小説キャンディキャンディFinal Story上・下巻 名木田恵子 (著) 祥伝社 (2010/11/1) の考察です
注:物語に関するネタバレがあります
アンソニーとの淡いはかない初恋
テリィとの激しい恋
アルバートさんとの運命的で穏やかな愛
テリィとの激しい恋
アルバートさんとの運命的で穏やかな愛
これは、キャンディキャンディについてネットでよく見かけるキャンディの3つの愛。
原作者さんの1982年ころの発言だそうです。
さて、この発言から18年が経ちました。新たに書き下ろされたFinal Storyでは、それらの愛はどのように描かれているのでしょう?物語を通してキャンディの気持ちを追っていきます。
アンソニー
(わたし、アンソニーが好き)
体中が熱くなってくる。胸が堅琴になったように鳴り響いている。
好き---誰かを好きになるとは、こんな気持ちだったのか。切ないくらい甘く、やさしく、そして叫びだしたいような。
-上巻P163-
約束したわけではない。糸にひかれるように、お互いの居場所がわかる気がする。
甘い香りに包まれてアンソニーとバラの手入れをして過ごす二人きりの時間---。
キャンディは何度も。夢のつづきのような思いにとらわれた。
-上巻P212-
体中が熱くなってくる。胸が堅琴になったように鳴り響いている。
好き---誰かを好きになるとは、こんな気持ちだったのか。切ないくらい甘く、やさしく、そして叫びだしたいような。
-上巻P163-
約束したわけではない。糸にひかれるように、お互いの居場所がわかる気がする。
甘い香りに包まれてアンソニーとバラの手入れをして過ごす二人きりの時間---。
キャンディは何度も。夢のつづきのような思いにとらわれた。
-上巻P212-
夢のような、甘く、やさしい初恋です。
ブログ主には、キャンディの初恋は、丘の上の王子様なのか、それともアンソニーなのかが、これまではっきりしなかったのですが、キャンディのこの気持ちを読む限り、初恋はアンソニーと言って間違いないでしょう。
テリィ
テリィがわたしをどんどん変えていく
-下巻P34 メイフェスティバル後の日記-
---テリィが好き。とっても、とっても好き。
こんな感情は初めてだ。アンソニーも好きだった。けれど、あのときの思いとは少し違っている。熱くて胸が焦げそう---。テリィのことを思うと、切なくて、それでいて、うれしくて呼吸が苦しくなってくる---。
-下巻P103 夏休み後のセントポール学園-
---テリィが好き!
キャンディはどんなにテリィが好きなのか、はっきりと自覚した。
(中略)
アンソニーへの淡く美しい色。それも色あせてはいない。
けれど---今は・・・テリィが放つ強力な色合いに息がつまるようだ。
-下巻P132 学生牢から出た後-
とっても会いたいひとがいます---。
けれど、そのひとに会う前に、わたしはできるなら自分の道をみつけたかった。そのひとに会えたとき、胸を張ってそのひとの目を見つめられるように。そのひとが喜び、誇りに思ってくれるように。
-下巻P155 カーソンさんへの手紙-
テリィの消息はわかった。
わたしはそれだけで目の前に輝く道筋がまぶしく広がっていくような気がした。
-下巻P187 テリィの新聞記事を見て-
アルバートさんのことは気になってはいたが、それよりも、テリィに会える!
もうすぐテリィに会える!
(中略)
夜勤をサボる---という看護婦としてあるまじき行為をおかしてまで、テリィの講演を見に行ったわたし---。
(中略)
誰かを心底、愛してしまったら、きれいな気持ちのままではいられない
-下巻P218 ニューヨークへ行く前-
スザナが命がけでテリィを愛しているのを知ってしまったこと
(中略)
スザナとわたし。
どちらが深くテリィを愛していたかなんて比べることはできないと思う。
わたしだって!---と叫びたかった。
-下巻P234-236-
テリィ---
いつも心の中であなたと向き合うと、わたしの心は熟れた甘酸っぱい杏の実のようになってしまうのです。かすかな風が吹いただけで、地に落下してしまいそうで呼吸さえできません。
-下巻P274 テリィへの未投函の手紙--ロックスタウンからすいぶん時が流れている-
-下巻P34 メイフェスティバル後の日記-
---テリィが好き。とっても、とっても好き。
こんな感情は初めてだ。アンソニーも好きだった。けれど、あのときの思いとは少し違っている。熱くて胸が焦げそう---。テリィのことを思うと、切なくて、それでいて、うれしくて呼吸が苦しくなってくる---。
-下巻P103 夏休み後のセントポール学園-
---テリィが好き!
