京都が好き 写真が大好き by たにんこ

長く写真をやってると 
聞こえないものまで 
聞こえてくるんだな

「ひばりちゃんとやっちゃん」 2

2023年05月31日 20時04分54秒 | 猫 ネコ ねこ
「ひばりちゃんとやっちゃん」 2

武道の練習を休みがちになったおれに ある日お袋がこう言った。
「○○○○旅館に行くから 付いて来て」 と言われた。
その旅館は 後に通う事になる中学校の途中に有って
家からは近いし 中学校も近い。
その旅館の大女将とお袋は 茶飲み友達で お互い行き来してるし
おれにも優しくて 大好きな大女将だった。
初めて二人で行ったもんだから 大歓迎された。
暫くすると大女将が 「娯楽室に行こうよ」と おれとお袋を誘った。
付いて行くと そこは卓球台が二台有る 第二娯楽室と言う所だった。
大女将は 「今日は負けないからね!」と おれのお袋に言った。
おれのお袋は 「ふふふふふ 勝てるもんなら勝ってみな!負けたらビールね!」
おれはびっくりした。
お袋が強いらしい・・・デブなのに・・・
運動をやってるなんて 今まで一回も聞いた事が無い。
おれの家で仲居をやってる人のお姉さんが 大女将の所で仲居をやっている。
その人が審判だ。
暇な時間だから 下場の女中さんから仲居さんまで 10人位のギャラリーが出来てる。
驚きの連続だった・・・大女将は おれのお袋に まったく歯が立たなかった。
ギャラリーからも 数人挑戦者が名乗り上げたけど お袋が圧倒的に強かった。
数時間後 大女将の帳場に戻り おれのお袋は うひゃうひゃ笑いながらビールを飲み
つまみに出された刺身盛りを おれはちゃっかり恩恵に。
大女将はおれに言う。
「なぁ やっちゃん・・・お母さん強いべ?!カッコイイなぁ~!」 と褒めてる。
おれはその時 「初めて 見た・・・」と言うと 周りに居たギャラリーが
「えぇ~~~!!!やっちゃん・・・初めて見たのけ???!!!」 
とか言って 驚いてる。
おれは情けなかった。
お袋をデブ呼ばわりし 何にも出来ないくせに!と 罵った自分が情けなかった。
「お袋は卓球が出来る!しかも強い!」 初めて一個理解出来 尊敬できた。
けど この後 尊敬する事が 何個も出て来るんだ。
手始めの一個だった。
なによりも 機敏に動けるデブが 身近にいる事を初めて知ったし
その機敏デブが おれのお袋だなんて・・・

「ひばりちゃんとやっちゃん」 1

2023年05月31日 20時02分34秒 | 猫 ネコ ねこ
「ひばりちゃんとやっちゃん」 1

おれの親父は おれが小学校4年の時に 星になってしまった。
親父は典型的な亭主関白だった。
おれには厳しかったけど 優しい親父だった。
小さいながらも 割烹旅館を経営し そして町の為にも尽力を尽くした人で
大勢の人達からも慕われていた。
そんな人だったから 葬儀は町葬だった。
その数か月後に お袋が変わって行った。
なにかに憑りつかれたのが 取れた様に変わった。
それは良いんだけど 有る意味 良い訳が無かった。
おれに対して 運動をさせるようになったんだ。
親父が居なくなった分 張り切るのは分かる。
病弱なおれに運動をさせて 鍛え上げる・・・分かるんだ。
分かるけど 柔道 剣道 空手・・・と。
おれは 習う気も やる気も無いのに 勝手に話を進めて行く。
で 「ちょっと出掛けるから 一緒に・・・」 と 連れて行かされた時には 
もう習う事が決まっていて 相手の先生方は 待ってました!とばかりに 喜んじゃってる。
喜んでいるのは 先生方とお袋だけだ。
それから数カ月経った頃 頭に来て 生まれて初めて逆らったんだ。
「お母ちゃんは デブだから分からないけど やってるおれの身になってみろ!」と 
言うような事を言った。
不思議な事に お袋は怒りもしなかったんだ。
おれの育った田舎では デブは嫌われていた。
その嫌われ者が おれのお袋な訳だ。
デブは何故嫌われるか?
「自己管理力が全く無い・・・だから太る。動きが鈍い。我儘だ」と 言われてる。
デブで良いのは 相撲取りかプロレスラー位だった。
それを言った機会に 柔道 剣道 空手は 休みがちになった。

