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小説キャンディキャンディFINAL STORY上・下巻 名木田恵子 (著) 祥伝社 (2010/11/1) の考察です 注:物語に関するネタバレがあります
前回に続きあのひと考察セカンドシーズンとして、「あのひと=アルバートさんじゃない」を考察します。
キャンディにとって、丘の上の王子さまが初恋の人だから、最後には、初恋の人(丘の上の王子さまであったアルバートさん)と結ばれたことで、物語として成立しているのだという議論を目にすることがありますが、それはどうでしょうか。
キャンディの初恋は、
*2011年の考察で書いたとおり、ブログ主はFINAL STORYでキャンディキャンディの物語をじっくり考察するまでは、キャンディの初恋が丘の上の王子さまなのかアンソニーなのか、よくわからないと思っていました。
キャンディキャンディ第3巻の登場人物紹介をご覧ください。
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ーー追記ーー
この記事を投稿してから漫画でこの一コマを見つけてしまったブログ主……
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漫画を読んだだけでは、丘の上の王子さまが初恋だと思ってしまっても仕方がありませんでしたね。3巻の人物紹介ではアンソニーが初恋だとされていたのに変更されています。このあたりは作者さんの言う、当時の大人の事情……漫画化されるために書いた物語の、小説としての繕いようのないほつれというやつのひとつでしょうか。ということで、漫画のほつれがFINAL STORYでどのように繕われているか、見てみましょう。
ーー追記ここまでーー
そしてFINAL STORYーー
(わたし、アンソニーが好き)
体中が熱くなってくる。胸が堅琴になったように鳴り響いている。
好き---誰かを好きになるとは、こんな気持ちだったのか。切ないくらい甘く、やさしく、そして叫びだしたいような。
-上巻P163-
キャンディが自分のことを好きなのは、もしかして自分が丘の上の王子さまに似ているからなのか?ーーとやんわりとアンソニーに尋ねられ、キャンディは、誤解しないでほしいと願いながら、こう言います
「アンソニー、わたしは、わたしは……わたしはアンソニーがアンソニーだから好きなの、大好きなの!」
-上巻P204-
丘の上の王子さまのことは、好きとかそういうことじゃないから誤解しないで・・・・・・というわけですね。
そして、そんな初恋の相手アンソニーを忘れさせることができた、ただ一人の存在テリィが登場!
キャンディとテリィがいちゃいちゃして過ごしたスコットランドでの夏休みが終わり、キャンディはもうアンソニーを忘れてしまったのだろうかと思って女子寮の方を見つめるアーチーにステアが言いますーー
「キャンディはきっとアンソニーを忘れることはできないと思うよ。それでも、苦しみは遠のく……。ぼくたちに……できないことが、あいつには……キザ貴族にはできるんだ」
-下巻P104-
アーチーにもステアにも、その時ロンドンのブルーリバー動物園にいたアルバートさんにもできないことをテリィだけができたのです。
イタリアで列車爆発事故に巻き込まれ、記憶喪失になり看病を必要としていたアルバートさんを置いて、テリィと再会するためにニューヨークに旅立つキャンディの心の声も聞いてみましょう。
アルバートさんのことは気になってはいたが、それよりも、テリィに会える!
-下巻P218 -
「それよりも」という表現に込めた作者さんの思いは相当なものだと思うのですよ。
アルバートさんはキャンディにとっては恩人で、強い絆で結ばれてはいるけれども愛するテリィへの気持ちが最上級。まして、丘の上の王子さまはFINAL STORYではキャンディの初恋ですらないので、アルバートさんが丘の上の王子さまだったことがわかっても、「恋愛」にはなりようがないのです。