月の総裁選に出馬し、自民党に多様性を取り戻したい、ということだが、さて、どうなるか。

■ 今後はセクハラ対応が官僚の出世を左右する

  ――まず最初に、野田大臣の事務所が仮想通貨交換業者を伴って金融庁に説明を求めた件についてお聞きしたい。朝日新聞が行った情報公開請求について、事前に金融庁が大臣に知らせていたこと、情報公開法を所管する大臣がその情報を漏らしたことが問題になっています。

 記者会見での発言が全てです。第三者に対して、事前に情報を提供して内容の確認を行うことは、情報公開法上あり得るものです。しかしながら、開示請求者に関する情報まで伝えることは、開示請求の萎縮や公開制度の信頼低下につながる恐れがあり、法の趣旨に照らして好ましくないと言わざるを得ません。今振り返れば、総務省の担当者から開示請求者に関する情報を聞かされた時に、情報公開法の趣旨に沿ったものか確認をして、適当でないならば金融庁に対して注意喚起をするなどの対応をとるべきであったと反省しています。記者との懇親会で、特段の問題意識を持つことなく、開示請求者に関する情報を含めて話題にしてしまったことは、慎重さを欠いたと反省しています。

  ――前財務次官のセクハラ問題では麻生財務相が「セクハラ罪はない」などとかばう中、積極的に踏み込んで発言しました。官僚や政治家の女性に対する感覚の古さに危機感を覚えたからですか?

 週刊誌で女性記者と次官のやりとりを読んで、その日すぐ総理と官房長官に、この文面の通りならばセクハラで「アウト」だとメールで申し上げておいたのです。財務大臣は最初、「これが事実ならアウトだ」とそのまま言ってくれていたので安心していたら、その後やっぱり麻生大臣はセクハラを知らないことが分かり、財務省も同様だった。被害者がセクハラだと思ったものは原則セクハラです。財務省は、被害者の救済や2次被害を防ぐという基本的なことも分かっていませんでした。

  ――民間企業はもっとシビアに対応している。

 男女雇用機会均等法ができてもう30年強。海外との取引の多い企業などは、セクハラで訴えられれば企業イメージが悪くなるし、お金もかかるということを学んでいる。ところが、そうした経験をしない霞が関や永田町、マスコミがいまだ30年前と変わらず、グローバルスタンダードが分かってない。財務省は当初、次官こそが冤罪の被害者だというストーリーを立て、セクハラ被害を訴えた女性を呼び出して事情を聴こうとした。あり得ないですよ。そんなことを平気でやってしまっていることに、ある種の恐怖を感じて、違和感と申し上げたんです。要は、ほぼ男性社会だからそうなる。知識も勉強も足りていない。

  ――メディア業界の古い体質も浮き彫りになりました。

 私の発言を機に、メディアの女性から問い合わせが来て、次官の一件は氷山の一角だと分かった。想像以上にメディアに対する官僚のセクハラが蔓延していることに愕然としました。役所とメディアの関係は、企業でいうところの親会社と下請けのよう。親会社に嫌われると下請けはいい記事(ネタ)がもらえないといういびつな関係。奇麗な女性はいけにえで、供物として取材源を喜ばせる。そしてキャップ(上司)の男性が情報を取る。それが当たり前だと聞かされ、いつの時代なのかと思いました。

  ――大臣中心にセクハラ対応の強化策をまとめました。研修を受けさせる、通報窓口を設ける、2次被害にならないようにするなどとなっていますが、法規制には至らなかった。

 今回の強化策には、法律を作るよりも効果的な仕掛けがある。研修を受けるだけでなく、内閣人事局がチェックするのです。つまり、セクハラにきちんと対応できているかどうかが査定のひとつになり、出世を左右する。これはかなり実効性があると思いますよ。官僚は、セクハラやパワハラ、人権教育を学んでいないと思うんです。何も知らなかった人たちにいきなり罰則というのもいかがかと。まずは学ぶチャンスを与えたい。


女性を分かっていない男性がすべての政策わ決めるのはおかしい 

  ――政治の場に女性が少ないことが関係しているのではないですか。女性議員比率を高める「政治分野の女性参画推進法」も今年ようやく成立した。

 それでも、自民党内では女性議員からも(成立に)反対されましたよ。自民党はまだそういう時代感覚なの。支持団体の影響もあるんでしょうね。やはりいまだ自民党の応援団の中には、女性は働くべきではない、女性が社会進出をしたから少子化になったという考えの人がいる。そうした応援団の声を代弁せざるを得ず、現実の日本とかけ離れた発言をするので、結果、政治分野に女性はいらない、ということになってしまう。

  ――本来、自民党は幅の広い国民政党だったはずなんですがね。

 その通り。だから私が騒いでいるんじゃない。気持ち悪いよね。みんなが黙りこくってしまうのは。

  ――女性政策って、何が必要だと思いますか?

 違う。女性政策ってないんですよ。男性が勝手に女性政策と名付けたけれど、私は「日本の構造改革」と言っています。この国の最大の課題は人口減少です。消費者が減るから当然、経済が縮小する。税収も減る。あまり知らされていませんが、安全保障面でも自衛隊員が不足する。人口減少の原因は少子化だということで、そこだけに焦点を当てると女性が主体だから、女性政策って言って逃げているのが実態。女性の社会進出が少子化の原因だとか、ついこの間まで当たり前に議論されてきたけれど、そうではなくて、日本全体の問題だと捉える必要がある。この世に女性政策なんて存在しないということを浸透させるのが私のミッションなのかなと、思っています。

■ 意見の言える開かれた総裁選にしたい

  ――そういう意味で、女性総理が誕生したら、日本の政策も大きく変わると思うのですが。

 経験上、女性大臣の役所は女性に対してフラットな感覚の人が多い。財務省などとの空気の違いを感じます。女性総理だったら全閣僚が女性になるとかね。とにかく男性が慣れる必要がある。男性は女性のこと全く分からないんだから。それが9割の政策を決めていることがおかしいんですよ。現場が分かっている女性たちを増やした方が、今の日本を脅かしている問題の解決が早くなるんじゃないでしょうか。

  ――総裁選に出て、そうしたことを訴える?

 総裁選には推薦人が20人揃わないと出られないので、コツコツと歩んでいるというのが現状。謙虚な気持ちで言うと、出る気持ちはあるけれども、今は、そういう私を理解して受け止めてくれる仲間づくりをしているところです。

  ――総裁選というのは政策論争の場。いろいろな考えの人が出て、意見を戦わせるべきだと思います。

 人口減少で将来の展望が見えなくなる中で、今まで通りではダメだという不都合な真実を、老若男女がみな共有し、まだ半分も力を出し切っていない女性たちが社会の中心に行けるようにしたい。高齢者、非正規労働者、障害者についてもそう。ダイバーシティー(多様性)って、本来、自民党の取りえだった。それを取り戻すことが、閉塞感の漂う今の日本には必要で、景気さえよければいいというのは時代遅れ。成熟国家としては、一人一人の満足度が重要です。そういう男前な議論をしたいなと思っています。

  ――確かに、今の自民党には多様性が欠けている。

 だから、私を応援してくれている仲間たちは、「野田が総裁選に出られなかったら、自民党はこの先ダメだ」と思っているんです。今の自民党は国民の意識と乖離しているとも。安倍1強がいいと思っているのは自民党の人で、そう思っている国民は少ないんじゃないかって。国民に寄り添う政党でいるためには、ひとりでも多く、いろいろな意見が言える開かれた総裁選をしたい。それが私の願いです。

(聞き手=本紙・小塚かおる)

▽のだ・せいこ 自民党衆議院議員(岐阜1区・9期)。1960年福岡県生まれ。83年上智大学外国語学部比較文化学科卒業。帝国ホテル勤務を経て、87年岐阜県議。93年衆院議員に初当選。郵政大臣、消費者担当大臣、党総務会長などを歴任。17年8月から現職。女性活躍担当大臣なども兼任。

 野田聖子氏【インタビュー動画】へ 約25分

*****





「三選後はレームダック化」と読む“政局屋”竹下派の権謀

2018-08-08 | いろいろ

より

*****
「三選後はレームダック化」と読む“政局屋”竹下派の権謀

 雪崩を打つように、我も我もと自民党議員が“安倍支持”に走り、9月の自民党総裁選は「安倍3選」で決まったも同然の状況だ。

 何しろ5大派閥のうち、細田派(94人)、麻生派(59人)、岸田派(48人)、二階派(44人)の4派閥が安倍支持を表明。唯一、竹下派(55人)だけが“石破支持”で動く方針を固めている状況である。共同通信の取材によると、何と所属議員405人のうち、76%にあたる310人が安倍支持だという。

 一体、首相のどこをどう評価したら、安倍支持となるのか、サッパリ分からないが、調子に乗った安倍陣営は、「総裁選はもうゲームオーバーだ」と勝ち誇っている。

 「すでに安倍陣営の関心は、総裁選後の人事に移っています。官房長官や幹事長の空手形が飛び交っている。4派閥の幹部が集まり、事実上の選対本部をスタートさせたが、水面下では人事を巡るさや当てが勃発しています。当初は、遅れて“安倍支持”を表明した岸田派は、選対に加えないという空気もあった。現在、岸田派は最多の4人を閣僚に送り込んでいる。

 3派閥は、岸田派から閣僚ポストを奪うつもりでしょう。麻生財務相は、岸田派のことを『ゲームに乗り遅れた感じだな』と、露骨に牽制しています」(政界関係者)

 ポストにありつこうとしている安倍支持組は、総裁選で安倍首相と戦う石破派にはポストを与えず、徹底的に干し上げるつもりだ。「丸焼きにしてやる」などと、とても同じ政党の仲間とは思えない罵詈雑言を口にしている。

 それにしても、まだ告示もされていないのに、「官房長官だ」「幹事長だ」と人事の話が飛び交うとは、これほど醜悪な総裁選は初めてじゃないか。「安倍1強」の驕りは、もう末期的である。

■ 求心力を失い、待っているのは逆風ばかり

 しかし、安倍応援団が浮かれていられるのも今のうちだ。吠え面をかくのも時間の問題である。

 たとえ“総裁3選”を果たしても、その瞬間から安倍政権はレームダック化するからだ。安倍にとって、総裁3期目は最後の任期だ。どんなに強い政権も、終わりが見えた途端、求心力を失うことは歴史が証明している。アメリカの大統領も、2期目に突入すると同時に弱体化していく。9月の総裁選が終わると、政界の関心は“ポスト安倍”に移っていくだろう。

 せめて、国民の強い支持があれば求心力を維持できるが、安倍は国民からの信頼を完全に失っている。「支持」と「不支持」は、5カ月連続の逆転。不支持の理由のトップは「首相の人柄が信用できない」である。「安倍1強」など、永田町だけの話だ。

 しかも、この先、待っているのは逆風ばかりだ。肝心の経済は、いつアベノミクスが破綻してもおかしくない状況である。「異次元緩和」も、限界が近づいている。金利が急上昇したり、金融機関が経営危機に陥るなど、“副作用”は無視できないほど大きくなっている。とうとう、黒田日銀は政策を修正し、事実上「白旗」を掲げてしまった。その上、アメリカからは、同盟国なのに高い関税を課せられるなど、貿易戦争を仕掛けられている。高い関税をかけられて輸出がストップしたら、日本経済はもたない。

 早晩、山積する内憂外患に安倍政権が立ち往生するのは間違いない。「政局」に強い竹下派が、安倍ではなく石破茂を支援するのも、そう遠くない時期に安倍政権は崩壊すると計算しているからだろう。

 政治評論家の本澤二郎氏が言う。

 「安倍首相にとって致命的なのは、総理の武器である“人事権”と“解散権”を縛られそうなことです。人事権は、9月の総裁選の後、論功行賞として使ったら当面使えない。解散総選挙も、公明党が絶対に許さないでしょう。“参院選とダブルも”という話も流れていますが、来年行われる統一地方選と参院選を最重視している公明党は、統一地方選と参院選を混乱させる解散は、体を張って止めるでしょう。公明党の協力を得られなかったら、自民党議員は軒並み落選してしまうので、安倍首相も強行できない。人事権と解散権を失った総理に力はありませんよ」

 どう考えても、この先、安倍に上がり目はない。外交も展望ゼロだ。北方領土は動く気配すらなく、拉致問題は北朝鮮に相手にもされていない。3選される9月の総裁選が、ピークとなるのではないか。


 来年夏の参院選でトドメを刺される

 しかも、安倍応援団は、「同性愛カップルは子供をつくらない、つまり生産性がない」――などと、差別発言を繰り返す杉田水脈議員のような連中ばかりだ。まともな議員がほとんどいない。

 この先も、安倍の足を引っ張っていくのは目に見えている。

 どんなに延命を図っても、安倍政権の命脈は、来年夏の参院選で尽きるとみられている。自民党は大敗する可能性が濃厚だからだ。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。

 「12年に一回、春の統一地方選と、夏の参院選が重なる亥年は、自民党は参院選で大敗するというデータがあります。政治学者の間では“亥年効果”と呼ばれ、よく知られた話です。理由は、自民党の集票マシンである地方議員が、自分の選挙が終わった直後なので、積極的に動かないためだといわれています。前回、2007年の参院選の時も、自民党は歴史的な大敗を喫しています。ちょうど第1次安倍政権の時です。野党に過半数を奪われ、安倍首相は退陣に追い込まれている。ただでさえ、自民党は6年前に大勝しているので、大きく数を減らすことは間違いないでしょう。しかも、地方を中心に安倍政権に対する不満が渦巻いています。アベノミクスの恩恵もありませんからね。総裁選で竹下派が石破茂を支援するのは、かつて参院のドンと呼ばれた青木幹雄さんが“石破で行け”と命じたからだといわれています。参院選を熟知する青木さんは、自民党は敗北すると読んでいるのでしょう。竹下派は、参院選後“安倍おろし”に動くつもりだと思います」

 1年後、石破政権が誕生する可能性はゼロじゃない。

 安倍応援団は、さしたる信念もなく、ポスト欲しさに雪崩を打って安倍陣営に駆けつけているのだろうが、果たしてどこまで先を読んでいるのか。自民党議員の76%が安倍支持では、勝ち馬に乗っても、ポストは回ってこないだろう。しかも、安倍政権は3選と同時に“死に体”となっていく。安倍礼賛派は、あまりにも浅薄というしかない。
*****




「石破を叩きのめす」安倍首相の執念と、菅官房長官の「ある野望」

2018-08-07 | いろいろ
より

*****
  

「石破を叩きのめす」安倍首相の執念と、菅官房長官の「ある野望」

自民党総裁選・暗闘の全内幕
戸坂 弘毅


豪雨、台風そして酷暑…天災が夏の日本を次々と襲うのもどこ吹く風、自民党内は来たる9月の総裁選一色となった。「有終の美」に向けて必死の票固めを進める安倍首相、一騎打ちを演じる見込みの石破元幹事長、土壇場で出馬を断念した岸田政調会長、そしてゲームを裏から眺め、密かに野望を抱く菅官房長官…水面下で繰り広げられる、大物たちの「暗闘」のすべてをレポートする。


  豪雨災害の中、かけた電話 

 西日本各地を襲った豪雨災害の対策に政府が追われていた7月中旬、首相・安倍晋三は、会議や打ち合わせが続くタイトな日程の合間に、首相執務室から竹下派所属の議員に電話を入れていた。自民党総裁選をめぐる竹下派内の現状報告を聞くためだ。

