さらさらきらきら

薩摩半島南端、指宿の自然と生活

ソラマメ

2012-02-09 10:54:54 | 花草木


輝くような白地に、褐色の流れるような細い線描きがすばらしい。一瞬まごついてしまったのは、まず見たこともないような花だったからだ。よく見れば形は典型的なマメ科の花だ。しかしこんな白と黒の対比の際立った花などほかにあっただろうか。



横から見ると蝶を思わせるような形とくっきりしたパンダ模様で、なかなかかわいらしい感じもする。根元の方がきれいな赤紫に淡く染まって、やはり花なのだなあと思う。



真上からだと、どこか飾り職人の作った細工物のようだ。深みのある黒は漆塗りを思わせる。古代ギリシャでは不吉とされ葬儀に用いられたとのことだ。しかし死の象徴としてはこの黒はつややか過ぎると思う。



下の方では大きなマメができていた。これは見慣れたソラマメだ。ソラマメが実っている様子などまず見たことのない人が多いのではないか。マメが空を向くので空豆という名前になったという。成熟して大きく太くなると重さでだんだん下を向いてくるそうだ。垂れ下がるほどになったら収穫時とのことだ。



多くのマメ科の草のようにつる性でなくしっかりした茎で1m以上の高さに伸びている。大きなごわごわした葉がぎっしり茂っている。マメ科らしく複葉なのだが、一枚一枚が大きいのでそんな感じがしない。ところで道端の茂みなどどこにでもあるカラスノエンドウは同じソラマメ属だった。かわいらしい赤い花の印象はまるで違うが形はそっくりだ。真っ黒な鞘もまるで違うが、よく見ればやせこけたソラマメといった形をしている。なおエンドウはエンドウ属で違った種類だった。

指宿は日本一のソラマメ産地だそうだ。普通なら初夏の野菜なのだがこの地では正月前くらいから収穫が始まっている。スナップエンドウも含めて、真冬でも青々と茂った豆畑が広がっている。ただこの2月の大寒波は収穫直前の豆にかなり打撃になったと聞く。我が家もそうだが本来は無霜地帯なのに氷まで張った日があったくらいだ。

ソラマメは地中海沿岸の北アフリカや西アジアあたりが原産地だそうだ。古代のギリシャやローマでは準主食だったという。しかし今はどのようにして食べられているのだろうか。長く東京で暮らしてきたがソラマメ料理などほとんど出会った覚えがない。塩ゆでしたものを一つ一つ皮を剥いて食べたことはある。しかしそんなめんどくさいことをしてまで、特においしいと思ったことはない。それに意外と高価でしかも鞘が分厚く捨てるところが多いのだ。さらに「おいしいのは3日」といわれるほど鮮度が落ちやすいそうだ。今後売り上げは伸びるか、新しい市場を開拓できるのか、延々と続く豆畑を見ると他人事ではあっても気になってしまう。