

須川邦彦

新潮文庫 400円

2003年7月 初版 1948年作品
『無人島に生きる十六人』 2007.7.8 1946年、帆船、龍睡丸は漁業調査のためハワイ諸島に向けて出発した。何とかホノルルに到着し、船を修理して、再び日本に向けて出帆した。しかし、大嵐で船が難破し、乗組員16人は、なんとか近くの無人島にたどり着く。そこで、飲み水の確保、食料の確保など知恵を絞り、生きるために奮闘する。実話を元にした冒険物語。

椎名誠さんが推薦するように、確かに痛快冒険物語だった。こんな出来事が本当にあり、そして戦後間もないころに物語として出版されていることに驚いた。今、読んでも違和感はさほどない。しかし、出ている人物たちがあまりに素直で優等生であることに多少の不思議さを感じる。「戦後」ということを考えると、上官の指示は絶対で、ここに出てくる上官は部下思いであることから、この時代にはふさわしいのだろう。まあ、だからこそ16人が全員生き残れたと言える。それに、さまざまな知識と判断が有効に役立っている。人間の知恵というものはこんなときに発揮されるものなんだと思った。じゃあ、私がこんな無人島に取り残されたとしたら、生きていけるだろうか。亀を食べることも思いつかないし、魚を捕ることすらできないかもしれない。電気も道具もないところでは生きていけない。たとえ道具があっても、その使い方もわからないし、役立て方もわからない。全くの無能だ。ただ、死んでいくのを待つだけ。この16人は、希望を捨てることなく、知恵と力を出し合って、愉快に毎日を生き抜いた。そして小さなチャンスをものにしたのだ。希望を捨てない。考える。動く。これからもそうありたい。