 安倍は国政選挙どころか地方選挙でも、移動時間や会議の合間に、寸暇を惜しんで知り合いの会社経営者や地方議員に携帯から直接電話を入れて、支持を依頼する執念をみせる。総裁選ともなれば、自ら票固めの先頭に立つのは当然だ。

 「名もない若手議員たちと何度も飯を食ってきたし、すでに議員票の3分の2は固めたよ」。7月上旬には、安倍は旧知の民間人に強い自信を示していた。

 票が読めない党員投票に不安を残す中、安倍はまず議員票で大差を付けることに拘ってきた。当選すれば自民党総裁として最後の3期目に入る。たとえ勝てたとしても「辛勝」では、その日からレイムダック化しかねない。

 安倍の出身派閥の細田派に加えて麻生・二階両派が安倍支持を鮮明にする中、目下、安倍の最大のターゲットは55人が所属する党内第三派閥の竹下派だ。

 竹下派会長の竹下亘は、「安倍さんが引き続き総理になるか。『はい、その通り』とは即答しかねる」と繰り返してきた。だが、今春、派閥会長に就任したばかりの竹下に派内を統率する力はない。

 とりわけ、同派の参院側は今も、亘の兄・竹下登の秘書から参院議員に転出し、かつて参院自民党の「ドン」と言われた男の強い影響下にある。元自民党参院議員会長・青木幹雄である。

 そもそも亘が派閥会長に就任できたのも、青木が前会長の額賀福四郎に対し、「会長を竹下に譲るように」と通告したからだ。額賀は抵抗したが、最後は青木が、竹下派会長代行で自民党参院幹事長である吉田博美を通してねじ伏せた。

 現在、参院竹下派21人を束ねる吉田は、今なお引退した青木を「親父」と呼んでその指示を仰ぐ。それゆえ、「竹下派対策の要は、この青木ー吉田ラインにある」と見た安倍は、昨年から再三、吉田を夜の会合に誘い出して懐柔に努めてきた。

 だが、その吉田は「私自身は安倍さんの再選で構わないと思っているが、仮に青木さんから『石破で行け』と言われれば、石破を全力でやらざるを得ない」と安倍に伝えていた。

 青木は、自らの長男で後継者の参院議員・青木一彦の選挙で世話になった石破と、ここ数年は近い関係にあり、今回の総裁選で「石破支持」を打ち出す可能性を以前から仄めかしていた。

  

 安倍はこの動きを察知していた。この総裁選で、もはや石破を「ポスト安倍候補」に名前が挙がらないほどに叩きのめす。そのためには、竹下派を味方に付けることが必須だ――そう考えた安倍は、竹下派内の個別工作にも余念がない。

 「青木さんが『石破をやれ』と言い出せないくらい、竹下派内を安倍支持で固めてしまえばいい」。安倍は、気脈を通じる竹下派幹部からこうアドバイスされていた。

 たとえ会長の竹下が「石破支持」を打ち出しても、派内が「安倍支持」と真っ二つに割れる状況であれば、さすがの青木も、会長として初めて総裁選に臨む竹下を慮って「石破をやれ」とは言い出せないだろうというわけだ。

 それゆえ安倍は、経済再生相で竹下派会長代行の茂木敏充、事務総長の山口泰明、元総務相の新藤義孝ら、竹下派内にあって「安倍支持」を鮮明にしている議員たちに「石破に圧勝しなければならない。一人でも多くの仲間に安倍支持と言わせて欲しい」と頼みこんできた。

 中でも安倍は、「能力は高いが人望がない」との評価が党内外で定着している茂木を頼みとしている。茂木も茂木で、若手議員を食事に誘い出しては選挙対策を指南し、政治資金も配っているという。この総裁選を機に、竹下派のプリンセス・小渕優子を抑えて、派閥の総裁候補に躍り出ようと必死なのだ。

 「すでに竹下派の7割以上は安倍支持」(竹下派幹部)との見方もある中、青木は7月下旬、ついに吉田に対して「石破をやれ」と最終的な指示を出した。これを受けて、吉田は竹下派の参院側21人を石破支持でまとめる方向だ。

 青木はかつての小泉純一郎政権下で、野中広務ら派内の大半が反小泉の独自候補を立てる方針に傾く中、「参院側は小泉再選支持」を打ち出し、派閥を分裂させた「前科」がある。青木にとっては、派閥の結束よりも参院が独自性を保つことのほうが大事なのだ。

 今回も竹下派は分裂が確実で、安倍は竹下派内の安倍支持を増やす工作を、一段と加速させる構えだ。


  表面化する「安倍と菅のすれ違い」 

 安倍が石破をどれだけ引き離せるか――今回の総裁選は、安倍の「勝ち方」だけが焦点になっているといわれる。だが、この総裁選をめぐって浮き彫りになった重要な事象がある。

 「ポスト安倍」をめぐる、安倍本人と、この5年半、安倍を官房長官として支え続けてきた菅義偉の思惑の違いだ。

 2人のすれ違いは、安倍が信頼する盟友で、党内第4派閥を率いる党政調会長・岸田文雄の立候補をめぐって表面化した。

 今からちょうど1年前、昨年7月のこと。安倍は当時外相だった岸田と、EUとの首脳会談のために共に訪問したブリュッセル、そして帰国後の東京で、二度にわたり2人だけで長時間、酒を酌み交わした。

 その会談で岸田は、「外相を外れて党三役に就きたい」との考えを安倍に伝えたうえで、「どのような立場になっても(安倍)総理が続けるという限りは全力で支えます」と明言した。翌年(今年)の自民党総裁選に安倍が立候補するのであれば、自らは手をあげず、安倍支持に回ることを示唆したのだ。

 安倍は喜び、自分が首相を辞めた際には岸田に譲りたいとの考えを仄めかした。この時期、安倍は親しい政界関係者に「私が辞める時の総裁選では、清和研(=清和政策研究会、安倍の出身派閥である細田派)として岸田さんを推すことは、極めて有力な選択肢だ」とたびたび漏らしていた。

 ところが、それからほぼ1年が経った今年6月18日、岸田は赤坂の日本料理店で、ビールと日本酒を酌み交わしながら2時間以上も安倍と向き合ったものの、総裁選への対応を最後まで明らかにしなかった。派内の全員から総裁選への対応について意見を聴いた結果、主戦論が多かったためだ。

 岸田は安倍に「私は未だに派閥を掌握できておらず、皆の意見を無視できない」と弁明。「私が『総裁選で負けて我が派が干されたら、皆が困るだろう』と言っても『構わないから出ろ』という声が多いのですよ」と言い訳を繰り返し、安倍を呆れさせた。

 安倍は、「もしあなたが立候補したら、他派の手前、岸田派は処遇できない」「私が今あるのは、小泉内閣で幹事長や官房長官など政権中枢を経験してきたからだ」と立候補を止めるよう促したが、岸田は最後まで言を左右にした。

 安倍は今年に入ってからも岸田と会合を繰り返してきたが、流石に6月ともなれば、優柔不断な岸田も対応をはっきりさせるだろうと考えていた。それだけに会談後、周辺に「岸田さんも、皆から意見を聴いたりしちゃダメだよな」と吐き捨てた。

  

 岸田派内部の実情はどうだったか。事務総長の望月義夫らベテラン議員には慎重論が強いとされたが、ベテランでも文科相の林芳正や元経産相の宮沢洋一らは「総裁選に出れば、負けても知名度は一気に高まるし、政治家として成長できる」とか、「仮に安倍首相の退陣後、細田派の支援を受けて総理になったとしても、賞味期限が切れた安倍さんからの『禅譲』と見透かされ、国民の支持は得られない」などとして、主戦論を主張していた。

 だが、岸田はかつて宏池会(=現在の岸田派)の会長だった加藤紘一が、総裁選で現職の小渕恵三に挑んで敗れた結果、宏池会が徹底的に冷遇され、加藤が失脚に追い込まれた経緯を間近で見ていたため、決断できなかったのだ。


  「出てもらったほうがいいじゃないですか」 

 「岸田さんには出てもらったほうがいいじゃないですか」。6月の安倍・岸田会談の様子を安倍から伝え聞いて突然言い出したのが、官房長官の菅義偉だ。

 すでに細田・麻生・二階の主流3派は押さえた。ここに、いまや「菅派」と言われる無派閥議員を加えれば、勝利は揺るがない。無理に岸田を押し止める必要はない、というのだ。

 「そうは言ってもなあ…」。その時はなお岸田の支持を得たいとの考えを示した安倍だが、確かに石破との一騎打ちになれば、安倍を嫌う票はすべて石破に集まり、石破が有力な総裁候補として生き残る可能性が高まる。

 安倍サイドにあえて立候補を期待する向きもあった野田聖子には、支持の広がりが見られず、20人の推薦人の確保は絶望的だと見られている。安倍に近い細田派の議員は「数人(の推薦人)を野田に貸せば出られるという状況ではない。それに昔の派閥とは異なり、今や派閥領袖といえども所属議員に『野田の推薦人になってやれ』と無理強いできる時代ではない」と解説する。

 そのため、安倍も7月に入る頃には、「岸田さんが立候補して反安倍票が分散することは、私にとって悪い話ではない。菅ちゃんの言う通りだ」と漏らすようになっていた。


  菅にとって「政治家人生で一度のチャンス」 

 ただ、岸田の立候補を望んだ菅には、単に「安倍を助けたい」という意図とは異なる思惑があったことは間違いない。「岸田の立候補が、自らの将来にとってプラスになる」との冷徹な計算があったのだ。

 菅はかねてから安倍が岸田を重用し、禅譲を仄めかしてきたことを快く思っていなかった節がある。

 安倍と岸田は同じ二世議員の当選同期で、若手議員の頃から気の置けない遊び仲間でもある。そこに菅が入り込む余地はない。

 一方、菅は当然のことながら、安倍政権終了後も影響力を発揮できる体制の構築を狙っている。そのため、第2次安倍政権発足後もしばらくは、安倍が嫌う石破とも裏で気脈を通じてきた。自らの息のかかった総裁候補を育てようと、麻生派出身の現外相・河野太郎に早くから目をかけ、本人が望んでいた外相への起用を安倍に進言し、実現させてもいる。

 第2派閥の麻生派を上回る、約70人にのぼる無派閥議員の人事の面倒などをこまめに見て、囲い込んでもきた。今や約30人の若手無派閥議員が、事実上の「菅派」だと言われる。

  

 さらに菅は、ここにきて幹事長の二階俊博に急接近している。

 二階は「安倍首相に不測の事態が起きても、菅さんがいるじゃないか」と以前から繰り返していたが、最近とみに菅と水面下で連携を深める。6月10日に行われた新潟県知事選でも二階主導で擁立した候補を菅が全面的に支援し、激戦を制した。

 安倍総理の退陣後、総裁候補のいない二階派と、無派閥の「菅派」約30人が組んで、菅を総裁候補に担ぎ出す展開も皆無とはいえない。仮にそのとき石破、岸田、菅の3人が立候補した場合、カギを握るのは最大派閥の細田派だ。そこで事実上、すでに細田派の領袖である安倍が菅支持を打ち出せば、「菅首相」も現実味を帯びる。

 この5年半、政権の大黒柱を務めてきた菅が立候補しようという時に、「否」という選択肢が安倍にあるかどうか。「派閥を持たず、間もなく70歳になる菅が宰相の座を狙えるのは、安倍が退陣する時の一度限り」というのが党内の一致した見方だ。菅からすれば、安倍と岸田に楔を打ち込み、距離を広げておくことは大きな意味があるのだ。

 一方の安倍は、親しい永田町関係者にたびたび「首相を辞めたら、清和研(=現細田派)の会長として残りの政治家人生を気楽に楽しみたい」と漏らしてきた。当面、清和研には総裁候補がいない。最大派閥の長として、他派の総裁候補を担いで当選させ、恩を売って「院政」を敷きたいと考えているのだ。

 その最有力候補が岸田だ。気心が知れていて、寝技が苦手な岸田であれば操縦しやすい――そう考えた上でのことなのは言うまでもない。

 果たして岸田はどう出るのか。安倍や菅が固唾を飲んで見守っていた中、岸田は7月24日、立候補見送りと安倍支持を表明した。ぎりぎりで安倍陣営に駆け参じた形だ。安倍をイライラさせた末の参陣で、岸田が希望通りに党3役などの重要ポストに留まれるかどうかは微妙である。


  さて、「大差」で勝てるのか? 

 現在、安倍の最大の懸念は、今度の総裁選から重みを増す党員票の行方だ。

 内閣支持率は回復傾向にあり、各マスコミの世論調査では、自民党支持者における安倍の支持率は石破を大きく引き離してトップだ。とはいえ、森友学園や加計学園の問題への対処の仕方に国民の視線はなお厳しく、長期政権による「飽き」もある。

 安倍は、数か月前まで「前回は党員票で石破にかなり負けたが、今度は負けることはない」と自信を示していた。石破に党員票で負けた12年総裁選には、安倍が所属する清和研から当時会長だった故・町村信孝も立候補したため、派閥が持っていた各種団体票はほとんどが町村に流れた。しかし現職総裁として臨む今度は構図が根本的に異なるから、大丈夫だと高をくくっていたのだ。

 だが、ここに来て「地方党員の間に、安倍に厳しい声が多い」との情報が数多く寄せられるようになり、安倍は細田派の議員らに対して党員票獲得でハッパをかけている。

 その地方の党員票獲得に関しても、菅は、官房長官という激務にありながら手を打っている。当選4回以下の菅に近い無派閥議員らで作る「ガネーシャの会」の会長で、総務副大臣の坂井学らに対し、「首相か私が出向くから」とそれぞれの地元で安倍支持を広げるため会合をセットするよう要請しているのだ。

  

 安倍圧勝に向けて邁進する菅の姿に、自民党内では「今回、安倍が大差で勝つことは、その後を安倍政権を支えた菅が引き継ぐ環境を整備することにもなる。それで菅は必死なのだ」と見る向きもある。

 石破、岸田、野田…「ポスト安倍」候補たちが戦闘力不足を露呈した今回の総裁選。小泉進次郎ら次世代へのつなぎ役として、菅が次期首相候補に躍り出るのか。それに向けて菅は、総裁選で安倍三選が決まるであろう今年9月以降も官房長官に留まるのか、それとも幹事長への転出を強く望むのか。

 安倍政権が「最後の3年」に突入するこの9月以降は、安倍と菅の関係こそが政界の流れを読む鍵となるだろう。(戸坂弘毅 ・ジャーナリスト、文中敬称略)
*****




古賀茂明「圧勝間違いない安倍総理が目指す総裁4選と“皇帝”への道」

2018-08-06 | いろいろ

より

*****
古賀茂明「圧勝間違いない安倍総理が目指す総裁4選と“皇帝”への道」

 7月24日、岸田文雄自民党政調会長が秋の同党総裁選不出馬と安倍晋三総理支持を表明した。野田聖子総務相が、スキャンダルの泥沼にはまっていることから、総裁選は、安倍総理と石破茂元防衛相の一騎打ちとなることが事実上決まった。

 自民党総裁選は、国会議員票(405票)及びそれと同数の地方票で争われるが、安倍総理支持は、党内最大派閥の細田派(事実上の安倍派)94人、第2派閥の麻生派59人、第5派閥の二階派44人の主流3派だけで国会議員票の5割近いのだが、これに加えて第4派閥の岸田派48人が加われば、6割超だ。約70人の無派閥議員のうち50人近くが安倍支持と言われるので、それを加えると7割超となる。

 第3派閥の竹下派55人のうち参議院の21人が石破氏支持という報道があるが、石破派は20人だから、各派閥の中で脱落者が多少出るとしても、安倍氏の圧倒的リードは揺るがない。

 石破陣営は、地方では、元々石破氏人気が高く、また、モリカケ疑惑など一連の安倍夫妻がらみのスキャンダルもあって、総裁交代を望む声が強いと読むが、そう単純でもない。自民党の選挙は、単なる人気投票ではなく、利権の争奪戦という側面が強いからだ。このため、早い段階で勝負の行方がわかると、「勝ち馬に乗る」動きが一気に加速する可能性もある。

 こうした情勢の中で、大手マスコミ各社は、一斉に「安倍3選有力」という記事を流している。まだ、誰も正式立候補していないのにこうした情報を流すのが、安倍氏を利することはもちろんよくわかったうえでの報道だ。

■ 2019年に全てをかけて4選を目指すのは規定路線?

