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ADD模型の最も衝撃的で代表的な結論とは?

2013年03月19日 | 宇宙

【「万有引力の法則」は近距離で破られる】では、高次元での万有引力定数は、我々の知る万有引力定数をΛ^d 倍した値になるという結論であった。
 そして、この切り替えの場所Λからは、距離が近づくにつれて逆二乗則よりも鋭い関数で力が強まっていくため、万有引力の法則で考えていたよりもずっと重力が強くなることがわかる。

 今度は、以下の図1を見ていただきたい。


図1:ADD模型による、力の強さの統一の可能性

 この図1は、電磁気力、弱い力、強い力の三種の力に関する逆二乗則と重力が同程度になるかもしれないという、ADD模型による力の統一の可能性を示した図である。
この図1のように、素粒子のスケールでは他の力と同じくらい強かった重力が、遠距離にくるにしたがって急激に弱まり、切り替えスケール以降は逆二乗則でゆっくり減衰するのではないか、という理解が可能になる。
これは、とても大雑把な議論とはいえ、非常にシンプルな考え方によって重力の弱きをあっさりと説明できてしまうのかもしれない。

 もし重力が本来、他の三つの力と同じ程度の強さだったとして、空間次元構造の影響だけで我々が現在観測している弱い重力になっていると考えてみると、余剰次元の大きさに対する予言を具体的に行うことができる。

 プランクエネルギーとは、相対論的で量子論的な重力現象のエネルギースケールであり、高次元では万有引力定数が変更されるので、このプランクエネルギーも変更されるはずだ。
高次元万有引力定数と従来の万有引力定数の間の関係式を変形すると、エネルギーの次元を持った量を算出できる。



図2は、「高次元プランクエネルギー」と余剰次元とその大きさを与える式である。
その下の表は、この式から推測出来る余剰次元の数とその大きさと結論を表として示したものである。

 まず、余剰次元の数が一つの場合、つまり空間が四次元空間であると考える場合には、余剰次元の大きさは太陽系の大きさを超えることになってしまう。
太陽系の内側はすべて四次元空間ということになる。
もちろん、万有引力の法則は太陽系を使って確認されているものだから、これは観測と矛盾する。
よって余剰次元の数は一つではありえない。

 では、余剰次元の数が二つの場合を考えると、これは1ミリメートル以上では通常の万有引力の法則のまま変更なしで、1ミリメートル以下では空間が五次元になっているものと予言する。
一方、ADD論文が発表された時点で、実験的にはミリメートル以下のスケールでは万有引力の法則は確認されていなかった。
また、余剰次元の数が三つ以上の場合には、すべて余剰次元の大きさが小さくなる傾向にあるので、まとめると、余剰次元の数が二つ以上の場合はすべて実験と矛盾しない。
なお、オリジナルのADDの論文では重力定数の扱いが微妙に異なり、lミリメートルではなく0.1ミリメートルとなっている。
実験的には大きな違いだが、計算上はさしたる違いではない。

 こうして、ADD論文の最も衝撃的で代表的な結論が得られた。
すなわち、「もしコンパクト化された余剰次元が二つ存在し、その大きさがミリメートル程度まで広がっているとすると、重力の弱さを自然に説明できる。
その場合、万有引力の法則の逆二乗別がミリメートル以下の近距離で破れ、距離の逆四乗に比例することが観測されるはずである」というものである。

 素朴な超弦理論に従えば、プランク長まで余剰次元を含む面白い新現象は見つからないものと諦めていた物理学界は、この予言に心底驚いた。
ミリメートルといえば肉眼で見える距離スケールであり、そんな身近なところに余剰次元が見つかるかもしれないのだ。
だが、このスケールでの万有引力の法則の実験検証データがなかったのも無理はない。
キャベンディシュの実験以来、桁違いに小さなスケールでの実験は、彼が悩まされたのとまったく同じ理由で進んでいなかった。
電磁力や熱、振動の問題など、さまさまな環境の影響でごく小さな観測量がかき乱されてしまい、信頼性の高い結果が得られないのだ。

この問題を打開するため、万有引力の法則を直接検証する代わりに、加速器を使う方法で重力を測定しようという計画が持ち上がった。
RHICが建設された主な目的は、それまでKEKで行っていた実験よりもはるかに高いエネルギーでの原子核衝突を起こすことだった。
ビックバン直後に存在したと考えられる、クォークやグルーオンがハドロンへの閉じ込めから解放されて自由に飛び回る「クォーク・グルーオン・プラズマ」と呼ばれる状態が、相転移によって出現するのかどうかを調べることや、陽子の内部にそれらがどのように分布するのか、といった強い力の性質を調べるものであった。

 RHICで原子核同士を非常な高エネルギーで正面衝突させると、クォーク・グルーオン・プラズマどころか、ブラックホールができるという噂が飛び交っていたのである。
実際、ADD模型では加速器で粒子同士を高エネルギーで衝突させると、一時的にブラックホールが形成される可能性があるもいわれていた。
結局、RHICではブラックホールは見つからず、現在ではよりエネルギーの高いLHCでの実験に観測の可能性が期待されている。



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