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阪神間で暮らす-2

テレビを持たず、ラジオを聞きながら新聞を読んでます

承認撤回、国の対抗策は? 沖縄県と再び法廷闘争へ 想定される4つのケース

2018-07-28 | いろいろ

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承認撤回、国の対抗策は? 沖縄県と再び法廷闘争へ 想定される4つのケース

 翁長雄志知事が、名護市辺野古沿岸の埋め立て承認の撤回に向け、不利益を受ける沖縄防衛局に対し、今月中に行政手続法に準じた「聴聞」の期日を通知する方針だ。早ければ8月中旬の撤回を目指す。埋め立て承認撤回の前例はない。工事を止められる国は、対抗策を取るとみられる。どちらも譲る気配はなく、法廷闘争は避けられそうにない。想定される四つのケースをまとめた。(政経部・福元大輔、社会部・下里潤)


<ケース1>差し止め訴訟

 正式撤回前に提訴可能


 今後の展開で想定されるのは、翁長知事が正式に「撤回」する前に、その効力を止める差し止め訴訟だ。撤回の事実がなくても、重大な損害が生じる恐れがある場合に限り、国は提訴できる。損害を避けるために他の方法がある場合はできない。

 2004年の行政事件訴訟法改正で、新たな訴訟類型として定められた。県が沖縄防衛局の意見を聞き取る「聴聞」の手続きに入り、正式撤回するまでに訴訟を起こすことが可能だ。

 提訴には、撤回により国の利益が侵害されるなど「法律上の利益」があるかなどの要件を満たすことが求められる。「公共の福祉に重大な影響を及ぼす恐れ」がないことなども必要となる。

 判決までに時間がかかるため、国が裁判所に申し立てれば、仮の差し止めが認められる場合もある。損害を避けるため、緊急の必要性があることなどが要件。


<ケース2>取り消し訴訟

 執行停止の申し立ても


 国が県を相手に「撤回」の取り消しを求める訴訟。撤回を知った日から6カ月以内、かつ撤回を行った日から1年以内に提訴する必要がある。

 撤回の効力を止める点では差し止め訴訟と同じだが、取り消し訴訟は撤回後の提訴となる。裁判を起こしただけでは撤回は有効なため、国は工事を進められない。対抗策として、提訴と同時に裁判所へ執行停止を申し立てる可能性が高い。

 執行停止の要件は仮差し止めとほぼ同じだ。どちらも「本案について理由がないとみえるとき」。つまり、国の敗訴が濃厚な場合は認められない可能性が高い。

 専門家の一人は「執行停止などが認められれば、県敗訴の見通しが高くなる」と指摘。2015年からの埋め立て承認取り消しを巡る訴訟を挙げ「工事全体を止めるには決定的な理由が必要だ」と述べた。


<ケース3>執行停止申し立て

「私人」の立場で主張か


 2015年10月の埋め立て承認取り消しで、防衛局は最初の対抗策として、行政不服審査法に基づき、執行停止を申し立てた。国土交通相はその13日後に執行停止を決め、防衛局は工事を再開した。

 同法は違法、不当な行政処分に対し、「国民」に不服申し立ての道を開く。国の申し立てを想定しないが、防衛局は「私人」の立場で申し立て、同じ内閣の一員の国交相が認めた。

 県は中立・公平性を欠くと、国地方係争処理委員会へ訴えや取り消し訴訟を提起したが、16年3月の和解成立で、防衛局が申し立てを取り下げたことで、県と国のどちらの主張が正しいか、うやむやのままだ。

 「申し立ての取り下げは国が非を認めた証拠だ」という意見がある一方、「白黒はっきりしていないので、すぐに撤回を無効にする手段として国は使ってくる」という見方も残る。


<ケース4>代執行

 他に手段ない場合限定


 埋め立て承認のような法定受託事務に関する国と県との争いを想定するのは、地方自治法だ。245条7で国が県に「是正の指示」を出し、従わなければ、251条7の違法確認訴訟を提起。勝訴した上、違法な撤回の取り消しを求めるのが国の正攻法といえる。

 245条8の「代執行」は、他に手段がない場合に限られる。承認取り消しの際、国はいきなり代執行の手続きを始めたが、高裁に和解を促され、応じた。結局、違法確認訴訟で問題は終結し、「代執行以外に手段がない」とはいえない状況だ。撤回でもいきなり代執行の手続きを始める可能性は低いとみられる。

 ただ取り消しの例では、国の提訴後、最高裁が国勝訴の判決を出すまで約5カ月かかった。その間、埋め立て工事は止まる。そのため、国は暫定的に撤回の効力を止め、工事を再開する方法を探るとみられる。
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原発に代わる巨大エネルギー源、「黒潮発電」が実用化へ

2018-07-27 | いろいろ

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原発に代わる巨大エネルギー源、「黒潮発電」が実用化へ

 黒潮は台湾東方沖の太平洋から琉球諸島の西を通り、日本列島東岸をかすめて北上、房総半島沖で東に向かう濃紺の大海流だ。その流量は地球上の全河川の合計の30~50倍といわれ、幅約50キロから100キロ。日本の沖では秒速1.5~2メートルの巨大な川のような流れとなり、江戸時代の船乗りは「黒瀬川」と呼んでいた。

 日本の目の前にあるこの巨大なエネルギー源を発電に活用すれば、原子力発電に代わる安定的で二酸化炭素を出さない電源になる可能性を持つ。そんな「黒潮発電」の実験が成功し、実用化に向け進み始めた。

 重工大手のIHIは国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成金約27億円と自社の約13億円を投じ、浮遊式の黒潮発電システム「かいりゅう」を開発。昨年8月から鹿児島県の口之島沖で発電実験に成功した。今月13日には、日本船舶海洋工学会の「シップ・オブ・ザ・イヤー」海洋構造物・機器部門賞を受賞した。

「かいりゅう」は全長19メートルの円筒を3本横に並べた筏のような形だ。左右の円筒の後部にある直径11メートルの回転翼で発電する。海底の重りと合成繊維のロープでつなぎ、水面下約50メートルの海中に沈める。一見簡単な仕組みにも思えるが、自動的に深度や方向、傾斜などの姿勢を制御する。

 実験では秒速1.5メートルの流速で100キロワットを発電した。実用段階では回転翼の直径が約4倍の直径40メートルとなり、2千キロワットを発電する計画。約30キロ四方の海に600機設置すれば、新型の原子炉1基分の出力(120万キロワット)に匹敵する。

 IHIはまず離島用の電源として実用化する計画。将来は九州、四国、紀伊半島、房総半島などの沖にそれぞれ設置すれば、原発の代替電源になる可能性もある。黒潮は静岡県沖では蛇行するが、紀伊半島沖と房総半島沖ではほぼ決まった海域を通る。設置する海域は海岸から約40キロ、水深400メートルほどの場所を考えており、海底ケーブルで送電する。排他的経済水域内なので他国との摩擦の懸念はなく、原発や水力発電より大都市の近くで発電しやすい。送電に鉄塔が不要なのも利点だ。

 原発は放射性廃棄物の処理が困難という本質的な問題を抱える。火力発電は電力需要の変動に合わせ発電量を調節できる長所があるが、その燃料輸入には年間4兆円かかり、二酸化炭素の排出も問題だ。再生可能エネルギーでは太陽光や風力が普及しているが、発電は不安定だ。

 欧州では1日に約2回起こる潮の干満を利用する潮流発電も実用化しつつあるが、発電の時間は限られる。一方、黒潮は常に絶大な量の水が陸岸近くをおおむね一定の方向と速度で流れている。世界的にもメキシコ湾流が大西洋に出る米国フロリダ半島沖と日本東岸しかないほどの好適地で、日本にとっては天の恵み。黒潮発電が本格化すれば、英国にとっての北海油田と似た価値を持つかもしれない。

 資源エネルギー庁の山崎琢矢新エネルギー課長は「海流発電は安定した電力供給ができ、基盤的電源となり得る。新エネルギーとして最も有望。機材の価格をいかに下げるかが課題だ」と言う。NEDOは今年度から2020年度まで、次の段階の開発に22億円の助成金を拠出し、IHIは11億円を負担する予定だ。

 水深約50メートルに装置を設置すれば、潜水艦以外の船舶の航行に支障はない。設置水域によっては底引き網などの漁業を妨げる問題は出そうだが、IHIで黒潮発電開発を指揮する長屋茂樹さんは「将来は漁業協同組合に機材の点検、整備を依頼するなど協力をお願いすることも考えられる」とし、30年ごろの本格的実用化を目指している。(ジャーナリスト・田岡俊次)

※AERA 2018年7月30日号
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安倍首相 総裁選で敵対した者は推薦人含め「干す」覚悟も

2018-07-26 | いろいろ

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安倍首相 総裁選で敵対した者は推薦人含め「干す」覚悟も

 9月の自民党総裁選で安倍晋三首相が3選を果たした場合の閣僚名簿案が複数、流布されている。信頼する“お友達”を数多く起用するとみられており、官房長官には出身派閥でもない外様の菅義偉氏ではなく、派内から側近筆頭の下村博文氏、対抗で松野博一・元文科相のどちらかを選ぶのではとみられている。ただし、安倍首相が官房長官交代に踏み切る場合、菅氏を古巣の総務大臣に横滑りさせ、〈萩生田光一・官房長官 菅総務大臣〉という別の閣僚名簿案もある。

 自民党ベテランは、「閣僚名簿案は少なくとも3種類は流れているが、いずれも菅官房長官が交代する前提になっている。菅氏を牽制したい細田派か、“重石”を取り除きたい官邸の安倍側近あたりが発信源ではないか」と読んでいる。

 大臣名簿が流れれば、“殊勲をあげよう”と安倍首相への忠誠を示す動きが強まる。

 官房長官更迭説が流布された菅氏は無派閥議員を集めて安倍支持を訴え、竹下派事務総長の山口泰明氏は派閥の方針が決まっていないにもかかわらず、「安倍3選支持」をぶち上げて驚かせた。

 「昔の総裁選では派閥で推薦人を貸し借りしていたが、今の時代はそうはいかない。選挙に相当強くないとね」

 安倍首相は麻生太郎・副総理兼財務相、二階俊博・幹事長との会談でそう発言し、総裁選で敵対すれば“推薦人を含めて干し上げる”という覚悟を示した。推薦人の締め付けで野田聖子・総務相を出馬できなくしたうえで、ライバルを石破茂氏1人に絞って圧勝する戦略だ。

 その結果、自民党内で真の権力闘争はなくなり、安倍政権がどんなに国民の強い批判を浴びても自民党内政権交代は起きそうにない。

 『自民党──「一強」の実像』などの著書がある政治学者、中北浩爾・一橋大学大学院教授は安倍政権下で自民党内の政治力学が大きく変化したと指摘する。

 「安倍政権の特徴は、強い官邸が弱体化している派閥を取り込むことで党を掌握し、派閥も安倍さんに取り込まれることをリソースとして生き延びているのが現状です。同じ官邸主導でも、党内の“抵抗勢力”と争った小泉政権とは違い、政策による党内抗争や派閥がポスト配分で争うこともなくなった。これまでなかった現象です。その結果、政治基盤は安定したが、党内の切磋琢磨がなくなり、政治にダイナミズムが失われたという問題点もある」

 そしてこう続ける。

 「はっきり言えるのは、次のリーダーが非常に登場しにくい状況になっているということです。これは将来の自民党にとって必ずしも好ましいことではない」

 国民も、政権交代も権力闘争もない出来レースの総裁選など望んでいない。

 ※週刊ポスト2018年8月3日号
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信頼度は"最低"?『朝日新聞』凋落の理由と復活へのたったひとつの道