 反自民と自民党内の反安倍勢力にとっては、早々に「安倍早期退陣」の希望を断たれた格好で、今秋以降は3年後の2021年の次々期総裁選に向けた動きに焦点が移っていくことになる。

 そこで、思い出していただきたいのが、年頭の本コラム「安倍総理3選で憲法9条改正へ突き進む2018年」(同年1月.1日配信) だ。

 今後の展開は、ほぼそこで予測した通りに進んでいくのではないかと思う。

 時系列で見て行くと、まず、総裁選では、安倍総理は、憲法改正を争点化するとすでに表明している。ここでは、おそらく9条改正に絞って議論を展開するのではないかとみられる。9条2項の戦力不保持条項を削除するという石破氏に対して、安倍案は、9条2項も含めて現行条文をそのまま残し、新設する9条の2で自衛隊を規定するだけだとする。両案を並べれば、まるで安倍氏が「平和主義」の守護神であるかのようにさえ見える。これは、自民党内のハト派党員向けのみならず、来年の憲法改正の国民投票を睨んだパフォーマンスと見ることができる。

 総裁選で安倍案を掲げて勝利することにより、秋の臨時国会では、早々に野党側に自民の改憲案を提示する環境が整う。臨時国会では、豪雨災害対策として最大級の補正予算を通して、被災地への配慮を示したうえで、本格的な改憲議論を始め、臨時国会終盤までには審議時間をかなりこなしたという実績を積み上げるだろう。もちろん、被災地での自衛隊の活躍も最大限アピールされるはずだ。

 10、11月には那覇市長選と沖縄県知事選がある。翁長知事の出馬はかなり厳しい状況で、しかも、オール沖縄から経済界の重鎮が離脱するなど反安倍陣営の結束力に陰りが見える中、ここでも最大級のバラマキを行えば、今年最大の難関であるこの選挙を勝ち抜くのはそれほど難しくないかもしれない。

 その後は、とにかくスキャンダルを出さないように慎重に事を進め、来年1月召集の通常国会冒頭では、19年10月の消費税増税対策と称して、「史上最大の予算」を組み、あらゆるバラマキ予算を総動員する。

 そのバラマキで、春の統一地方選をうまく乗り切れば、次のテーマは憲法改正の発議だ。その前に天皇の交代という一大行事があるが、むしろ、それは国会の議論で野党が審議拒否などしにくいムードを作るのに役立つ。そして、新天皇即位ブームのお祭りが終わればすぐに発議の採決を強行するだろう。与党は衆参両院で3分の2を占めるうえ、維新が大阪へのカジノ誘致承認とのバーターで改憲に賛成してくれるので、多少無理をすれば、ここも十分にクリアできる。

 来年の夏の経済状況は、年頭コラムで指摘したとおり、10月の消費税増税前に住宅や自動車・高額商品の駆け込み消費で空前の消費・住宅投資ブームとなっている可能性が高い。五輪特需の建設ブームもその頃がピークアウトの寸前だ。

 安倍政権は右翼の岩盤層に支えられているが、それだけでは国民投票には勝てない。これに加えて中間層の支持を獲得しなければならないが、そのための最大の武器が、「アベノミクスで景気が良くなった」というイメージ戦略になる。その観点では、駆け込み景気が盛り上がる19年夏に全ての勝負をかけるのが最も合理的だ。

 「景気がいいね」「また時給が上がったよ」「安倍さんのおかげだね」「そうかもね」「憲法は古いんだってね」「携帯もネットもなかった時に作ったらしいよ」「自衛隊が違憲だってことになってるらしいよ」「それは変だね」「安倍さんが変えなくちゃいけないと言ってるんだって」「確かにそうかもね」という感じで、経済が良くなったと感じている層では、案外抵抗感がなく、改憲が受け入れられてしまう可能性もある。

 ここで勝負をかけるのであれば、参議院選と国民投票の同時実施は当然の選択だ。いっぺんにやれば、資金力に勝る自民党が有利だからだ。

 さらに考えれば、この状況で衆議院選挙をやらない手はないということになる。逆に、ここでやらなければ、秋の消費税増税後に経済が落ち込むと、当分は解散はできなくなる。20年のオリンピック直前の盛り上がりはあっても、その時期に選挙をやるのは無理だ。五輪が終わると、一気に経済が冷え込むという予測もあり、そうなると、21年10月の任期切れまでに解散できるタイミングはないかもしれない。どう考えても19年夏に行うのが最善の選択ではないだろうか。

 ということで、19年夏には、衆参同日選と国民投票のトリプル投票となるかもしれない。そうなると野党側は大変だ。何しろ、参議院だけでも候補者が足りないのに、衆議院選も同時となれば、おそらく十分な候補擁立ができないだろう。無理して立てても泡沫ばかりということになりかねない。

 また、参議院の選挙協力もまだ進んでいないのに、衆議院も同時に選挙協力というのは、衆参の貸し借りが錯綜し、仮に協力区ができても一枚岩で戦えるところは極めて限定された数にとどまると思われる。

 さらに、三つの選挙をいっぺんにやるには膨大な資金力が必要となり、この面でも自民党は非常に有利になる。

 こうしたシナリオは、経済のことを考えれば、ごく自然に出て来るものだ。これ以外のシナリオは逆に考えにくい。今頃になって、衆参同日選の可能性が浮上して来たなどと書き始めた政治部記者もいるが、それでも未だ少数なのは、政治部の記者たちが経済音痴だからなのかもしれない。

■ 歴史的偉業を達成した総裁をクビにできないキャンペーン?

 改憲が成立し、与党が衆参で大勝する可能性もかなりある。仮に3分の2は取れなくても議席減少がそれほど大きくなければ、自民党支持層での安倍総理への評価は高まるだろう。少なくとも今年の総裁選で惨敗するかもしれない石破氏や、安倍氏と戦うのを逃げて禅譲に望みをかける岸田氏など敵ではない。強いて挙げれば小泉進次郎氏が最大のライバルという状況になるだろう。

 今年の総裁選後の人事や来年の選挙の公認権、そして、来夏の衆参選挙後の人事などで、まだまだ安倍総理の権力は残る。

 しかし、現在の自民党の党則では、総裁は3選が上限となっている。となれば、今年の総裁選後は、どんなに頑張ってもレームダック化が進むのは避けられない。

 当然、安倍総理側は、その防止策を考えているはずだ。通常の人事などの手段以外に考えられる方策としては二つある。

 一つ目は、前述した来夏の衆議院選実施である。その噂を今から流せば、公認権の行使という権力を最大限に活用できる。ただし、それは、来年夏までしか使えない。

 そこで、考えられる二つ目の方策が、「安倍4選」の可能性を意識させることだ。安倍総理は、3選禁止だった党則を変えて今回の総裁選への立候補を可能にしたという実績がある。同じことができないはずはない。総裁選後の党人事で、4選を可能とする党則改正を幹事長候補と密約するということもあるかもしれない。あるいは、幹事長候補がそれを自ら安倍総理に持ちかけるという展開も十分に考えられる。前回の改正の際には二階俊博幹事長がその議論の先頭に立った。今回も、同じ役割を担うことは十分にあり得る。二階派は、自前の総裁候補がいないので、安倍氏と他派閥の総裁候補を自由に天秤にかけられる。安倍新体制の中での優遇措置を得るために4選戦略の先兵になっても全く不思議ではない。

 今すぐ動くというわけではないが、早い段階から4選の憶測をプレスに流し、雰囲気を醸し出す。そのうえで、来年の改憲達成の暁には、「これだけの歴史的偉業を成し遂げた総裁を決まりだからと言ってクビにするのはいかがなものか」という議論を展開。消費税増税前に一気に4選可能な党則改正に持って行くか、あるいは、議論を続けて、20年の五輪パラリンピック開催の余韻を使って、改正するか。最悪改正が実現しなくても、その可能性があると思わせている間は、レームダック化に歯止めがかかる。

 もちろん、その間、安倍氏自身は、総裁選ルールは党で議論すべきことだという立場を堅持し、予定通り退任して岸田氏に禅譲というオプションもちらつかせることで、岸田派の支持を確保し続けるということもやるだろう。

■ 野望は膨らみ総理から安倍皇帝へ?

 これまでの議論に対して、そこまでうまく行くはずがないと思う人も多いだろうが、これまでの安倍氏の強運を考えると、あながち荒唐無稽な話ではないと考えた方が良い気がしてくる。

 安倍総理の野望は、拙著『国家の暴走』(2014年、角川新書)で指摘したとおり、日本を平和国家から、米ロ中のような「列強国家」に変えることだ。そして、その列強のリーダーとして、軍事力を背景に世界秩序に影響力を行使する。それが夢なのではないか。

 その夢を果たすためには、憲法9条改正だけでは全く足りない。極東では中国の習近平、ロシアのプーチン、北朝鮮の金正恩らが、国内での独裁体制を基盤にして、国際社会に大きな影響力を行使している。仲良しのトルコのエルドアン大統領も憲法改正して権限を強化した。一方の安倍総理は、国内では1強体制を築いたが、北朝鮮問題一つとっても国際的舞台では蚊帳の外だ。とても、列強国のリーダーになったとは言えない。

 そうなるためには、緊急事態条項や基本的人権の制限などのより踏み込んだ憲法改変が必要だ。それを基にして、国民生活を犠牲にできる体制を作り、軍事力を飛躍的に強化するには、さらに10年単位の時間が必要になるだろう。21年までの総裁任期を4選後の24年まで延ばしても十分ではない。

 総裁4選規定の廃止の際には、「初の改憲を実現し、オリンピックを成功させた総理」としての実績をアピールして、一気に、多選禁止規定そのものの廃止も議論される可能性がある。終身総裁も視野に入れた規定になるかもしれない。

 もちろん、国内では持てる権力は無制限に行使し、自民党はもとより、野党もマスコミも経団連も支配して1強体制を強化する。その先に見えるのは、終身制の独裁者、「皇帝」への道だ。

 そんな恐ろしいことにならないうちに、この野望を止めることができるのは誰なのか。

 そう自問しても、すぐには答えが見つからない。

 日本の民主主義は、本当に瀬戸際に立たされている。(文/古賀茂明)
*****




「裏口入学」だけでなく「女性差別」まで認める大学の不可解   (抄)

2018-08-05 | いろいろ

ジャーナリスト田中良紹氏のヤフーニュースのコラムより

*****
「裏口入学」だけでなく「女性差別」まで認める大学の不可解

 文科省の役人の息子を裏口入学させたと言われる東京医科大学は、女子学生の入学率を低くする目的で女子だけ一律に減点していると読売新聞が報じた。大学側は「女性は医師になっても結婚や出産で離職率が高く病院側が困ることになるから」と説明している。

 大学側の説明は明らかな女性差別で、東京医科大学には「裏口入学」に加え「女性差別」のレッテルが貼られることになる。世間から「とんでもない大学」のイメージで見られることになるだろう。

 報道されているところでは、2010年の入試で女子の合格率が男子を上回り、女子比率が3割を超えてしまったので、次の年から増やさないよう女子を一律減点するようにしたという。翌2011年の女子合格率は急落し確かに男子を下回った。しかしその後は回復し再び男子と同じレベルになった年が3度ほどある。

 そして旺文社の『大学の真の実力情報公開BOOK』によれば、2014年の東京医科大学の入学者の男女比は女子が29.2%だが2017年には45%に増えている。読売の記事では2017年は36%でどちらが正しいのか分からないが、いずれにしても女子の比率は3割を超えた。

 一方で受験情報サイト「医学部受験マニュアル」には医学部の男女比ランキングがあり、医学部女子の比率の高い順に52校がランキングされている。女子だけの東京女子医科大学が1位なのは当然として、2位の富山大学は女子が54%と男子より多く、女子比率が4割以上の大学は11校、東京医科大学は32%で35位だった。最低は東京大学の16%である。

 30年前までの医学部の女子比率が10%程度だったことを考えれば間違いなく女子比率は高まっている。そういう中で東京医科大学は時流に逆行した経営を行っていることを印象づけ、しかも女性の結婚や出産を理由にしているのだから「女性差別」を世間に白状したようなものだ。

 しかし自分に不利な発言をするところがフーテンには理解できない。そして報じたのが読売新聞であることがフーテンにはひっかかる。読売新聞は安倍官邸からの指示とみられる前川前文科次官の「出会い系バー通い」を裏も取らずに報道し醜態をさらしたことがあるからだ。

 この新聞社は発行部数の多さを自慢するが、発行部数が多い新聞を世界ではクオリティペーパー(エリートが読む質の高い新聞)とは呼ばない。大衆紙と呼ぶ。だから読売は大衆が喜ぶ低俗な下ネタを使って官邸に逆らった前川氏を貶めようとしたのである。

 しかし「出会い系バー」で前川氏と会っていた少女は官邸や読売が想像していた交際ではないことを他のメディアで証言し読売は恥をさらした。この「出会い系バー通い」は警察出身の杉田官房副長官が前川氏を注意したというから警察から官邸に持ち込まれた情報であることは間違いない。

 低俗な下ネタで国民への印象操作を行うのは警察や検察がよく使う手である。かつて東京地検特捜部が「大蔵省接待汚職事件」で無実のキャリア官僚を逮捕した時、「ノーパンしゃぶしゃぶ接待」という言葉が流行語になった。

 しかし逮捕された官僚が「ノーパンしゃぶしゃぶ接待」を受けた事実はない。国民の怒りを大蔵省の高級官僚に向けさせ自分たちの捜査を正義と思わせるための情報である。

 検察は捜査に入る前から逮捕する対象が「悪」であることを国民に印象づける。印象操作で国民の怒りを高めてから捜査に入る。「悪」を懲らしめる検察の捜査は常に正義の行使と国民に思わせるためである。検察が何をやっても批判が生まれないようにするのが捜査の常道なのだ。

 ・・・・・・。


*****




松尾貴史と室井佑月が本音で語る安倍政権の危険な本質!

