以下のご質問にお答えして。
【イスラム同胞団(兄弟団?)が信用できないとのことのようですが私にはどうも理解できない部分が多すぎて。2011年の民衆革命のおぜん立てをしたのがアメリカ政府の支援を受けていたイスラム同胞団傘下の「エイプリル6」ですと?外から見ればアメリカの傀儡であるムバラク政権よりはるかに扱い辛いであろう同胞団をアメリカが支援して民衆革命を起こさせたととれますが、何でまたそんな回りくどいことを??混乱するばかりです、お助け下さい。】
少しずつ分けてお答えします。
【お話があまりにも影の部分の偏りすぎているような感じで】
中東地域にいると、日々圧し掛かって来る巨大な西洋パワーをひしひしと感じ、時として暗く重い気分になるのですが、向かっている方向が、先進諸国の落ちぶれ方とは全然違う、西洋中世暗黒時代的な方向だと、さすがに心配になるのです。すぐ隣はサウジとイラン、パキスタン、アフガンですから。更に少しはまともだったエジプト、シリアが崩壊、宗教暗黒社会はリアリティーのある地域なんですよね。
【イスラム同胞団(兄弟団?)が信用できないとのことのようですが私にはどうも理解できない部分が多すぎて。】
【イスラム同胞団(兄弟団?)が信用できないとのことのようですが私にはどうも理解できない部分が多すぎて。】
日本でだれが最初にこの、Muslimbrotherhood と言う、はっきりした本来「兄弟的な関係団体」と言う意味をわざわざ「同胞」団と訳したか知りませんが、そもそもこの時点で正直じゃないですね。女性も平等に組織に含めて同胞と呼ぼう、と言う発想は兄弟団の中には無い事は、様々な女性に対する規制、社会進出を推奨しない政策からも明らかです。
【2011年の民衆革命のお膳立てをしたのがアメリカ政府の支援を受けていたイスラム同胞団傘下の「エイプリル6」ですと?】
この団体は必ずしも直接の「傘下」団体、と言う事ではないですが、中心メンバーは隠れイスラミストだと思います。この辺にもこの兄弟団と周辺シンパの「暗さ」が見え隠れし、怪しいとワタシは思っているんです。
「エイプリル6」と言う団体は昨年のエジプト民衆蜂起を組織した中心グループで、15人ほどの若者達から構成され、2008年から活動開始していました。その時点で既に在エジプト米国大使館へ協力援助を申し込んでいた事実がウィキリークスされています。
この後、2009年頃から既にアル・ジャジーラがドキュメント化に独占密着取材をしているのですが、それは即ち、同TV局と独占契約していたと言う意味ですから、契約金としても資金がアル・ジャジーラから出されていた事を証明していると言えます。 ですから同TV局は昨年、誰も近寄って外せない、タハリール広場の上空にカメラ設置することができ、常時中継できていた訳ですね。
その後、ムバラク政権崩壊後、アル・ジャジーラは、この団体の密着取材ドキュメンタリーを放送しました。その中で群集組織方法やデモ管理組織方法などのトレーニングをセルビヤから受けていた事も明かされています。その後更にウィキリークスで米国のトレーニング会社が訓練担当していた事も明らかになりました。
イスラム兄弟団に関して言えば、創設当初メンバーの次世代の人々は殆どが現在の組織からは抜けており、逆に如何に変容し、組織内部が堕落してきたかを主張、反対や改善活動をしている、熱心真摯な信仰者もいます。
その他、多くのイスラム教徒からの各地兄弟団への批判は少なくありません。 例えばシリアの反政府派中心団体の議長を務めていたフランス市民も兄弟団ですが、毎月大量の資金をドーハから受け取っていましたが、使い道は不明です。また同組織のスポークスウーマンはイスラエル訪問、ビルダーバーグ会議出席と、緊密にイスラエルとさえ共同してきています。
【外から見ればアメリカの傀儡であるムバラク政権よりはるかに扱い辛いであろう同胞団を…】
ムバラク政権、と言うよりムバラク一族が余りにも強欲、硬直老朽化した結果、新たな傀儡に挿げ替える必要があったのだと思います。
端的には、広大なエジプト市場に外資が参入しようとしても、賄賂要求の関係官僚の層が何重にもあり、賄賂払って参入しても結局利益は何も残らない程だった様です。これは、チュニジアもリビヤも同じです。資源豊かなで殆どインフラ未開発リビヤは更にです。
またリビヤは西アフリカ、ディープアフリカへのチャンネル、エジプトはスーダン他、東アフリカへのチャンネルですから、アフリカ全土を掌握するには、この二大アラブアフリカ国を完全に掌握する必要があります。
兄弟団の資金はサウジ、カタールから出ていますから、扱いが難しいどころか、欧米にとっては実に簡単です。資金源を完全に抑えてありますから。また低所得者、低教育層の多くは、宗教師の言う事は鵜呑みにする傾向が強く、管理は更に簡単な訳です。
だから「自力思考停止型のイスラム原理主義化」が欧米にとっては望ましい訳です。サウジが米国の最友好国である事実が何よりも明白に語っていると思います。
【アメリカが支援して民衆革命を起こさせたととれますが】
そのとおりです。
【何でまたそんな回りくどいことを??混乱するばかりです。】
イラク戦争後、欧米、特に米国は、もう同じパターンの高コストで印象悪い古いタイプの侵略戦争は望ましくない、と見たからでしょう。
世界世論、イスラム世論からの激しい攻撃批判を受けない、表からは全く見え難い新たな別の方法での、中東アフリカ地域戦略、資源管理、市場開放、再編成を必要としたと言うことです。
あたかも「アラブ民衆自らが望んで、民主的自発的に変えた政権」の形をとる必要があったからです。
米国の新しい外交戦略は、米国税金と米市民の命を使わずに、資源豊富で膨大な開発市場である途上諸国の市場開放、管理支配することです。これから次世代大経済圏、スーパーパワーの候補国を、グローバル資源へのアクセスを掌握管理する事でコントロール、外交カードとしたいからです。
それには原油高値を起こし、増産させたサウジ、カタール(はガスですが)の余剰資金を利用し、軍事ビジネス会社からの派遣プロ傭兵を潜入させて「民衆蜂起」の形をとり、国連、アラブ連盟を利用した上で、あたかも合法的に、世界世論をバックにした「民衆革命」と名付けた政権替え、社会解体、国土再編成、新傀儡政権樹立を成し遂げたのが、チュニジア、リビヤ、エジプトです。
シリアは今その途上。
リビヤとエジプトがアフリカへのチャンネル、アラブ世界全体への強い影響力に対して、シリアの場合は旧ソ連圏諸国、ユーラシア大陸へのチャンネルに当たり、同じく膨大な資源と未開市場への入り口になります。
シリア落しはイラン落しへの予備戦ですが、これはロシア、イラン、中国、インド他、ユーラシア諸国にっては、どうしても譲れない正念場がシリア戦争です。
何故かと言うと、もしシリア落しのパターンが成功し、国連、国際世論が認めれば、これらの国々にとっては「次は我が身」の問題だからです。
自国民の意思と決定を遥かに超えて、国連と西洋諸国が政権交替を強行する、と言う既成事実を認める事になるからです。
その意味では、西洋日本メジャーメディアが決して報道しない、上海協力機構と旧ソ連諸国協力組織加盟諸国は、シリア、イラン落しに深刻に反対し、軍事協力準備を進めている訳です。
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