2018-07-25 | いろいろ

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信頼度は"最低"?『朝日新聞』凋落の理由と復活へのたったひとつの道

信頼度の低下に歯止めがかからない朝日新聞。かつての大新聞に今、何が起こっているのか。『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が考察する。

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 英オックスフォード大学のアンケート調査によると、現在、日本の主要紙で"信頼度が最も低い"と評価されているのは、朝日新聞だった。今年1月、2月にネットで日本人読者2023人にアンケートしたところ、日経新聞、地方紙、読売新聞、産経新聞、毎日新聞と続き、朝日は最下位の6位だったという。 

 朝日は長年、日本のクオリティ紙の代表的存在だった。調査報道にも定評があり、過去にはロッキード事件、リクルート事件などをスクープしている。その朝日への信頼感の低下をどう考えればいいのだろう。

 ここ数年、朝日は誤報めいた記事を掲載し、批判されるケースが続いていた。例えば、2011年の福島原発事故時、「東電が発電所の職員650人全員の撤退を検討した」と報じたが、後に緊急対応メンバーを残す「一時退避」だったと明らかになった。また14年8月には、慰安婦を強制連行したとの「吉田証言」は虚偽だったとする訂正記事の掲載に追い込まれた。

 つい最近も森友学園の小学校設置趣意書に、「安倍晋三記念小学校」と記載したとの籠池泰典(かごいけ・やすのり)理事長(当時)による発言を報じたものの、実際に開示された文書には記載はなかったことがわかり、麻生財務大臣から「朝日は(安倍政権批判を)あおっている」と酷評された。

 私は、朝日のこうした失態の背景に、「あるべき論」と「事実報道」の混同があると考えている。「あるべき論」とは社説や編集局長名の記事などで「社会や物事はこうあるべきだ」と主張することで、世論の形成と言い換えてもいい。

 社説や記事で政権や東電を批判するのは、権力監視の役目を持つ新聞にとって当然のことだ。しかし、安倍政権による強烈な圧力に屈した今の朝日の幹部たちは完全に萎縮していて正しい主張ができない。

 そのため、現場に不満がたまり、ついつい事実報道の中に権力批判の「気持ち」が入り込んでしまう。ただ、権力を指弾できるディープ情報は簡単には入手できない。その結果、時として、裏取りが不十分な情報を事実として報じる勇み足が生じるのだ。

 こうなると悪循環だ。ただでさえ萎縮して正論を言えない幹部は、誤報で萎縮してますます何も言えなくなる。すると、「あるべき論」を補強・代替させようと、再び事実報道が政権批判の気持ちで歪(ゆが)められる。そんなことを繰り返せば、読者は朝日不信を募らせるしかない。

 このような形でメディアへの信頼が失われると、権力への監視も弱まる。その典型が安倍3選を検証・批判する記事の減少だ。これは朝日に限らないが、最近、多くの新聞で「安倍政権の強さの理由」などの記事は掲載されても、「安倍一強」で民主主義が崩壊するのを防ぐべきだと指摘する記事は見かけなくなってきた。

 ある全国紙の政治部記者によると、「記者クラブでは『安倍首相の3選は堅い』というコンセンサスが生まれていて、安倍政権を批判する記事自体が、"意味がない"というムードが広がっている」とのこと。由々しき事態だ。

 朝日の編集局長は、現場の記者がよけいなバイアスをかける記事を書く必要がなくなるよう、政権を恐れず堂々と「あるべき論」を打ち出すべきだ。それなくして、新聞への信頼が復活することはないだろう。

●古賀茂明(こが・しげあき)
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。近著は『国家の共謀』(角川新書)。ウェブサイト『Synapse』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中
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民主主義の仮面をはぎ取った第196通常国会

2018-07-24 | いろいろ
ジャーナリスト田中良紹氏のヤフーニュースのコラムより

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民主主義の仮面をはぎ取った第196通常国会

 1月22日に召集された第196通常国会が明日幕を閉じる。安倍総理によって「働き方改革国会」と名付けられたこの国会は、スタート直後に裁量労働制を巡る厚生労働省の調査データに誤りのあることが発覚し、「裁量労働制の方が労働時間は短くなるデータがある」と答弁した総理が答弁を撤回して謝罪するという波乱の幕開けとなった。

 行政府が嘘のデータに基づく法案を立法府に提出しようとしていたのだから事は重大である。政府は「働き方改革関連法案」から裁量労働制の対象拡大を削除せざるを得なくなった。それだけでも「働き方改革」を通常国会の目玉にした安倍政権の失態は明らかで、野党に「並の力」があれば政権を追い詰める突破口になる話だった。

 一方で昨年来安倍総理が国民の不信を買った「森友・加計疑惑」も国会が始まると再び火がつけられた。2月9日に財務省は昨年の国会で佐川前理財局長が「廃棄した」と答弁した「森友学園との交渉記録」を国会に提出したのである。

 佐川氏が「廃棄した」と言ったものではなく、個人のパソコンに残されていたものが出てきたと財務省は弁明したが、なぜ昨年の国会に出さなかった資料を今国会に提出したのか。私は安倍官邸と麻生副総理兼財務大臣との間で「ある種の権力闘争」が始まったと思った。

 すると続いて3月2日付朝日新聞が「森友問題を巡る決裁文書の改ざん」をスクープし、財務省はその事実を認めた。近畿財務局が作成した改ざん前の文書には安倍昭恵夫人や複数の政治家が森友学園に協力している様子がはっきり記載されている。

 つまり近畿財務局の現場は森友学園の国有地取得に政治の関与があったことを決裁文書で訴えていたのだ。それは昨年の国会で安倍総理が「私も妻も事務所も関係していない。していたら総理も議員も辞める」と発言し、佐川前局長が全面的に否定したことを覆す材料となる。

 そのため本省からの指示で近畿財務局は昨年2月以降文書改ざんをさせられた。責任を負わされると思った職員は朝日報道の5日後に自殺した。この改ざん情報を朝日にリークしたのは誰か。私は2つのルートを考えた。1つは財務省内から、もう1つは大阪地検特捜部内からである。いずれにしても情報を知りうるのは官僚しかいない。

 官僚人事を私物化する安倍官邸に対する霞が関からの反撃と見られなくもないが、私には安倍政権を痛撃するよりむしろ揺さぶりをかけて省益を優先する官僚の狙いを感じた。

 例えば財務省は経産省中心の安倍政権によって「官庁の中の官庁」として常に政権運営の中枢にいた立場を奪われ、しかも念願の消費増税を2度も反故にされた。その中で「森友問題」は安倍総理に「貸し」を作る絶好のチャンスだった。

 国有地の値引きで「貸し」を作り、佐川前局長の全否定答弁でも「貸し」を作ったが、「貸し」を効果的にするにはいったん「揺さぶり」をかけて心胆を寒からしめ、その後にまた協力すれば効果は倍加する。

 一方、大阪地検特捜部は市民団体の告発を受け、佐川前局長らの文書改ざんや国有地値引きで捜査を進めていたが、行政府の一機関である特捜部が現職総理に不利な捜査をするはずはない。しかし正義感を持つ若手検事の不満を押さえるため政権に「お灸」を据えることはある。「お灸」として改ざんをリークする代わりに不起訴にするのである。

 案の定、大阪地検は告発されていた佐川前局長ら38人を全員不起訴にした。それを「司法が不起訴にしたのだから佐川前局長を国会に喚問する理由もなくなった」と主張した与党議員がいた。無知蒙昧と言うしかない。

 特捜部は行政府の機関であり司法の機関ではない。総理大臣の配下だから現職の閣僚や与党幹部を逮捕したことなどない。ロッキード事件で逮捕された田中角栄氏は総理を辞めたから逮捕された。本人はそれを悔やんでいたが、検察は現職の三木総理の指示に従い、三木総理の天敵だった角栄氏を逮捕したのである。

 「政界のドン」と呼ばれ中曽根総理ににらみを利かせた金丸信氏が逮捕されたのも議員を辞めた後である。事務所の金庫にあった30億円を個人の金と認定され、脱税容疑で逮捕されたが、それは派閥の金で中曽根事務所にも宮沢事務所にも金庫にはそれ位の金はあるはずと本人は無罪を主張していた。

 ともかく検察は警察と同じ行政機関なのに、検察の判断を「司法の判断」と言うのはやめるべきである。司法には政治からも行政からも独立しているという「三権分立」の幻想があるが、そもそも日本に「三権分立」が存在するかどうかも疑わしい。

 我々は学校で民主主義は「三権分立」で権力のバランスをとると教えられ、そして国民主権だから国民の代表が集う立法府が「国権の最高機関」と教えられた。それが本当なら「行政府の判断」より「司法府の判断」より「立法府の判断」が尊重されるべきである。

 ところがそうなってはいないことを今国会は見事なまでに国民の目にさらしてくれた。厚労省が国会に提出した「働き方改革法案」には嘘のデータがあり、「森友問題」で昨年の国会は行政府から嘘をつかれ続けた。にもかかわらず国会は行政府に対してなすすべがない。行政府を監視する機能はないに等しい。

 なぜなら日本の政治制度は英国と同じ議院内閣制だからである。つまり選挙で与党となった政党の党首が内閣総理大臣となり行政府を組織する。立法府の与党と行政府は一体で、与党は行政府を守ろうとするから行政府の監視が甘くなる。

 これに対し米国など大統領制の国では国民が行政府の長である大統領と立法府のメンバーである議員の両方を選ぶ。議会は内閣を監視すると同時に立法作業を行う。議員は所属する政党より選挙民の意向に従って活動するため「党議拘束」はない。こちらは議院内閣制より「三権分立」が機能する。トランプ大統領の方針を裁判所が認めないのはそのためだ。

 しかし日本の司法は国家の方針に口を挟まない。また議員は有権者の意向より政党の方針に従う「党議拘束」に縛られる。さらに立法は議員ではなく行政府の官僚が行う。つまり米国の政治とまるで違うのに日本では米国型民主主義を理想と教育される。「三権分立」を民主主義の基本と教えられるのはそのためだ。

 私は天皇制の日本は政治制度において米国より欧州の立憲君主国に近いと考えている。それは民主主義を否定するものではなく、むしろ英国が「議会制度の母」と呼ばれるように歴史に裏付けられた民主主義の知恵があり、党派対立を先鋭化させない議会運営が図られてきたと思う。

 例えば英国ではカネのかかる選挙が政治腐敗を生むことから、カネのかからない「マニフェスト選挙」を導入した。候補者を選ぶのではなくマニフェスト(政策)を選ぶ選挙である。候補者は自分を宣伝する選挙カーもポスターも事務所もない。政党のマニフェストを配るだけの選挙である。

 選挙結果は与党になった政党の政策が国民の支持を受けたことになる。それならその政策を実行すれば良いだけだから議会は不要になる。しかし政治はそれほど単純でない。国民の選択が正しい保証もない。そこで与党の政策を議会で吟味するのである。つまり民主主義の基本は多数決より少数意見の尊重にあり、議会は修正を施すために存在する。

 また国民に与野党の政策の違いを分からせ政権選択を可能にするため、日本の「党首討論」に当たる「プライムミニスター・クエスチョンタイム」を毎週1回30分行っている。大事なことは内外の変化に対応し毎週行うことである。ところが日本では「党首討論」が1年半も開かれずにいた。

 今国会で久しぶりに2度開かれたが、野党第一党の枝野代表と安倍総理の双方の口から「党首討論の歴史的使命は終わった」というセリフが出た。まだそれを言う歴史もない癖に何を言うかと思ったが、要するに一方的に言いたいことだけ発言して議論にならない現状がそれを言わせたのである。国民に代わって議論する政治家としての自覚のなさがそのセリフになって現れた。