2018-08-04 | いろいろ

より

*****
松尾貴史と室井佑月が本音で語る安倍政権の危険な本質!「安倍首相になってからメディアへの圧力が露骨に」

「どんどん仲間がいなくなる」「右のやつらが羨ましい」……昨年1月の連載スタート時にそう嘆いていた室井佑月だが、それから1年半以上経ったいまも安倍政権下の言論状況に改善の気配はない。それどころか気がつけば、テレビには政権に迎合する芸能人や論客ばかりがますます増えている。

 そんななか今回、果敢にもこの連載「アベを倒したい!」に登場してくれたのが、タレントの松尾貴史氏だ。

 松尾は、政治的発言がタブーとされる日本の芸能界に身を置きながら、毎日新聞の連載コラムやSNSで、ときにストレートに、ときにユーモアを交えて、知的で鋭い政権批判を続けている貴重な存在だ。
 対談は、直情型の室井がぶつける疑問と怒りに、知的で冷静な松尾氏が問題の本質を解き明かすかたちで進んだ。安倍政権の最大の問題点とは? 安倍政権になってから明らかに増えた圧力や嫌がらせの正体とは? それでも松尾氏が政権批判を続ける理由とは?
(編集部)

***************

 安倍首相の悪口を言うと圧力や嫌がらせが…しかも安倍応援団は陰湿で粘着質

室井 20代の頃「anan」(マガジンハウス)で対談させていただいていただいたじゃないですか。もう20年以上も前です。その頃から落ち着いていて、達観しているというか、なんか大人っぽいんですよね。イヤミとかも、すっごく深いの(笑)。

松尾 そんなことないと思いますよ(苦笑)。昔から進歩も退化もせずにキープしているだけだと自分では思ってます。

室井 でも、松尾さんは政治的発言も昔から一貫してる。それは安倍政権になって、芸能界において政治的発言がタブーのようになっても変わっていないじゃないですか。でも、安倍政権の悪口言って大丈夫なの?

松尾 本来、時の政権批判、権力チェックは誰でも大丈夫なはずなのにね。ただ、安倍政権はマスコミに圧力をかけることをすごく一生懸命やってきた人たちなので。僕は無邪気に自分が思ったことを書いたり話したりしているだけ。たとえば麻生太郎さんの記事をリツイートするときに、「阿呆丸出し」って書いたりしたけど、それが本心だから。でも、あの人たちが一生懸命だから、僕はここ数年、情報番組などにあまり出ていないでしょう? 逆に連載コラムやSNSなどでは自由に発言しているし、精神衛生上はいいんですよ。まあ、これまでも「出してください!」と頼んでテレビに出してもらっていたわけではなく、「呼ばれたら行く」「呼ばれなかったら行かない」というスタンスでしたから。

室井 でも、安倍政権になってからマスコミに対する圧力や、マスコミの忖度も露骨になったと思いませんか。小泉さんのときもたまげたことはいっぱいあったけど、こんなに怖くなかったです。小泉さんの悪口いっぱい書いても……。

松尾 変な圧力とか嫌がらせは来なかったもんね。いまは本当に……。そういう意味では、道筋をつけた小泉純一郎さんも罪深いと思いますけどね。

室井 安倍さんの場合は、応援団もひどいでしょ。

松尾 しかもあの方たちの応援団は、陰湿で粘着質です。ただ、思うんです。安倍政権やその応援団の人たちが、絡んでくるってことは、「自分が言ったことが正しかったんだ」ということの証明だと。僕の言葉が「効いているんだな」「痛いところ突かれたんだな」ということの現象なので。逆に、「我が意を得たり」と思うんです。

室井 そういうところが大人。わたしは気が弱くなってきちゃって。自分のほうが間違いなのかと思ってしまうこともあるんです。だって、安倍政権になってからわたしがおっかないと思ったのが、メディアへの嫌がらせって他の政権もしていたけど、ある程度抑制が効いていたし、メディアもここまで萎縮していなかった。でも、安倍政権ってメディアへの介入にすっごく熱心だし、真剣。しかも、ピンポイントで名前をあげたりするじゃないですか。朝日新聞に敵愾心をむき出しにしたりして。

松尾 それで自分の気に入ったところにはえこひいきして、首相インタビューを喜んで引き受ける。そこが面白いですよね。含羞がないというかね、全体的に。欲望に忠実というか。思ったらストレートに欲望を表現することに抵抗感を感じない、脳内に関所が設けられてない方たち、みたいなね。


政治家のモノマネをしただけで、テレビ局に苦情の電話が

室井 芸能人も、あの人に対して腹が立ってる人いっぱいいると思うんです。でも、なぜ声を上げないんですか?

松尾 「俺は言うよ」って人はいるにはいるんですが、それが少数派になってしまって。たとえば海外では、マドンナやレディ・ガガ、ジョージ・クルーニー、ショーン・ペンとか、政治的・社会的な発言を能動的にする。あれはアメリカのアーティストがエージェントを雇うというかたちも関係しているんです。日本の場合、芸能人と所属事務所は対等ではなく自分が雇用してもらっている、つまり昔で言うところの「置屋さん」に所属している感覚なんです。「置屋さんと旦那衆とお茶屋さんには迷惑をかけられしまへん」というようなメンタリティをもっているんじゃないのかなと。たまに僕みたいな行儀の悪いのが好き勝手言っているだけで、もともとそういう発言をすることに抵抗があるという構造ではあったと思う。

室井 でも、事務所はマージン取ってるわけでしょ。いっぱい!

松尾 いや、そういう筋論じゃないの。たとえば、自分が発言することで大スポンサー降りるとか。そうすると、同じ所属している先輩たちも業界で肩身が狭くなるとかね。そういう感覚があるから、みんな物言えば唇寒しになっている。

室井 やだぁ。“村”みたい。長いものには巻かれろってこと? でも、空気感が変わったと思う。松尾さんはブレていないけど、でも周りは変わったんじゃないですか?

松尾 政治家のモノマネをすると、放送局に苦情の電話がかかってくるようなことにはなっています。おそらく安倍さんのファン筋から(笑)。昔はそんなことなかったんですけどね。

室井 政治家って風刺の対象になる人たちでしょ。権力者風刺はもともと庶民の楽しみだし、お笑いには欠かせないものだったはず。それなのに……。

松尾 政治家のモノマネなんて、もちろん本来はまったく問題ないもののはずです。だって相手は権力者だもん。それが許されないというのは、日本は先進国ではないってことですよね。


 政治も官僚も企業も、これから先より腐っていく予兆がいま出ている

室井 モノマネくらいで批判がくるなんて恐ろしい世の中になったもんです。わたしもテレビに出て政権を批判すると、メディア関係者からはたぶん心配してくれているんだと思うんだけど、「もっと大人になれよ」みたいなことを言われるんです。「まだマスコミとかが正義だと思ってるの?」って。

松尾 マスコミは正義でないと思うけど、マスコミのなかに正義感をもっている人はいる。それは芸能人でも作家でも飲食店の人でも、街で働いている人でもね、もちろん政治家のなかにも、正義感をもっている人もいるということじゃないですか。

室井 でも、すごく不思議です。金持ちや政治家、地位が高い人のほうは、一般の人よりもさらに倫理観をもって世の中に尽くすっていうのが当たり前だと思っていたから。でも、安倍政権になってから、どんどんそうした倫理観がなくなっていると思うんです。官僚や政治家の不祥事、なにより安倍さんのモリカケ問題を見ると嘘ばかり。

松尾 以前は政治家も少しは品がありましたよね。でも、いまは政治家もお金持ちもどんどん品がなくなっていって。これから先、政治にしても官僚や企業にしても、さらにゆるゆる腐っていくだろうなっていうムードになっていますよね。強い者だけが得をし、バレなかった者だけが得をする世の中になっている。そして現時点ではいい人でも悪い人でもない人が、この先悪いほうに転がるという予兆がいま、出てるんじゃないのかなって気がします。

室井 勝てばなんでもいい。そんな風潮はおかしいでしょ。でも、安倍さんを見ているとそれがまるで“正義”みたいになっちゃって。

松尾 たとえば選挙でも戦争でもそうだけど、勝ったほうが正義の“フリ”をできるだけなんですね。いまは選挙でも、与党自民党がバカ勝ちをして「自分たちがやっていることが国民から信任された」と胸張って、悪いことをやっても「国民が選んだんだ」と白紙委任されたようなムードです。思いついたことを思いついた人がトップダウンでやれてしまう。これって民主主義ではないですよ。しかも与党は「国民の付託を受けて俺たちはその数にのっとってやっているんだから、国民にも責任がある」という言い訳までたつ。みんな“良く生きよう”とは思っているでしょう。だって家族の前で恥ずかしくて言えないようなことをしたくない人が、大多数なんじゃないんですか?

室井 そうですよね。


 安倍首相は笑顔の裏で、お友だちや軍事産業が得する仕組みづくり

松尾 性善説か性悪説か、そんな両極端ではないと思うけど、世の中の人は平和で優しく生きていたいって思っているはずです。だから、安倍さんのファンも「安倍総理ってこんなに優しい」という証明として、広島の被爆者の人と抱き合っているような写真とか、子どもをあやしているような写真とかを、ありがたがって見ている。今年の「桜を見る会」での様子が首相官邸のHPにアップされていたけど、動画ではやたらと子どもたちとにこにこ笑っている安倍さんの姿が映っていた。でも、その笑顔の影で、ものごとを隠したりすり替えたり、証拠文書を廃棄したり、隠れたところで身内やお友だちだけが得をするよう仕組みをつくる。社会の仕組みの一番大事なところを司っている人たちが、です。そしてその先には、もっと大きな企業や軍事産業などに関わっている人たちが儲かるような世の中の仕組みにしていこう。そんな悪い野望があると思うんです。そこを見極めていかないとね。

室井 でも、安倍さんはじめ、いまの政府要人たちは尊敬できない。たとえば、このまえ強行成立させたカジノだって人の不幸で成り立つような仕事でしょう?

松尾 カジノというのは、必ず胴元が儲かるようにできているからね。だから参加した人は、おしなべて言うと、必ず損はするけど、それをエンターテインメントととるなら、それはテーマパークに遊びに行くときの入場料を払うのとどこが違うのかと言われる。けれど、一部の人がバカ負けするわけです。そのためか知らないけど、金貸しができる法律が盛り込まれているでしょう。借金しなきゃ博打できないような人に、金を貸すシステムをそこに盛り込むっていうのは、ちょっと江戸時代ですか? っていうかね。これはいいのかと。

室井 しかも、嘘だったじゃないですか。外貨をいっぱい呼び込むって言ってたけど、実際は客の7?8割が日本人という予測だとわかった。あと、イスラエルと武器共同開発をするって言い出してもいる。武器は人を殺すためのものだから、それでちょっと儲けたからといって、まったく尊敬できないって思っちゃうんです。

松尾 死にそうな子どもたちを助けるための金と、人をたくさん殺す武器の値段が、どう考えても釣り合わないくらいの使われ方をしている。戦闘機一つ買うお金と、苦しい、ギリギリのところで生きている人たちに手を差し伸べるってことは、桁が違うんです。その辺りのことを視覚化してほしいなと思いますよね。

室井 その通り! 松尾さんって、ホント、アタシの言いたいことを全部わかりやすく解説してくれる。スッキリする! 

(後編に続く)

***************

松尾貴史(まつお・たかし)
1960年兵庫県神戸市出身。大阪芸術大学卒業後デビューし、テレビ、ラジオ、映画、舞台、執筆、イラストなど多彩に活躍。現在各地で巡回公演中の、権力にすり寄る記者クラブを題材にした舞台「ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ」(二兎社)に出演中。毎日新聞毎週日曜日の連載コラム「松尾貴史のちょっと違和感」での知的で鋭い政権批判やメディア批評は毎回大きな注目を集めている、著書に『東京くねくね』(東京新聞出版局)など。

室井佑月(むろい・ゆづき) 作家、1970年生まれ。レースクイーン、銀座クラブホステスなどを経て1997年作家デビューし、その後テレビコメンテーターとしても活躍。現在『ひるおび!』『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS)、『あさイチ』(NHK)などに出演中。「週刊朝日」「女性自身」「琉球新報」などにコラム連載を持つ。
*****




変わる米国の覇権体制

2018-08-03 | いろいろ

賀茂川耕助氏の「耕助のブログ」より

*****
変わる米国の覇権体制

 昨年イタリアで開かれたG7首脳会議では、トランプ大統領が「米国第一主義」に基づく強硬な保護主義の主張を繰り返したが、今年のG7首脳会議でも、通商政策を巡り米国と6カ国の意見対立が解消されず、首脳宣言は採択されたものの足並みのそろわないG7の姿を露呈するものとなった。

 G7は元々米国が米国の覇権のために構築したものである。しかし今年の会議で目立ったのは孤立する米国と参加国首脳陣の混乱だった。しかしトランプ氏やG7首脳がどんなに騒いでも、世界経済の中心が中国を含むユーラシアに移りつつあるという現実は変わらない。

 第2次世界大戦から70年間、米国は歴史上かつて世界が見たことのなかった地位を築き、敗戦国の日本はあらゆる面で米国に従った。グローバルに見て米軍基地のある国に限らず、経済でも文化面でも米国の影響は世界のほとんどの国に及び、これほどの影響力を米国が持ったのはGDPの大きさだけでなく、映画、音楽、テレビなどの力も大きいと言える。

 一国が世界をこのように独占することは健全ではないが、この米国の覇権が永遠に続くこともない。世界で最も裕福な国でありながら米国には4千万人以上の国民が貧困の中で暮らしている。大企業や富裕層は払うべき税金を払わず資産を海外に移し、政府は福祉を削減して軍事費を膨張させ、一般国民は小さな犯罪で刑務所行きだが、金融投機家が市場を揺るがす大きな詐欺を働いても、優雅に退職して豪邸での暮らしが待っている。

 議会、ウォール街、連邦準備銀行、軍産複合体、マスメディアなど、米国の一部のエリートたちだけがもうかるシステムを70年にわたり作ってきたからこそ、一般の米国民は2016年の選挙でトランプ大統領を選んだのだろう。

 国外からの大きな変化は中国とロシアの台頭である。西側G7がカナダに集まった日、中国山東省青島では中国とロシアが主導し、中央アジア4カ国、インドとパキスタンの計8カ国が加盟する上海協力機構(SCO)の首脳会議が開かれ、中国とロシアを中心に参加国で協力して欧米諸国と対抗していく意図が再確認された。その前日には中国の習主席とロシアのプーチン大統領が北京で会談し、中露の関係強化に関する共同声明も発表している。

 米国の覇権を可能にした基軸通貨としての米ドルの地位は、中国人民元の基軸通貨化によりすでに揺らいでいる。つまり70年続いた米国の覇権体制が今、大きく変わりつつあるのだ。軍事大国ではあったが国民の生活や経済をないがしろにしたため国家が崩壊したソ連と同じ経過を米国がすぐにたどることはないだろうが、今後数年かけて、世界における 影響力は小さくなっていくだろう。

 安倍首相は相変わらず米国の後を追いかけているようだが、今年のG7とSCOの首脳会議、そしてトランプ大統領がG7にロシアを復帰させるべきと呼びかけたことなど、世界体制が変わりつつあることだけは間違いない。
*****




通常国会からのもやもやした不満は来年の参議院選挙に現れる  (抄)

2018-08-03 | いろいろ

ジャーナリスト田中良紹氏のヤフーニュースのコラムより

*****
通常国会からのもやもやした不満は来年の参議院選挙に現れる

 通常国会が閉幕して1週間が経った。この国会を国民はどう見たか。国会閉幕後に行われた最初の世論調査は安倍内閣にも与党にも厳しく、さらに看板だった働き方改革関連法にもカジノ法にも参議院の選挙制度改革にも反対の国民が多かった。

 安倍政権に最も近い立場の産経新聞とフジテレビの合同世論調査では、内閣支持率が前回調査より2.5ポイント下がって42.1%、不支持は1.7ポイント上がって47.3%と不支持が支持を5.2%上回った。

 政党支持率も自民党が前回より2.4ポイント減の37.3%、公明党は0.6ポイント減の2.7%である。政党支持率が下がったのは延長後の国会で働き方改革関連法とカジノ法、それに参議院の選挙制度改革を強引に成立させたからとみられる。

