誤解しやすい内容なので、丁寧に読んで欲しいですね。
培養ラット脳細胞がロボット操る…英大学が開発成功と発表(読売新聞) - goo ニュース
ラットの脳細胞がロボット制御 英チームが実験に成功 - 共同通信
goo ニュースより一部引用
研究グループは、ラットの胎児から採取した脳細胞を培養して増やし、脳細胞が発する電気信号を検出できる装置に組み込んだ。二輪走行するロボットは、この電気信号を無線で受けて動く仕組みで、ロボットに積んだセンサーが障害物を検知すると、ロボット側から無線で送られる信号が脳細胞を刺激する。
1,まず「生きた脳」という完成された組織ではなく、バラバラに処理した「脳細胞」を培養して「コンピュータの部品」として使えるような状態にする。
2.「生体コンピュータ」に「プログラム」を組ませる「状況」を設定する。今回の場合、「生体コンピュータ」が出す電気信号により動作するセンサー付きロボットを用意した。このロボットは、動いている内に障害物に衝突する。障害物を感知したり、衝突したらセンサーから信号を発信させ、それを「生体コンピュータ」に送る。
3.何度も繰り返す内に「学習」して、障害物を回避することが出来るようになる。
という様なことらしいです。
通常我々が利用しているノイマン型と呼ばれるコンピュータアーキテクチャは、情報の直列処理(順番に計算していく)を基本としています。処理の高速化を図り、扱うデータの種類(画像とかアニメーションなど)によっては並列処理(多くの部分に分けて同時に計算していく)も行っています。でも基本は指示に従い逐次つまり「順番に」計算しているわけです。
そうではない非ノイマン型と呼ばれるコンピュータアーキテクチャの中で、ニューロコンピューティングというコンピュータに脳の真似をさせて問題解決を図る方法が長く研究されています。その特徴は、予め与えられた規則に沿って情報を処理するのではなく、与えられた情報によりどう処理をするかを決めていくことです。脳のように「学習する」ことで何らかの規則を見つけ出す・作り出すことを期待されています。事前に処理の仕方を用意するのが困難な課題に対して期待が持たれているシステムなのですが、ノイマン型に比べ高速化が進んでいません。
今回は、コンピュータに脳の真似をさせるのではなく、「本物の脳細胞」を利用したシステムを造る第一歩という評価をすることが出来ます。
人間の肉体に関しては、「万能細胞」の研究が進み、肉体の損傷や組織の不具合などを根本的に解決する医学的な発展を期待できるようになりました。初めのうちは受精卵を使うなど倫理的な問題も指摘されていましたが、今は受精卵を使わない回避策も研究されています。
それに対して今回の実験では、ラットの脳細胞を使いました。動物実験の中でも一番倫理的な拒否反応を示されるのは、生きたまま脳を外科的に操作する行為だと思います。脳細胞を利用することは、受精卵並に倫理的な問題提起がされるのではないでしょうか。SF的には数多くの小説・映画の中で扱われている「生体コンピュータ」への入り口なのですから。
素晴らしい実験結果であることは確かですが、もっと広く多くの人の反応を知りたいと思う記事でした。
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ラットの神経細胞でロボットを制御、動画(WIRED VISION) - goo ニュース