 立憲民主党は時間の短さを問題にしているが、大事なことは短くとも毎週やることである。それがあれば米朝首脳会談や貿易摩擦問題、あるいは西日本豪雨対策など直近のあらゆる課題に政府が何を考えているか、また野党の対案も国民に示せたはずだ。

 そして行政府が立法府に嘘をついたという由々しき問題に与野党の対立を持ち込ませないためには、行政監視の議論を予算審議の予算委員会と切り離すことである。日本の国会で最も悪いのはNHKの国会中継が予算委員会に限られ、テレビ中継を意識するポピュリスト議員たちがテレビに映りたいために予算委員会で長い審議を要求することである。

 かつて「NHKの国会中継は民主主義を歪める」と米国議員からも英国議員からも言われてきたことを今の議員たちは知らないようだ。米国も英国も民主主義が堕落しないように議会のテレビ中継を禁止してきた歴史がある。現在では両国ともケーブルテレビで放送しているが、ポピュリズムに陥らないよう与野党が激論する場面などは放送しない。

 ところが日本では英米と異なりテレビを意識した野党議員が攻め立て、それに対抗するかのように安倍総理が聞かれてもいないことを延々しゃべる光景がしばしばみられる。誠に恥ずかしい国会と言わざるを得ない。

 行政府の嘘は日本政治にとって深刻な問題だが、野党もただ「けしからん」と怒ってみせたところで問題は解決しない。なぜそれが起きたかを行政府に解明させるのではなく、立法府が独自に調査を行い対応策を作るところに立法府の役割はある。それを与党を巻き込んでやることは可能だと思う。

 ただ昔の野党のように攻撃一本やりを国民に見せようとすれば党派対立が出てきて有耶無耶にされる。それがこの国会だった。しかし見方を変えればこの国会は日本人が民主主義と思い込んできた仮面をはがしてくれたかもしれない。それなら政治制度の根幹を見直す契機にすることが重要である。
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「モリカケ問題」のどこが深刻なのか 幕引きにできない「公文書改ざん・隠ぺい問題」 放っておけば民主主義が成り立たない

2018-07-22 | いろいろ

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「モリカケ問題」のどこが深刻なのか 幕引きにできない「公文書改ざん・隠ぺい問題」 放っておけば民主主義が成り立たない

「森友・加計」問題、自衛隊の日報問題。公文書の改ざん・隠ぺい問題は、この国の行く末にどう影響するのか。責任の所在をうやむやにすれば、この国の根幹は蝕まれていく。問題がこのまま「幕引き」されてはならない。

  
説明責任の大切さ

社会には多様な意見があります。自由民主主義社会は、社会にある多様な意見や食い違いを前提としながら、それらを反映しつつ、民主的に意思決定を行おうとするシステムです。安倍政権下で起きている公文書改ざんや廃棄、虚偽答弁という問題は、この仕組みの根幹を揺るがす非常に深刻な問題です。その理由を見ていきましょう。

日本の政治システムは、議院内閣制を採用しています。この制度の下では、行政府の代表である総理大臣は、有権者に選ばれた国会議員によって選出されます。このため内閣は、国会を通じて有権者に対する説明責任を負うことになります。そのため国会は、法律を制定するだけではなく、行政府の説明責任を担保する場としても非常に重要な役割を担っています。国会の最も重要な役割は、行政府の説明責任を追及することにあるとさえ言われます。背景には、行政府が立法府より実質的に有利になっているという問題があります。現在の安倍政権のように、内閣がつくった法案がまともな審議を経ずに原案通り成立することが常態化すると、立法府の役割は形式だけのものになってしまいます。だからこそ、国会において議員が行政府を追及すること、それに対して行政府が政策や法案についてきちんと説明することが求められます。

行政府には国民に対する説明責任があります。説明責任という言葉は英語ではアカウンタビリティ(accountability)と訳されます。この言葉に含まれるアカウンタブル(accountable)には、説明するという意味のほかに、勘定するという意味もあります。予算や税金といった財政にかかわることについて勘定する、その内容を説明する責任を負っているという意味が込められています。

また、説明責任はレスポンシビリティ(responsibility)とも訳されます。この言葉にあるレスポンス(response)には、応答するという意味もあります。つまり、説明責任には、勘定する、応答するという意味が込められている、ということです。

このような前提を踏まえると、安倍政権の問題の大きさに気付きます。内閣は選挙を通じて有権者に選ばれた代表に過ぎません。その内閣・行政府が、有権者に対する説明責任を果たさず、虚偽答弁を重ねた上に、公文書を改ざん・破棄していました。信託した代理人が暴走しているようなものです。民主主義の根幹を揺るがす非常に深刻な問題です。


政治とマーケットの違い

この間、データ偽装問題などで企業トップが辞任する事例が相次ぎました。企業トップが辞任するのは信頼喪失などの責任を取るためです。一方、安倍首相も「私に責任がある」「責任を感じている」という言葉をよく口にします。ところが実際には口ばかりで、責任を取ることはありません。なぜそのような開き直りがまかり通るのでしょうか。

企業と消費者の関係で考えた場合、消費者は不祥事を起こした企業の商品を選ばないことができます。しかし、政府と有権者の関係で考えると、不祥事があったからといって自分だけ違う政府を選ぶわけにはいきません。有権者は、不祥事を起こした政府を嫌だと思っても、多くの場合、次の選挙があるまでは、その政府のもとで生活するしありません。

また、選挙があったとしても、自分の投票した政党が与党になるとも限りません。とりわけ小選挙区制は、得票率よりも多い議席が勝った側に与えられる仕組みです。例えば、A社の商品を購入する人が3割、B社の商品を購入する人が2割、どちらでもいい人が5割いたとします。企業と消費者の関係では、それぞれ商品を選べますが、これを小選挙区制に置き換えてみましょう。選挙をするとA社が勝利します。その結果、すべての人はA社の商品をあてがわれることになります。政治のシステムはマーケットに比べて押しつけ力が格段に強いのです。だからこそ、政府には丁寧な説明が求められます。


公文書はなぜ大切か

公文書は、政策決定の過程を記録する客観性・事実性の高い文書です。政府が説明責任を果たすために欠かせないだけではなく、後世の人たちが歴史を検証するためにも不可欠な国民の共有財産です。その文書が組織的に改ざんや廃棄されていたことの衝撃は大きいです。

6月に、ニューヨークタイムズ紙に論説記事を寄稿しました。担当したエディターは、これだけの出来事にもかかわらず、麻生大臣が大臣給与1年分を返納しただけで辞任しないことに対し、信じがたいという反応を示していました。

アメリカでは、ヒラリー・クリントン氏が国務長官時代に私的なメールサーバーを使っているだけで大きな問題になりました。また、トランプ大統領は、読んだメモをよく破り捨てるそうですが、行政官はそれを貼り合わせて保存しているそうです。どちらも公文書をきちんと保存することが目的です。それほど公文書管理に対する考え方が日本と異なります。

そもそも、自由民主主義社会は、多様な意見の存在を前提とするため、意思決定の結果、失敗や誤りがあることをシステムの中に織り込んでいます。権力者は国民の信託をたまたま預かっているに過ぎないからこそ、その判断が正しかったのかあとで検証できるように記録を残しておかなければいけません。ただ単に選挙に勝った側が好き放題していいというシステムではないのです。記録を廃棄してしまえば、過ちを検証できません。同じ過ちを繰り返すリスクも高まるでしょう。

正確な情報が提供されなければ、有権者は正しい判断を下すことができません。事実が事実として認定されないと判断を間違う可能性が高まります。権力者が知識や情報を占有することは、国民の共有財産を独占しているということです。世界でも「フェイクニュース」が問題になっているように、事実を捻じ曲げて、うそを本当のことのように思わせる問題が起きています。民主主義にとって非常に深刻な問題だと言えます。


市民がすべきこと

これだけの不祥事を重ねながらも安倍政権は続いています。私は今の安倍政権が権威主義体制にかなり近づいていると見ています。

民主主義の体制は、自由民主主義体制と権威主義体制に分かれます。自由民主主義体制が強いと、政府が問題を起こした場合、人々は政権を交代させて、体制の維持を図ることができます。しかし、権威主義体制が強いと政府の危機が体制の危機と一体化してしまいます。「安倍一強」の状態は、安倍政権が単に政府であることを超えて、政府が交代することを想像できない人を相当数生み出しています。これは権威主義体制に近づいている状態だと言えます。

とはいえ、権威主義体制は崩れ始めると壊れるのも早いです。なぜなら、口には出せなくても、「おかしい」と感じている人は水面下にはたくさんいるからです。不満が溜まり続けると、「こんなことはおかしい」という声があるとき堰を切ったように広がっていくはずです。その「前夜」がいつなのかはわかりません。ですから、市民一人ひとりとしては、今は苦しい状態だとしても、「おかしいものはおかしい」ということを辛抱強く言い続けることが大切だと思います。
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頭の中は被災者よりも総裁選 安倍首相「国家改造」の野望

2018-07-21 | いろいろ

より

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頭の中は被災者よりも総裁選 安倍首相「国家改造」の野望

 延長国会は22日の会期末を目前にして、与野党の攻防が例年以上に激化している。数の力を武器に、被災地そっちのけでカジノだ、参院の選挙制度改正だ、と自公がやりたい放題の暴走だからなのだが、18日は参院の定数を6議席(埼玉県2、比例4)も増やす改悪公選法を強行成立させた。

「島根・鳥取」と「徳島・高知」が合区になったため、次の選挙で影響を受ける現職の仲間を、何が何でも救済したいがためのトンデモ法改正。定数を増やした比例にわざわざ当選確実の特定枠まで設けるお手盛りである。自民党内ですら不評で、「定数増は国民に理解されない」と船田元・元経企庁長官は採決を棄権した。

 この改正案は参院自民中心にまとめられたが、主導したのは竹下派に所属する吉田博美参院幹事長だ。支持率至上主義の安倍首相は、時代錯誤の定数増など世論が反発することが分かっていても、参院の意向を優先した。参院自民や竹下派に恩を売る見返りに、自民党総裁選で支持してもらいたいという下心が透けて見える。

 気象庁が異例の豪雨予報で国民へ警戒を呼びかけていた日に、安倍が衆院赤坂議員宿舎で開かれた酒席会合「赤坂自民亭」に初めて出席したのも、総裁選対策の一環だった。

 党内の支持を広げることと、地方党員へのアピールが目的。茶坊主の官房副長官が、<和気あいあいの中、若手議員も気さくな写真を撮り放題!正に自由民主党>と顰蹙ツイートしたのも、そのためだったのだろう。

「『赤坂自民亭』の宴会が批判され、失点を挽回しようと西日本豪雨の被災地支援を打ち出す姿勢を見せてはいますが、今の安倍首相の頭の中は、被災地よりも総裁選のことでいっぱいでしょう。とにかく3選したい。それも7~8割の票を獲得する圧勝を狙っています。圧勝することで政権の求心力を維持し、自民党内を掌握できれば、悲願の憲法改正もやりやすくなると考えているのです。そうして、『憲法を変えた首相』として歴史に名を残す。レガシーづくりへの執着には並々ならぬものがあります」(政治評論家・野上忠興氏)


 「美しい国」づくりの執念は今も変わっていない

 第2次政権が発足した直後、安倍が強く打ち出したのは「アベノミクス」であり「地球儀俯瞰外交」だった。

 禁じ手の異次元緩和で株価をつり上げ、外遊を繰り返しては“中国包囲網”への参加を説き、大金をばらまく。結果的にどちらも破綻しているものの、そうやって「経済と外交の安倍」という印象を強めていったのは、第1次政権の失敗を教訓に、国民の目をごまかすためでもあった。