 働き方改革を期待すると答えた者は43.5%、期待しないは48.2%で期待しないが上回っている。カジノで経済効果を期待する者は31.3%だが、期待しないは62%と2倍である。参議院の選挙制度になると賛成は26.5%しかおらず、反対は60.8%と倍以上になった。

 安倍政権を支持するフジ産経グループの調査がこの結果だから国民は通常国会に満足していない。しかも参議院の選挙制度に反対が多いのは来年の参議院選挙に影響する可能性がある。選挙戦になれば自民党の党利党略で成立した制度が批判され、それが自民党支持者の心理にマイナスの影響を与える。

 にもかかわらず国会閉幕直後に岸田政調会長は9月の自民党代表選挙に不出馬を表明した。安倍総理の3選を支持するというから「禅譲」狙いとみられる。もう一人の候補者になるはずの野田総務大臣にはスキャンダルが浮上した。その結果、総裁選挙は安倍総理対石破元幹事長の一騎打ちと見られ、早くも安倍総理の圧勝との見方が強まっている。

 安倍総理は「森友・加計疑惑」を抱える身だから権力を手放すことは絶対にできない。手放せば何が襲ってくるか分からないのが政治の世界の恐ろしさである。総理を辞めれば下手をすると議員辞職に追い込まれる可能性だってある。

 従って権力者が自ら辞める時には次の権力者に身の安全を保障してもらう必要がある。次の権力者に絶対忠誠を誓わせることが「禅譲」の条件なのだ。これまで「禅譲」があったのは中曽根総理が竹下登氏を後継指名したケースだが、中曽根氏は竹下氏の「古傷」に塩をすり込んで絶対忠誠を誓わせた。

 それに反対して自力で総裁選に勝つことを主張した金丸、小沢氏らと竹下氏の間に溝が生まれ、それが後に選挙制度改革を巡る対立になって自民党最大派閥を分裂させた。ともかく「禅譲」とは甘い話ではない。岸田氏の判断の背景に何があったのか分からないが相当にシビアな話があった可能性はある。

 安倍総理は総裁選挙で勝利してもそれで安心する訳にはいかない。来年の参議院選挙で敗北すれば総理を辞めざるを得なくなる。第一次政権で安倍総理は参議院選挙に大敗しても続投を表明して総理の座に居座った。その結果、ぶざまな退陣を演ずることになった経験がある。過ちを繰り返すわけにはいかない。

 ・・・・・・。


*****




大飯原発を巡る司法の判断が波紋! 

2018-08-02 | いろいろ

より

*****
大飯原発を巡る司法の判断が波紋! 原発訴訟の"治外法権化"と日米原子力協定との関係は?

「原発の是非は司法の役割を超えている」。7月4日、そんな判決で運転差し止めを求める原告側の控訴を棄却した、大飯原発訴訟が注目されている。

なぜ裁判所は判断を投げ出したのか? 国の原発政策に対して主体的な判断を避けたいという、「司法側の隠れた意図」を指摘した前編記事に続き、先日、更新された日米原子力協定との関わりにも踏み込んで徹底検証した!



■ 脱原発できないのはアメリカのせい?

 今年、4年ぶりの見直しを受け、7月3日に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」でも、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけるなど、「脱原発」に向かう気配のない日本のエネルギー政策。

 そんななか、裁判所が日本の安全保障や日米関係と密接に絡み合う「日米安保条約」や「在日米軍基地」に関する司法判断を放棄するだけでなく、「原発」まで"治外法権化"しようとしているように見えるのはなぜなのか?

 そこにも、安保や基地と同じように、「アメリカの圧力」が存在するのだろうか?

 「結論から言えば『日本が原発を止められないのは、アメリカのせいだ』という言説は事実ではありません」

 と語るのは、シンクタンク「新外交イニシアティブ(ND)」の代表で、米軍基地問題や、使用済み核燃料の再処理など日米間の原子力協力について定めた「日米原子力協定」にも詳しい、弁護士の猿田佐世(さよ)氏だ。

 「ここ数年、日本が原発を止められないのは『アメリカがそれを許さないから』とか、『日米原子力協定に縛られているせいだ』という声をよく耳にします。

 確かに、アメリカには一部にリチャード・アーミテージ元国務副長官のような『知日派』と呼ばれる人たちがいて、福島原発の事故直後から外交シンクタンクなどを通じて、『日本は原発を維持すべきだ』という趣旨のレポートを出したりしているのは事実です」(猿田氏)

 しかし、それは決して「アメリカの総意」ではないと猿田氏は言う。

 「われわれが『アメリカの圧力』と思い込んでいるものは、日米の原子力産業や、そこに関わりの深い政治家や官僚などで形成される一部の『日米原子力ムラ』が作り出している場合も多いことを、まず理解する必要があるでしょう。

 私はここ数年、日米原子力協定の問題でアメリカでのロビーイングを続けています。今年6月にも、日本の国会議員と共にワシントンでアメリカの議会関係者に会ってきましたが、意見交換を行なった人たちの多くは『日本のエネルギー政策は日本の国内問題であってアメリカが決めることではない』という、ごく当たり前の立場です。

 ところが日本では、『原発政策は日米関係に縛られている』とか、『原発は単なるエネルギー政策ではなく安保に関わる問題だから、アメリカの圧力を無視できないのだ』といった実体のないイメージが『原子力ムラ』の手によってつくられていて、日本の原発政策には限られた選択肢しかないと思い込んでいる人が少なくありません。

 仮に、そうした社会の雰囲気が原発問題の訴訟を扱う裁判官の判断にまで影響を与えているのだとしたら、由々しき問題だと思いますね」(猿田氏)


■ 増えるプルトニウムを懸念するアメリカ

さらに猿田氏が続ける。

 「日米原子力協定では、日本における使用済み核燃料の再処理を認めているわけですが、近頃では、むしろ日本のプルトニウム保有が増え続けている現状に関して強い懸念を抱いている人がアメリカ政府や議会、専門家の中に数多くいる。

 アメリカが原子力協定を締結している国の中で、個々のケースに関してアメリカの同意を求めることなく、使用済み核燃料の再処理を行なうことができる『包括的合意』を結んでいるのは、非核保有国では日本だけです。

 また、1988年に改定された現行の日米原子力協定でアメリカが包括的合意を認めたのは、日本が使用済み核燃料の再処理によって生まれるプルトニウムを高速増殖炉などで燃料として消費する『核燃料サイクル』の存在が前提でした」

 しかし、現実には高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉が決まり、核燃料サイクル計画は事実上破綻。そんななか、日本が国内外に保有する再処理後のプルトニウムは約47t(原爆約6000発分)に及んでいる。

 「それに青森県六ヶ所村で建設中の再処理工場が稼働すれば、さらに年間8tにも及ぶプルトニウムが生み出されることになります。増え続ける日本のプルトニウムはアメリカにとって『核不拡散』の立場からも、大きな懸念材料なのです。

 日本政府もようやく第5次エネルギー基本計画で、『プルトニウムの削減』と打ち出しましたが、その具体的な道筋はまったく見えていません」(猿田氏)

 ちなみに、現行の日米原子力協定は7月17日に30年目の満期を迎えて、自動更新された。今後はどちらか一方が6ヵ月前に告知すれば協定は終了する。

 だが、この協定により認められた使用済み核燃料の再処理を続けたいと強く望んでいるのはアメリカではなく、すでに破綻状態にある「核燃料サイクル」に今も固執し続ける日本政府のようだ。

 あの、3・11の悲劇を経験した日本人が、自国のエネルギー政策を自分で選択するのは当然のこと。そのためにも「アメリカの圧力」という、実体のない「オバケ」を口実に進む、日本の原子力政策の既成事実化、聖域化をこれ以上許してはならない。
*****





財務省は不起訴、文科省は一網打尽 検察に対する疑念の目

2018-08-01 | いろいろ

より

*****
財務省は不起訴、文科省は一網打尽 検察に対する疑念の目

 珍しく、検察がやる気を見せている。

 文科省の前局長が、支援事業で東京医科大に便宜を図る見返りに、自分の息子を不正に合格させた罪で逮捕・起訴されたのに続き、またしても文科省幹部が収賄容疑で逮捕された。

 新たに逮捕されたのは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に出向していた前国際統括官の川端和明容疑者だ。贈賄容疑で逮捕された医療コンサルタント会社元役員の谷口浩司容疑者から、飲食店や高級クラブなどで複数回にわたり計約140万円相当の接待を受けた疑いが持たれている。

 もちろん、職務権限を悪用した裏口入学なんて論外だし、便宜の見返りに何度も接待を受けていたのなら言語道断。逮捕・起訴は当然なのだが、どうもモヤモヤした気分が広がる。

 公文書改ざんが明らかになった森友学園問題では、財務省の担当者らが大阪地検特捜部の捜査対象になったが、改ざんを主導したとされる佐川前国税庁長官はじめ、当時の理財局幹部ら38人全員が不起訴処分になっている。これで森友問題は「もう終わったこと」とばかりに麻生財務相は居座り、省内で処分対象になった幹部がこの夏の人事で昇格するありさまだ。

 公文書改ざん事件では死者も出ている。汚職は金額の多寡で測るものではないが、文科省幹部の計140万円の収賄というのも、特捜事件としてはケチくさい。贈収賄の中身もハッキリしない。

 民主主義国家の根幹である公文書を改ざんし、1年以上にわたって国会と国民をたばかってきた財務省は無罪放免、文科省が何かやらかしたら一網打尽というのでは、あまりにバランスを欠くのではないか。

■ 安倍首相と加計理事長の関係とそっくり

 「たしかに、国民は腑に落ちないでしょう。財務省はあれだけの事態を引き起こしながら、国有地をタダ同然で売却した背任でも決裁文書を改ざんした虚偽有印公文書作成などでも誰もお咎めなしで、文科省の幹部はいきなり逮捕された。特捜部が贈収賄を摘発するのは当然ですが、飲食接待の賄賂認定は線引きが微妙で難しいところもあります。また、この手の受託収賄で気をつけなければならないのは、検察からのリーク情報で事件が既成事実化される流れがあることです。厚労官僚だった村木厚子さんの冤罪事件を教訓にする必要があります」(弁護士の小口幸人氏)

 実際、特捜部の調べに対し、川端容疑者は「便宜を図っていない」と否認。谷口容疑者も「飲食接待はしたが、友人関係であって賄賂ではない」「相手が払ったこともある」と容疑を否認しているという。

 なんだかこれ、どこかで聞いたようなセリフだ。安倍首相も、加計学園の獣医学部新設に関して供応を受け、便宜を図った可能性を国会で追及されると、「友人でありますから、ゴルフもするし食事もする」「先方が払うこともある」などと答弁していた。

 今治市が獣医学部新設を提案して以降、首相動静に載っているだけでも、安倍は加計理事長と6回会食を重ね、4回ゴルフを一緒にしている。利害関係者だと分かっていながら、供応を受けていたとしたら、文科省の汚職事件より悪質だ。しかも、動いた金額はケタ違いなのである。

 文科省の汚職事件に関して、菅官房長官は記者会見で「教育行政に対する信頼を、根幹から揺るがしかねない極めて重要な問題」と指摘していた。前局長の子の不正入学と引き換えに、東京医科大が支援事業で受けた3500万円の助成金の返還を求めるかについても、「その点を含めて必要かつ徹底した対策を講じたい」と言っていたが、それなら、加計学園の獣医学部はどうなのか。


 官邸に歯向かうと見せしめに検察が動く暗黒政治

 国家戦略特区制度を利用した獣医学部の新設にあたり、加計学園は愛媛県と今治市から100億円近い補助金を受けるが、「実際にはなかった理事長と首相との面談があったかのように虚偽の事実を自治体に伝えた」と重大な背信行為を認めている。嘘をついて巨額の補助金をせしめても、首相とオトモダチなら不問に付されるのか。

 「森友問題では改ざんに関わった財務官僚が全員、不起訴になりましたが、加計問題では検察が動く気配すらない。安倍夫妻や仲間たち、体を張って首相を守った官僚らが関わる疑惑は見逃されると誰もが感じる状況になっています。特に文科省は、加計学園の獣医学部新設に抵抗したり、前川前次官が『総理の意向で行政が歪められた』と告発するなどして、官邸から目をつけられたために、狙い撃ちされているように見えてしまう。文科省の汚職と、モリカケのどちらが巨悪なのか。検察も行政組織の一部なのに、恣意的な捜査を行っていると国民に思われたら、行政の公平性・公正性を大きく損なうことになる。行政の信頼を根底から揺るがしているのは、検察組織と官邸です」(政治学者・五十嵐仁氏)

 毎日新聞が28~29日に実施した全国世論調査でも、学校法人「森友学園」と「加計学園」を巡る安倍や政府のこれまでの説明に「納得していない」と答えた人は75%に上った。モリカケで安倍に「責任はある」が61%で、通常国会が閉会しても国民の疑念はまったく払拭されていない。こんな疑惑まみれの人物が総裁選で3選されるようでは、政治不信は高まるばかりだ。

 御用新聞は、やたらと文科省汚職を煽り、野党議員の関与をほのめかしているが、ハッキリ言って、今の野党議員に行政を歪めるほどの力はない。“首相案件”とは比べるべくもないのだ。

■ 正義を捨てた検察もコントロール下

 28日の東京新聞に、獣医学部新設で加計学園と競合した京都産業大の大槻公一元教授(3月に退職)の生々しい証言が掲載されていた。

<なぜ外されたのか分からなかった。学園の加計孝太郎理事長と安倍首相が旧友なのは獣医師界でよく知られていたが、友達だけ面倒見るとは夢にも思っていなかった>
<京産大は首相案件じゃなかったから外されたんですね。ようやく符合した。国がえこひいきしていたとすれば、あってはならないことだ> 

 16年1月に京産大が内閣府で特区を取り仕切っていた藤原豊地方創生推進室次長(当時)に特区申請の相談をした際、「今ごろ持ってくるなんて遅い」と批判されたという。愛媛県の文書によると、藤原氏は加計学園や県の幹部には「総理官邸から聞いている。かなりチャンスがあると思ってよい」と伝え、申請書類に何を書けばよいかアドバイスまでしていた。

 またひとつ明らかになった「加計ありき」の証言。立場を利用し、ここまで露骨に友人への便宜を図った権力者に、なぜ検察は切り込もうとしないのか。

 「独裁政治と汚職・腐敗は切っても切れないものです。森友問題に関して共産党が入手した文書には、『官邸も早くということで、法務省に何度も巻きを入れている』という文言があり、法務省とやりとりしていたことがうかがえる。政権の長期化で、検察組織も官邸のコントロール下に入り、首相周辺の意を酌んで動いているという疑念を国民は抱くようになっている。だから、文科省汚職事件で幹部が逮捕されても、拍手喝采というムードにならないのでしょう。このまま文科官僚だけが次々と摘発されるような事態になれば、ますます安倍政権と検察に疑惑のまなざしが向けられるようになるのではないか。やりやすいところだけ切り込んで、首相周辺の疑惑に頬かむりでは、検察の自殺行為です」(小口幸人氏=前出)

