<小児難病>「滑脳症」iPSで発症の仕組み解明
毎日新聞 3月12日(火)2時30分配信
慶応大と国立病院機構大阪医療センターの共同研究チームが、脳のしわがほとんどない小児の難病「滑脳症(かつのうしょう)」が起こる過程の一部を、患者の細胞から作った人工多能性幹細胞(iPS細胞)で再現することに初めて成功したとして、京都大iPS細胞研究所主催の国際シンポジウムで12日発表する。iPS細胞を使って小児難病の発症の仕組みを解明した例は少ないという。
滑脳症は先天性難病で、国内の患者は1000人以下。脳の神経細胞の形成に関係する遺伝子の突然変異が原因で、重い発達障害やてんかん症状が表れる。根本治療薬はない。
胎児は発達過程に伴い、神経細胞が脳の内部から脳の表面に移動して多数集積することで、しわのある大脳皮質が形成される。
慶応大の岡野栄之教授と馬場庸平医師らは今回、滑脳症の赤ちゃんのへその緒からiPS細胞を作製、神経細胞の前段階の神経前駆細胞に変化させて培養し、大脳皮質が作られる過程の一部を再現した。健常な人からのiPS細胞も同様に変化させ、比較した。
その結果、健常な神経前駆細胞の塊からは、足場となる細胞が放射状に伸び、それに沿って神経細胞が移動するのに対し、患者由来の神経前駆細胞では、足場になる細胞も神経細胞も極端に少なく、足場になる細胞の伸び方も乱れていた。
一方、iPS細胞でつくった神経前駆細胞に特定の物質をかけると、神経細胞の形成が改善された。治療薬の開発につながる可能性がある。【須田桃子】