 安倍が本当にやりたいのは、改憲して国家を改造すること。第1次政権時に掲げた「美しい国」へと日本をつくり変えることだ。そのために、再び政権に返り咲いたのであり、その執念は今も変わっていない。

 戦前美化の極右団体「日本会議」が、なぜ潰瘍性大腸炎という難病を抱える安倍を支え続け、復活させたのか。価値観を共有する安倍に、改憲と自分たちの望む国づくりを託していたからだ。

 日本会議は、岸信介の孫である安倍を首相になる前から“右派のプリンス”として純粋培養してきた。安倍が口にしてきた「美しい国」も「日本人の誇りを取り戻す」も、もともと「日本会議」の理念である。集団的自衛権の行使容認、憲法改正、愛国心教育、自虐史観の排除、戦後レジームからの脱却――。安倍が力を入れるこうした政策も、日本会議が提言してきたものだ。

「国有地の激安払い下げ」や「小学校のスピード認可」という森友学園疑獄も、事の本質は、右翼思想の同志への便宜供与である。

 日本会議と一体化した安倍政権が標榜する「愛国教育」を具現化する小学校だからこそ、特別扱いしてでも開校させようとしたのではないのか。 日本会議大阪のメンバーだった籠池泰典前理事長は、小学校設立を「天からのミッション」だと言った。「明治維新から150年の年に素晴らしい小学校ができ、75年かけて本来の日本の教育に戻していかなければならなかった」と戦前教育への回帰をさらけ出した。安倍政権はそれを後押ししていたのであり、だからこそ当初、「安倍晋三記念小学校」という校名で寄付金を集め、安倍昭恵夫人が名誉校長に就いていたのである。

 立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)がこう言う。

「安倍さんが首相になってやりたいことは『戦後政治の総決算』です。戦後政治とは何かと言えば、戦争をしない国家像を掲げた日本国憲法であり、軍隊や戦争によって基本的人権が潰されないということ。つまり、戦争放棄の憲法9条を葬り去り、基本的人権に制限をかけることこそが、安倍さんにとっての『美しい国』というわけです。今の国民世論では9条そのものを変えることは難しい。そこで自衛隊の存在を明記することで、実質的に9条を空洞化させようとしているのです。モリカケ問題もあり、最近はそうした主張を出さないように“休止”していますが、総裁3選となれば改憲を実現させるために、露骨に展開してくるでしょう」

■ 従米軍国主義への道を邁進する

 民主党から政権を奪い返す直前の2012年12月、安倍は日本国憲法を「みっともない憲法」だと断じた。先の戦争は聖戦であり、侵略戦争ではない。日本国憲法は米国からの押し付け憲法であり、だから新憲法が必要だ。そんな思想を持つ安倍を、英エコノミスト誌は第2次政権発足時に「歴史修正主義に執着するラディカルナショナリスト(急進民族主義者)の政権」と論評していた。安倍は、戦後日本を否定する危険な野望を、今はただ封印しているだけなのである。

 それでも、「経済と外交」を隠れみのにしながら、日本を米国と一緒に戦争ができる国につくり替える法整備は着々と進んでいる。解釈改憲によって集団的自衛権の行使を容認し、地球の反対側まで戦争に行ける安保法を制定、特定秘密保護法や共謀罪で監視社会を強化し、4年連続で過去最高を更新するほど、防衛予算を歯止めなく拡大させてきた。言論封殺も加速し、もはや圧力をかけなくても、メディアが勝手に自粛してくれるレベルにまで達している。

 9月の総裁選で3選、新たな3年の任期で国家改造の最終章を仕上げる――。2年後にやってくる2020年東京五輪を名目に、どんどんナショナリズムを高揚させていくつもりなのだろう。

 政治評論家の森田実氏がこう言う。

「安倍首相のことですから、政権延命のために五輪を最大限利用すると思います。3選を目指す総裁選の中心スローガンに『東京五輪の成功』を掲げるのではないでしょうか。ヒトラーのベルリン五輪での『民族の祭典』のマネをするのですよ。トランプ大統領の手先になって日本を間違った方向へ持っていこうとしているのが安倍首相。今の国会でカジノ法案を急いで通すのも、トランプ支援者のカジノ業者のためです。3選となれば、米国からますますたくさんの兵器を買わされることになる。そうして従米軍国主義の道を突き進むのです」

 国会が延長されているのだから、西日本豪雨の被災地を支援するため、他の法案を断念してでも補正予算案を緊急上程することだってできたはずだ。予備費20億円ポッチしか出さず、「国民の命と安全を守る」というフレーズは、北朝鮮や中国の脅威を煽るためのものでしかなかったことがハッキリした。

 安倍政権があと3年も続いたら、この国はどうなるか。国民はよくよく考えた方がいい。
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21世紀の『わがままな大男』への提案

2018-07-20 | いろいろ

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21世紀の『わがままな大男』への提案
 同志社大学大学院ビジネス研究科教授 浜矩子氏


 米中貿易戦争の本格到来。この雰囲気が濃厚になってきましたね。果てしなき泥仕合は一体どこまで行ってしまうのでしょう。


 ところで、皆さんは「わがままな大男」のお話をご存じですか? 文学世界の大鬼才、アイルランド生まれのオスカー・ワイルドが書いた童話です。
 わがままな大男は、広くてとても美しいお庭に囲まれた大きなお家に住んでいます。素敵なお庭は、近所の子供たちにとって理想の遊び場。大男がお留守の間、みんな嬉々としてこのお庭に大集合していました。
 そこに帰宅した大男は大激怒、「侵入者は厳罰に処す」という看板を立ててしまいます。僕の庭は僕のもの。僕だけのもの。僕のお庭では僕しか遊べない。誰ともシェアなんかするものか。そんなの当たり前じゃない。わがままな大男には、そうとしか考えられないのです。


 ところが、こうして子供たちを締め出してしまった結果、大男のお庭に大異変が発生しました。春が来なくなってしまったのです。塀の外は春爛漫。でも、大男のお庭では極寒の冬が続きます。いつまで経っても真冬です。雪と霜が大喜びではしゃぎまくり、北風さんや霰さんをご招待してしまいます。おかげで、大男のお家は煙突は折れるわ、屋根瓦は全部剥げ落ちるわ。悲惨な状態に陥ってしまいます。
 大男がすっかり落ち込んでいると、ある日、突然、お庭に春の気配が訪れます。どうしたのかと窓の外を見てみれば、何と、子供たちが塀の小さな穴から忍び込んで、お庭の木に登って遊んでいるのでした。鳥たちも、子供たちに「お帰りなさい」の歌をさえずり、大喜びで飛び交っています。大男も歓喜して、お庭の景色に見とれます。そして、ちょっとびっくりします。なぜなら、広いお庭の一つの片隅だけが、まだ冬なのです。


 どうしたことかとよく見てみれば、そこに生えている木の下で、小さな小さな男の子が泣いています。小さすぎて、木に登ることが出来ないのです。すっかり反省モードになった大男は、そっとお庭に出ていって、その小さな小さな男の子を抱き上げて、木の上の高い枝に座らせてあげます。すると、大男の出現で逃げてしまったほかの子たちも戻ってきます。そして、お庭中が春真っ盛りとなるのです。
 反省モードに入ったところで、大男はお庭の周りの塀を撤去することにしました。全面開放型のお庭にしたのです。これで、二度と再び、万年冬状態に陥る心配はなくなりました。


 大男が抱き上げた小さな小さな男の子は、実はイエス・キリストの仮の姿でした。そして、最終的には、すっかり心を入れ替えてわがままではなくなった大男を天国に連れて行ってくれるのです。
 21世紀版のわがままな大男さんも、たまにはオスカー・ワイルドを読んでみるといいと思います。夏休みの課題図書にするといいでしょう。
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田原総一朗「安倍政権の無責任な原発増設計画 小泉元首相は…」

2018-07-20 | いろいろ

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田原総一朗「安倍政権の無責任な原発増設計画 小泉元首相は…」

 7月3日に閣議決定された、新たなエネルギー基本計画。ジャーナリストの田原総一朗氏は、安倍政権の無責任な原発増設計画に疑問を投げる。

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 西日本がかつてなかった豪雨による大被害を受けたが、なんと気象庁が「記録的な大雨になる恐れあり」と発表した7月5日の夜、安倍首相をはじめ自民党の幹部たちが、衆議院議員宿舎で開かれた“赤坂自民亭”なる懇親会に出席したことが露呈して大批判を浴びている。

 こんなときに場違いな話題で申し訳ないが、今回は原発問題について記したい。

 3日に閣議決定した新たなエネルギー基本計画が、あまりにも無責任だと思えるからである。

 たとえば、小泉純一郎氏は、首相時代は原発推進派であった。その小泉氏が原発反対を打ち出すことになったのは、フィンランドのオンカロを見学した後である。オンカロとは、地下500メートルくらいのところに空間をつくり、原発の使用済み核燃料を保管する場所のことなのだが、小泉氏が「オンカロに保管された使用済み核燃料が無害化するのにどのくらいかかるか」と問うと、答えは10万年であった。そこで小泉氏は原発反対となったのである。

 だが、日本にはオンカロもなく、またオンカロをつくる具体的な計画もない。それでいて何の処理もされていない使用済み核燃料が、すでに1万7千トンもあるのだ。

 ところが、経済産業省は2030年度の電源構成について、原発比率20~22%を目指す、としている。となると、30基程度の稼働が必要である。

 東日本大震災で、福島の東電原発が深刻な事故を起こして、すべての原発が停止され、再稼働したのは関西電力や九州電力などの計9基だけである。

 しかも、日本では原発が稼働できるのは40年間とされていて、現在ある原発がすべて再稼働したとしても、とても30基にはならない。その半分程度である。

 となると、経産省の目標を実現するには、原発の新設が必要になる。経産省の目標ということは、つまり安倍内閣の目標でもある。

 だが、繰り返し記すが、オンカロをつくる具体的な計画さえもないのだ。何代もの経産相にそのことを直接問うたことがある。誰一人答えることができなかった。実は、何度もオンカロをつくるための候補地を求めたのだが、どの県も“否”だったのである。

 それでいて、原発の新設地など見つかるのか。

 無責任といえば、高速増殖炉「もんじゅ」は、ほとんど仕事らしい仕事をしないまま廃炉となったのだが、「もんじゅ」についての総括をしないまま、政府は核燃料サイクルを構築すると決めているのである。

 実は、自民党には、原発問題の責任者がいないのだ。

 余計なことかもしれないが、私は何人もの自民党の幹部たちに、原発問題の責任者になるべきだ、と口説いた。あるいは私の口説き方が下手だったのかもしれないが、誰も引き受けなかった。やれば責任が重すぎると判断したのだろうか。

 念のために記すが、私は10人以上の自民党の幹部たちに、これから原発の新設ということがこの国で可能なのだろうか、と問うている。可能だと答えた議員はいなかった。

 それでいて、30年度には、原発が20~22%になる、つまり30基程度が稼働する、ということになっているのである。これを無責任と言わないのはおかしいのではないだろうか。

※週刊朝日  2018年7月27日号
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どう調べたら、そうなるの?内閣支持率のフシギな仕組み

2018-07-19 | いろいろ

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どう調べたら、そうなるの?内閣支持率のフシギな仕組み

いつの間にか回復中
週刊現代



先日までモリカケで「危険水域」と言われていた安倍内閣の支持率が、突然過半数を超えた。納得できないといえばそれまでだが、詳しく見ていくと、結果とはやや裏腹な「民意」が浮かび上がってきた。