 官邸に歯向かうと、見せしめのように報復を受けると思えば、官僚組織はますます萎縮し、忖度して動くようになる。全体の奉仕者であるべき官僚が安倍の下僕となり、検察も正義を捨てて官邸のゲシュタポと化す。そんな国に未来はない。「独裁政治と汚職・腐敗は切っても切れないものです。森友問題に関して共産党が入手した文書には、『官邸も早くということで、法務省に何度も巻きを入れている』という文言があり、法務省とやりとりしていたことがうかがえる。政権の長期化で、検察組織も官邸のコントロール下に入り、首相周辺の意を酌んで動いているという疑念を国民は抱くようになっている。だから、文科省汚職事件で幹部が逮捕されても、拍手喝采というムードにならないのでしょう。このまま文科官僚だけが次々と摘発されるような事態になれば、ますます安倍政権と検察に疑惑のまなざしが向けられるようになるのではないか。やりやすいところだけ切り込んで、首相周辺の疑惑に頬かむりでは、検察の自殺行為です」(小口幸人氏=前出)
*****




日朝関係で衛藤征士郎氏「安倍政権も北朝鮮と直接対話を」

2018-08-01 | いろいろ

より

*****
日朝関係で衛藤征士郎氏「安倍政権も北朝鮮と直接対話を」

 歴史的な米朝首脳会談の実現を受け、国会では超党派の日朝国交正常化推進議員連盟が10年ぶりに再始動した。政府や国会には安易な対話路線にクギを刺す意見もあるが、議連は、国交正常化の議論を先にテーブルに乗せた方が、拉致問題も早く解決できる、という考えのようだ。日朝国交正常化推進議員連盟会長の衛藤征士郎氏(77)に詳しく聞いた。

■ 拉致問題は人命が最優先

  ――10年ぶりに議連が動き出しました。

 政府間外交、議員外交、民間外交とあるものの、外交は、まずは政府の専管事項ですので、政府の懸命な努力を我々としてはこれまで見守ってきました。しかし、なかなか結果が出ない。拉致というのは、人命の問題であり、人権の問題です。何としても早く解決して差し上げねばならない。そういう思いをずっと持ち続けてきました。

  ――確かに、小泉訪朝によって拉致被害者5人が帰国してから、ずいぶん経ちました。

 議連には、拉致問題は、国家の誇りや威厳といったものを超越した形で、人命と人権を最優先して解決しなければならないという強い意思があります。そんな中、激しく対立していた米朝関係が和解の方向に転じました。和解のメッセージが国際社会に対し劇的に発信されたのが、6月12日のシンガポールでの米朝会談でした。そして、その前段の4月27日の板門店会談。北朝鮮の金正恩委員長と韓国の文在寅大統領の会談において、金正恩委員長は「日本といつでも対話する用意がある」と明言したわけですよ。いよいよ北が国際政治に直接関与する機運が出てきたのだと思う。この機会をしっかり捉えて対応しなければならないと思ったのです。

■ 米朝の結果にかかわらず日本は主体的に

  ――この激動の時に、日本が何をするかが問われていると?

 そうです。国権の最高機関である国会の責務として、政府に対して速やかな北朝鮮との直接対話を要請する必要があると思うんですね。直接会談の機は熟した。このチャンスに「日朝の首脳会談が実現するよう最善を尽くす」ということを、国会として内外に意思表示する。そうすれば、北朝鮮も「日本の国会が国交正常化に向けて一歩踏み出した」と受け止めるだろうと考えています。

  ――国交正常化というメッセージ、ですか。

 日朝間には平壌宣言がある。この宣言に書かれている文言は、まさに国交正常化の基準なんです。これにのっとって、履行する責務がある。しかし、不幸なことに、両国政府の行き違いがあって、双方がそれぞれの立場を主張して、成果のないまま今日まできた。北朝鮮は「平壌宣言を守らないのは日本だ」と言い、日本は「冗談じゃない。ミサイルを撃ち込んだり、核開発をするから、あなたたちが宣言に違反しているんじゃないか」と反論し、お互いに言い募っているだけで歩み寄りが全くない。このままの状態で誰が犠牲になるのかといえば、拉致被害者やその家族ですよ。本当に申し訳ない。拉致されてからもう40年も経ってしまいました。

  ――政府は「拉致問題の解決なくして国交正常化はない」と言ってきましたが……。

 極論を言えば、それで40年経ってしまったんです。「拉致問題の解決なくして国交正常化はない」という道だけではなく、別の選択肢として、もっと大きな交渉のテーブルを、むしろ日本が主導して、主体的に作るべきではないですか。拉致問題だけを小さなテーブルで解決すると言ってきましたが、もっと大きなテーブルに拉致も核もミサイル問題も乗せる。平壌宣言に書いてある日朝間の不幸な過去を清算するための懸案事項も乗せる。さらには、無償資金協力や低金利の長期借款、国際機関を通じた人道主義的支援など、平壌宣言に書いてある国交正常化後の具体的な経済協力もテーブルに乗せる。その中で、拉致問題の解決の確かな糸口を見いだすということだと思います。遺骨収集の問題や特定失踪者の問題も、大きなテーブルならいろいろ話ができるのではないでしょうか。


 今こそアメとムチの使い分けを

  ――拉致問題が先だと言い続けるだけでは物事は動かない。

 5月に米国のポンぺオ国務長官と会った北朝鮮の金英哲副委員長は、日本人拉致問題は解決済みと明言しているんです。このままでは今の状態がずっと続いてしまいかねない。拉致被害者だった曽我ひとみさんが、7月5日に安倍首相に早期の日朝首脳会談の実現を要請しました。そこで首相は「日本が主体的に対応することが求められている」と発言しています。まず拉致問題、ではなく、まずは直接対話です。そして、双方の交渉の窓口を決め、文書に書き留める。米朝は6月12日の会談で、それをやりました。そこから始まるんですよ。日本も同じことをやったらいい。

  ――2度の小泉訪朝以降、この間、もう少し拉致問題を前に進めることはできなかったのか、と残念です。

 何らかの前進的な話し合いや成果を出せなかったのだろうか、ということは誰しもが思っていることだと思います。米国は北朝鮮と国交正常化をしていないのに、ポンぺオ国務長官が3度も北朝鮮を訪問した。日本も同じ条件なのに、それができない。問題はここですね。だからこそ、風穴をあけていかないといけないのです。

  ――どうも日本は、圧力一辺倒が過ぎたのではないでしょうか。米国もそうですが、世界の外交では、表では強く出ながらも、水面下では交渉している。

 そう。アメとムチ、北風と太陽ですね。制裁と対話をうまく駆使して、使い分ける。今こそ、それが大事なんです。日本はこの十数年、ムチだけできた。制裁、それも最高の制裁と最大の圧力。そうすれば北朝鮮は必ず「参った」と降参するだろう、向こうから国交正常化のテーブルに着いてくるだろうというシナリオだったのです。しかし、どっこい北朝鮮は、そんなシナリオに乗ろうとする姿をみじんも見せない。どうしてかというと、密かに隣国の中国が北を支援するし、ロシアもエールを送っている。そうした中で、日本が言うような制裁は実質的には効いていないのです。

■ まずは直接対話を

  ――議連としてはこの後、どう活動していきますか。

 国会は北朝鮮に対して、国連安保理に基づく制裁措置の完全履行を求める決議をしています。米朝が新しい動きに踏み出した今、新しい国会の提言なり決議をする努力をしたい。内容は先ほど申し上げたように、「拉致、核、ミサイルなどの諸問題を包括的に解決するため、日朝両首脳の直接対話と直接会談が切に望まれている今、政府に速やかな日朝首脳の直接対話を行うよう要請する」というものになると思います。もちろん単に政府に要請するだけでなく、その実現に向け、我々国会も最善を尽くすということを表明します。

  ――議連では、議員外交もスタートさせるとしています。

 今は制裁決議をしているので、議員が北朝鮮には行けない。しかし、新たな決議をすれば、各議員が北とのパイプを模索しながら、いろいろ動き出しますよ。もちろん、それは日朝首脳の直接対話に貢献する行動でなければいけません。

  ――ただ、米朝の動きは先行きが見通せない部分もあります。日朝については米朝の動きを見ていくべきなのか、それとも日朝は日朝でやっていくべきなのか?

 米朝会談の結果が出なければ日朝会談はやらないという、そういうアプローチではないと私は確信しています。米国は自ら交渉して拉致された3人を取り返したじゃないですか。日本も同じことですよ。主体性を持ってやって欲しい。

  ――米国や韓国頼みではダメだと。

 安倍政権は制裁路線で国際社会に対し強いリーダーシップを取ってきた。そういう経緯があるので、こちらから先に手を差し伸べたりしづらいと思う。しかし、国の誇りやメンツが少々傷ついてもいいじゃないですか。拉致問題の完全解決のために、日朝首脳会談のテーブルに着いてもらいたい。


(聞き手=小塚かおる/日刊ゲンダイ)

 ▽えとう・せいしろう 自民党衆議院議員(大分2区・12期)。1941年大分県出身。66年早大政経学部卒業。71年全国最年少(29歳)で玖珠町長。73年早大大学院政治学研究科修了(国際政治)。77年参議院議員、83年衆議院議員に初当選。農林水産政務次官、外務副大臣、防衛庁長官、衆議院副議長などを歴任。

衛藤征士郎氏の【インタビュー動画】を公開中です。
*****







杉田水脈問題はLGBT差別だけではない!

2018-07-31 | いろいろ

より

*****
杉田水脈問題はLGBT差別だけではない! 背景にある安倍首相の復古的国家観、女性蔑視、歴史修正主義

 「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がない」なる雑誌での発言で批判が集中している、自民党の杉田水脈衆院議員。今回はめずらしくテレビなどでも取り上げられており、リベラルなスタンスの人に限らない、様々な層の論客や文化人も批判の声をあげている。

 しかし、今回の問題の本質はLGBTへの差別扇動に限ったことではない。そこにマイノリティ・弱者への差別思想が通底していることは言うまでもないが、このドス黒い思想の淵源には、間違いなく安倍自民党全体を覆う戦前的価値観への復古願望がある。

 そもそも杉田の差別発言は、いまに始まったことではない。

 たとえば杉田は、次世代の党時代の2014年、国会で「男女平等は、絶対に実現しえない反道徳の妄想です」と暴言を吐き、「週刊プレイボーイ」(集英社)でのインタビューでも日本に男女差別は「ない」と断言。また、2016年に「保育園落ちた日本死ね」ブログが話題になった際には、Twitterに〈「保育園落ちた」ということは「あなたよりも必要度の高い人がいた」というだけのこと。言い換えれば「あなたは必要度が低いので自分で何とかしなさい」ということなのです〉と投稿した。

 さらに、同年の産経新聞での連載では、〈旧ソ連崩壊後、弱体化したと思われていたコミンテルンは息を吹き返しつつあります〉として〈これまでも、夫婦別姓、ジェンダーフリー、LGBT支援-などの考えを広め、日本の一番コアな部分である「家族」を崩壊させようと仕掛けてきました。今回の保育所問題もその一環ではないでしょうか〉などという、トンデモとしか言いようがないコミンテルン陰謀論を主張していた。

 杉田の女性蔑視は明らかだが、最近も、ジャーナリスト・山口敬之氏からの準強姦被害を訴えている伊藤詩織さんに対し、絶句するような発言をしている。

 今年6月、BBCが公開した詩織さんの事件を中心にしたドキュメンタリーに出演した杉田は、「彼女の場合はあきらかに、女としても落ち度がありますよね」「社会に生きていたら(男性からのセクハラは)山ほどありますよ」「伊藤詩織さんが記者会見を行なって、ああいう嘘の主張をしたがためにですね、山口さんや山口さんの家族には、死ねとかいうような誹謗中傷のメールとか電話とかが殺到したわけですよ。だから私はこういうのは男性側のほうが本当にひどい被害を被っているんじゃないかなというふうに思っています」などと言い放ったのである。

 つまり、準強姦を訴える女性に対し、「女として落ち度がある」「社会に生きていたら山ほどある」などと言って責めたてながら、「こういうのは男性側のほうが本当にひどい被害を被っている」などと主張したのだ。

 おそらく、ここまで読んだ読者は、杉田水脈なる政治家がなぜこれほどまでおぞましい女性・性的マイノリティへの誹謗中傷や差別扇動を繰り返すのか、理解に苦しんでいることだろう。しかし、杉田議員のファナティックな主張をほぐすと、そこに一本のラインが存在することに気がつく。

 それは、戦前の家父長的家制度の復活に対する、並ならぬシンパシーだ。


 杉田水脈のLGBT差別・女性蔑視発言は、すべて安倍首相のコピー

 周知の通り、明治時代につくられた家制度は、男性戸主に家庭内での大きな支配権限を付与し、女性や子ども、また性的マイノリティに対する差別を制度化したが、これは“すべては天皇の赤子たる臣民である”という天皇を頂点にした「家族国家」を形成するためものだった。国家神道の強制との両輪で進められたこの疑似家族的国家観は、国民を一丸とした戦争へと動員し、未曾有の犠牲者を出しながら、この国を敗戦へと導いた。

 家制度は戦後、憲法24条のもとで廃止された。しかしその後も、こうした戦前的価値観は自民党右派を中心に脈々と生き続け、しかもここ十数年で安倍首相とその周辺、とくに日本会議による復古的バックラッシュが一気にエスカレートしている。

 たとえば2007年、日本会議国会議員懇談会による「新憲法制定促進委員会準備会」が発表した「新憲法大綱案」では、現行の憲法24条が否定され、〈祖先を敬い、夫婦・親子・兄弟が助け合って幸福な家庭をつくり、これを子孫に継承していくという、わが国古来の美風としての家族の価値は、これを国家による保護・支援の対象とすべきことを明記する〉と謳われている。

 古屋圭司や萩生田光一、稲田朋美、加藤勝信といった安倍晋三シンパによってつくられたこの大綱案は、安倍首相の意向がもっとも如実に反映されているとみられており、そこでは戦前・戦中への憧憬がダダ漏れになっている。介護や介助、生活の困窮などを「家族」というユニットに押し付けているのはもちろん、ここで〈わが国古来の美風としての家族〉とされているものは、明治の家父長的家制度の元で構築された「家族観」にほかならない。裏を返せば、その「家族観」にそぐわない人々は「国家による保護・支援の対象」から除外すると宣言しているのだ。

 また、自民党が2012年に発表した憲法改正草案では、現行憲法24条に〈家族は、社会の基礎的単位として、尊重される〉〈家族は、互いに助け合わなければならない〉という条文が加えられている。安倍自身、党内議論の初期から「わが国がやるべきことは別姓導入でなく家族制度の立て直しだ」と語っていたとされるが(朝日新聞出版「AERA」06年11月13日号)、その安倍が“夫婦別姓は家族を解体する”として批判した雑誌での発言を振り返ってみる。

「夫婦別姓は家族の解体を意味します。家族の解体が最終目標であって、家族から解放されなければ人間として自由になれないという、左翼的かつ共産主義のドグマ(教義)。これは日教組が教育現場で実行していることです」(ワック「WiLL」2010年7月号)

 杉田水脈による数々の女性蔑視・LGBTヘイトの発言が、その内容や論理構造にいたるまで、こうした安倍晋三を中心とする極右・自民党ががなりたててきた主張のコピーであることは明らかだろう。


 杉田水脈LGBT差別発言と安倍自民党の歴史修正主義は同根!