猫が消えた日 最後に

2023年05月20日 06時57分45秒 | 猫 ネコ ねこ


期待を寄せて 八嶋殿に向かった。
しかし いくら探しても誰も居なかった。
チョビと出会った大木の下に座り さっき奇跡的に出会った大ボスを
キャリーに何とか入れて 連れて帰ろうとした。
考えてた。
奇跡のたった一枚に映ってたチョビ。
振り向いた姿が写ってたチョビ。
ニャンコ達が居なくなって 会えたのは南のボスと 
東寺のニャンコ達を束ねる大ボスだけだった。
実際出会えたのは たった二人だけだ。
初夏の日差しがきつくなってきた六月。
初めて東寺のニャンコ達に出会ったのが 2004年の六月の撮影会だった。
あれこれと思い出して 座って居たその時・・・
懐かしい匂いと足音がした。
ゆっくりと立ち上がって 右を見ると チョビが・・・
カメラを出し ゆっくりとシャッターを切り 声を掛けた。
「チョビ チョビ」 それだけしか言えない。
おれの目から 大雨が噴出したからだ。
おれに近づいたチョビは 唸ってた。
しゃ~!しゃ~!と 怒ってる。
そして くるりと今来た方へ体を捻り 振り向きながら
「教えてやる!」 と言う。
へこんだ所へ振り向きながら 付いて来いと。
チョビは 気が狂ったように走り出し 走っては壁を登り 走っては木に登って・・・
最後に左端の壁に沿って歩き出した。
「チョビ!一緒にお家に帰ろう!」 何度も言った。
チョビは無視するかのように 「にゃ~~~!にゃ~~~!」 と 大声で鳴き
その先に有る大木に駆け昇り 高い壁の上に降り立った。
おれは直ぐに駆け寄り 「チョビ 一緒にお家へ帰ろう」 と声を掛けたが・・・
見降ろしておれを見てたチョビは にゃ~~~!と一声だけ残し 向へ飛び降りてしまった。
おれは チョビが昇って行った大木の下で へたり込んでしまった。
チョビは 「こうやって あぁやって逃げたんだ」 と おれに教えてくれた。
座り込んでたおれには 時間だけが過ぎていく。
大ボスだけでもと やっと立ち上がって歩き出した。
大ボスが居た場所へ向かった が・・・
そこには大ボスは居なかった。
おれはその年の六月いっぱい 通っては探したんだ。
チョビに会えるかもしれない 大ボスに会えるかもしれない 南のボスに・・・
来月 六月になる。
おれにとっての 出会いと別れの月が来る。
世界遺産 東寺 と言う 立派な所で こんな事が有ったんだ。

猫が消えた日 7

2023年05月20日 06時44分48秒 | 猫 ネコ ねこ


三日目 四日目と日だけが過ぎてゆく。
おれは諦めなかった。
諦めきれなかったんだ。
探し続けてた。
五日目が経ち 六日目の朝の事。
おれはリュックを背負う事にした。
リュックの中には チビとみ~が使ってる キャリーバックが入ってる。
開門と同時に中に入った。
御影堂の前は もうすっかりと様変わりしていた。
知り合いの常連さんは 誰も居ない。
御影堂を出て 講堂前に差し掛かった時 気配を感じた。
歩幅を緩めて歩いた。
誰かおれを見てる・・・
目を凝らし じっと大木の方を見て歩いた。
居た!
朝日に照らされて 悠然と座ってる大ボスが居た!
カメラを出し大ボスに近づき シャッターを切った・・・
一回だけ切った。
直ぐ止めた。
大ボスが怒ってる。
おれをじっと見ながら 「何故だ!何故なんだ!」 怒りで一杯の顔で
おれを見つめてる。
暫くの間 無言のままで見つめあって居た。
大ボスに言った 「後でまた来るから 一緒にお家に帰ろうな」 と。
期待が出て来た。
急いで八嶋殿に向かった。

猫が消えた日 6

2023年05月20日 06時41分29秒 | 猫 ネコ ねこ
猫が消えた日 6

開門の時間とともに おれは東寺に入った。
真っ先に 思い出の場所の大木の下に座った。
知っている常連さん達は 来ない。
あれこれあれこれ 思い出していた。
人が近づく気配がし 顔を上げると おんちゃんがいた。
「これ・・・無理しないでくれよ」 と言い 水筒を渡してくれた。
暫くすると 八幡宮の方から 気配を感じた。
誰か おれを見てる!
そっと立ち上がり ゆっくりと八幡宮に近づいて行った。
おれは立ち止まった。
八幡宮の下の下水管から 誰かが見てる。
じっと見つめてた・・・その時 ひょいと顔を出したにゃんこが。
きっと おれが動いたら 逃げるのが分かってた。
目を凝らし見ていたら 何と南門のボスだった!
丸い下水管から頭だけ出し おれを見ている。
おれは「ボス・・・ボス・・・」と 小さい声で呼びかけた。
するとボスは にゃぁ~~~ごぉ~~~!と デカい声を出し 下水管に頭を引っ込めてしまった。
にゃぁ~~~ごぉ~~~と 大きな声で三回叫び それきり出てはこなかった。
南門の猫一族を見たのはボス一人で それが最後になった。