 「支持率52%」の衝撃

 ある土曜日の午後7時、夕食後。リビングのテーブルに置いてあるスマホが震える。非通知。夜のとばりが降り、見知らぬ人から電話がかかると気持ちは穏やかでない。

 恐る恐る電話を取ると、機械的だが明朗とした女性の声が聞こえてくる。

 「安倍内閣支持に関する世論調査のご協力をお願いいたします」

 突然のお願いに少し動揺しながらも、オペレーターの質問に答えていく。「安倍政権を支持しますか」「支持政党はどこですか」「森友問題の決着には納得できますか」……。

 わずか5分程度で終わる世論調査。だが、6月22~24日の日経新聞の調査で明らかになったのは、まったく予期せぬ数字だった。

 52%――。一時期、相次ぐ不祥事に政権運営を危ぶまれた安倍内閣の支持率は、6月に10ポイントアップし、過半数を超えた。

 支持率の回復を報じたのが日経新聞だけなら、ちょっとした上振れと見逃すこともできたかもしれない。

 だが、朝日新聞は前月比2ポイント増の38%、毎日新聞は5ポイント増の36%と、程度は違っても、6月同時期の各紙の調査で軒並み「支持率回復」の結果が出た。

 ふつうに考えてみれば、安倍政権への期待が高まる出来事が起こっているはずだが、我々にそのような実感はない。

 いまだに膠着状態の森友・加計問題にとどまらず、'18年の安倍政権は通常国会に入ってから不祥事のオンパレードだった。

 松本文明内閣副大臣が米軍機事故について「それで何人死んだんだ」と飛ばしたヤジから、「働き方改革」関連法案をめぐる厚労省の不適切データ、そして福田淳一財務次官のセクハラ辞任まで、異例のペースとしかいうほかない。

 実際、政府の手腕に対する疑問は今回の日経新聞の世論調査にも如実に表れている。

 たとえば、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)法案について、賛成は33%(反対53%)。拉致問題について「期待できる」と回答したのは32%(できない60%)。

 加計学園理事長と首相の面会否定について「納得できる」としたのは20%(できない70%)、森友問題の決着について、「決着した」と回答したのはわずか18%(していない75%)にとどまっている。

 「過半数超え」まで安倍政権の支持率が回復したのは、'18年2月以来となる。支持率30%の「危険水域」にまで落ち込んだ上半期がまるでなかったかのような復調ぶりだ。

 「安倍総理は支持率をだれよりも気にするタイプで、あるメディア調査の支持率が30%を割ったときに、菅義偉官房長官が番記者に『おかしいじゃないか』と不満を漏らして、政界で話題になったほど。今回の結果にも、安倍総理は『よかった』と胸をなでおろしています」(官房筋関係者)


 何を評価したのか

 実際、安倍総理にとっては願ってもないタイミングでの支持率回復だ。当人悲願の「3選」や、ひいては来年の参院選にも見通しが立つためだ。

 「7月の閉会まで、働き方改革など重要法案の採決が残っているけど、そこまではスムーズにいくとの見方が党内で強い。

 9月の総裁選に関しても、支持率が過半数を超えたことで無派閥の議員や党内の反安倍分子まで手のひら返して安倍総理の支援に回りだしている」(自民党衆議院議員)

 喫緊の課題に、なにひとつとして解決策を出していないにもかかわらず、安倍政権は息を吹き返している。ここで、我々の実感とは少し離れた結果を出した世論調査の内実について考えてみよう。

 低迷していた支持率が突如回復したのは、2つの大きな理由がある。

 ひとつ目は、外交だ。6月の世論調査で特徴的なのは、米朝首脳会談について「評価する」と回答した人が55%と、ほかの設問に比べて高かったことだ。日経では支持する理由でいちばん多かったのが「国際感覚がある」という回答だった。


 「3月の調査で内閣を支持する理由としていちばん多かったのは『安定感がある』でした。今回の調査で『国際感覚がある』となったのは、米朝会談によって北朝鮮による核のリスクが軽減されたという楽観視によるものだと考えられます。

 これを安倍外交の成果だと感じた人が支持に回った、ということでしょう」(明治大学政治経済学部教授の井田正道氏)


 モリカケに飽きた人々

 支持率の調査が行われた6月22~24日は、G7から米朝会談と、混沌とした世界情勢に一瞬の融和ムードが生まれた直後。実施の時期も数字に少なからず影響を与えているだろう。

 政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏が語る。

 「安倍総理は、世論調査で支持率が落ちると外交で巻き返す、というのが一貫した戦略になっています。

 今年4月末の中東、5月のロシアに続いてG7、さらに7月中旬には欧州訪問と、モリカケ問題から脱却するために外交攻勢を仕掛けています。そして外交での成果は、安倍一強による長期政権のおかげだと暗に訴える狙いがある」


 支持率が増えた2つ目の理由は、特に支持政党を持たない無党派層の政治離れが強くなったことにあるという。

 「モリカケ問題をめぐる国会審議では、与党は野党と熟議をしない、一方野党は与党に話を聞いてもらえない状態が続いています。野党は審議拒否するしかなく、最後は結局強行採決で決められる。

 政府に好意的になったわけではなく、野党に対する支持が減ったとみるほうが正しいでしょう。

 安倍政権の支持率を支えているのは『期待値』です。たしかにモリカケでは支持率が下がった。

 でも野党に代わりとなる選択肢がないため、政府にとって少しでもいい動きが出れば、期待値が高まり、支持率の上昇につながります」(選挙ジャーナリストの高橋茂氏)

 野党への失望感は数字に如実に表れている。野党第一党である立憲民主党の支持率は9%、第二党の国民民主党はまさかの「0%」という結果に終わった。

 野党が吹っ掛ける水掛け論には飽きた。一方でなんとなく、海外でアベは頑張っているように見える。そうした非常にあいまいな空気が「世論」として、「過半数超え」という客観的な数字に化けるのだ。

 冒頭で触れたような世論調査は、「RDD方式」とよばれる方式で行っている。これはコンピューターがランダムに発生させた電話番号にダイアルし、オペレーターによる聞き取りまたは機械音声によってアンケートを取るものだ。

 質問内容は各メディアによって異なるが、たとえば「安倍政権を支持する場合は1を、しないという場合は2を押してください」と、全部で5分程度で終わる質問が6~7問、矢継ぎ早に続く。

 「日経新聞の調査では、支持か不支持か『わからない』と答えた人が6%にとどまりましたが、これは調査手法によって大きく数字が変わってきます。

 日経の場合、一度『わからない』と回答しても、『あなたのお気持ちに近いほうはどちらですか』と重ね聞きしてくる。そのため、支持と不支持どちらも高めに出る傾向にあるのです」(全国紙世論調査部担当者)

 '16年以降の調査では、固定電話だけでなく携帯電話も世論調査の対象として各社取り入れた。

 「なぜメディアがRDD方式をやるのかというとコストが安いからです。昔は有権者名簿を見て、面接訪問調査に行きましたが、全国でサンプル数を3000取るとしたら3500万円くらいのコストがかかり、面接調査員も全国で200ヵ所に派遣する必要がある。

 一方、電話調査であれば20分の1程度のコストで済み、中央で一括管理もできます」(慶応義塾大学法学部教授の小林良彰氏)

 携帯電話も含めたダイアル式での世論調査は、以前の形式とくらべて若い層のサンプルが増える。この結果、支持率にも多少の影響が出てくる。

 長野県立大学教授の田村秀氏は次のように言う。

 「支持率を測るRDD調査の場合、プラスマイナス5%程度のばらつきが起こる可能性はあります。これはどのメディアが調査を実施するかに関係なく起こりうるものです」


 「ポスト安倍」の不在

 若者の自民党支持が多いという結果も、今回の日経新聞の調査から明らかになった。前出・小林氏はこう語る。

 「日本経済の基軸は依然として日米関係にあります。10代から30代では、旧民主党の鳩山由紀夫政権における日米関係の悪化、マニフェストの反故が記憶に新しい。

 また、人手不足による好調な新卒就職率の恩恵を受けている世代として、自民党への一定の支持がある。

 同時に、いまはトランプ大統領を震源地として、世界秩序が不安定になってきています。こういう混乱期には、長く政権を担っている人のほうがリスクは少ないとみてしまう。

 このタイミングでだれが現政権に代わってやるか、野党はおろか自民党からもビジョンが浮かばないため、リスクを取りたくないと考える人が多いのです」

 10代から30代、新聞を読まない人たちはみんな自民党を支持している――。6月24日、麻生太郎財務相が講演で語った言葉が浮かぶ。

 これを真に受けるならば、「新聞を読まない世代」の回答も紙面の数字に反映されるわけで、感覚と結果が異なっても多少合点がいく。

 安倍内閣の支持率が回復したのは、ポスト安倍の有力候補がいないということに尽きる。今回の調査でも小泉進次郎氏がポスト安倍の最有力候補として挙がったが、国民のほとんどが次回の総裁選で彼が立候補するとは思っていない。

 安倍政権が長期運営を続けるうえで、政権維持のデッドラインにも変化がみられるようになった。

 「ある程度の不祥事が起こっても、政権に致命的なダメージがなければ、不祥事が風化したころに支持率が自然と回復する。これが長期政権の特徴です。

 これまで政権維持の危険水域は3割といわれてきましたが、2割前半まで落ち込むことがなければ沈むことはないでしょう」(前出・井田氏)

 なんとなく決定打のないままさまよう民意が、数字化されると政権運営にプラスに働く。安倍総理の「したり顔」が目に浮かぶようだ。


「週刊現代」2018年7月14日号より
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朝鮮半島のパワーゲームで日本は…共同通信・磐村氏に聞く

2018-07-18 | いろいろ

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朝鮮半島のパワーゲームで日本は…共同通信・磐村氏に聞く

 「チビのロケットマン」「老いぼれ狂人」と罵り合い、核のボタンを誇示した米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が急接近。史上初の米朝首脳会談で非核化に向けた取り組みをスタートさせたが、先行きは予断を許さない。北朝鮮はCVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)を実現するのか。朝鮮半島情勢に精通する共同通信元平壌支局長・磐村和哉氏に展望を聞いた。

■ プレーヤーは米韓中ロ

  ――米朝会談から1カ月。ポンペオ国務長官が再訪朝するなど、両国は共同声明の実行に向けた協議を重ねています。

 これからが正念場ですが、国交がない国のトップ同士が新たな関係構築を目指す共同声明に署名した重みは評価すべきでしょう。原則論の範疇にとどまったとの批判もありますが、「朝鮮半島の完全な非核化」と「敵対関係の解消」を確認した意義は大きい。特に北朝鮮では最高指導者の指示、それを文書化して署名した記録物は超法規的存在です。絶対に実現しなければならない義務が暗黙の了解としてある。金正恩委員長はトランプ大統領と並んで声明に署名し、海外メディアの写真撮影にも応じた。金正恩委員長は後戻りできなくなったと思います。

  ――米情報機関が核・ミサイル活動を拡大させる北朝鮮側の動きを把握したとの報道があります。

 声明には非核化のタイムスケジュールが盛り込まれなかった。それが北朝鮮の本気度を疑う要因になっている側面はあると思います。非核化は段階的にやらざるを得ませんから、核開発の凍結↓申告↓査察↓検証↓核兵器解体↓核関連施設廃棄といった一連の流れを目次程度でも言及できればよかった。もっとも、北朝鮮も満足はしていません。金日成国家主席から指導者3代にわたる宿願である米朝国交正常化に関する文言を入れられなかった。「トランプ大統領は北朝鮮に安全の保証を与えることを約束」という一文がありますが、具体的な内容には触れていません。北朝鮮は米国が本当に体制を保証するか疑念を抱き、われわれも北朝鮮の非核化の意思を疑っている。そうした疑念を解消する第一歩として、米韓合同軍事演習の暫定中止や朝鮮戦争で亡くなった米兵の遺骨返還などの動きが出てきている。ボタンの掛け違いが起きないように、慎重に互いの措置を取り合っているのだと見ています。

  ――4月末の南北首脳会談を決めた金正恩委員長は3月末の電撃訪中で外交デビュー以降、めまぐるしく動き回っています。

 金正恩委員長の首脳外交には特徴があります。北朝鮮からアプローチを仕掛け、相手国トップは任期に余裕があり、政権が安定している。韓国の文在寅大統領は昨年5月に就任し、任期を4年残しています。中国は3月中旬の全国人民代表大会で国家主席の任期制限を撤廃する憲法改正を承認し、習近平国家主席は事実上の終身国家主席となった。トランプ大統領は残り2年半ですが、再選されれば4年上積みされる。首脳会談を調整中のロシアのプーチン大統領も3月中旬に再選され、任期満了は2024年です。

  ――レームダック政権との交渉は無意味だと?