 繰り返すが、戦後に否定された家制度が代表する男性中心主義的かつ国家主義的な家族観にとっては、「性役割」なる虚妄を強く固定する必要がある。ゆえに、その復古的家族観にそぐわない人々の排除を扇動するのだ。

 実は、その大日本帝国へ憧憬は、杉田が血道をあげている慰安婦問題などの戦中日本の戦争犯罪の否定(歴史修正主義)にも通じるものだ。たとえば杉田は、河添恵子との対談本『「歴史戦」はオンナの闘い』(PHP研究所)のなかで、慰安婦像について「慰安婦像を何個立ててもそこが爆発されるとなったら、もうそれ以上、建てようと思わない。立つたびに一つひとつ爆破すればいい」などと言い“爆破テロ”まで煽っている。

 そんな杉田を安倍首相が自民党へスカウトした事実も含め、とても正気の沙汰とは思えないが、つまるところ、杉田や安倍のようなリビジョニストから見れば、とりわけ慰安婦問題は、自分たちがかき消したい帝国主義の国家犯罪を明るみにするものであり、かつ、抑圧すべき「女性の権利」の改善運動と結びついたものとして攻撃対象となっているのである。

 すべては、民主主義に漸進する社会を、戦前・戦中日本のような支配構造に立ち戻らせようとする思想の延長線上にある。
 
 LGBTヘイトは、ナチスの優生思想を彷彿とさせる極めて悪質なものであり、いささかたりとも容認できるものではない。もちろん、杉田発言の荒唐無稽さには唖然とする。議員辞職が当然だろう。だが、同時にこの問題を、杉田水脈というどうかしているとしか思えない政治家の暴言とみなし、杉田を批判するだけでは不十分なのだ。

 杉田への批判の大きさを見て、稲田朋美やバリバリ安倍応援団である有本香や上念司らも「自分はちがう」とばかりに杉田に批判的な発言をしているが、彼らも杉田とまったくの同根であることを忘れてはならない。彼らは表面的にLGBT差別発言だけを批判しているが、自分たちが日頃喧伝している歴史修正主義や中韓差別、反民主主義思想はすべて今回の杉田発言と同一線上にあるものだ。

 言っておくが、杉田の「LGBTに税金を使うことに賛同は得られない。生産性がない」という発言は、単なるいち跳ねっ返りの暴言などではなく、現実に安倍首相が推し進めてきた政治にほかならない。「在日に税金を使うことに賛同は得られない」「生活保護に税金を使うことに賛同は得られない」「老人に税金を使うことに賛同は得られない」「病人に税金を使うことに賛同は得られない」……そうやって実際にすでに多くのマイノリティや社会的弱者が切り捨てられてきた。次に排除されるのは、LGBTのみでなく、マイノリティのみでなく、すべての個人の権利と自由だ。

 繰り返すが杉田の差別発言は、まさしく安倍首相の政治のもとで発現した、反民主主義、反人権のグロテスクな国民支配欲求そのものなのである。背景にある安倍政権の復古的国家観、女性蔑視や歴史修正主義との関連に目を向け追及しないかぎり、この流れを止めることはできないだろう。

(編集部)
*****




オウム岡崎死刑囚は27日Xデ―予言

2018-07-30 | いろいろ

より

*****
オウム岡崎死刑囚は27日Xデ―予言「執行前は真っ青に…」 上川法相を自民党は選挙で優遇も

 29人の死者を出した松本・地下鉄両サリン事件などで死刑判決を受けた13人すべての死刑が執行され、多くの謎を残したまま、オウム真理教事件は終焉した。

 教祖だった麻原彰晃(本名・松本智津夫)元死刑囚ら7人に続き、7月26日に執行されたのは、林(現姓・小池)泰男(60)、岡崎(現姓・宮前)一明(57)、横山真人(55)、豊田亨(50)、広瀬健一(54)、端本悟(51)ら6人。

 「執行が近いなというのは、わかっていたようでした」と話すのは、名古屋拘置所の関係者だ。

 名古屋拘置所では、岡崎死刑囚と横山死刑囚の死刑が執行された。

 「6日に死刑執行が麻原らの死刑がありましたよね。その後、ちょっと時間を置き、拘置所からそのことを2人には伝えました。それに、麻原らの死刑執行は拘置所内のニュースでも、聞いていてわかっていた。どちらも、来る時が来たなという感じで受け取っていたそうです。というのも、偶然に知った場合、発作的に自殺したりすることもあり得るので、こちらから伝えろというのが、法務省の判断だった。それ以降、自殺防止のために、自殺につながりそうなもの、例えばタオル、スプーンなどはすべて没収。必要に応じて、刑務官が渡して監視しながら、使わせていた。ボールペンなども、何があるかわからないので同じような対応をしていた。岡崎は朝、刑務官が独居房を訪れた瞬間に悟ったのか、真っ青な顔になった。ただ東京拘置所で執行されたある死刑囚のように腰を抜かして、立つことすらできなかったということはなく、連行時は落ち着いていた」(前出の名古屋拘置所関係者)

 岡崎死刑囚は支援者に死刑執行前の心境を綴って、手紙を送っていた。麻原元死刑囚らの執行について<まさか、7月末でなく七夕の前日とは愕いております>と書いていた。支援者の面会予定日を決まっていることに対して<それまで生存しているか否か?は、よく分かりませんが、今月末(7/27頃)が危ないので、来週の7/25(水)までには、最期の手紙としての、書くつもりでおります><毎月の如く月始めか月末が危険日です>

 その予感が的中したように、7月26日に執行された。岡崎死刑囚の亡骸に対面した、支援者はこう感想を述べている。<お顔は若い頃より痩せていて、穏やかに眠っているようでした><その人柄と、事件の残虐さのギャップがすごいなと時折感じておりました。どうしてあのような残虐な事件が、あのような穏やかな組織から起こったのか、ご本人は言葉にすることが難しいと表現している部分もありますが、もちろん非常に反省されていた。事件を風化させないように、遺されたものを社会にお役立てしたい>

 一方、わずか1か月で13人の死刑執行の指揮書にサインしたのは、上川陽子法相。

 2回法相を務めた上川法相は前回の在任時含め、計16人に対し、死刑を執行したことになる。

 法務省の関係者によれば、上川氏が法相に就任したときから、オウム真理教の死刑囚の執行のタイミングが模索されたいた。

 「刑事訴訟法上では、死刑判決確定後、法相が6カ月以内に執行を命じることになっている。だが、そういうケースは稀で、世界的に死刑廃止が叫ばれる中、日本もやむを得ずという方向性になっていたのは事実。もちろん、上川法相もそれを理解していた。だが、オウム真理教の事件の死刑確定者というのは、正直、法務省でというより、国の意向が左右する。国家の威信にかかわる天皇陛下のご退位、ご即位、東京五輪などが控える中で、法務省もそのあたりを勘案しながら、このタイミングになった」(法務省関係者)

 そんな上川法相に対して、自民党の幹部はこう話す。

 「上川さん、最初の7月6日の死刑執行後、残りの6人のサインについてはかなり躊躇したようですね。そりゃ、すごいプレッシャーの中、一度に7人の死刑執行を1人でサインしたんですよ。彼女はハーバード大学で学んだこともあって、国際感覚があり、死刑がいかに、世界では批判を浴びているか、よくわかっています。それを法務官僚が説得して残り6人も最後はサインさせた。記者会見後にちょっと顔を見たが、かなり厚化粧でした。やつれたのを隠すためだったんじゃないかな」

 上川法相は麻原元死刑囚ら7人の死刑前夜の5日夜、自民党党幹部が主催した「赤坂自民亭」なる親睦会に女将役で出席、安倍首相を囲み笑顔を見せていた写真がSNSで拡散され、バッシングを浴びた。自民党幹部がこう話す。

 「タイミングが悪くて申し訳なかった。自民党としても上川さんについてはキチンと処遇するでしょう。今後、彼女にはずっと一生、SPがつくようなことです。オウムですから何をやらかすかわからない。静岡が選挙区ですから、比例1位などにして安定的なポジションを保証してあげるべきだという声も出ています」(今西憲之)
*****




石破を蹴散らせば独裁 4選もありうる自民党の安倍支配

2018-07-29 | いろいろ

より

*****
石破を蹴散らせば独裁 4選もありうる自民党の安倍支配

「俺が出馬したとして、みんなは干されても本当にいいのか」

 主戦論を唱える派閥の若手を、岸田文雄政調会長はこう言って諭したという。

 岸田が9月の自民党総裁選への出馬断念を表明したことを受け、25日、新聞各紙がその背景を解説していたが、やはり、戦って敗れた後の「人事での報復」や「派閥ごと冷遇される恐れ」があったということだ。

 2015年の総裁選時も、同様の「安倍1強」による“恐怖支配”が自民党内を覆い、対抗馬が次々脱落、安倍首相が無投票再選したことを思い出す。

 あれから3年。自民党内は「物言えば唇寒し」がますます強まり、ヒラメ集団に健全な政策論争など望むべくもない。上から下まで北朝鮮のような“安倍マンセー”一色。安倍やその周辺は、総裁選なんてやる必要ない、ぐらいに思っているのだろう。いよいよおぞましい様相になってきた。

 政治評論家の野上忠興氏がこう言う。

 「安倍さんは今頃、『これで岸田は討ち取った。あとは石破。徹底的に叩きのめす』と思っていますよ。安倍さんには『敵か、味方か』という2択の思考しかありません。『自分に逆らう人間は敵であり、潰す』という考え方。2012年の総裁選で、安倍さんは地方票では石破さんに負けました。その意趣返しで、今度は圧勝し、石破さんが二度と総裁選に出られないよう息の根を止めたいと思っているのでしょう」

 自民党の総裁任期はもともと2期6年だった。長く続く権力は必ず腐敗する。2期限りとしたのは先人の知恵だったのだろうが、今の自民党にそんな良識はない。安倍の続投を実現させるため、3期9年にあっさり党則を変更してしまった。

■ ルールなんて守る必要はない

 集団的自衛権の行使を容認するため解釈改憲という違憲手法に手を染め、憲法にのっとった野党からの臨時国会開催請求を突っぱねた。ルールなんて守る必要はない。自分たちの都合のいいように変えればいい。それが安倍政権なのである。

 だから、官僚もそれに従い、それに染まる。表面化したのが、金融庁が野田聖子総務相に、朝日新聞からの情報公開請求について漏らしていた一件だ。

 情報公開制度の趣旨を逸脱する行為で、菅官房長官が「あってはならないことだ」と批判、金融庁は「望ましくない行為だった」と反省しているが、これは決してレアケースではない。

 実際、日刊ゲンダイが2014年に主要閣僚の政治資金に関して情報公開請求した際にも、官邸を通じて、閣僚の事務所に伝えられた疑いが濃厚なのだ(関連記事3ページ)。安倍政権では、情報公開請求の漏洩が常態化しているのではないのか。

 元経産官僚の古賀茂明氏がこう言う。

 「情報公開制度のルールを守って、請求があったことを大臣に教えなければ、大臣はメディアで報じられた時にその事実を初めて知ることになる。そうすると、後で大臣から『なぜ教えなかったのか』と叱られるリスクがあり、官僚はそれを避けるために、先回りして大臣の耳に情報を入れておこう、という行動を取る。官僚特有の保身なのですが、特に安倍政権になってそうした空気が霞が関全体に浸透し、恐怖感が強くなっているように思います。安倍政権には、ルールは守らなければならない、という当然の理屈が通用しないからです」

 安倍を守るためなら、国家の歴史そのものである決裁済みの公文書ですら改ざんするし、廃棄する。忖度官僚が重用されるから、ルールよりもアベ様。

 5年半の安倍政権で、これが当たり前の光景になってしまった。

 プーチン、エルドアン、習近平のような「終身皇帝」への願望

 この夏の霞が関人事でも論功行賞が目立ったという。

 「アベノミクス」の司令塔が内閣府から経産省の花形局長に出戻ったり、菅の評価の高い防衛官僚が事務次官に昇格したり。官邸の覚えめでたい官僚が出世している。

 一方で、地雷を踏んだら飛ばされる。

 加計学園問題で、愛媛県職員らと面談したことを「記憶にない」とウソをつき続け、「本件は首相案件」と発言したと文書に記録されていた元首相秘書官の柳瀬唯夫経済産業審議官。次官へ昇格とのウワサもあったが、結局、退任が決まった。

 あそこまで頑張って安倍を守っても、クビを切られる。国会で二度と答弁させられないようにということだろうが、こういう強権人事を見せつけられ、官僚はさらに萎縮する。

 安倍3選なら、この状態があと3年も続くのだ。霞が関は忖度ばかりになり、公文書はどんどん捨てられ、不都合な情報は次々隠蔽されていく。

 検察も、森友学園事件で刑事告発されていた佐川宣寿前理財局長ら38人を全員を不起訴にしたように、安倍政権の顔色をうかがって、マトモに動かず機能停止状態だ。

 ヒラメ議員の下、国会も官邸ペースで、働き方改革法やカジノ法などのように強行成立が日常化した。安倍はかつて「私が立法府の長」と答弁し、言い間違えとしていたが、そんなことはない。確信犯だ。もはや三権分立は消滅したかのようである。

■ 人材枯渇で空洞化した自民党

 今度の総裁選で石破を蹴散らし、あと3年も安倍1強が続けば、ポストや公認権を人質に自民党のヒラメ化も加速するだろう。

 「自民党の人材枯渇はひどい。空洞化してスカスカです。ヒラメ化は、総裁が公認権を握る小選挙区制という選挙制度が一因ではありますが、敵か味方に分類し、ライバルを早めに潰す安倍首相は、党内の人材を育成してこなかった。次の総裁候補を育てるという考えは全くない。罪つくりです」(野上忠興氏=前出)

 国民が名前と顔の一致する次世代のホープといえば、河野太郎外相と小泉進次郎衆院議員ぐらいか。だが、河野は閣僚になって党内の評判を落としているし、進次郎は3年後でもまだ40歳。大臣も党三役の経験もなく、いきなり首相はあり得ない。

 「私は、安倍さんの総裁4選もあるんじゃないかと思っています」

 前出の古賀茂明氏はそう言って、こう続ける。

 「安倍総裁の下で、もともと自民党の規定にはなかった総裁3選を可能にしたわけですから、4選だってルールを変更すればいいという話。参院選や改元など来年の一連のイベントを乗り切れば、安倍さんは4選を視野に入れてくるのではないか。ロシアのプーチン大統領、トルコのエルドアン大統領、中国の習近平国家主席は、任期を延長したり、権限を拡大したりして、長期政権を実現し、ますます強権を振るっています。安倍さんも同じように“終身皇帝”になりたいのですよ。トランプ大統領の子分で終わるのではなく、列強のリーダーの仲間に入る。それは戦後レジームからの脱却の一環にもなる。安倍さんはそんな願望を持ち続けているのだと思います」

 ルール変更なんて屁のカッパの安倍だ。3選後の求心力維持のためにも、4選だと言い出しかねない。だが、そんなことになったら、ただでさえ風前のともしびのこの国の民主主義は、間違いなく完全にお陀仏だ。ロシアやトルコや中国のような本物の独裁国家になってしまうだろう。その時に慌てても遅い。
*****




皆が声を上げられる社会は実現するのか?

2018-07-28 | いろいろ
より

*****
皆が声を上げられる社会は実現するのか?

二次被害も含めたセクハラ被害をなくすためにできること
望月衣塑子(東京新聞社会部記者)


 日本では、すぐに下火になったかとも思われた、#MeToo運動。しかし、福田淳一前財務省事務次官によるセクシュアル・ハラスメントを女性記者が告発、その後、福田氏の対応のまずさなどから抗議の声が上がった。一方で、新たなセクハラ事例が次々に表面化している。今、報道の現場はどのような状況なのか? 報道の現場に限らず被害をなくすにはどうすればいいのか? 被害者が声を上げるために必要なことなどを、東京新聞の望月衣塑子記者に聞いた。


女性ジャーナリストの敵は身内?