猫が消えた日 5

2023年05月20日 06時38分27秒 | 猫 ネコ ねこ
猫が消えた日 5

辺りが夕日に照らされ その夕日の中で 振り返っておれを見ていたチョビが写ってた。
チョビが生きていて おれの方を見ていた。
どんな思いで逃げたのか どんな思いで隠れてたのか。
何故逃げなければいけなかったのか 何故隠れなきゃいけなかったのか・・・
おれと出会う以前から 出会ってからも 一生懸命生きて来たチョビと家族達。
皆は 何か悪い事でもしたのだろうか。
何故東寺に居るのだろうか。
ここに来てくれてる皆・・・考えてくれ。
行き着く先が東寺だった・・・逃げた先が東寺だった・・・捨てられたのが東寺だった・・・
それぞれが 人間の身勝手な事で ここに居たんだ。
目の前が数えきれないくらい ぼやけてしまった。
チビとみ~は おれの目から出て来る涙を 一生懸命舐めてくれた。
悲しみから 怒りに変わった涙を 慰めてくれてる。
明日になれば またチョビに会えるだろうか?
チョビは 何かを訴えたかったんだ。
それをおれに教えてくれたのは 東寺の猫一族のチビとみ~だ。
夜がもどかしかった。

猫が消えた日 4

2023年05月20日 06時33分28秒 | 猫 ネコ ねこ


翌日 撮影の準備をして 開門と同時に西門から入った。
一途の望みを捨てきれないまま 八嶋殿に向かった。
当たり前だが 途中の御影堂や講堂も くまなく探しながらだ。
居ない。
昨日も今日も 何時も通りに撮影の準備をしていた。
けれど 昨日から一枚もシャッターを切っていなかった。
チョビと出会った大木の下で 何時間も座っては辺りを見回し
何度も 御影堂や講堂 八嶋殿を探し回った。
閉門迄 それを繰り返してた。
何時ものように 「カメラマンさん もう閉門だよ」 と 声を掛けてくれてた警備員は
まるでウソのように おれの顔を見て目が合っても 声を掛けてはくれなかった。
家に帰り ニャンコとおんちゃんと 黙りこくって御飯を食べながら
上の空でTVを見 二階の部屋に行った。
パソの前に座ると チビとみ~が・・・
そんな事 一度もしたことが無いのに カメラバックを引っ搔き始めた。
おれは怒らなかった。
まだ小さい二人は にゅ~にゅ~鳴きながら 軽くではあったけど バックを引っ掻いてる。
カメラをバックから出し 「何だ?これか?これカメラだろう!」と言い 二人に見せたら
にゃ~~~!!!にゃ~~~!!!と 二人は大騒ぎで鳴いた。
おれはびっくりした。
「見て!早く見て!」 と 大騒ぎで鳴いている。
シャッターなど 一回も切っていないのに。
心当たりは 有る事は有った。
チョビと出会った大木の下で 帰ろうとして立ち上がった際に 誤ってシャッターを切ったことだ。
正面に八幡宮が見え 右にはちょっとへこんだ場所が有る。
カメラは そのへこんだ場所に向いていた。
カメラをパソに繋いだ。
やはり誤ってシャッターを切った一枚が 写っていただけだった。
チビとみ~は おれの膝の上に乗っていて 不思議な事に二人でテーブルの上に手を付いている。
パソを見ている。
しかも にゃ~~~にゃ~~~鳴きながらだ。
不自然に思ったおれは じっとたった一枚の写真を見ていた。
おれは その写真を拡大した。
!!!!!驚いた!
ぎりぎりまで拡大した たった一枚の写真には チョビが写っていたんだ。
右端隅に チョビが・・・

