真実を求めて Go Go

今まで、宇宙についての話題を中心に展開してきましたが、今後は科学全般及び精神世界や歴史についても書き込んでいきます。

「タイムトレベル」その4

2015年02月06日 | 物理学

 今回で、「タイムトラベル」シリーズは終了します。かなり難しい内容になっていますが、今後は別のシリーズ、「タイムトラベラー・タイター」でもっと解りやすく書いていきたいと思っています。今回は、「タイター」シリーズでの図表を掲載しています。


 前回は、宇宙の特異点の記述で終了しています。裸の特異点が存在すると、理論的に因果関係を予測することができなくなります。ロジャー・ペンローズは、自然界にはそんなものは存在しないだろうと考え、「宇宙検閲仮説」というものを提唱しました。

 そして、この「特異点」と「宇宙検閲仮説」については、ここのブログに詳しく書いていますので、以下の記事を参考にされてください。
「特異点で何が起きているのか?」1~3

 ここで、前回までに書いてきた、ブラックホールの種類をまとめてみます。
 ブラックホールの性質を決めるものは,質量、回転、電荷の3つしか在りません。そして、自転しているブラックホールは角運動量を持つことが知られています。ブラックホールは自転・電荷の有無によって4種類の基本タイプに分けられます。そして、最終的にはどんなブラックホールもカー=ニューマン・ブラックホールになると言われているのです(下図1参照)。
hadakanot2.jpg
図1:ブラックホールの4種類
シュヴァルツシルト・ブラックホール:回転なし、電荷なし、点状特異点
ライスナー=ノルドシュトロム・ブラックホール:回転なし、電荷あり、点状特異点
カー・ブラックホール:回転あり、電荷なし、リング状特異点
カー=ニューマン・ブラックホール:回転あり、電荷あり、リング状特異点 

  さて今回は、超極限のカー物体のペンローズ・ダイアグラムを下図2に示します。超極限状態になると、カー・ブラックホールで存在していたペーパードール・トポロジーは消え失せ、一対の正の時空間と負の時空間のみになり、リング状特異点により隔てられています。
 リング状特異点が露出することにより、時空全体がCTL領域となっています。われわれの宇宙に超極限のカー物体が一個存在するだけで、時空全体が影響を受けます。つまり、いたるところに過去への入口が存在するかもしれないのです。
hadakanot.jpg
図2:超極限のカー物体(SEKO=super-extra Kerr object)とペンローズ・ダイアグラム

 裸の特異点が存在すると、物理現象の因果関係が破綻するため、宇宙検閲仮説というものが考え出されました。裸の特異点が存在しないように、宇宙自体が検閲し、禁止しているという仮説です。
 1992年にシャピーロとトイコルスキーによって示された、円盤状の塵の崩壊のシミュレーションでは、崩壊した軸上の少し外れた点において、曲率が無限大になり宇宙検閲仮説は破綻しました。
 このシミュレーションでは事象の地平面ができなかったので、裸の特異点が形成されたと考えられました。この結果は、宇宙検閲仮説が破れていると受け取られています。
 ホーキングは、キップ・ソーンと、「宇宙検閲仮説」は守られるかどうかで賭けをしていましが、このシミュレーション結果に対し、数年後、ホーキングが負けを認めました。したがって、裸の特異点が存在する可能性は高くなったといえます。

 超極限のカー物体(SEKO)は裸のリング状特異点を持つ一個の反重力宇宙で、もし我々の宇宙にSEKOが一つでもあれば、時空全体がCTLとなり、全ての場所が過去への旅への出発点となるのです。 

 SEKOのもっとも興味深い特徴は、その特異点の周りを適切な方向に回れば時間を逆行することが出來ます。その上、そういう周回航行をすればブラックホールの膜の内側ばかりでなく、時空の全領域への到達が可能になります。 
 原則的にはSEKOに近づきその周りを二、三周すれば、特異点をくぐり抜けたりしてよく分からない新しい宇宙へ飛び込む必要はなく、過去のどこにでも行けるタイムトラベルが可能となります。

 このように、カー・ブラックホールが超極限状態になると、特異点がむき出しの状態になり、タイムトラベルが可能であることを示しました。では、その超極限のカー物体が、この宇宙に存在するのでしょうか。
 観測結果によると、各銀河の中心には、巨大なブラックホールが存在するらしいことが分かってきました。しかし、タイムトラベルするために、そのブラックホールの近くまで行くのは大変なことです。
 もし、ミニブラックホールを人工的に作ることができれば、タイムマシンを実現することが出来るのです。

 しかし、現実世界でのタイムトラベルを可能にするためには、SEKOにとっては欠かすことの出来ない特徴の一つとしての時間的特異点に難点が生じます。それは、量子効果によって時間的特異点が空間的特異点へと変換されてしまいます。そのため、時空の特徴が安定してしまい、タイムマシンに利用できないかもしれないのです。

 また、通常のブラックホールを回転させてSEKOを作る事は不可能かもしれません。それは、ブラックホールを「質量<角運動量」にする必要があるのですが、角運動量が増大するにしたがって回転を上げる軌道が減少します。その結果、ゼロに近づくか、または回転体の反発によりSEKO自体を維持することが不可能になるのかもしれません。

 現在、特異点が二つあるブラックホールの解については、まだ誰も解いてはいません。
しかし、この二つのブラックホールを利用したタイムマシーンに乗ってタイムトラベルをしてきたという、ジョン・タイターの話も聞いてみる必要がありそうです。

 そのタイムマシンの原理図です(下図表参照)。
masin.jpg
①カー領域の双対特異点   ⑦質量オフセット
②負時間領域の出力     ⑧後方質量分布
③無時間領域の出力     ⑨前方質量分布
④正時間領域の出力     ⑩負時間事象の地平線
⑤X軸出口円錐       ⑪無時間事象の地平線
⑥垂直安全距離       ⑫正時間事象の地平線

 この図表は、「超極限のカー物体(SEKO)」に似ています。SEKOは、質量による重力よりも自転による角運動量の方が大きく、特異点が裸の状態になった物体です。しかし、SEKOは、特異点が一つだけなのですが、上の図では特異点が二つあります。

 この図では、事象の地平線は存在しているのですがドーナツ状になっており、上下方向からは特異点がむき出しになっています。特異点が二つあるためか、質量の重心が中心からずれています。

 インターネット上で、ジョン・タイターは、次のように言っています。
『タイムトラベルは、重力の強さを自在に変化させることにより達成される。人工の双対ミクロ特異点を取り巻く質量と重力場に電子を注入して荷電させ、「カー局所場」ないし「ティプラー重力シヌソイド」内の事象の地平線の直径を拡大する。ドーナツ状特異点の環内に物質を通過させ、別の世界線へと送り込む動作をシミュレート操作して、局所場を適合・回転・移動できれば、安全なタイムトラベルが可能となる。』

 回転するブラックホールに電荷を注入すると、「カー=ニューマン・ブラックホール」になります。カー=ニューマン・ブラックホールは、特異点の周囲に正のCTL領域が生成されるので、リング状特異点を通り抜けなくてもタイムトラベルが可能となります。
 電荷を注入することにより、重力に打ち勝つ反発力が生じるため、ドーナツ状特異点の直径が拡大します。さらに、特異点の自転による角運動量によってもドーナツ状特異点の直径が拡大するため、特異点が裸の状態になると考えられます。
 このようにして、特異点が裸の状態になり、正のCTL領域がタイムマシン全体を包み込むことにより、タイムトラベルが行われると考えられます。



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