goodシネマ 全集
⑪ 映画『麦秋』
北鎌倉で暮らす間宮家では、適齢期を過ぎた娘・紀子の結婚問題が大きな議題となっていた。
当の紀子は大手の会社で秘書として働き、のんきに独身生活を楽しんでいる様子。
やがて、そんな紀子に縁談話が立て続けに舞い込む。
麦の穂が実り、収穫期を迎えた初夏の頃の季節のことで、麦が熟し、麦にとっての収穫の「秋」であることから、名付けられました。
麦秋
紀子が矢部との結婚を突然のように決めてしまうのも、矢部が亡くなった省二の親しい友人であり、
その省二を紀子がずっと慕っていたからこそ、矢部に亡き兄の姿を重ねあわせ、
兄の不在を埋めるかのように紀子は彼のもとに嫁ぐのであると指摘している
二本柳寛が火野葦平の「麦と兵隊」を読んでいた時に、戦地から兄は彼に「麦の穂」が入った手紙を送っていて、
原節子はその話を聞いて、「その手紙をちょうだい」と言うのだった。
「麦」は亡き兄の象徴でもあるのだ。
『麦秋』のラストシーンで、紀子が戦死した次兄の友人と結婚して秋田に移住することによって、
両親も本家がある奈良に移り住むことになるが、そこで両親がしみじみ語らうシーンがある。
初夏の大和で、周吉夫婦は遠くを行く花嫁行列を目に止める。
ふたりはその姿を無言で見送っていた
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