マーサの昔話

デジカメでの景色や花、動物などの写真
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愛することは信じること SR34

2011年04月18日 | Scottish Romance

 久しぶりにエディに逢ったので、食事でも一緒にと思い誘ってみましたが
 何と、今晩の夜間飛行で帰国する予定だと言う。 離れ離れになった15年間の
 事を話し合いたいと思っていたのに、それは実現しそうになかった。
 障害者にはなったけれども、お互い、こうして再会できた事に感謝して
 この場所でエディと別れる事になってしまったのである。 お互いの連絡先は
 解るようにメモを渡しあい、これから何かあってもすぐに手紙を書ける状況に
 しておいて、私には“ 密かに語り逢える ”という心の支えができたのである。


 限られた時間の中で、私とエディはエディンバラでの思い出話に花が咲いた。
 そしていよいよエディとの楽しい時間が過ぎ去り・・・

 「エディ、いつか私も駄目になったら、こんなおばさんでもお嫁さんにしてくれる?」

 「今頃・・・何て哀しいセリフだ。 あの時、君が僕を信じて待っていてくれたら
 君は幸せになっていたかもしれない。 いや、幸せだった筈だ。 あの頃の僕には 
 後悔させない自信があったんだ。」

 「今更そんなこと・・・今、それを言われると辛くて死にたくなるわ。」

 「こんな抜け殻の僕でも良ければ、いつでもおいで、但し、苦労は目に見えている。
 僕の介護をしなくてはならないからね。 そんな事より、君は子供を立派に育てるんだ。
 賢い子に、それが君に与えられた運命なんだ。 僕の介護じゃない。 分ったね。 
 迷わず君の使命を果たすんだ。 分ったな。」

 ・・・・・エディじゃないわ。 ビンセント教授ね。 
 
 「解ったわ。 エディ、手紙書くから待っていてね。 きっと返事頂戴よ。」

 「・・・しっかり子供の世話するんだぞ。」

 「勿論、そのつもりよ。 でも、いつか、きっと逢いましょう。」

 「子供が大きくなったら一緒に来ればいいじゃないか。 留学でもいい。」

 「そうね、エディの家でホームスティさせて頂くというのも一つよね。
 それまで、身体に気をつけて元気でいてね。」

 「未だ未だお互い若いから大丈夫だ。 君こそ、頑張れよ。」

 「ええ、エディンバラで逢えるその日を楽しみにしています。」

 「・・・夢で逢おう・・・」

 「ええ、今何て・・・夢で逢おうって。」

 「そんな事言った?」

 「聞こえた・・・」

 「もしお互い、寂しくなったら、夢で逢えば身近に居る様な感じがするだろう。」

 「やっぱり、寂しいんじゃない。・・・私も寂しい・・・でもしばらくは我慢する。
 そう、今度の再会までは夢で逢い続けるわ。 その時はきっとキスしてね。」

 「分った。君と夢で逢う時は、いつでも15年前の僕達だから・・・」

 「エディ、私の心はいつまでもあなたのものよ、愛しているわ。 
 この気持ちは永遠に変わらないわ。 
 覚えていてね。 ・・・・・じゃあ、又・・・・・・ 
 今度はさよならと言わないから。」

 そのまま、私と息子は、いつまでも笑顔で手を振るエディと別れました。


 エディの帰国後、1通の絵葉書が着いた。 それは、ブリッジを中心にカールトンホテルが

右端に写った絵葉書でした。 美しい文字で

“ Loving is Believing. ”と書かれていました。

 ・・・信じて待つことが出来なくて本当にご免ね。

 私は思わず溢れん涙を抑えることができませんでした。
  




 そして3日後、2週間後、1か月後、3か月後、そして半年後に手紙を、年の暮れには

クリスマスカードも送りましたが、引っ越しをしたのか全ての手紙が戻ってきました。 

 それから、今に至って、連絡は取れない状態です。

 彼は現在、あまりいい境遇に置かれていないのかもしれないのです。 私には余計な

心配をかけたくないのかもしれませんし、逆に身体面に関して同情を好まない人ですから

そっと、暮らしたいのかもしれません。 暖炉のある部屋で、グラスを片手に

若い時に、ほんの僅かな間でしたけれどユニークな日本の女の子がいたなって少しでも

想い出してくれれば、それで十分幸せです。 エディは、私なんかよりもっと深い素敵な

思い出を幾つも持っている人なので誰にも邪魔されずに、その思い出達と今、暮らしている

のかもしれません。


 でも私にとって、スコットランドでの出来事は一生忘れ得ぬ出来事なのですから。


                    Scottish Romance