福祉マネジメント&デザイン

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〜福祉サービスに経営と創造を〜

介護保険制度の2018年度改正案から動向を考える

2017年04月15日 | 経営戦略
次年度の介護保険制度の改正案(地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案)が厚生労働委員会で強行採決されました。
新聞やニュースでご覧になられた方もいらっしゃると思います。
我々が生業にしている社会保障制度の動向がこんな形で方向付けられているとなると、憤りすら感じられた方もいらっしゃったのではないでしょうか。

さて、この改正案の焦点になっているキーワードをいくつか取り上げます。

【利用者負担の2割から3割へ見直し】
2割負担の利用者の内、特に所得の高い層の負担割合を3割に引き上げるというもの。
介護保険制度の持続可能性の確保のためには、いわゆる現役世代との痛み分けが必要という方針を加速させた形となります。
3割負担となる対象者は12万人。
それと合わせ、2017年8月より高額介護サービス費の月額上限も37,200円から44,400円(7,200円引き上げ)となります。
3割負担となりますが、高額介護サービス費の月額上限があるので、実質7,200円増となります。
しかし、保険給付を抑制させる国の方針から推察すると、月額上限は今後も引き上げられる可能性が高いと考えられます。
例として、要介護3(26,931単位)の方の1割負担額(地域係数10で算出)は26,931円、2割負担53,862円(44,400円に対して+9,462円)、3割負担80,793円(44,400円に対して+36,393円)となります。
今後、1〜3割の自己負担額に応じた月額上限設定など、応能負担のさらなる拡充を図る可能性が高いことは、容易に想像することが出来るでしょう。


【介護医療院の創設】
介護療養型医療施設(介護療養病床)は2017年度末で廃止(ただし6年間の経過措置)され、新たに「介護医療院」が創設されます。
これまでの経過措置のあいだに、介護療養病床が老健へ移行する施設もありましたが、施設基準や職員配置基準を緩和した新たな入所系サービスという位置づけとなるようです。

待機者の減少傾向が加速する中で、介護と医療が一体となった「介護医療院」は、特養や老健との住み分けをいかに明確にしていくかが重要だと考えます。
近年、施設に求めらる役割や機能が時代とともに変化する風潮が強いように思います(救護施設が精神障害者の受け皿としての役割を担っていたり、グループホームで看取りを行うことが求められるなど)。
サービスを選ぶ利用者のや家族にもその違いが分からず、結局、ケアマネジャーの言う通りになってしまうでは、自己選択・自己決定の理念に反してしまいます。
利用者や家族が介護保険サービスをきちんと納得して利用できるよう、きちんと役割や機能を整理しながら、地域包括ケアシステムで提唱している面による社会福祉の展開が必要だと思います。


【共生型サービスの創設】
介護と障害が一体となってサービス提供を可能とする「共生型サービス」の創設も法人の事業戦略を大きく左右する内容といえます。
共生型サービスのモデルとなっているのが、”富山型デイサービス”です。
将来の利用者との関係性を築くために」でも触れましたが、この”富山型デイサービス”では利用者(要介護・要支援者だけと限定していない)が互いに交流できる居場所となっています。
地域住民の通い慣れた場所という認知から、将来の利用者(互いに支える関係)へと結びつくと思います。
制度化される「共生型サービス」が”富山型デイサービス”のように定義されるかは分かりませんが、介護サービスのさらなる拡充・展開が期待されるといえます。

以上、【利用者負担の2割から3割へ見直し】【介護医療院の創設】【共生型サービスの創設】の3つのキーワードを取り上げました。
今後、介護保険制度や報酬改定についての情報も随時、取り上げていきたいと思います。

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