吉村大阪府知事による休業要請から施設名公表への動き
1 施設名公表への動き
4月17日、吉村大阪府知事は、NHKのインタビューに答え、「要請」を受け入れず、営業を続けている施設への対応について、「感染拡大の非常に大きな要因になるので、こうした施設の情報については、府のコールセンターに連絡をいただきたい。府で現地調査を行う」と述べ、「休業要請に応じてもらえないということであれば、次の措置として、施設名を公表して要請を行う。それでも応じてくれない場合は、法律に基づいて指示ができるので、その手続きに移る。法律でできる最大のことは公表と指示なので、どんどん踏み切っていくつもりだ」と述べ、法律に基づいて、施設名の公表などに踏み切る考えを示したという(NHK関西NEWS WEB)。
共同通信は、20日、「新型コロナウイルス特別措置法に基づき民間施設に休業を要請している大阪府で、府のコールセンターに『対象の店が営業している』といった通報が20日までに500件以上寄せられたことが分かった。厳しい経営事情にもかかわらず行政の支援は限定的で、やむなく営業を続ける実態がある。だが府は施設名公表などさらなる対応強化を視野に入れる」と伝えた。
また、西村康稔新型コロナ対策担当大臣は、21日の記者会見で、パチンコ店を対象に休業要請の強化を検討していると明らかにした。その理由について、西村大臣は、「パチンコ店について、緩やかな協力を求める要請をめぐり『従わないケースがある』と指摘した。『ある地域であいていると、県をまたがって人が集まってくるとの報告も受けている』とも述べた(日本経済新聞4月21日)。
2 休業要請の実施と法的根拠
4月22日の朝日新聞によれば、32都道府県で「休業要請」が行われているという。「要請」を検討中の県は、青森、岩手、徳島、香川、愛媛、沖縄の6県であり、要請をしない県は静岡、和歌山、鳥取、岡山、長崎、大分、宮崎、鹿児島の9県である。
「休業要請」の法的根拠については、各自治体の発表によると、根拠を発表していない自治体もいくつかあるが、それ以外はすべて、新型コロナ特措法24条を根拠にしている。
これは、政府の対策本部が定めた「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」「三 新型コロナウイルス感染症対策の実施に関する重要事項(3)まん延防止」の規定に従ったものであり、第1段階としては法第24条第9項による協力の要請、正当な理由がないにもかかわらず、この要請に応じない場合に、第2段階として法第45条第2項に基づく要請、次いで同条第3項に基づく指示を行い、これらの要請及び指示の公表である。
第一段階の要請は、緊急事態宣言が出されるかどうかにかかわらず、各自治体対策本部長である知事が出す、新型コロナ対策に必要な要請である。
これに対して、第二段階の要請、指示、公表は、緊急事態が宣言されていることが前提である。その緊急事態下での最初のことは、必要な要請である(45条2項)。事業者が「正当な理由がない」のに「要請」に応じないときは、「要請に係る措置を講ずべきことを指示」し(同3項)、それらの「要請」「指示」は遅滞なく公表される(同4項)。
このように、同じ「要請」という言葉に当たることを知事がしたとしても、どちらの「要請」かにより、その後の、知事による対応が異なってくることに注意しなければならない。
3 西村担当大臣の越権発言と吉村知事の威嚇発言
緊急事態宣言は日本全国に及んだとはいえ、32都道府県で出されている「要請」は、新型コロナ特措法24条9項に基づいているにすぎない。この24条9項に基づく「要請」には、次につながる手段が存在しない。
そこで、法は、緊急事態が宣言された以降を想定し、緊急事態宣言下での「要請」「指示」「公表」を定めている。
したがって、対策本部長である知事が、24条9項による「要請」では不十分であったと判断した時には、45条2項に基づく「要請」をしなければならない。それらの「要請」は同一のものではない。24条9項による「要請」は、「新型コロナ対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるとき」に行うことができるが、45条に基づく「要請」は、「新型コロナのまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるとき」が必要であり、一段の高いレベルの必要性が要求されている。
政府は、緊急事態宣言を行うことができ、「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」を決定することはできるけれども、各対策を実施するのは、各自治体本部長である知事である。
そのことを前提に考えた場合、21日の西村担当大臣の「さらに強い措置を検討している」という発言は、自らの権限に含まれていない事項であり、たとえ担当大臣といえども、触れてはいけない事項であり、越権行為である。
吉村知事は、確か弁護士であったと思う。この人が、自らの「指示・公表」に対する批判に対し、色を成して反論した。「この人、本当に弁護士なの」と私は思う。新型コロナ特措法の構造を理解していれば、二つの「要請」の違いは当然理解しているはずである。24条9項から45条2項への「要請」には、その判断基準が異なっているので、24条9項の「要請」がうまくいかなかったから、直ちに、45条2項の「要請」が出てくるものではない。それぞれの判断基準が十分に検討されなければならない。45条2項の「要請」が行われずに、直ちに「指示」を出すことは違法である。
吉村発言は、「要請」に応えるかどうかは任意の判断にゆだねられているにもかかわらず、それに従うことが絶対の前提であるようにふるまい、事業者に圧力をかけようとしているのであろう。それは、まさに威嚇である。
1 施設名公表への動き
