閃き

変化も気付く事も無い平凡な毎日の中にきっと閃きがあるはず。閃きを求めた記憶

妻の実母2

2020-08-21 14:51:00 | 語り部
妻の実母Sさんのお話の続き

Sさんは勉強が出来たので女学校を受験して合格した

女学校は現在の中学校で十三歳

男子は旧制中学で男女別教育である

女学校は汽車で通わねばならないので、貧乏だった家の事情からすれば当時は思い切った事だった


Sさんの女学校には日本女子体育大学を卒業して赴任した先生がいた

その先生は大変厳しく嫌われていたが、なんとその先生がクラスの担任になったので大変悲しい思いをした

その先生の実家がSさんの家の近くだった事から、その先生は個人的な用事をSさんに頼むようになった

Sさんは言われるままに用事を承諾した

当時、Sさん以外にも先生の実家近くの生徒がいたが、何故Sさんだけに頼んだのかは不明だ

日常化していた事だったからかSさんは先生から頼まれた印鑑を学校に忘れてしまった

幸に印鑑を無くす事は無かったが、それから3ヶ月の間、毎朝の朝礼の時にSさんは私の大切な印鑑を無くしました、皆さんは真似しないようにしましょうと言い続けたという

3ヶ月後、朝礼でSさんの話をしなくなった途端、又、用事を言いつける様になった


女学校を卒業したSさんは近所のお姉さんと洋裁学校へ住込みで入学した

学校の場所は可成り離れた所だったようだ

洋裁学校を途中で辞めて引返す事になったので型紙しか学べなかったが、Sさんは家の近くの洋品店へ自ら訪れて専属の針子となった

洋品店の針子の先輩からは嫌味を言われたが、直ぐに腕を上げた

Sさんの仕立ては評判がよく、ショーウィンドーに並べると直ぐに売れたという

洋品店から家が近かった事もあり、休みでも呼び出されて採寸させる程の信頼を得ていた

針子を卒業した今は、大きなタペストリーを作っているがとても丁寧な作りで周囲からの評判が良い

私の娘達も競って欲しがる程である

少しだけSさんの実父と夫について紹介する

実父と夫は共に癌で亡くなったが、我慢強い性格で酷い状態になっても「大した事無いから大丈夫」と言っていたが、結局は転移して手遅れの状態だった

実家の男達は無骨で寡黙であった






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