猫が消えた日 3

2023年05月20日 06時30分36秒 | 猫 ネコ ねこ
猫が消えた日 3

何故だ 何故猫達を・・・
東寺が行なった事は おれにだって理解は出来る。
が おれを知っている つまり 「にゃんこ達を写しに来てるカメラマンだ」
と言う事を知っている坊主や 警備員達など 何故一考出来なかったのか?
カリカリのおじちゃんや 缶詰のおばちゃんや ボランティアの人達・・・
そして おれに 何故相談してくれなかったのか?!
一言で済む話じゃなかったのか?
「東寺は少なからず 猫の被害が大きい。だから引き取ってくれる人を探してくれないか?」
何故そういう相談を おれ達にしなかったのか?
実際に有った話は 子猫を引き取ってくれた人を おれは何人も知っている。
だからこそ 怒りが込み上げるんだ。
家に帰ってから 何度も何度も何度も 繰り返し思っては 悲しみと怒りが・・・
夜 チビとみ~を抱いて 階下に降りた。
おれは黙ったまま コップに酒を注ぎ飲んだんだ。
目の前に居るおんちゃんが 「ちょっと話して良いか?」と言い やはり酒を飲んだ。
「昼頃 東寺に行ったんだけどよ 猫が居ね~んだよ」と言い そのまま黙り込んだ。
後の話だが おれが異常なくらい 何故か怖かったと言う。
おれは話した。
おんちゃんはでかい声で 坊主を罵り始めた。
その時のチビとみ~は 何故かずっと うつ伏せで居たんだ。
おれと同じく 御飯を食べないんだ。
おれは心の中で 明日も明後日も ニャンコ達を探しに行くと決めた。

猫が消えた日 2

2023年05月20日 06時26分20秒 | 猫 ネコ ねこ
猫が消えた日 2

撮影の準備をして 急いで東寺西門へ行った。
東寺西門は その当時住んでた家から 目と鼻の先だった。
西門へ入り 御影堂前に行くと・・・
常連さんやボランティアの人々が集まっていた。
まだ空が明け切っていない中で 皆口々に 「猫殺しの糞坊主!出て来い!」
「出て来れないのか?!糞坊主!」と 異常も異常に殺気立っていた。
30人くらいは居た。
おれを見かけるや否や 「カメラマンさん!猫が殺されたぞ!」とか
缶詰のおばちゃんが おれにしがみ付き 「猫が~~~!猫達が殺されちゃった~~~!」
おれはおばちゃんを振りほどき ちきしょう!と言いながら走ってた。
講堂前に居た大ボスを走りながら探し 八嶋殿へ急いだ。
居ない 誰も居ない。
おれは立ちすくんで居た。
白々と夜が明けて来た。
八嶋殿をくまなく探し 八幡宮も探し 講堂前のボスも探し・・・
居なかった。
チョビと出会った大木の下で おれはどれくらいの時間座って居たんだろうか。
頭上から声がして上を向くと カリカリのおじちゃんが居る。
「おれは・・・」 とだけ言うと 去って行った。
おれは家に戻る事にした。
御影堂の前には 誰も居なかった。
カリカリのおじちゃん 缶詰のおばちゃん ボランティアの人達。
誰も居なかった。
殺気立った怒鳴り声と 泣きながら叫んでいた顔が ずっとずっとずっと 
今でも思い出し浮かぶ。
何の罪も無いニャンコ達が 一夜にして消え去った。
家に戻り 玄関を開けたら チビとみ~が出迎えてくれた。
二人を抱えて 「お前達 東寺最後の猫になっちゃったぞ」 と言った。
二人はおれの顔を じ~~~っと見つめてた。

猫が消えた日 1

2023年05月20日 06時22分46秒 | 猫 ネコ ねこ
猫が消えた日 1

これを書くにあたって…
悩んだ。
書こうとして 何度も手を止めては苦しくなった。
おれはちっぽけな人間だ。
けど 心を持ってる人間だ。
書くと 涙で見えなくなる。
怒りが込み上げて どうする事も出来ず 書くのをやめた。
その繰り返しだ。
けど 知ってもらいたい一心で 書く決意を。

16年前の事だ。
事件が起きる前日 夜まで撮影会をしていた。
Pm19:00が回っていた。
家に帰るためバスに乗った。
家の近くでバスを降りたんだけど 振り返ると 東寺の明かりがまだ点いていた。
Pm19:30を とっくに過ぎていた。
何故か胸騒ぎがしてる。
家に入り一服をしながら ちょびちょび酒を飲んでた。
おんちゃんが「東寺まだ明かり点いてるけ?」と 聞く。
30分前に 家を出て見たらしい。
おんちゃんが玄関を出て・・・  「まだ明かり点いてるよ」と。
TVを見ながら おれの家族のニャンコと遊んで 11時に二階へ上がろうとした。
まだ気になって表に出て 東寺を見たら まだ明かりが。
甘えん坊のニャンコを抱いて 眠りについた。
何故か明け方のAm4:00に目が覚めて 階下に降り 再び玄関から出て東寺を見た。
明かりが点いている・・・
心臓が高鳴って どうしようもない。
家の中に入ると ニャンコのチビとみ~が出迎えてくれた。
おれは何時もの自分の席に座ると チビとみ~が膝の上に乗って来た。
おれの顔を見上げたチビは 目をまん丸くして涙がこぼれ落ちそうになっていて
にゅ~~~!にゅ~~~!と 泣くんだ。
おれは悟った。
チビは今まで聞いた事も無い声で 泣きながらおれに訴えてる。
何であんな事を って 訴えてる。
東寺で何かが起きている事を悟った。