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睡蓮の千夜一夜

馬はモンゴルの誇り、
馬は草原の風の生まれ変わり。
坂口安吾の言葉「生きよ・堕ちよ」を拝す。

土くれになった骨と[願文(がんもん)]天台宗

2009-10-03 05:44:37 | 逝ける人々・本・禅と仏教
つつじが咲き誇る山の中腹に先祖代々の墓地があったある年、祖先の墓は移転となり、菩提寺の住職や親戚たち、地下足袋のおじさん達が墓前に揃った。戒名の文字も消えかかり風雨に傷んだ墓石が取り外されたそこだけ色の違う地面がスコップで掘り起こされて行く50cm~1m掘ってもまだ出ない。緊張した面持ちで見守るなか、「グズッ」というくぐもった音が聞こえた。腐った柩を突き崩す音は記憶に残る音土にまみれ朽ち果てた「骨 . . . 本文を読む

風雪のビバーク「最後まで戦ふも命 友の辺に捨つるも命 共に逝く」松濤明

2009-09-28 00:38:58 | 逝ける人々・本・禅と仏教
〔風雪のビバーク〕特選山岳名著シリーズ  松濤 明 二見書房「○○も地獄、○○も地獄」みたいな言葉が目につく。それを聞くたびに「最後まで戦ふも命友の辺に捨つるも命共に逝く」の遺書を思い出す。だが、彼の名前を思い出せずなんとも気にかかる。猛吹雪に閉ざされた雪山で友を見捨てられず逍遥と死を選んだ山男。かなり昔に読んだ本で記憶が曖昧だが、厳冬期の槍ヶ岳でビバークするも、先に凍死した友を見捨てることが出来 . . . 本文を読む

野口健氏の【エベレストでゴミ拾い】

2009-09-17 00:27:40 | 逝ける人々・本・禅と仏教
学生時代の野口健氏が語っていた。彼がエベレストに登ったとき8000m級高山のあちらこちらにゴミや遠征隊の遺棄品を見たと云う。登山ルートには、収容されない(できない)凍死体が残置され、凍土に眠る天然の墓場と化している。キャラバンを組む大規模遠征隊は潤沢な資金に物を言わせ、大量の資材・ガスボンベなどの装備を現地に持ち込み、地元のシェルパを雇い入れる。いくら急進先鋒の腕達者なアルピニストでも、地元のシェ . . . 本文を読む

映画と安吾の「ニンゲンが持つほのかな哀しさ」

2009-09-11 06:22:43 | 逝ける人々・本・禅と仏教
[Men in Black]猫の首に下げられた小さな鈴の中に銀河系宇宙が現れるところだけキャプチャしながら何回も、彼女と同じに「Wow!」と叫んだ。製作スピルバーグ氏潜在意識の具現化、願望夢想の映像化、ただの冒険活劇ではない深謀遠慮、彼は映画の神様の類だと信じているが、100年後の評価はどうなんだろう?歴史には世紀(100年)という長いサイクルを経て得心することが多くある。[鉄道員(ぽっぽや)]主 . . . 本文を読む

小宇宙の祈り

2009-09-10 02:20:37 | 逝ける人々・本・禅と仏教
ヒンドゥ教と仏教の渾然としたインド全土から、何万という人々がガンジス河畔のベナレスに集う。まだ明けやらぬ薄明の中、悠久のガンジス河に沐浴し、敬虔な祈りを捧げる人々。ガンジス左岸に昇る煙りは死者を荼毘にふした業火のなごり、ガンジスの茶色の流れは清濁あわせのみ、過去、現在、彼岸にと、流れゆく。岩手県遠野は信仰と民族と馬のふるさと日本の民俗学の父とよばれる柳田国男が書いた「遠野物語」は、遠野出身の民俗学 . . . 本文を読む

【永訣の朝】と語りべ

2009-09-09 05:56:26 | 逝ける人々・本・禅と仏教
5月の連休は岩手県釜石(海側)と盛岡(内陸側)にいた。地元の友人や途中で合流した仲間たちと連れ立って海岸近くの居酒屋へ繰り出した。地酒と海の幸が豊富で、お品書きのタンザクを見るだけでもうヨダレがでそうな店だ。岩手南部杜氏が丹精した地酒「酔仙」を酌み交し、角がピンと立った桃色がかったトロの刺身を見たとき、「あ~、これこれ」と嬉しさがこみあげた。再会の喜びと新たな刺激を受けた楽しい宴もおわり、戦い済ん . . . 本文を読む

朗読は耳に聴き心に沁みこむ。

2009-08-29 06:24:11 | 逝ける人々・本・禅と仏教
6年ぐらい前まで、日曜夜9時になると電気を消してベッドにもぐり込み、枕もとのラジオでNHK第一放送を聴いていた。「日曜名作座」は森繁久弥さんと女優の加藤道子さんが登場人物の声色を使い分け、表情豊かに小説を朗読するラジオドラマだった。新シリーズのアラビアンナイト千夜一夜の第一話が印象に残っている。エルサレムのお姫様は、絵描きの横恋慕のため、美しい顔を呪文とともに醜い獣の顔に変えられてしまった。姫の美 . . . 本文を読む

「裸にて 生まれてきたに なに不足」

2009-08-10 06:28:46 | 逝ける人々・本・禅と仏教
実家の電話はダイヤル黒電話。インターホン付きの最新型に替えようとしても、母がガンとしていうことをきかない。使えるうちはこれでいい、の一点ばり。このガンコ婆ぁと毒づきながら、どこか納得している自分がいる。深夜1時ごろ電話が鳴った。「ちょっと来てくれないか」と母が困惑した声でいう、話を聞くと、一日一回服用と決められている薬を再度飲もうとしている父を止めて欲しい。それが電話の内容だった。「ガマンできない . . . 本文を読む

白の葬列

2009-08-09 08:05:52 | 逝ける人々・本・禅と仏教
1999年初冬、知人の一人息子が交通事故で亡くなった。早朝、夜勤明けの帰宅途中の交通事故。車は大破、救急指定病院のICUに収容されたが内蔵破裂と脳挫傷で、もうどうしようもなかった。昨夜、風邪気味の息子が夜勤に出向くとき父親が「今日は会社を休め」と言ったが、彼は「まだ新入社員だから」と笑って出ていった。家族に看取られることもなくICUで一人逝った息子の最後に父親の動揺は激しい。強引に仕事を休ませれば . . . 本文を読む

軟蘇(なんそ)の法 

2009-08-08 06:28:06 | 逝ける人々・本・禅と仏教
身体をまっすぐに伸ばし、チカラを抜き、目を閉じて横になる。鼻の先にごく軽い羽毛を乗せていると想像する、その羽毛が少しも動かないように静かに呼吸を整える、ゆっくり数を数え心を安定させる。(数息観)(以下観想する)鶏の卵くらいの大きさの丸薬が額の上に乗っている、この丸薬は、よい香りのするさまざまな妙薬を練り固めたものでバターのように柔らかい。※「なんそ」とは牛の乳から製したバターのようなもの。その「な . . . 本文を読む