聖イトオテルミー学院グループ 曲梶支部 ブログ

創見者 伊藤金逸医学博士の教えをもとに、温熱刺激療法イトオテルミーの温もりと実(まこと)の健康生活の普及に努力します。

「自分を思いやる練習」①セルフ・コンパッション

2021年09月17日 | イトオテルミー

「自分を思いやる練習」 ① プロローグ            有光 興記 著

セルフ・コンパッション             朝日新聞社    令和3年8月

 

プロローグ

今、私たちに必要なのは

自分にやさしくできる力

みなさんの多くは、つらいことや困ったこと、理不尽を感じることなどに直面すると、怒りや悲しみなどの感情にとらわれ、落ち込んだり取り乱したりしながら生きてきたのではないかと思います。でも、そんなときでも自分を見失うことなく、ふだんどおりの力を発揮できるようになることは、実は、決して難しいことではありません。

本書では、その方法として、今現在の自分自身を受け入れ、やさしい気持ちを向ける「セルフ・コンパッション」を提案します。

セルフ(self)とは自分自身、コンパッション(compassion)とは悩みや苦しみを解消してあげようというやさしい愛情のことです。

つまり、自分自身を思いやってみてほしいのです。       003

 

日本人にとって大切な

セルフ・コンパッション

われわれ日本人は、勤勉な国民性で知られています。時間通りに出社し、真面目に一日中働くことを美徳とする文化に生きているのです。心理学的に言えば、真面目さは勤勉性というパーソナリティ特性の特徴で、勤勉性が高い人は仕事のパフォーマンスもよいことがわかっています。でも、日本人が他国より高いのは、実は勤勉さではなく神経症傾向と呼ばれるパーソナリティなのです。

神経症傾向とは、不安や恐怖、怒りなどの否定的感情の経験のしやすさのことです。どんな環境に置かれたとしても、評価されなければ自分は仕事が十分にできないと考えるのが、神経症傾向の高い人です。神経症傾向が高い人は、失敗しないように気を付けながら仕事を慎重に進めていき、否定的な評価を恐れて言われたこと以上の緻密な仕事をする傾向があります。国際的にもこうした仕事ができる民族は多くなく、日本人の仕事が高く評価される理由の一つとなっていると思います。

日本人の仕事に対する考えの中に、自己犠牲があります。自己犠牲とは、自分のやりたいことや自分の体調はともかく、会社にできるだけ奉仕すべきという考え方です。いわば、自分への思いやりの気持ちをゼロにして、上司や同僚、会社全体への思いやりをマックスに高めて 、パフォーマンスを上げていく心の持ちようです。

教育の現場や家庭で、しばしば「感謝しなくちゃ」と子どもに言い聞かせますが、誰しも感謝をしたらお返しをしたくなります。この当たり前の感情の働きで、会社のために自己犠牲を払い、つい自分を思いやる時間がなくても平気になり、自己犠牲的な働きをしてしまうのです。人のために尽くすと、心地よく感じたり、いつもより頑張れたり、人とのつながりが深まったりします。会社としても、組織の結束力が高まるというよい面があり、自己を犠牲にする人を高く評価します。しかし、全力で会社に尽くすということは、自分を犠牲にすることにもなりかねません。

我々は、言われた以上に人のために尽くすことをあたりまえの美徳とする文化に生きています。自己犠牲を苦痛だと感じてはいないと思いこまされているとも言えます。もし、他者や会社のために尽くすことに苦痛を感じたとしても、「誰にも理解されない」とか「苦痛を感じる私は未熟」「ダメな人間で失格だ」といった自己批判的考えで頭がいっぱいになってしまいます。優良企業でも燃え尽き症候群が多かったり、ブラック企業が成立するほど自己犠牲が当たり前なったりしているのが日本の実態だと思います。

こうした文化にこそ必要なのが、自分をありのままがよくても悪くてもすべて受け入れ、苦痛や傷を癒すセルフ・コンパッションという心の持ちようだと思います。  022

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