2010年の「冬の花 山茶花の旅」に9年ぶりの追記です。
次の目的地は「御作(みつくり)のサザンカ」です。
愛知県北設楽郡設楽町津具字上下留を朝7時過ぎに出て、ナビのガイドに任せ県道80号を西へ向かいました。
やがて車は、葉を落とし始めた森の中を尾根筋へと上って行きます。
坂を登りきると、面ノ木園地(面ノ木原生林)と表示された自然公園が広がっていました。
晩秋の木立の狭間に柔らかな陽の光が射し込み、落葉に色づく森の床が燃えていました。
予定が無ければ此処で、登山用の携帯ストーブでお湯を沸かし、コーヒーの香を楽しみたいところですが、今日は先を急ぐことにします。
曲がりくねった、峠を下る道を20分程も走り続け、突き当りのT字路を右に曲がるとすぐ、「もみじまつり」の看板を掲げた公園を見かけました。
大井平公園という良く名の知れた公園のようで、川岸に並ぶモミジが見事な朱に染まっていました。
名倉川に掛かる「風のつり橋」の上から振り返ると、モミジの紅とイチョウの黄色が見事なコントラストを見せていました。
このように鮮やかな紅葉と黄葉がタイミング良く隣り合う姿は、めったにお目に掛かれるものではありません。
このように予期せぬ幸運に巡り合うことで、旅は更に、記憶の地層に思い出を重ねてゆきます。
大井平公園を出て、国道153号、県道33号を小一時間ほど走り、ナビが「目的地に到着しました」と告げた場所は、田が丘陵地の狭間に広がる、ごくありふれた農村の一画でした。
その地は 愛知県豊田市御作町正野平262
道路脇の人家の庭先に人影を見かけたので、「御作のサザンカ」の場所を尋ねました。
教えられた通りに、一軒の農家へと通じる坂道を登ってゆくと、枝を広げたサザンカの巨木が見えてきました。
近づくにつれて、「御作のサザンカ」の見事さが次第に明らかとなってきます。
木の横に解説板が掲げられていました。
市指定文化財(天然記念物) 「御作のサザンカ」
指定 昭和63年3月2日
樹高 約7.1m
胸高周 約2.2m
枝張り 約4.9m
「根本より胸高の部位の方が太く、地上2mで枝が8本くらいに分かれ、さらに細かく分かれて全体では樹冠の平らな樹形となっています。花数が非常に多いことが特徴です。
と記載されています。
庭に出てこられた、所有者の水野様にお話を伺うと、このサザンカの起源は定かではなく、この地に水野家が建つ前から、この木があったかもしれないのだそうです。
毎年12月10日頃から花を咲かせ、今でも幾つかの実を付けるそうです。
たまたま一輪だけ花を見ましたが、全自動の安価なデジカメで写したためピントが合っていないのが悔やまれます。
サザンカは20畳程に区画された、庭から2m程も低い段状の、日当たりの良い場所に育ちます。
周囲に木の生育を妨げるものは一切なく、ツバキやサザンカの生育に適した傾斜地なので、これからも日本有数のサザンカ古木として、花を咲かせ続けるだろうと思えます。
それにつけても、「御作のサザンカ」、本当に見事な一株でした。