銀座平野屋女将日記

銀座平野屋210年のあゆみと老舗女将の嫁日記

小さな粋ー飾り櫛2-

2018-05-21 | 日記

銀座平野屋には普段お客様の目にはふれないけれど、素敵なものが数々ございます。

それは江戸からの粋を伝えるものであったり、先人の技や美を伝えるものであったり様々です。

その中で銀座平野屋には、先人の技が光る逸品もございます。




『櫛 木台菊蒔絵』江戸時代 縦5×横9cm


木の台に菊模様の金蒔絵を施したものです。
髪を梳く梳櫛(すきぐし)なら本来は蒔絵をしないので、この櫛は飾り櫛になります。




櫛の歯が大変細かく、江戸の職人の技術力の高さを感じることが出来ます。
現在、これだけ精度の高い仕事をする職人は、残念ながらいないということです。







『櫛 木台松竹梅蒔絵』江戸時代 縦3.3×横8.5cm
こちらも木の台に松竹梅模様をあしらいって金蒔絵を施したものです。





片面は梅模様のみ。片面は左から梅、松、竹の模様が。わかりやすいよう、写真を明るめにしてあります。
御目出度い柄として、お正月に使用していたのでしょう。
櫛としてはかなり小ぶりなので、先代の言うところの「地味!」の分類だと思います
一般的に小ぶりな飾り櫛は少しお年を召した方が使われていました。逆に大きめな物は若い女性が使っていました。




しかし背の部分は一面の金蒔絵。こちらにも松竹梅が見られます。
一見地味に見える飾り櫛ですが、髷を結った江戸の女性の黒髪に櫛の背の金がよく映えていたことでしょう。
そんなこともあってか、この櫛の持ち主はこの飾り櫛を気に入っていたようで、櫛の歯に使い込まれた形跡があります。




江戸時代にはじまる日本髪は、実に数百に及ぶといいます。

その結い方を見れば、その女性の身分や職業、年齢が分かるようになっていたといいます。

髪飾りも櫛や簪(かんざし)笄(こうがい。こちらはまた別の機会に)など多岐に渡り、

鼈甲や木など様々な素材と、それを活かす技法で作られていました。

江戸時代の女性のお洒落心をくすぐる美とそこに裏打ちされた職人の技術の高さ。

銀座平野屋に使わる飾り櫛は、美と技術が融合した小さな美術館なのですね。

 

 

飾り櫛(その1)の記事はこちらから→




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