 北朝鮮は94年に米朝枠組み合意、05年に6カ国協議共同声明に応じましたが、最終的に反故にした。米朝合意はクリントン政権、6カ国協議声明は子ブッシュ政権の2期目でしたが、合意内容の履行でごたついている間に交渉相手の任期切れが迫り、先が見通せなくなったのです。そうした教訓を織り込み、相手方の政権交代を前提に政権初期に合意し、任期中にやれるところまでやってもらおうという計算が恐らくある。われわれには合意を反故にするのはいつも北朝鮮のように見えますが、北朝鮮からすれば相手方に合意を実行する推進力が足りなかったという不満があるのでしょう。

  ――9月末に任期が切れる安倍首相は金正恩委員長に秋波を送っています。

 8月、9月にも日朝首脳会談が実施されるとの観測が日本側から出ていますが、北朝鮮側からの反応は鈍いようです。自民党総裁選で安倍首相は3選されるのか。安倍政権が続投したとして、どの程度の強さ、安定性を保てるのか。北朝鮮は見極めようとしているのでしょう。

  ――それまで日朝関係は動かず、蚊帳の外ですか。

 金正恩委員長の外交戦略における日本の優先順位は米韓中ロに比べて低い。安倍首相が昨秋の衆院選で北朝鮮を「国難」と呼び、情勢が転換した2月の平昌冬季五輪での振る舞いも大きなつまずきとなり、出遅れが決定的になりました。

  ――北朝鮮にとって米韓中ロが優先なんですね。


 金正恩委員長が体制存続を懸け、新しい北朝鮮像を見せようと舵を切った大舞台に必要なプレーヤーはまず韓国です。南北分断70年の歴史に幕を引く政治的野心を文在寅大統領も持っている。米国による軍事力行使を防ぎたいという思いも南北共通しています。韓国との共同作業で南北が平和共存する朝鮮半島をつくり上げる。ここに影響力行使を狙う中国と米国が乗り込んでくる。超大国である米国と中国の双方から重用され、両国の力関係を利用する戦略的なゲームを金正恩委員長は始めているのです。ロシアもすり寄ってきています。ここに日本を引き込む余地は今のところはない。完全な統一には時間がかかると思いますが、疑似的な統一状態となった朝鮮半島は反米になるのか親米になるのか。反中なのか親中なのか、反ロか親ロか。関係国にとって北東アジアで影響力を保持する地理的要衝である朝鮮半島で、存在感を示すのに躍起です。


 平壌しか見ない安倍首相は関係国から爪はじき

  ――北朝鮮と関係国のやりとりは活発化している。

 米朝会談の1週間後に金正恩委員長が3回目の訪中をしたのも、習近平主席が一刻も早く会談の内幕、つまり朝鮮半島におけるトランプ大統領の思惑を聞きたがったからでしょう。プーチン大統領はウラジオストクで開催する東方経済フォーラム(9月11~13日)に金正恩委員長、習近平主席を招待した。文在寅大統領は昨年から出席しています。北東アジアの主要プレーヤーを一堂に集め、作戦会議を行う。プーチン大統領はそうした展開も視野に入れているでしょう。それを見たトランプ大統領が「来年は俺も行く」と言い出すかもしれません。

  ――安倍首相も東方経済フォーラムに出席します。

 安倍首相は果たして、この主要プレーヤー会議に加われるかどうか。疑似的な統一状態に向かう朝鮮半島に日本はどう関与していくのか。独自の戦略、未来予想図を提示しない限り、どの首脳からも相手にされないと思います。日本は平壌しか見ていない。関係国は朝鮮半島全体を俯瞰して戦略を練り、パワーゲームを始めているのに、日本は片面だけでゲームをしようとしている。ソウルと平壌をにらんで動く視点が欠けています。

  ――東方経済フォーラム、国連総会(9月25日~)を利用した日朝会談が模索されていますが……。

 仮に実現した場合、北朝鮮の“体温”を慎重に分析する必要があるでしょう。ウラジーミル・シンゾーの延長線上で、ホストを務めるプーチン大統領の顔を立てるために会うのか。北朝鮮の第一目標は対米関係の安定化ですから、トランプ大統領に好印象を与えるため、ドナルド・シンゾーの関係も踏まえて「とりあえず」という意味で会うことは考えられる。日本を戦略的に重要なパートナーと位置付けて安倍首相と会談するのでなければ、すぐに失速する可能性があります。アリバイ的な日朝対話の再開に終わらず、国交正常化に向けた交渉だとアピールし、日本を売り込まなければ、それこそ「政治ショー」に終わってしまいます。

  ――安倍首相は最重要課題に掲げる拉致問題の進展が日朝会談の条件だとも主張しています。

 金正恩委員長にはマキャベリスト的な側面がうかがえます。利用できるものは利用する。公式訪問か、実務協議かといった形式にとらわれず、必要であれば会うという姿勢で実利的に動いている。日本には日朝平壌宣言に基づく戦後賠償という交渉カードがある。韓国や中国の経済協力は北朝鮮にとってプラスであると同時にリスクもあります。人民元経済圏に取り込まれるのはもちろん、韓国経済にのみ込まれ、吸収統一されてしまうのは最悪の悪夢です。中韓に比べ、政治的野心の薄い日本の支援はある意味ニュートラルです。遠回りに見えるかもしれませんが、日本もゲームに入れなければダメだと思わせることが、拉致問題の進展につながると見ています。

 (聞き手=本紙・坂本千晶)

 ▽いわむら・かずや 1959年、東京生まれ。東京外語大朝鮮語学科を卒業後、共同通信社に入社。福島支局、横浜支局、社会部、外信部を経てソウル支局に赴任。中国総局在職中の06年に平壌支局が開設されて局次長、支局長を歴任。11年に外信部担当部長、12年から現職。
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民主主義取り戻すには

2018-07-17 | いろいろ

賀茂川耕助氏の「耕助のブログ」より

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民主主義取り戻すには

 安倍首相の保守的なイデオロギーへのこだわりは、好んで使った「美しい国」「日本を取り戻す」といった言葉に表れている。何をもって美しい国か。安倍首相は誰から日本を取り戻そうというのだろうか。

 安倍首相が政権に復帰して6年目、第1次内閣を合わせると戦後では歴代3位の長期政権になったが、安倍政権が続いて日本が美しい国になってきているとはとても思えない。1年以上続く、森友事件に始まった安倍首相がらみのスキャンダルの連鎖は加計問題としても露呈した。

 森友学園は園児に教育勅語を暗唱させたり日の丸と旭日旗を振らせるなど、極右洗脳教育をする幼稚園を運営していた。そして「瑞穂の國記念小学院」を作るために、大阪府豊中市の国有地を評価額より大幅に安く取得したが、安倍昭恵首相夫人がこの小学校の名誉校長になっていたことから、国有地売買に政治的関与がなかったかが焦点となっている。

 もう一つ、土地を無償で譲り受け補助金をもらい学校を作ってきた加計学園は、獣医学部新設のために安倍首相との「面談」といううその文書を県と市に提出したという。加計孝太郎理事長は安倍首相とはゴルフや食事を頻繁にする長年の友人である。しかも加計学園が運営する「御影インターナショナルこども園」という認可外保育施設の名誉園長を務めていたのも昭恵夫人であった。

 現職の首相夫人の親しい友人に国有地が数億円も割り引かれて譲渡されたが、公正な形で決定がなされた公的記録が確認できず、また現職首相の友人に100億円を超える税金が投入されたが、こちらも公正な形で決定がなされた証拠がないというのがこれらのスキャンダルである。

 本来ならどちらか一方でも行政をゆがめたとして国政調査権が発動され、首相が辞任に追い込まれるくらいの問題である。さらにこの決裁文書も交渉記録も官僚の手で改ざんが行われ、それでも誰も責任を取ることなく、財務大臣までも「書き換えられた内容を見る限り、改ざんとか、悪質なものではないのではないか」と開き直る。

 英国の歴史家、ジョン・アクトン卿は、「権力は腐敗する。絶対的権力は絶対腐敗する」と言ったが、これは古今東西問わず当てはまる。長年にわたり一つの政党に権力が集中した日本の政府は完全に腐っている。あきらかに金権政治であり、民主主義ではない。さらに与党と既得権益で結びついた大企業がメディアを支配し、国民を洗脳する。安倍首相がよく使う「印象操作」は日々メディアが一般国民に行っていることで、洗脳された一般国民は政治に無関心になり、何が起きていても、どんな法律が成立しても自分には関係ないように振る舞う。

 金権政治を変えるには、国民一人一人が選挙で、またはインターネットなどで意思表示をするしかない。それが民主主義を日本に取り戻す唯一の方法なのである。
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オウム死刑囚大量執行は口封じか…

2018-07-17 | いろいろ

より

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オウム死刑囚大量執行は口封じか…検察に全面協力していた井上嘉浩死刑囚の変心、再審請求に怯えていた法務省

 衝撃のニュースが飛び込んできた。一連のオウム事件で首謀者として死刑が確定していたオウム真理教教祖・麻原彰晃(松本智津夫)死刑囚に死刑が執行され、さらに新実智光、早川紀代秀、井上嘉浩、中川智正、遠藤誠一、土谷正実という計7人の死刑囚にも次々と刑が執行されたのだ。1日に7人もの死刑執行は戦後前例がない。

 死刑の是非についてはあらためて別稿で論じたいが、それ以前に問題なのは、一連のオウム真理教事件にはいまだ数々の謎が残っており、それが解明されないまま麻原死刑囚らの刑が執行されてしまったことだ。

 これについては、被害者遺族からも「疑問や謎をもっと解明してほしかった」という声が上がっているほどだ。

 たしかに、政権にとって今年の死刑の執行は最良のタイミングだった。来年には天皇の退位、新天皇の即位と祝賀行事が続く。再来年は東京オリンピックがあり、国際社会の注目も高まるなか死刑を執行すれば国際的に強く批判されることになる。だから“今年中に”ということは既定路線だったはずだ。

 しかし、それでも、こんなにすぐに、オウム事件の死刑囚13人中7人を一気に執行するというのは異常としか言いようがない。

 しかも、13人の死刑囚のうちなぜこの7人が選ばれたのかもまったく不明だ。たとえば初期の坂本弁護士一家殺害事件の死刑確定囚からはじめたというわけでもなければ、全員が日本最悪のテロ事件である地下鉄サリン事件の確定死刑囚ということでもない。また死刑の確定順かといえば、そうではない。これについて本日午後行われた上川陽子法務大臣の会見でも説明さえなかった。

 オウム事件に詳しい複数のジャーナリストや司法記者に訊いても、何が基準かについては、首をひねるばかりだ。「なんとなく知名度の高い受刑者を選んだだけではないのか。国民栄誉賞の人選じゃあるまいし」と語る記者もいたほどだ。

