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移転しました(2014/1/1)

花井虎一のこと ~お奉行様!補3

2007-11-01 | ヒストリ:連載
※サイト掲載済。こちらのほうが読みやすいです


花井虎一のこと、第三夜です。
先日は小笠原が上司鳥居耀蔵に出した探索書の三項目、
1)モリソンの事
2)夢物語著者の事
3)無人島密航計画の事
の、三つ目が「?」という話でした。
鳥居が調査指令を出していたのは上記の二つのみだったのですな。
小笠原は何故指示されていない事迄鳥居に報告したのでしょう?
小笠原が探索に乗り出したという事なのですが、まあメクラ滅法に当たってもしかたありません。やはりこういう時は事情通に話を聞くのが一番。
そこで浮上してくるのが花井虎一です。

小笠原は御小人目付、花井は御小人という上司部下関係。
更に花井は小笠原の女婿に当たります。
そして花井の身辺を見ますに、蘭学に興味があり宇田川榕庵の門下に入っている。
宇田川榕庵というのは当時の優れた蘭学者であります。
シーボルトとも会っている。確か日本に初めてコーヒーを紹介した人。
そういった関係からか、花井は渡辺崋山の家にも出入りしております。
言ってみれば鳥居派とも渡辺崋山らのグループとも繋がりがある。
小笠原にとってこれ以上の人物っていたんでしょうかね。
また花井が小笠原の情報源になっているというのは、史料からも確認が取れる事項のようです。

その花井なのですが、実は「無人島渡航計画」に参加していたのですな(笑)
花井自身は途中で抜けたらしいのですが。
恐らく崋山らの事に関して話をする過程でその計画の話が出たのだと思います。
その絡みで、鳥居への上申書に無人島渡航計画の話が入っている。
…どういう意図であったのかはよく分かりませんが。
小笠原の探索書は前後2度にわたり鳥居に提出されているのですが、無人島渡航計画に関してはほぼ正確に事情が調査され報告されております。
ただその中の一条、渡辺崋山に関する項目だけが事実に反している。
崋山はこの件とは全くの無関係だったのですが、関係者の一人として名前が上がっているのです。…この辺りの機微がどうもよく分からないのですが。
とにかく。この小笠原の探索書を元にして鳥居は告発状は作成しています。

先日紹介した鳥居の告発状からは「申立候」、花井が申し出て来た、
こう書かれていましたが、実際にはこの小笠原の探索書を元に鳥居が作成したものなのです。
ではこの探索書に忠実に鳥居が告発状を作ったかというと、そうではありませんでした。

小笠原の探索書と鳥居の告発状では、大分様相が変わります。
まず鳥居の告発状ではモリソンに関する記述が無い。
そして殊更に渡辺崋山の多種の容疑が強調されいる点。
例えば無人島渡航計画は2回目の調査で違法ではない事が確認されていましたが、事情の詳細が分かっていない1回目の調査を誇張を加えて記述している。
さらに小笠原の探索書にはない「渡辺崋山アメリカ密航計画」まで書かれている始末。完全にでっち上げです。
はっきり言って鳥居にとっては無人島渡航計画の有無合法非合法等どうでも良かったのでしょう。
目的は渡辺崋山を狙い撃ちすることであったと思われます。
こういった点から 花井→小笠原→鳥居 を経由した後、当初の話が大分変わっている事が推察される。
…というか、大分変わってるし…

さてさて。ここら辺りで一度話を纏めてみましょう。

1)花井の密告→×、花井情報提供する→○
2)花井→小笠原→鳥居経由で、崋山らや無人島渡航計画が伝わる。
 
ハイ。こんな感じなのですが…
ここでひとつ疑問が出てまいります。

何故鳥居はわざわざ
「虎一申立候儘、認取此段奉申上候」、
虎一が言ってきた事をそのまま認めて上申します
なんて事を言っているのでしょうか?



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>拍手いただきました方、ありがとうございましたv

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4 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
ありがとうございます (hanai)
2007-11-07 16:02:59
大変、勉強になります。かなり深い内容なので理解するのも大変ですが、個人的にも勉強をしてさらに、詳しくなれば、不思議な面も解決できると思います。
林家とも関係あるんですね。
大変だったと思います、本当に有難うございます。
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いえいえ! (ヒジハラ)
2007-11-07 21:48:37
>hanai様
こんばんわ!
いえ、此方こそ勉強になっています。疑問を投げて頂いてありがとうございました。
まだ2~3回ほど続きますので、お時間が許すようでしたら、ゼヒお付き合いくださいませ。
中々上手に纏められなくて、返って申し訳ないです…

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大変ありがたいです。 (hanai)
2007-11-09 10:26:48
私事の疑問にこれほどまで、対応して下さり、申し訳ないやら、嬉しいやら、本当に有難うございます。
今までの人生で本当に疑問な点でしたので、明確になり嬉しいです。子供の頃、おじいちゃんが話してくれた、虎一おじいちゃんの昔話を少しづつ思いだしました。神戸の資料館ですが、近所なので休みの日にでも行ってみます。続きを楽しみに待ってます。
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Unknown (ヒジハラ)
2007-11-09 15:44:09
>hanai様
こんにちわ!
中々ややこしく後で読み返すと赤面すること頻りでありますが…そう言って頂けると書き手冥利に尽きます。
やはりご親族には史料や本からは分からない話が伝わっているのでしょうね。気が向かれましたらぜひお聞かせ下さい。
この話は次の1話で終わる予定ですが、その最後に私が参考にした本を数冊ご紹介いたします。
よろしかったらご参考くださいませ。
神戸の県政資料館、こじんまりしていましたが、中々風情のあるいい建物でしたよ~
ぜひぜひ行ってみてくださいませ!

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