社会の鑑

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パチンコ店舗名の公表

2020-04-25 15:35:00 | ノンジャンル
吉村大阪府知事、休業要請に従わないパチンコ店舗名を公表
―法の手続きは守られていたのかー

1 大阪府の説明
 4月24日、大阪府は、休業要請に従わず、営業を継続していたとして、6つのパチンコ店の店舗名を公表した。
 
 大阪府では新型コロナウイルス感染症の防止対策のため、大阪府緊急事態措置により、令和2年4月14日から感染の拡大につながるおそれのある府内の施設に対し、新型インフルエンザ等対策特別措置法第24条第9項に基づく、施設の使用制限等の協力要請を行ってきました。
つきましては、令和2年4月24日現在において、営業を継続している以下の施設について、同日付で、同法第45条第2項に基づく施設の使用停止(休業)の要請を行ったので公表します。

ここにも出てくる通り、24条9項の「要請」はすでに行われていたが、この要請に従わず、まだ営業継続をしている店舗に対しては、「24日付で、同法第45条第2項に基づく施設の使用停止(休業)の要請」を行ったというのである。
産経新聞によれば、「専門家の意見を踏まえ、パチンコ店は感染拡大のリスクが高い『3密』(密集・密閉・密接)になりやすいと判断。特措法24条の一般的な要請から45条の『より強い要請』に切り替えた」とし、「府は23日までに営業を続けているパチンコ店11店舗の事業者に、協力が得られない場合の対応を文書で事前通告。応じなかった6店舗を公表した」という。

2 特措法45条の要件とガイドラインの説明
 産経新聞が言う「一般的な要請」は、「新型コロナ対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるとき(24条9項)」に行われるが、緊急事態宣言下で行われる「要請」(産経新聞の言う「より強い要請」)は、「新型コロナのまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるとき(45条2項)」に行われる。これらの要請は、単なる「切り替え」ではない。「要請」を出すときに、必要とされる要件に合致しているかどうかが検討されなければならない。
 付言しておくと、この45条2項による「要請」を正当な理由もなしに従わないときには、「新型コロナのまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため特に必要があると認めるときに限り」施設の使用停止等を支持することができることになっている(45条3項)。
 この「要請」の要件について、4月23日に内閣府から出された「第45条の規定に基づく要請、指示及び公表について」(以下、「ガイドライン」という)と題する「事務連絡」でも、まずこの要件を確認し、「特措法第45条2項に基づく要請は、同項で定められた要件である「新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するために必要があると認めるとき」に適合する必要がある」としたうえで、「単に特措法第24条第9項の規定に基づく要請に従わないという理由だけで特措法第45条第2項の規定に基づく要請を行うのではなく、対象となる個別の施設が使用の継続を行う場合に、新型コロナ等のまん延につながるおそれがあると認められる必要がある。これは、必ずしも現に対象となる個別の施設においてクラスターが発生している必要はないが、例えば、専門家の意見として、対象となる施設やその類似の環境(業種)が、クラスターが発生するリスクが高いものとして認識されていること等が求められるものと考えられる」と説明している。

3 大阪府の施設名公表は、要件を満たしているのか。
 45条2項の「要請」が正しく行われていないにもかかわらず、施設名を公表することは、違法である。
 そこで、今回の大阪府の「要請」は、法の要求する要件を満たして行われたとどうかを検証する。
 特措法45条9項は、「新型コロナのまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるとき」に、施設管理者に「施設の使用の制限若しくは停止」を要請することができると定めている。これは、政府の「対象となる個別の施設が使用の継続を行う場合に、新型コロナ等のまん延につながるおそれがあると認められる必要がある。これは、必ずしも現に対象となる個別の施設においてクラスターが発生している必要はないが、例えば、専門家の意見として、対象となる施設やその類似の環境(業種)が、クラスターが発生するリスクが高いものとして認識されていること等が求められるものと考えられる」という説明に従えば、「クラスターが発生するリスクが高いとして認識されている」ことが必要である。
マスコミ等で報じられた大阪府の説明では、24日に施設の使用停止の要請を行い、同日に公表したという。また、産経新聞によれば、「専門家の意見を踏まえ、パチンコ店は感染拡大のリスクが高い『3密』(密集・密閉・密接)になりやすいと判断」したという。
これは、内閣府のガイドラインに合致しているのだろうか。ガイドラインでは、より高いレベルの危険性が要求されており、「クラスターが発生するリスクが高い」ことが要求されている。それに対して、大阪府の説明では、「感染拡大のリスクが高い3密になりやすい」というだけである。
ここには、大きな齟齬がある。大阪府の説明をうのみにすれば、まだ、45条2項の「要請」を出すための要件を満たしているとは到底言えない。
日本は法治国家であり、私権は守られるべきものである。新型コロナのさらなる感染を防ぐという命題は了承されるとしても、法を乱用し、違法な私権の制限は、厳に慎むべきである。


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