 2018年5月21日、大阪国際大学の谷口真由美准教授が代表を務める「メディアにおけるセクハラを考える会」が、メディアに携わる女性を対象に、セクハラ被害についてインターネットを通じて調査した結果を発表しました。その調査結果によると、セクハラの加害者として多いのは、国会議員ら政治関係が11%、警察・検察が12%、いちばん多いのが社内、いわば身内からのハラスメントで、40%という数字(東京新聞2018年5月22日朝刊)はちょっとショックでしたね。

 私自身は、社内でそうした被害に遭ったことはありません。ただし10歳以上先輩の女性記者たちに聞くと、入社当時「なんで女に警視庁や特捜(特別捜査部)回らせるんだ」とか「女に事件記者は無理だ」とかいう発言が平然と行われていたと聞きます。女性蔑視の時代だったんだなあと、ギャップを感じます。「考える会」の調査で社内の被害に遭ったという人は、そうした上の世代の割合が多いのではないでしょうか。

 1986年に施行された男女雇用機会均等法以降、東京新聞では女性記者の採用が徐々に増え、私が入社した2000年頃には新規採用者の約3割になっていました。最近は、入社試験の成績上位者は女性記者の割合が多いらしいのですが、様々なことが考慮された結果、男女半々ぐらいになると聞いています。人数が増えたことで、政治部や社会部に配属になる女性も増えています。

 しかし、現状、東京新聞では論説委員ポストにある女性は早川由紀美記者の一人だけで、部長クラスは一人もいません。それでも、ずっと男性が占めてきた政治部長というポストに、2015年にはフジテレビの渡邉奈都子さんが、2017年には、毎日新聞の佐藤千矢子さんや日本テレビの小栗泉さんが就いています。そうした目に見える変化も出てきているのです。

 部長職に女性がいることだけではなく、産休明けの私に武器輸出の取材を勧める男性上司がいるとか、社会部に出産後の女性記者が何人もいるなんて、先ほど話した先輩女性記者の時代には考えられなかったと思います。女性記者が増えたことだけが理由ではありませんが、東京新聞では、かつては紙面の中面でしか取り上げられてこなかった待機児童などの育児・教育の問題や女性の貧困など様々な問題が、今はトップ記事になるようになったことも、大きな変化だと思います。

 ただし社によっては、出産後、社会部に残ることを希望しても企画系の部署に異動になることが現実としてまだまだ多いです。地方の新聞社では、数の少ない女性記者を取り巻く社内環境は変わらず、活躍の場は限定されているとも聞きます。こうした女性差別的な環境下では、身内からのセクハラだけではなく、取材先の男性からのセクハラ、パワーハラスメントも起きやすいのではないかと思います。


伊藤詩織さんの存在が大きく影響

 つい最近、セクハラ被害に遭った元早稲田大学文学学術院の女子学生が、相手の大学教授を告発したことが話題になりました。彼女は「たとえ匿名で告発したとしても、個人攻撃など被害は何かしら起きるかもしれないという怖さはありました。でも、最近の#MeToo運動を見て、自分も声を上げてもいいのだと思い、決意しました」と「プレジデント オンライン」(2018年6月20日)のインタビューで答えています。

 このようにセクハラの被害者が声を上げるようになったことには、ジャーナリストの伊藤詩織さんの存在が大きく影響していると思います。私は、2017年5月、彼女が顔を出し実名でレイプ被害を公表した直後に会って、取材をし記事にしました。その後も何度か会っていますが、一人の勇気が世の中を変えていくのを実感しました。

 例えば、彼女が声を上げた直後には、人気ブロガーのはあちゅうさんや元厚生労働事務次官だった村木厚子さんなど著名な人たちも、封印していた自身の過去のセクハラ被害を告白していました。

 今年に入ってから、4月には福田淳一財務事務次官(当時)からの被害をテレビ朝日の女性記者が告発し、マスコミでも大きく取り上げられました。同じく4月には、官民ファンドの「クールジャパン機構」の役員に対して元派遣社員の女性が訴訟を起こし、その裁判の第1回口頭弁論で「被害者に寄り添っていない」と訴えました。同年5月、それまでのセクハラ疑惑に対し覚えがないと言っていた高橋都彦(くにひこ)狛江市長が、被害者4人が実名で抗議文を出したことから辞職表明に追い込まれました(6月4日に辞職)。6月に入ると、4日付で停職9カ月の懲戒処分を受けた外務省のロシア課長のセクハラ疑惑が、新聞や週刊誌で騒がれました。

 このように、続けざまに表面化したのには、やはり被害に遭った女性たちが詩織さんに触発されて「声を上げよう」という思いに至ったのだと思います。詩織さん自身の件については、なかなか日本のマスコミでは取り上げられていません。しかし、BBCやCNN、ニューヨークタイムズなど、海外では取り上げられていて、BBCは詩織さんのドキュメンタリー番組を制作、6月28日(現地時間)に放送しました。日本のマスメディアより海外のマスメディアの方が、詩織さんの事件を大きく、かつ詳細に報道し、日本社会の性犯罪被害者たちへの排他的な姿勢や、警察の性犯罪捜査の問題点を浮き彫りにしました。

 こうした番組の放送後、SNS上では多くの応援の声もありましたが、相変わらず信じられないようなバッシングもありました。ドキュメンタリーの中で自由民主党の杉田水脈(みお)衆議院議員が、ほかの議員らと詩織さんを揶揄(やゆ)するイラストを見て笑ったり、BBCからの取材に対して、女性として落ち度があったという趣旨の発言をしたりしているのを見たときは、開いた口が塞がりませんでした。

 生まれ育った日本では安心して暮らせない、メディアでもなかなか取り上げてもらえない。そんな詩織さんの状況は、見ていて切ないですし、本当に腹が立ちます。安心した居場所を求めて、彼女が活動の拠点をイギリスに移したのは、当然の成り行きだったのかもしれません。


問題解決のために立ち上がる女性たち

 福田氏のテレビ朝日の記者へのセクハラにも、同じ記者として怒りを感じました。許されない行為であることは明白です。

 さらに批判の的となったのが、財務省が謝罪しているのに当事者の福田氏はセクハラを否定し反省もしていないこと。そして麻生太郎財務大臣の「はめられた可能性は否定できない」、下村博文元文科大臣の「(福田氏は)はめられたと思う」「(被害者による録音は)ある意味で犯罪」というコメントでした。あまりのひどさに、4月18日、新聞労連が「『セクハラは人権侵害』財務省は認識せよ」、民放労連が「財務次官セクハラ疑惑と政府の対応に強く抗議する」という声明を出しました。

 5月1日には、女性記者が喧嘩を売られたようなものだから受けて立とうという気運から「メディアで働く女性ネットワーク(WiMN:Women in Media Network Japan)」が設立され、15日には代表世話人の二人、元朝日新聞記者の林美子さんとジャーナリストの松元千枝さんが記者会見しました。

 私もメンバーとして加入しています。詩織さん、テレ朝の女性記者の勇気ある告発、そして、その後の麻生大臣や下村議員の発言に、「負けてはいられない」「もう傍観者でいるわけにはいかない」という思いがありました。

 会のメンバーは、新聞社や通信社、テレビ局、出版社などの社員、フリーランスも含めて86人(記者会見時)です。会員には現役の記者も多くいますが、記者会見に出席したのは、フリーの二人だけでした。本来は、皆で顔を出して声を上げたいところです。

 しかし、これまで声を上げた、詩織さんやテレ朝の女性記者への誹謗中傷やネット上でのバッシングは凄まじく、最終的に現役の記者たちが顔出しすることは見送られました。

 WiMNは、林さんと松元さんを中心に、今後は、シンポジウムの開催やSOSが出せるような受け皿作りを検討していくなど、様々な取り組みを進めていきたいとしています。まだできたばかりの団体ですが、メディアで働く女性たちが立ち上がり、組織を作り、声を上げ始めた意義は大きいと思います。セクハラやパワハラに苦しんでいる、メディアで働く人以外の女性や男性にも、良い影響が出てくるようになったら嬉しいです。


我慢しなくていい社会に

 先ほど、社内でセクハラを受けたことはないと言いましたが、私の場合は、若い頃、千葉や横浜のサツ(警察)回りなどもしていて、外部からのセクハラというのはありました。おそらく支局時代にセクハラ・パワハラの洗礼を受けるというのは、若手の新聞記者は男女問わず、皆経験することになるのではないでしょうか。

 私の場合は、千葉の方はまだのどかな感じでしたが、横浜では、赴任早々、警察幹部に「助手席で話そう」と言われて車に乗り込んだら、いきなり抱きつかれたのです。すぐに知人に相談したら、「相手は警察内で処分されるかもしれないけど、警察からの印象は悪くなり、取材がやりづらくなるかもしれない」と言われました。すっごく悩んで、結局、告発するのをやめました。

 ただし、自分の中でどうしても納得がいかなかったので、その幹部のいる警察署へ行き、人の見ていない所で、はっきりと抗議しました。そうしたら「そんなに怒ってるとは思ってなかった」と平謝りされ、「ああ、この人、自覚がなかったのか」と納得し、相手が謝ったことで許すことができました。

 その後も何度か同じようなセクハラには遭いましたが、取材に慣れていくにつれ、それを「受け流してきた」という面がありました。当時は、「取材のためだから仕方ないか」と思っていたわけですが、自分より若い世代の記者たちが、今、ひどい目に遭っているのを目の当たりにしたり、後輩たちから相談を受けたりすると、10年以上前に、私自身がもっときちんと声を上げていれば、後輩たちが苦しむことはなかっただろうと反省させられます。

 これはきっと、記者という立場の女性だけではなく、他の業界でも、仕事のためだからとやり過ごし、我慢してきた人たちも同じ思いだと思います。私のように市井の声を拾える、人に伝えられる仕事に就いている者は、もっともっと声を上げていかないといけないと思います。

 残念なのは、せっかく勇気を出して声を上げた女性を批判したり中傷したりする人の中に、同性の女性がいることです。自分たちは「若い頃、こうだった」と言うのならまだしも、「私は我慢したんだから、あなたも我慢しなさい」ではなかなか社会の意識が変わっていかないと思います。電車内でのベビーカーの使用について論争があったときも、高齢の女性たちが「自分たちはちゃんとおんぶしていた。ベビーカーは車内で使うな」という批判があったと聞きました。もしずっと我慢していたのなら、我慢しなくて済む社会、より子どもを育てやすい社会の方がいいですよね。それがセクハラに関連することなら、我慢しなくて済む社会の方がいいに決まっています。


声を上げられる力を

 セクハラに関して声を上げるには、教育も大事かなと思います。

 私には娘がいますが、彼女にはきちんと自分の考えを表現できる人間になってほしいです。先生の言うことに従って、黒板に書いたことをただ書き写して、丸暗記する。私の子ども時代は、そんな教育が当たり前でした。でも、それだけではクリエイティビティは育たないし、新しい価値観や創造力も生まれにくい。教師やお上の言うことが当たり前だと思わされ、声を上げられない人間になってしまいそうです。

 アメリカでは、今年3月、高校生が中心となった銃規制の強化を訴えるデモに、首都ワシントンだけで約80万人、全米では約100万人が集まったといいます。海外のニュース映像だったかと思いますが、トランプを批評する4、5歳の女の子の映像を見たときには思わず笑ってしまいました。そうしたことができるのは、常に親や教師たちが、相手がどんなに小さな子どもであっても政治のことを語り合い、ディスカッションすることが身についているからでしょう。自分の考えや思いを伝えるために声を上げる、その力がはぐくまれているのではないかと思いました。

 そのアメリカでさえ、#MeToo運動以前には、なかなか声を上げられなかったことを考えると、セクハラの問題はなかなか手強いとも言えますが。


オヤジ文化、体育会系のノリに「NO」

 今一度自分を振り返ってみると、特捜部を担当していた頃、元特捜部検事の家にお正月集まるときは女性記者たちがみんな着物を着るということが慣習化していて、私も着物で行きました。女性であることを取材で利用したことがまったくないかと聞かれたら、女性だから取材のための飲みに付き合ってもらえたことも多かったと思いますし、否定はできません。

 女だから、男だから、と性差を声高に叫び過ぎることも、それはそれでギスギスした社会になってしまう可能性もあります。ただ、これだけは言えるのが、当事者が嫌がっているなら、それだけでセクハラだということ。これを理解できていないことが、セクハラをしている側の自覚のなさにつながっているのだと思います。

 これには、いわゆるオヤジ文化とか体育会系のノリ(!?)というものも影響している気もします。例えば男性記者の場合は、セクハラよりもパワハラが問題で、取材相手の言いなりに芸をするなど、「情報を取るために、ここまでするの?」という情景を見ることも少なくありません。今やスポーツ界でもこれまでは当然と言われてきた体育会系のノリが問題になっているのですから、女性に限らず男性も嫌なことにははっきり「NO」と言いましょうと言いたい。取材する側が、はっきりと声を出すことで、取材される側の意識も変わっていくことが必要な時代になったのではないでしょうか。

 福田氏のセクハラ問題を受けて、政府は省庁幹部へのセクハラ研修の義務化など緊急対策を講じるようで、野田聖子男女共同参画大臣が取りまとめをしていて、会見をしました。しかし、その後も耳を疑うような政治家の発言が引きも切らずで、もっと厳しく対処してほしいし、研修を受けなければいけない人がたくさんいます。さらには、「セクハラ罪という罪はない」と麻生大臣が言いましたが、日本にセクハラ罪がないことは、国連からこれまで問題視されてきました。今回の#MeTooの動きを契機に、何より政府は、日本にもセクハラやパワハラへの罰則を作っていく道を模索していくべきです。


ジワリジワリと変えていく

 これまでは、女性の問題と捉えがちだったセクハラ問題ですが、加害者が男性であれば当然男性の問題でもありますし、男性が被害者になることも、女性が加害者になることだってあるわけです。

 自分の周囲を見回すと、男性で麻生大臣のような考えの持ち主はほとんどいません。WiMNの賛助会員には男性もいます。これからはもっと理解のある男性が増えていくだろうし、セクハラ問題を「女性」対「男性」という構図で考えるのはやめて、双方が生きやすい、働きやすい社会を目指して、共に変えていけるようになればいいですね。

 身内から受ける被害が多いなら、第三者的な相談窓口も必要になってくると思います。何かトラブったときなど、社内だけで何とかしようとするより、客観的に見て、判断できる弁護士や外部の専門家に相談すると、問題が整理されるし、人間関係を忖度して悩んだりせず、淡々と事が運ぶことも多いと聞きます。

 いかにも「闘うぞ!」というのとはまた違った形、もっと等身大というか、それぞれが無理なくできる範囲での闘い方、応援の仕方がある気もします。セクハラをしていることに無自覚な人には、「NO」をはっきり言うことで、私の体験のように相手に変化が訪れるかもしれません。

 今後も一足飛びにこの問題が解決するとは思えません。それでも、これまで声を上げてきた多くの勇気ある人たちのためにも、それに続く人が出てくることが肝心です。そして声を上げられる環境があって、声を上げた被害者を守るしくみやサポートするしくみをきちんと作ることも重要です。

 例えば、LGBTをめぐる社会環境は少しずつ変化が出ており、今やカミングアウトする人も増えました。またお茶の水女子大学などが、戸籍上男性であってもトランスジェンダーの学生の入学を受け入れると発表するなど、周囲の対応も変わりました。同じように、セクハラ問題もあきらめることなく、ジワリジワリと変わっていけばいい、変えていけたらいいなと考えます。
*****