しかし、もしかしたらこうした疑問を解く鍵になるかもしれない事実がひとつだけある。それは、7人のなかに井上死刑囚が含まれていたことだ。

井上死刑囚といえばこれまでの一連のオウム裁判で、検察のシナリオに沿って、検察の都合のいい証言を続けてきた“最重要人物”だ。

たとえば、17年間の逃亡の末逮捕された高橋克也受刑者は地下鉄サリン事件や目黒公証役場事務長拉致監禁致死事件の関与に関して、「サリンとは知らなかった」「被害者の仮谷清志さんに注射を打つことも知らなかった」と主張したのに対し、井上死刑囚は「サリンを撒くから運転手をするように」「仮谷さんが暴れないようにクスリを打って眠らせることを高橋被告に確認した」と有罪の根拠になる重要な証言をしている。だが一方で井上死刑囚は逮捕当時「(仮谷さんの注射について)高橋は知らなかった」とまったく逆の供述をしていたのだ。

 さらにこの際、麻酔薬を投与した中川死刑囚から「ポア(殺害)できる薬物を試したら死んだと聞いた」とも証言しているが、中川死刑囚はこれを否定。さらにその場にいた元医師の林郁夫受刑者も「井上証言はあり得ない」と証言している。それだけでなく殺害された仮谷さんの長男でさえ、中川死刑囚の殺害示唆を「信じがたい」と井上証言に疑問を呈したほどだ。

 また井上死刑囚は、宗教学者のマンション爆破などが問われた平田信受刑者の裁判においても、事件前に平田受刑者に「これから『やらせ』で爆弾をしかけると言った記憶がある」と事前共謀、計画があったことを証言し、「何も知らなかった」と主張する平田受刑者と対立している。

平田受刑者はともかく、すでに死刑が確定していた中川死刑囚が、殺意を否定するという嘘をつく理由はない。一方の井上死刑囚は、数々のオウム裁判において「これまで誰も知らなかった」新証言を不自然なまでに繰り出し、多くのオウム被告たちを“より重罪”へと導いていったのだ。


 検察のストーリーに乗った証言でオウム信者を重罪に導いてきた井上嘉浩

井上証言のなかでもとくに大きかったのが、地下鉄サリン事件における麻原死刑囚の関与の証拠とされた、いわゆる「リムジン謀議」についての証言だった。

 地下鉄サリン事件の2日前の1995年3月18日、麻原死刑囚は都内の飲食店で会食後、井上死刑囚、村井秀夫、遠藤死刑囚ら幹部を乗せたリムジン内で、公証役場事務長拉致をめぐるオウムへの警察の強制捜査を阻止するために地下鉄にサリンを撒くことが提案され、麻原死刑囚もそれに同意したとされる。これが麻原死刑囚の地下鉄サリン事件関与の証拠となったが、しかし、それを証言したのは井上死刑囚だけだった。

 逆に、この井上証言がなければ、麻原死刑囚を有罪とする法的根拠はなかったとの見方もある。

 数々のオウム裁判で「これまで誰も知らなかった」新証言を不自然なまでに繰り出し、多くのオウム事件の被告たちを“より重罪”へと導いてきた、井上死刑囚。だが、他のオウム被告たちの証言はことごとく食い違っており、検察が公判を維持するために描いたストーリーに無理やり沿っているとしか思えないものだった。

 そのため、井上死刑囚と検察との関係をめぐっては、さまざまな疑惑がささやかれてきた。長年オウムの取材を続けてきた公安担当記者の多くもこんな見方を述べていた。

「井上死刑囚の取り調べの過程で、検察はオウムへの帰依や洗脳を捨てさせる一方で、逆に検察への逆洗脳を誘導したとみられています。その後、井上死刑囚は、まるで“検察真理教”となったがごとく、検察にとって有利な証言を繰り返し、“有罪請負人”の役割を果たしてきた。オウム事件は多くの信者が関わり、その役割は物証ではなく彼らの証言に依存せざるを得なかった。そしてその見返りとして、ある種の司法取引があった可能性が高い」

 実際、井上死刑囚は、一審ではオウム事件で死刑を求刑された者のなかで唯一、無期懲役の判決を受けている。結局、二審では死刑判決に変わるが、それでも、執行を遅らせる、すぐには執行しないなどというような暗黙の取引があったのではといわれていた。

 だが、今回、井上死刑囚もまた死刑を執行されてしまった。すべてのオウム裁判が終結したことで、もう用無しになったということなのか。

 もしそうならとんでもない話だが、実はもっとグロテスクな裏があるという指摘もある。それは、今回の死刑執行が法務・検察による口封じだったというものだ。


 井上が再審請求をした日に7人の死刑囚を執行準備のため移送

 前述したように、検察のストーリーに沿って、多くのオウム被告たちを“より重罪”へと導いてきた井上証言だが、その証言内容については、根本から再検証すべきではないかという声があがっていた。

 とくに大きかったのは、3年前、当の司法からも井上証言に疑問符がつけられたことだ。2015年11月、17年間の逃亡の後逮捕された菊地直子氏は、一審では実刑判決だったものが一転、高裁で無罪となる。その際、一審有罪の根拠となった井上死刑囚の証言の信用性についても、高裁は「(井上証言は)不自然に詳細かつ具体的で、信用できない」として認めなかったのだ。

 数々のオウム裁判の方向性を決定づけてきた井上証言の信用性に疑問符がついたことで、司法界やジャーナリストのあいだでも、その他のオウム事件についても再検証が必要ではないか、という声が高まっていた。

 そして、井上自身にも大きな姿勢の変化が現れていた。今年3月14日、まるでそういった動きに呼応するように、自らの事件について再審請求をしていたのだ。弁護人によると「死刑を免れたいわけではなく、事実は違うことを明らかにしたい」と語っていたという。

 そのため、一部では井上死刑囚が再審で、検察のストーリーに沿って虚偽の証言をしていたことを自ら認め、真実を語るのではないかという声があがっていた。

 もちろん、井上死刑囚が再審でこれまでの証言を翻しても判決は変わらない。しかし、もし本当にそんなことになったら、それこそ、麻原死刑囚はじめ、他の死刑判決の信用性が根底からひっくり返り、検察と裁判所はメディアから大きな批判を浴びることになる。また、再審は阻止しても、もし井上死刑囚が本当にそう考えているなら、メディアにそのことを語る可能性もあった。

 法務省はこうした井上死刑囚の変化を察知して、井上死刑囚が真実を語る前に、刑の執行を急いだのではないか。そんな疑いが頭をもたげてきたのだ。そして、井上死刑囚だけがクローズアップされないように、複数のオウム死刑囚を一気に執行した。

 麻原死刑囚以外の6人の死刑囚が執行準備のために一斉に東京拘置所から各地の拘置所に移送されたのは、井上が再審請求をした3月14日のことだった。これはたんなる偶然だろうか。

 もちろん、これらの見方は推測の域を出ない。しかし、タイミングは偶然だったとしても、今回の死刑執行によって、一連のオウム裁判の鍵を握っていた井上が真実を語る機会がつぶされ、井上死刑囚と検察の取引疑惑や、地下鉄サリン事件での「リムジン謀議」をはじめとする数々の“真相”が永遠に封印されてしまったことには変わりはない。

 さまざまな謎を残したカルト事件は、事件首謀者たちの“異様な”死刑執行によって歴史の闇へと消え去ろうとしている。いや、国家権力が葬り去ろうとしているのだ。

(編集部)
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胴元は米国 「カジノで成長戦略」という安倍政権の大ボラ

2018-07-16 | いろいろ

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胴元は米国 「カジノで成長戦略」という安倍政権の大ボラ
  

 「ギャンブルと人命と、どちらが大切なんだ」

 怒号が飛んでも、与党はお構いなしだ。12日も13日も、参院の内閣委員会ではカジノ法案(カジノを含む統合型リゾート実施法案=IR実施法案)の審議が強行されている。所管の石井啓一国交相は連日、委員会にベタ張りで、「土砂災害担当の閣僚が(委員会に)出席していていいのか」という野党のまっとうな批判に耳を傾けることはない。

 その代わり安倍首相が、11日の岡山に続き、13日も愛媛の被災地に入っているのだが、現地はいまだ安否不明者の捜索が行われているような状況だ。閣僚の何倍もの準備と厳重な警備が必要な首相の“早すぎる”視察は、現場にとって迷惑でしかない。岡山では知事や倉敷市長が“ご説明”で首相に同行。その間、災害対策で指揮は執れない。そうした事情を考慮して遠慮すべきなのに、「赤坂自民亭」の宴会にかまけて豪雨対応が遅れた安倍は、失点挽回に必死。「被災地に寄り添う」見え透いたパフォーマンスは、総裁3選への票固めだということがバレバレだ。

 こんな非常時に、国交大臣を委員会に張り付けてまで、今国会でカジノ法案を成立させなければならないのも、安倍の身勝手な都合。トランプ米大統領と早期成立を“密約”しているからだろう。

 昨年6月10日の日経新聞電子版が興味深い記事を書いている。

 「シンゾウ、こういった企業を知っているか」

 同年2月の日米首脳会談。トランプは安倍にこう言って、カジノ運営会社の「ラスベガス・サンズ」や「MGMリゾーツ」などの企業名を列挙し、安倍は〈隣の側近にすかさず企業名のメモを取らせた〉という。

 加えて、首脳会談の日の朝、安倍は米国商工会議所の朝食会に出席。くだんのサンズのアデルソン会長ら米国を代表するカジノ企業のトップ3人も出席しており、そこで安倍は、16年12月にIR推進法が施行されたことをアピールしているのだ。

■ トランプ支援者のカジノ王が日本に野望

 カジノ企業はトランプの大スポンサーだ。特に「カジノ王」と呼ばれるアデルソン会長は、2年前の大統領選で多大な貢献をしている。

 「アデルソン氏は大統領選時、トランプ陣営にスーパーパックと呼ばれる3500万ドル(約38億円)の資金提供を行い、当選を後押ししました。今秋の中間選挙でも、共和党への資金協力でトランプ大統領を応援する見通しですが、それと抱き合わせで求めているのが、日本と北朝鮮でのカジノ参入です。既にラスベガス、シンガポール、マカオに進出済みのアデルソン氏は、さらに日本と北朝鮮に進出して、カジノでアジアを席巻したいという野望がある。まずは日本でしょうから、当然、米国サイドは、IR実施法案の今国会成立で日本政府をプッシュしていると思います」(米国事情に詳しいジャーナリスト・堀田佳男氏)

 12日発売の「週刊文春」が、米カジノ企業のアドバイザーを務める人物から安倍政権中枢への「脱法献金」リストを掲載している。「脱法」というのは、政治資金規正法で外国企業からの寄付が禁じられているからだが、アドバイザーは麻生財務相、野田総務相、西村官房副長官、萩生田幹事長代行らのパーティー券を購入している。日本での早期のカジノ実現をめざすロビー活動の一環だとみられる。

 日本企業はカジノの運営ノウハウに乏しく、米国企業の独壇場になるのは間違いない。アデルソン氏は過去の来日時に、日本のカジノに100億ドル(約1兆1000億円)投資すると何度も豪語している。投資分以上の利益を得られるとソロバンをはじいているのは当然で、日本でカジノが解禁されても、儲けるのは胴元の米国なのである。

  

 今さらカジノ参入なんて周回遅れもいいところ

 安倍は「世界中から観光客を集める」と言って、カジノを「成長戦略」に掲げているが、これも捕らぬタヌキの皮算用で終わるのが必至だ。

 カジノは既に飽和状態とされ、米国では東部ニュージャージー州のアトランティックシティーが衰退の一途だ。かつてトランプが経営した「タージマハル」など倒産が続出している。

