【注意】すごく、重い話です。そしてまた長い話。ごめんなさい。無理そうであれば、飛ばしてください。
これが、君への手向けになるならば。
いたずらっ子な君、でもそれはきっと淋しがり屋だったから、だよね?
ここに君のことを書くことで、君にさらなる安らぎが与えられるのならば。
ほんの数日間、
ほんの数日間を、
私は、
私たちは、
君と過ごしただけだったのに。
デンマークまでのあまりに遠い距離感を嘆いた時もあったけど、
考えてみたら、それを埋める方法はいくらだってある。
どんな乗り物に乗っても、今の君には逢えない、遠いとおいところ。
そして、もっとも近いところ。
今の君は、楽しい思い出だけを持ってそこにいるんだろうね。
もう苦しまなくてもいい、苦しみのない場所に。
その楽しかった思い出の中に、日本のことは、入ってるかなぁ?
私たちの、みんなのことは、入ってるかな?
日本のことに興味を持って来てくれてた君、
5倍もの倍率、ダントツ一番人気だった日本に来れた君たちの1人、
あの満開だった桜も、覚えてくれてるかな?
みんなで、青空の下、散歩したよね。
みんなが自由にぶらぶらしていた時、お土産屋さんの前でなにやら物色していた君、
君の食べ物に関することは聞いていたから私が話しかけたら、
「これはナニで出来てるの?」
「リス・パウダー(お米の粉)」(こんな単語ですらデン語と英語混ざってる)
「あぁ、リス・ケェエ!」(お米の粉から作られる、デンマークのケーキみたいなもの?)
「これは?」
「あ、これは小麦粉入ってる」
「これは?」
「(小豆!? あんこ?)え、えっと…やぱんすけ・すいーと・びーんず、かなぁ…(汗)」(また混ざってる)
そこで売っていた食べ物系のものを次々と指していく君、一生懸命説明する私、
そして、食べられそうなものはお煎餅のみ。
買う時になって、ちら、とお財布を覗く。
小銭しか入ってないやん!
…でも、やっと探した唯一の食べられるものだっただけに、私が買ってプレゼント。
その、嬉しそうな顔!
私より全然背が大きいくせに、その、天使のような笑顔。
半分こに割ったのを、一緒に食べたよね。
私はいいよって言ったのに、無理やり私に渡して。
すっごく、美味しそうに食べてた。
すっごく、美味しかった。
いつも帽子をかぶっていた私、
ある時それを奪って、そのまま洗面所にこもったきり、出てこない。
ほかの子と喋りながらも、内心すごく心配だった私、
かなり経ってから、
出てきた。
ポーズ!
え、そ、それがやりたかったの!?
小学生かい!
でも、大笑い。
それを撮った写真が、ここにあるよ。
ニヤリ、と笑って。
満足そうに。
語学にハンディがある私は、君とも、君以外の子たちともなかなか喋れなくて、
でも、ある時から君とは話せるようになって、
あまりにも私が言葉をわからな過ぎでも、電子辞書を使いながらでもなんとか頑張って。
そういえば…HARIBOのミント味のも、無理やり…渡してくれたような…?
また、ニヤッとわらいながら。チシャ猫みたいに。
私、ミント味嫌いなんだけど? でも、ニヤリ。
それに…HARIBO、君は食べて大丈夫なの? また、ニヤリ。うなずきながら。
しょうがない、…口に入れて。
…あ、大丈夫だ、これ。おいしい。
それを聞いて、また、ニヤリ。
君が、君たちが、日本に来てくれた時の写真とかビデオをまとめたもの、
もうそれは観たことがあるものだったけど、でも、
君のことを聞いてから、データを送ってもらって、また観てみたよ。
みんな笑ってる。
君も、笑ってる。
この、私たちの苦しみは、
君と一緒に生活していたみんなと比べれば…まだ、いい方なのかもしれない。
今、君はもしかしたら、不思議そうな顔で私たちを見下ろしてるのかもしれないね。
なんでみんな、そんなに泣いてるの?
叫んでいるの?
なんでみんな、そんなに怒ってるの?
いつもの、笑い声は?
苦しみ、という感情がない、その場所で。
きっと、手にはたくさんのチョコレートとか甘~いケーキ。
そしてコーラ? 糖分たっぷりの飲み物?
たくさん並んでた自動販売機で売っているものもすべて、説明したね。…日本特有のものを説明するのがこんなに大変だとは。
もう、甘い物も、小麦粉が入ってるものも、我慢しなくてもいいもんね。
あんなに、食べたそうにしてたから…。
成田で、君たちを見送った時、
「Vi ses !!」(またね!)って、HUGしながら、君に言ったよね。
またいつか、会えると思っていたんだ。
偶然に、でも。
狭い国の利点、として。
本当に、私の「明るいデンマーク未来予想図」の中の1つに、それは組み込まれていたんだ。
偶然、君と街で出会って、
そして傍らには、君の可愛い彼女がいて、
その彼女は私好みでもあったりして(!?)、
「日本であんなこと、あったよね~」って、その彼女にも分かるように、噛み砕いて、その頃にはもうちょっと話せるようになってる(はず)のデン語で説明して、
近くのカフェに入って、いろんなおしゃべりをして…
そんな、普通の、他愛もないようなことを、そんな未来こそを、私は想像していたんだ。
特別な未来ではなく、
そんな、普通の生活。
君の、
私の、
みんなの。
大輪の、白い花から、
甘ったるいような香りが、部屋中にたちこめている。
行くことが出来ない、だから、その代わりに。
その前には、封を切ったミルク・チョコレート。
これはダメなんだ、と言いながら置いたことがあったよね。
傍には、帽子。
明日は、日本のお菓子を買ってくるね。
私がそこに行った時は、その中を君が案内してね。
いつか、誰もが行くところだから。
私たちを、そこから、ずっと見守っていて。
きっとみんな、忘れないから。
私も、忘れないから。
君を、
君のことを。
……君へ。