(続き)
欧文フォントの利用の仕方を先にまとめたのですが、実際には日本語フォントの導入を先に試みていました。日本語の場合、PDFに埋め込みが許諾されたフォントセットのバリエーション、特に無料のものはそれほど多くありません。「楷書体の導入にチャレンジ」を目標に、取りあえず技術的に可能なのか確認しようとしました。ネットで検索した情報を元にMac内にあったTrue Type フォントで試したものの「font を見つけても開くことができない」と表示され上手くできませんでた。奥村先生の「美文書入門」を読んで念入りに確認し直したものの、やはり上手く行かず困り果てていました。選んだフォントが埋め込み対応していないだけだと気づいたのは2日後でした。更に試行錯誤してやっと上手く行きましたした。先週火曜日から土曜日まで5日間の成果を、こうやって記録しています。
ちなみに導入手順は
1.日本語用 OpenType (TrueType) を用意する
2.TeX が認識できるように実体を収納するか、リンクを貼る
3.利用したい和文フォントメトリックファイルを用意する
4.makejvf ツールで tfmファイルとvfファイルを作る
5.フォントへのMapファイルを作る
6.フォントの使用開始宣言を記述する(これは前の 4a と同じ)
ここまでに問題がなければタイプセットできるはずです。
1.日本語用 OpenType (TrueType) を用意する
最初に試みて失敗したのは、かなり前に購入してMac内に入れておいた True Type フォント で、
ダイナコムウェア株式会社http://www.dynacw.co.jp/dynafont/tabid/93/Default.aspx
の「DFP極太楷書体」DFKaiSho-UB-MP-RKSJ-H
(1 Apr, 1997: Version 1.00)です。現在流通しているモノとは違います。(どうやらバージョンによっては利用できるらしいが未確認)
HPで確認したら「全ての弊社TrueType製品(ダウンロード販売製品も含む)は、PDFへの埋め込みに関して許諾しておりますが、サポート対象外(保証外)です。PDFへの埋め込みに関してのご利用は、お客様のご責任の範囲にてお願いします。なお、弊社OpenType製品はPDFへの埋め込みをサポートしています。」とありました。つまりできなくて当然でした。この(保証外)の意味を勘違いして居たのが失敗原因です。1から6までのうち、1で失敗していた訳です。
この失敗を元に、
埋め込み可能で利用可能な無料フォントを探してみたところ、
Tフォント プロジェクトhttp://charcenter.t-engine.org/tfont/ にたどり着きました。ここの利用規約では「営利非営利を問わず、表示、印刷、またはそのために必要な作業に使用することができます」とありますし、フォント一覧PDFファイルのプロパティでフォント埋め込みを確認できました。今回は楷書体のみダウンロードして使うことにしました。
(末尾の数字が「01」のフォントは JIS X 0208 に対応しているとありますがUnicodeとは互換性がないので、OS Xにそのままインストールしても別の字やグリフが表示されるようです。当然 Unicode 文字をネイティブに扱うupLaTeXや、otfパッケージでコード指定利用するには別の工夫が必要です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/Tフォント )
<自分は TeXLive2013 を含む MacTeX-2013 Distribution http://tug.org/mactex/ を利用しています>
<ターミナルアプリだけでなく OS X の Finder でも操作できるように、関係する階層にあるフォルダの不可視属性は解除し、リンクも登録してあります>
2.TeX が認識できるように実体を収納するか、リンクを貼る
今回はOSにはインストールせず、ダウンロードして展開した中から TKaisho-GT01.ttc(楷書体)の実体をそのまま
/usr/local/texlive/texmf-local/fonts/opentype/kaisho/ に入れました。
3.ベースにする和文フォントメトリックファイルを用意する
今回ベースにした jis.tfm はTeXLive の標準インストールでは次のところにありました。
/usr/local/texlive/2013/texmf-dist/fonts/tfm/ptex/jis/
これを「kaisho.tfm」とコピー・リネームして次の所に入れました。
/usr/local/texlive/texmf-local/fonts/tfm/ptex/
4.makejvf ツールで tfmファイルとvfファイルを作る