4月17日、吉村大阪府知事は、NHKのインタビューに答え、「要請」を受け入れず、営業を続けている施設への対応について、「感染拡大の非常に大きな要因になるので、こうした施設の情報については、府のコールセンターに連絡をいただきたい。府で現地調査を行う」と述べ、「休業要請に応じてもらえないということであれば、次の措置として、施設名を公表して要請を行う。それでも応じてくれない場合は、法律に基づいて指示ができるので、その手続きに移る。法律でできる最大のことは公表と指示なので、どんどん踏み切っていくつもりだ」と述べ、法律に基づいて、施設名の公表などに踏み切る考えを示したという(NHK関西NEWS WEB)。
共同通信は、20日、「新型コロナウイルス特別措置法に基づき民間施設に休業を要請している大阪府で、府のコールセンターに『対象の店が営業している』といった通報が20日までに500件以上寄せられたことが分かった。厳しい経営事情にもかかわらず行政の支援は限定的で、やむなく営業を続ける実態がある。だが府は施設名公表などさらなる対応強化を視野に入れる」と伝えた。
また、西村康稔新型コロナ対策担当大臣は、21日の記者会見で、パチンコ店を対象に休業要請の強化を検討していると明らかにした。その理由について、西村大臣は、「パチンコ店について、緩やかな協力を求める要請をめぐり『従わないケースがある』と指摘した。『ある地域であいていると、県をまたがって人が集まってくるとの報告も受けている』とも述べた(日本経済新聞4月21日)。
2 休業要請の実施と法的根拠
4月22日の朝日新聞によれば、32都道府県で「休業要請」が行われているという。「要請」を検討中の県は、青森、岩手、徳島、香川、愛媛、沖縄の6県であり、要請をしない県は静岡、和歌山、鳥取、岡山、長崎、大分、宮崎、鹿児島の9県である。
「休業要請」の法的根拠については、各自治体の発表によると、根拠を発表していない自治体もいくつかあるが、それ以外はすべて、新型コロナ特措法24条を根拠にしている。
これは、政府の対策本部が定めた「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」「三 新型コロナウイルス感染症対策の実施に関する重要事項(3)まん延防止」の規定に従ったものであり、第1段階としては法第24条第9項による協力の要請、正当な理由がないにもかかわらず、この要請に応じない場合に、第2段階として法第45条第2項に基づく要請、次いで同条第3項に基づく指示を行い、これらの要請及び指示の公表である。
第一段階の要請は、緊急事態宣言が出されるかどうかにかかわらず、各自治体対策本部長である知事が出す、新型コロナ対策に必要な要請である。
これに対して、第二段階の要請、指示、公表は、緊急事態が宣言されていることが前提である。その緊急事態下での最初のことは、必要な要請である(45条2項)。事業者が「正当な理由がない」のに「要請」に応じないときは、「要請に係る措置を講ずべきことを指示」し(同3項)、それらの「要請」「指示」は遅滞なく公表される(同4項)。
このように、同じ「要請」という言葉に当たることを知事がしたとしても、どちらの「要請」かにより、その後の、知事による対応が異なってくることに注意しなければならない。
3 西村担当大臣の越権発言と吉村知事の威嚇発言
緊急事態宣言は日本全国に及んだとはいえ、32都道府県で出されている「要請」は、新型コロナ特措法24条9項に基づいているにすぎない。この24条9項に基づく「要請」には、次につながる手段が存在しない。
そこで、法は、緊急事態が宣言された以降を想定し、緊急事態宣言下での「要請」「指示」「公表」を定めている。
したがって、対策本部長である知事が、24条9項による「要請」では不十分であったと判断した時には、45条2項に基づく「要請」をしなければならない。それらの「要請」は同一のものではない。24条9項による「要請」は、「新型コロナ対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるとき」に行うことができるが、45条に基づく「要請」は、「新型コロナのまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるとき」が必要であり、一段の高いレベルの必要性が要求されている。
政府は、緊急事態宣言を行うことができ、「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」を決定することはできるけれども、各対策を実施するのは、各自治体本部長である知事である。
そのことを前提に考えた場合、21日の西村担当大臣の「さらに強い措置を検討している」という発言は、自らの権限に含まれていない事項であり、たとえ担当大臣といえども、触れてはいけない事項であり、越権行為である。
吉村知事は、確か弁護士であったと思う。この人が、自らの「指示・公表」に対する批判に対し、色を成して反論した。「この人、本当に弁護士なの」と私は思う。新型コロナ特措法の構造を理解していれば、二つの「要請」の違いは当然理解しているはずである。24条9項から45条2項への「要請」には、その判断基準が異なっているので、24条9項の「要請」がうまくいかなかったから、直ちに、45条2項の「要請」が出てくるものではない。それぞれの判断基準が十分に検討されなければならない。45条2項の「要請」が行われずに、直ちに「指示」を出すことは違法である。
吉村発言は、「要請」に応えるかどうかは任意の判断にゆだねられているにもかかわらず、それに従うことが絶対の前提であるようにふるまい、事業者に圧力をかけようとしているのであろう。それは、まさに威嚇である。
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