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仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

「闇色のソプラノ」 北森鴻

2006-05-14 12:54:44 | 讀書録(ミステリ)
「闇色のソプラノ」 北森鴻

お薦め度:☆☆☆☆
2006年5月11日読了


若くして亡くなつた童謠詩人、樹來たか子。
その詩に魅せられて卒論のテーマに樹來たか子を選んだ女子大生、桂城眞夜子。
眞夜子が調べていくうちに、樹來たか子の死には謎があることがわかる。
自殺として扱はれてゐた死が殺人だつた可能性が出てくるのだ。

一方、たか子の遺兒、樹來靜彌は眞夜子と同じ「遠譽野」に住んでゐる。
そして、眞夜子の調査が進むにつれて、樹來靜彌の周圍で殺人事件が連續する。
いつたい、犯人は誰なのか、そして犯行の動機は?
事件を搜査する刑事、郷土史家、靜彌を治療する醫師。
それぞれの登場人物たちを繋ぐ關係が明らかになるに從ひ、事件の樣相も明らかになつてゆく。
そして、最後に總てが明らかになつた時、そこには人知を越えた力の存在が感じられる。

複雜な、じつに複雜なプロットである。
いくつもの伏線が絡みあつて、なにがなんだかわからなくなる。
風邪をひいて寢込んでゐるさなかに讀んだ所爲かもしれないが、一連の事件の犯人がわかつた後でも犯行の動機がよくわからなかつた。

それにしても、すべての關係者が同じ町に住んでゐるといふのは、恐るべき偶然だ。
郷土史家、殿村三味といふ人物が登場するが、それもこの「偶然」を讀者に不自然に感じさせないための役割を果たしてゐるやうである。
この作品の主人公は、「遠譽野」といふ町そのものなのかもしれない。


2006年5月11日讀了


闇色のソプラノ

文藝春秋

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