キャンディはどんなにテリィが好きなのか、はっきりと自覚した。
(中略)
アンソニーへの淡く美しい色。それも色あせてはいない。
けれど---今は・・・テリィが放つ強力な色合いに息がつまるようだ。
-下巻P132 学生牢から出た後-
とっても会いたいひとがいます---。
けれど、そのひとに会う前に、わたしはできるなら自分の道をみつけたかった。そのひとに会えたとき、胸を張ってそのひとの目を見つめられるように。そのひとが喜び、誇りに思ってくれるように。
-下巻P155 カーソンさんへの手紙-
テリィの消息はわかった。
わたしはそれだけで目の前に輝く道筋がまぶしく広がっていくような気がした。
-下巻P187 テリィの新聞記事を見て-
アルバートさんのことは気になってはいたが、それよりも、テリィに会える!
もうすぐテリィに会える!
(中略)
夜勤をサボる---という看護婦としてあるまじき行為をおかしてまで、テリィの講演を見に行ったわたし---。
(中略)
誰かを心底、愛してしまったら、きれいな気持ちのままではいられない
-下巻P218 ニューヨークへ行く前-
スザナが命がけでテリィを愛しているのを知ってしまったこと
(中略)
スザナとわたし。
どちらが深くテリィを愛していたかなんて比べることはできないと思う。
わたしだって!---と叫びたかった。
-下巻P234-236-
テリィ---
いつも心の中であなたと向き合うと、わたしの心は熟れた甘酸っぱい杏の実のようになってしまうのです。かすかな風が吹いただけで、地に落下してしまいそうで呼吸さえできません。
-下巻P274 テリィへの未投函の手紙--ロックスタウンからすいぶん時が流れている-
テリィへの思いの前にはあらゆるものが色あせてしまうほど強烈で、せつなく、息苦しいほどの熱愛だと言えます。テリィはキャンディの行動の動機であり、道筋であり、希望なのですね。そして、その強い恋愛感情は、別れた後も長くキャンディの心の中に保たれたことが、テリィへの未投函の手紙から伺うことができます。
アルバートさん
会ったばかりなのに少年にはなんでも話せそうな気がしてくる。
-上巻P28 丘の上の王子様-
初めて会ったばかりなのにアルバートさんになら不思議に何でも話すことができた。
-上巻P150 レイクウッド-
アルバートさんが存在しているだけで不思議な安心感に包まれた。
今ならその見えない糸につながれた絆の意味がわかる。
-下巻P197 記憶喪失時を思い出して-
アルバートさんとは、何でも分かち合おう、と約束していたのだ。
つらいことも、うれしいことも---。
(中略)
わたしは、なんでもアルバートさんには話せた。
-下巻P240 アルバートさん行方不明時を思い出して-
うまく説明できないけれど、心のどこかで。アルバートさんは特別な存在なのだ、とわかっていた。
-下巻P241 アルバートさん行方不明時を思い出して-
アルバートさんは私の命の恩人というべき人だったのです
-下巻P254 マグノリア荘の管理人さんへの手紙-
アルバートさんは、キャンディにとって何でも話せて、なんでも分かち合える、見えない絆で結ばれた特別な存在だということがわかります。穏やかな愛情が流れています。
---では、あの人考察にもどってみましょう。
キャンディのこの「愛の物語」は誰に捧げられているのでしょうか…
それは---やはり、テリィと言わざるを得ないのではないでしょうか。
FinalStoryでキャンディの恋人/夫である"あのひと"が登場してしまった以上、この愛の物語には恋愛感情が不可欠となります。その人と身も心も一つになりたいという欲望も伴った愛情ですね。
キャンディのテリィへの思いは、その恋愛感情があふれています。一方、アルバートさんへの気持の中に恋愛感情に相当する表現は一切ありません。家族愛に近い、もしくはそれよりも特別な愛・絆・感謝は表現されていますが、決して恋愛感情と混同されてはいないのです。
アルバートさんも同じです。
アルバートさんもキャンディに感謝し、キャンディの幸せがどこにあるのか見届けたいと願っているのです。そしてアルバートさんはキャンディが切ないほどテリィを思い続け、求めてきたことを知っています。
キャンディは、苦しいほどに恋焦がれ、思いあったテリィと結ばれることができた。アルバートさんはキャンディの幸せを見届けた。これが、キャンディキャンディFinalSotryでございます。
ところで、アルバートさんは、スザナ没後にキャンディとテリィのキューピットとなった可能性を、作者は物語の中に残していると密かに考えておりまして、これについては改めて考察する予定でございます。