 アジア最大のマカオは、2017年の賭博業収入が約330億ドル(3兆6300億円)とされるが、13年の7割の水準に落ち込んでいる。シンガポールも同様で、過去2年で収入が3割減だという。背景にあるのは、中国の習近平国家主席が主導した腐敗撲滅キャンペーンで、中国からの富裕客激減の影響を受けた。

 こうした環境の変化を受け、マカオでは、カジノを併設せず、プールや劇場などで宿泊客の増加を狙い、成功したIRも出現しているほどである。

 だから、カジノの収益への懸念は、日本政府もうすうす分かっているのだろう。キャンブル依存症の不安が叫ばれながらも、外国人観光客だけでなく日本人にも開放したのが、その証左だ。誘致自治体は大半が日本人客だと想定している。

 参院の審議で政府は、「IRの設置場所が不明のため試算できない」と、税収や雇用増などの経済効果を示さない。先行きが見通せないから、ゴマカして逃げているのが真相だろう。

 元参院議員で国際政治学者の浜田和幸氏がこう言う。

 「カジノが成長戦略なんて幻想です。マカオが儲かっていたのは、一度に100万円や200万円を使う中国の富裕層がいたから。彼らは党や政府の幹部で、マネーロンダリングが目的でした。しかし、習主席の腐敗撲滅政策で外貨持ち出しがままならなくなった今、日本に中国の富裕層が来ることはないでしょう。数万円程度で遊ぶ日本人だけでは、景気浮揚にはつながりません。それにアジアのカジノでは、マレーシア、ベトナム、カンボジアといった競合相手もいる。今から参入しようなんて、日本は周回遅れもいいところ。カジノをつくったはいいが、閑古鳥が鳴くことになりかねません」

■ 訪日客を魅了するのは「日本らしさ」

 そもそも、外国人観光客は日本にカジノを求めているのだろうか。

 エコノミストの高橋乗宣氏が日刊ゲンダイのコラム(13日付)で、こう書いている。

 〈訪日外国人の数は5年連続で過去最高を更新。今年は初めて3000万人を突破する可能性が高まっているが、彼らを引き付けているのは、カジノとは正反対の「日本らしさ」だ〉

 高橋氏によれば、あるテレビ番組が訪日外国人に人気の東京のスポットを調べたところ、明治神宮、浅草寺、銀座のデパ地下の順だったという。広島の厳島神社や原爆ドームも人気で、これらに共通するのは、日本の伝統文化や和風デザインなど、日本ならではの「味わい」である。

 前出の浜田和幸氏も言う。

 「伝統文化、温泉、祭り、自然、和食。日本にやって来る外国人はそうしたものに魅力を感じているのです。政府は市場分析が全くできていないと言わざるを得ません」

 日本人の資産を米国に献上するばかりで、地方経済の活性化にもならない。それがカジノ。安倍の言う成長戦略なんて嘘八百なのだ。

 13日の愛媛の視察でも、安倍は避難所の被災者の手を握って、寄り添っている姿を見せるのだろう。だが、もう地方の人は分かっている。人命よりトランプ、人命より総裁3選。つまり、安倍のアタマの中にあるのは、いかにして政権を延命させるかだけなのだ。

 一国のトップとしてはあまりに身勝手すぎる。自らの嘘にまみれて嘘の中で沈んでいくのではないか。自滅の道だ。
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防災にどれだけ本気? 安倍政権で「次は東京」という恐怖

2018-07-16 | いろいろ

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防災にどれだけ本気? 安倍政権で「次は東京」という恐怖


 もはや悲劇と言うほかないだろう。生活再建のメドが立たない中、殺人的な暑さに見舞われる被災地の惨状には目を覆うばかりである。平成に入って最悪の被害をもたらした西日本豪雨による死者は14府県で200人を超え、安否不明者はなお50人を数えている。近畿から九州まで広範囲に大雨特別警報が出されてから1週間。20万戸以上がいまだ断水し、15府県で6000人あまりが避難生活を余儀なくされている。

 気象庁は13日、猛暑日が続く恐れがあるとして関東から九州に高温注意情報を発表。「8、9月は平年より高い傾向」「(最高気温が)39~40度の可能性がないとは言えない」などと注意喚起した。蒸し風呂状態の日本列島で、被災地も例外ではない。

 甚大な被害を受けた岡山と広島はきのう、今年最高気温を記録。この週末も体温を上回りそうな酷暑になるとみられている。朝日新聞によると、12日時点で年齢や死亡状況が明らかになっている141人のうち、60歳以上が100人で7割を超えたという。

「災害弱者」とされる高齢者ほど犠牲を強いられているのが浮き彫りである。西日本豪雨は突然発生した大地震とは違う。凄まじい降雨量は予測され、警報も発せられていた。それなのに、なぜこれほど被害が広がり、犠牲者を増やしたのか。防ぐことはできなかったのか。

■ 被災者は「麻生、安倍に言ってもムダ」

 被災地を取材したジャーナリストの田中龍作氏は言う。

「安倍首相が初めて視察に入った倉敷市立第二福田小の体育館に避難している住民は、〈政府の対応が遅かったわな〉と口を揃えていました。気象庁が大雨としては異例の緊急会見で警戒を呼び掛けた当日に開かれた赤坂自民亭の宴会については、ほぼ知らなかったですね。体育館にテレビはなく、電波状況も悪くて情報を入手しづらい環境にあった。それで一連の話を伝えると、〈えっ!?頭に来るなあ〉と怒りをあらわにする方もいれば、〈麻生さん、安倍さん。あのレベルの人たちには何を言っても無駄〉という諦めも聞こえました」

 被災者の憤りは当然だ。気象庁の緊急会見から非常災害対策本部の設置まで66時間を要した。各地に避難勧告が出され、死者・行方不明者が続出する中、安倍首相がやったことは「7月5日からの大雨に関する閣僚会議」に15分出席しただけ。国民が死に直面する災害に見舞われる中、私邸にこもっていたのだから、この男の危機管理はメチャクチャ。「空白の66時間」に対応を急げば、被害を食い止められた可能性は決して小さくなかった。北朝鮮のミサイル脅威には「国民の生命と財産を守るために最善を尽くす」と冗舌だったのに、被災者は放置。冷淡な本性がアリアリと浮かび上がる。

  

 豪雨「東京直撃」で死者4600人、経済損失100兆円

 人命軽視の政権のもと、大規模災害が首都圏を襲ったらどうなるのか。豪雨や地震が首都・東京を直撃したら、この国は一体どうなってしまうのか。

 中央防災会議の試算は衝撃的だ。関東を北から東に流れる利根川流域の72時間平均雨量が約320ミリと想定した場合、最大で死者数2600人に上り、86万世帯が浸水。孤立者は110万人に達するという。ライフラインもメタメタだ。電力59万戸、ガス26.6万戸のほか、上水道14万人、下水道180万人に影響が出るという。埼玉の奥秩父から東京湾に注ぐ荒川流域で72時間平均降水量が550ミリの想定では、死者数2000人、51万世帯の浸水、孤立者86万人とされている。

 西日本豪雨で観測した72時間雨量は高知県馬路村1319.5ミリ、広島県呉市465.0ミリ、愛媛県松山市360.5ミリを記録した。同様の現象が東京で起きれば、首都は壊滅的ダメージを受けるということだ。

 「首都水没」の著者で、リバーフロント研究所技術参与の土屋信行氏はこう言う。

 「西日本豪雨と同規模の降雨量に襲われたら、東京はひとたまりもありません。都内の雨水は下水管を通じて排水されますが、対応能力は1時間に50ミリ。排水能力は追いつかず、墨田区、江東区、葛飾区、江戸川区などの海抜ゼロメートル地帯はすべて水没するでしょう。都心部を縦横する地下鉄も脅威になる。トンネルはキレイに整備された巨大な水道管のようなもので、ひとたび大量の水が流れ込めば一気に押し流されてしまいます」

 東京メトロの町屋駅や北千住駅が水没した場合、12時間後には丸の内や大手町周辺も水没してしまうという。

 「今年6月に土木学会が発表した資料によると、洪水や高潮による被害が東京で発生した場合、建築物などの資産被害は総額65兆円と推定され、経済被害も合わせれば損害は100兆円を超えるとみられます。もっとも、これは西日本豪雨より小規模な室戸台風(1934年)を想定したものに過ぎません。首都機能を守るためにはスーパー堤防の整備を拡大し、排水能力を高めるなど、インフラ整備を早急に進める必要があります」(土屋信行氏=前出)

 活断層だけでなく、地震が起きるプレート境界も複雑に重なる首都圏は大規模な首都直下地震の発生も想定されている。地震調査委員会が先月末に公表した「全国地震動予測地図2018年版」によると、30年以内に震度6弱以上の揺れに襲われる確率は千葉市85%、横浜市82%、水戸市81%、さいたま55%、東京48%。中央防災会議はM7.3の都心南部直下地震の発生によって、最大で死者2.3万人、全壊・焼失家屋は61万棟に達し、被害額は95兆円とも試算している。この政権で「次は東京」が現実になると想像しただけで戦慄が走る。

■ 「内閣不信任に値する」49.5%

 作っただけのハザードマップ、首都圏の脆弱さ、地震にも打つ手なし……。それなのに、国防には血道を上げるのが安倍だ。第2次安倍政権発足以降、中国や北朝鮮の脅威をあおり続け、防衛費は5年連続で拡大。年末に策定する新防衛計画大綱で、防衛費の対GDP比1%枠を撤廃して2%に倍増させることを自民党に提言させた。過去最大5兆円台の防衛費を、さらに10兆円規模まで膨らませるつもりだ。米朝対話の再開で北朝鮮の脅威が薄まる中、6月に閣議決定した「骨太の方針2018」で「防衛力を大幅に強化する」と明記。8月の概算要求では過去最高の5兆円超の防衛関係費を要求するという。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)は言う。

 「安倍首相の危機意識は歪んでいます。自然災害が頻発する日本のトップでありながら防災に対する感覚は貧弱で、いつ来るとも分からない軍事的脅威には徹底的に備えようと国防力を肥大化させている。東アジア情勢の変化を踏まえればなおさらのこと、優先順位を完全に間違えています」

 時事通信の世論調査(6~9日実施)で内閣支持率は前月比1.5ポイント増の37.0%、不支持率は2.5ポイント減の40.9%という結果が出た。微増する理由が判然としないが、不支持が支持を上回る状況は5カ月続く。この数字以上に不信感は強まっているといっていい。野党が内閣不信任決議案の提出を検討する中、モリカケ問題をめぐる政権の対応が不信任に値するかとの問いには「値する」が49.5%を占め、「値しない」の28.1%を大きく引き離した。アベ自民党が強引に成立させようとしている2法案にも反発が強まっている。参院合区対策で定数6増を狙う公職選挙法改正案は反対49.8%、賛成23.3%。カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法案は反対61.7%、賛成22.1%だった。

 「西日本豪雨による被災に日本中が心を痛めている中、担当大臣の石井国交相を国会に張り付け、ドサクサ紛れに自分勝手ならぬ“自民勝手”な法案を通そうとしている。安倍首相をはじめとする自民党の政治家は人間が腐りきっています。一連の対応を見て、改めてそう感じました。モリカケ問題であれほどデタラメをやりながら、内閣支持率は下げ止まり傾向を見せている。それで国民をナメ、タカをくくっているのでしょう」(五十嵐仁氏=前出)

 防災には目もくれない政権でいいのか。この国が沈みゆくのをただ眺めていていいのか。
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