
高野和明
講談社文庫 648円
2004年8月初版 2001年作品
『13階段』 2007.7.14
犯行当時の記憶を失ってしまった死刑囚、樹原亮。居酒屋でけんかして、人を殺し、服役した三上純一。純一が服役した松山刑務所の矯正処遇官、南郷。純一と南郷は、樹原の冤罪をはらすべく調査を始める。樹原が思い出した、「階段」とな何か。犯行現場には階段はない。現場周辺にも階段はない。その階段には、未だ見つかっていない凶器の斧、通帳、印鑑がきっと隠されている。一気に読んでしまった。平日は寝る前だけだから、1日に20ページくらい。休日の土曜日、外は台風の雨、読書に最適。一気に300ページ以上読んだ。この分厚い本も、やろうと思えば1日で読める。おもしろければだけど。
「死刑」についてリアルに考えさせられた。死刑はよくないと簡単に意見したり、もし自分の肉親が殺されたらそんなことが言えるかと自問自答したり、それなりに考えたことはある。でも、死刑を言い渡された人間が、本当にそれだけのことをしたのか、そう思いこんでいるだけなのではないか、もし無実だったら・・・それほど、日本の裁判も真実を見抜くこともできないし、人間が人間を裁くのだから、間違いはある。でも、死刑を宣告される間違いは、算数の問題を間違えるのとはちがう。それに、制度上の問題点もあり、さまざまな行き違いもある。さらに、死刑を言い渡す者、承認する者、実際に死刑に携わる者など、こうしてリアルに想像してみると、合法的な殺人にしかならない。鳥肌が立つくらい怖くなってくる。今までの人生は裁判とは無縁だった。でも、こうして本で触れるだけで、自分が今までどれだけ社会を見てきたか、はずかしくなる。
南郷のように、自分が携わる人の人生に、どれだけ責任を感じてきたことか、考えを巡らせてきたことか。平気でボタンを押せる人間ではないことが何より人間であることを主張しているような気がする。