(→
makejvf の説明:
http://ascii.asciimw.jp/pb/ptex/etc/README.makejvf.txt)
今回は、とりあえず
tks をファミリ名にします。ターミナルを起動して、makejvf kaisho.tfm
tks として、kaisho.vf とtks.tfm を作製しました。kaisho.vf は /usr/local/texlive/texmf-local/fonts/vf/ptex/ に移動させました。
5.フォントへのMapファイルを作る
本文中で
tks というフォントファミリが指定された場合に、dvipdfmx が実際に参照するフォント実体名(またはリンク)を記述します。取りあえず、
tks H TKaisho-GT01.ttc
と記述した kaisho.map を作り、次の所に入れました。
/usr/local/texlive/texmf-local/fonts/map/dvipdfmx/
本文以外の準備が終わったので、ターミナルで
sudo mktexlsr を実行してパスを通しておきます。
6.フォントの使用開始宣言を記述する
プリアンブルに幾つかの記述をしておきます。
まず先ほど作製したmapファイルを読み込んでPDFにフォントが埋め込まれるようにします。
\AtBeginDvi{\special{pdf:mapfile +kaisho.map}}
次に tks というファミリが呼ぶフォントを指定します
\DeclareKanjiFamily{JY1}{kts}{}
\DeclareFontShape{JY1}{kts}{m}{n}{<->s*[0,961]kaisho}{}
ここまでの準備で、次の本文中の記述がタイプセットできるようになるはずです。
{\usekanji{JY1}{kts}{m}{n}これは abc 123 123楷書体です。}
またで楷書を定義する
\kaishofamily と
\textkaisho の命令(欧文フォントは例外)をプリアンブルに記述します。
\makeatletter
\newcommand{\kaishodefault}{kts}
\DeclareRobustCommand\kaishofamily{%
\not@math@alphabet\kaishofamily\relax
\kanjifamily\kaishodefault\selectfont
}
\DeclareTextFontCommand{\textkaisho}{\kaishofamily}
\makeatother
ここまでの準備で、次の本文中の記述がタイプセットできるようになるはずです。
{\kaishofamily\mdseries 楷書 123 123}
\textkaisho{楷書 123 123}
更に色々な設定を作って実験してみて何となく仕組みがわかってきたと思います。もっと複雑なフォント利用の設定(ヒラギノと小塚とipaを同時に使うくらい)も何となくわかりましたが、今のところ必要がないので別の機会にします。
この頃は upLaTeX + otf を利用しているので、次はこれに対応したotfフォントをフルに利用できるようになりたいですね。
今回検索して特に参考にしたサイト
TeXでDTP
http://www.dab.hi-ho.ne.jp/t-wata/tex/
LaTeX のフォントの話
http://www.geocities.co.jp/texuttex/font_elementary.html
pLaTeX2e における和文フォントの扱いと多書体化の話
http://www.geocities.co.jp/texuttex/jfontsettings.html
欧文フォントのインストール - eggtoothcrocの日記
http://d.hatena.ne.jp/eggtoothcroc/20110906/p1
LaTeX に新しいフォントを持ち込む話 - マクロツイーター
http://d.hatena.ne.jp/zrbabbler/20110911/1315737566
ぴょぴょぴょ? - Linuxとかプログラミングの覚え書き: dvipdfmxで日本語フォントを埋め込んだpdfをつくる方法
http://d.hatena.ne.jp/pyopyopyo/20080106/p1
TFMファイルとJFMファイル
http://ascii.asciimw.jp/pb/ptex/tfm/index.html
SourceForge.JP > Find Software > LuaTeX-ja > Wiki > 資料-pTeXでの和文フォントの扱い
http://en.sourceforge.jp/projects/luatex-ja/wiki/資料-pTeXでの和文フォントの扱い