マーサの昔話

デジカメでの景色や花、動物などの写真
海外体験談、今日の一品、糖分控えめ?なおやつ等‥‥‥

桜咲く国で SR32

2011年04月15日 | Scottish Romance

 平凡な生活の繰り返しだが、可愛い息子との触れ合う時間を楽しみに毎日を過ごしていた。
 ある朝、いつもの様に朝刊を読んでいると、梅田のデパートの催事が目に飛び込んできた。

 スコットランドフェア4月1日(水)~6日(月)開催中・・・バグパイプ演奏4日と5日、1日3回
スコテッシュダンス2回公演と書いてあった。 当地の物産の数々・・・
 毎年、恒例の様に催しされていたようだ。 今回で15回目と書いてあった。
 なのに今朝初めて、この記事に気がついた。 過去にきっと何回か見たのかもしれないが
私自身それを受け流していたかもしれません。 帰国後の忙しい日々、やりがいのある
仕事に就いていたので、とっくに過ぎ去ったロマンスの事等、想い出す余裕すらなかった
のかもしれない。 

 今は今でこんな平凡な生活でも、私には主人も子供もいる家庭の主婦なのだから。

 嗚呼スコットランド、何と懐かしい響きよ、14年前、私はそこを訪れて素敵な人との出会いが
あった国、でも今では遠い昔の出来事、哀しいかな、夢にも現れない青春の日々よ
容姿は変われども、あの時の瑞々しい感情は今でもくっきりと心に焼きついている。 
 この想いは決して消えることのない炎。 ある時は真っ赤に熱く燃え上がり、ある時は
消えそうで消えない炎、ゆらゆらと揺れている。 炎は日本から遠く遠く離れた国からの頂き物。
 当時、滞在した期間は短かったけれど、私にとっては永遠の愛をくれた国、心優しい
人々が暮らす街、全てが美しい思い出に包まれた国だった。

 でも、今回この新聞を読んでみて、無性にあの物哀しい悲鳴のようなバグパイプの音色が
聞きたくなった。 14年前、マイケルから聞いた話では、民族衣装のキルトを身にまとった
バグパイパーは、常に兵士の列の先頭に立ち、丸腰のままバグパイプの音色を奏でながら
敵地へと行進して行くそうだ。 当然、相手からはかっこうの的にされ真っ先に殺されてしまう
のです。 しかし、後ろに続く兵士は自分が持っている武器を捨て、倒れた仲間の遺志を
継ぐためバグパイプを拾い上げて、より一層力強く演奏し仲間を鼓舞させ、何事も無かった
かのように、悠然と行進を続けるわけです。 バグパイプの音が大きい理由、ここにあったの
ですね。 何人倒しても勇敢に立ち向かってくるスコットランド兵と鳴り止むことの無い
バグパイプの音色に、敵は恐れをなして戦意を喪失してしまったという話です。

 そうね、久しぶりにバグパイプの生演奏、本場のスコティッシュダンスでも見てみよう
かしらと思い、この5月で3歳になる息子を連れて出かけたのです。
 ひと昔前、エディンバラの街角で聞いた懐かしいバグパイプの物哀しい音色。
 郷愁に駆られる想い、私にとっては今も心の故郷なのだから。

 決して広いスペースではなかったものの、それぞれ思い入れのある大勢の方々が見学に
来られていた。 私は、郷土品の所でお土産をあれやこれやと選んでいたら、急に息子の
姿が見えなくなったのである。 買い物に連れて行くと大概こうだ。
 いつも退屈でウロウロしてしまうのだ。 と言って、ペットのように首にロープを付ける
わけにもいかない。 チビのくせに移動が早いのも、難儀な事なのです。 
 大勢の人々が来られているので、本当に探すのが大変だった。

 なので、外出の時はいつも目立った色の服を着せていた。 今日は、タータンチェックの
キルト(プリーツの入った巻きスカート)をはかせて、子供用のスポーラン(昔買ったもので
ラビットファーのウエストポシェット)までつけさせていた。 
 息子は幼い時、女の子の様な顔をしていたので、とてもよく似合っていた。
 回りをぐるりと見回した時、キルトのタータンチェック模様が前の方でチラリと見えたので
すぐに行ってみた。

 主催者側のスコットランドフェアの関係者の方が息子の相手をしてくれていた。
 足が不自由な方で、車椅子の膝の上にはタータンチェックのひざ掛けが掛けられていた。
 上品な銀髪で笑った顔が、あの“ 特攻野郎Aチーム ”のジョージペパードに
よく似ていた。 車椅子に座ったまま、息子を抱き上げてあやしてくれていた。
 余程、子供が好きだったのか、あやしているその姿は子煩悩な父親の様にも見えた。 

 でも同じ姿勢で飽きたのか、急に子供が、膝の上でバタバタと足をばたつかせているので
引き離そうと手を掴み、こちらに引き寄せて「 相手して下さってありがとうございました。
足大丈夫ですか? 」と、お礼を言い、その方と目を合わせたのです。 その瞬間、手を握られ
「 何するのよ? この・・・・ 」と言いかけた時、走馬灯の様にぐるぐると昔の事が思い出され
その場所でめまいを起こしそうになり蹲ってしまいました。