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ソ連による「日ソ中立条約」の一方的な破棄と、一方的な日本に対する先制攻撃は 真面目に考えたら「国際法違反」である

2018-09-17 12:05:42 | 近現代史関連
たまにはYahoo!知恵袋でも有意義なQ&Aがなされることもあるという事例を紹介してみましょう。

以前、知恵袋でこのような質問をたてたことがあります。

ソ連による「日ソ中立条約」の一方的な破棄と、一方的な日本に対する先制攻撃は

真面目に考えたら「国際法違反」ではないのでしょうか?

勿論、ソ連は極東国際軍事裁判において「関特演」
を根拠に

「日ソ中立条約」に先に違反したのは日本である

という「有権解釈」を日本側に否応なしに飲ませたわけですけど

であるにしても、本来なら「先制攻撃」の事実は消えないはずです。

なお「日本にまったく非はない」などという主張をしているわけではありませんので、念のため。

いかがでしょうか?


https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11164637966


以下にベストアンサーの方の回答をそのまま引用させていただきます。

原則的なお話ですと、
・当時として「日ソ中立条約」は有効であり、「ソ連による「日ソ中立条約」の一方的な破棄と、一方的な日本に対する先制攻撃」というのは「国際法違反(義務違反)」。
・ただし、この事例では「違法性棄却」の要素が関係している(少なくともソ連は「関特演」を根拠にそう主張している)。
という事だと思います。


まず、ソ連が「日ソ中立条約」に抵触したというのは否定できない事実です。
「日ソ中立条約」では、条約の有効期間は1941年4月25日から5年間。満了1年前までに両国のいずれかが廃棄を通告しない場合は、さらに次の5年間自動延長。と規定されています。
ソ連が「日ソ中立条約」の「廃棄を通告した」のは1945年4月5日のこと。その場で「日ソ中立条約」が「1946年4月25日まで有効」という認識はソ連外相も同意しているわけです。
つまり条約は「破棄されていたのでもなく、無効になったのでもなく」、依然として「1946年4月25日まで有効」だったわけですね。
このことからソ連は疑いようもなく「義務違反」を行ったわけです。


さて「違法性棄却」の問題ですが…


(1)「違法性棄却」には幾つかの要件があります。
「他国の先行違法行為の存在」「被害国による違法行為の中止要請と賠償請求の提起」「受けた侵害との均衡性」という要件があります。
当然ながら「我が国民が一人殺されたので、対抗措置として貴国の国民を1億人殺す」というのは違法性棄却にはなりません。
「関特演」が条約違反であるなら、まず違法行為に対する請求や要請・抗議が必要です。そしてソ連が行える対抗措置というものは同程度のものに限られるということになります。

(2)「関特演」を根拠に「日ソ中立条約」が「破棄された」と主張するなら、それは「日本に対する先制攻撃」より以前に日本に通告されるべきでした。
1941年7月に行われた「関特演」でしたが、ソ連が「日ソ中立条約」の「廃棄を通告した」のは1945年4月5日のこと。その場で「日ソ中立条約」が「1946年4月25日まで有効」という認識はソ連外相も同意しているわけです。
「(条約は)1946年4月25日まで有効」としたソ連外相が同意しているのに、遡及的に「関特演(1941年7月)により日ソ中立条約が破棄された」とソ連が主張するのは禁反言に該当するでしょうね。

(3)すでに触れられていますが「侵略」の定義というのも重要です。
「違法性棄却」には限界があります。「強行規範にもとづく限界として、その行動が強行規範(jus cogens)に反するときはいかなる事由によっても違法性は棄却されない(国際法学講義 杉原高嶺p518)」という指摘があります。
数少ない強行規範には「侵略」が含まれています。
もし「侵略」という定義がshpfiveさんが言う「一方的な宣戦布告に基づき、「自衛のための戦争」と考える余地がないもの」というものなら、ソ連の「侵略」は「違法性棄却」の限界を超えているということになります。

こういう点を考えると、「法的には「国際法違反」である」と言えますね。

ただ、これはあくまで「法的」なお話です。
「現実的」に、ソ連は日本に対して一方的な宣戦布告と先制攻撃を行ったわけで、結果として敗者となった日本はソ連の国際法違反を訴追する権利を失いました。

日本の認識が甘かったと言われればその通りです。
日本側にも何かしらの非があった可能性は否定できません。

しかし「法的なお話」に限定するなら、「ソ連の一連の行動は「国際法違反」である」と結論して問題ないと思います。


まさに「知恵袋に賢者あり」と表現したくなるような明快なご回答であると、少なくとも私自身は思っています。

単純に事実関係として考えたとき

当のソ連自身が「日ソ中立条約」は継続中であり、それにもかかわらず対日参戦するのだから、それを要請する側であるアメリカ、イギリスに対して一筆書けというのは理の当然であり、事実アメリカのトルーマン大統領は、それを書いているわけです。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E3%82%BD%E4%B8%AD%E7%AB%8B%E6%9D%A1%E7%B4%84

ポツダム会談で、ソ連は、「日ソ中立条約の残存期間中であること」を理由に、アメリカと他の連合国がソ連政府に「対日参戦の要請文書を提示すること」を要求した[1]。

これに対して、アメリカ大統領ハリー・S・トルーマンはソ連首相ヨシフ・スターリンに送った書簡の中で、連合国が署名したモスクワ宣言(1943年)や「国連憲章103条・106条」などを根拠に、「ソ連の参戦は平和と安全を維持する目的で国際社会に代わって共同行動をとるために他の大国と協力するものであり、国連憲章103条に従えば憲章の義務が国際法と抵触する場合には憲章の義務が優先する」という見解を示した[1][2]。

この回答はソ連の参戦を望まなかったトルーマンやジェームズ・F・バーンズ国務長官が、国務省の法律専門家であるジェームズ・コーヘンから受けた助言をもとに提示したものであり、法的な根拠には欠けていた[3]。


ネットなどでは、今回引用させていただいた過去質問の他の回答者さんにも見られるような

>真面目に考えたら「国際法違反」ではないのでしょうか?
日本が守っていないので、国際法違反になりません。

>本来なら「先制攻撃」の事実は消えないはずです。
条約は、既に空文化していたので、ソ連側に責任はありません。

>なお「日本にまったく非はない」などという主張をしているわけではありません
そうではなく、非は、日本側にしかありませんから。

日ソ中立条約を読み直してください。
『第二条 締約国ノ一方カ一又ハ二以上ノ第三国ヨリノ軍事行動ノ対象ト為ル場合ニハ他方締約国ハ該紛争ノ全期間中中立ヲ守ルヘシ』
独ソ戦中に、ドイツと同盟関係にあることは、明らかな条約違反になります。


などという主張も見られますが、これは「リーガルマインド」ができない人の典型的な論法であると感じます。

あくまでも法的な話をしているのに「歴史的根拠」や「政治的背景」などを持ち出して、強引に自分にとって都合のいい結論を出してしまう。

単純な事実を指摘しておけば、日本側の関特演実施に対して、ソ連側の方から

こうした行為は、日本側が誠実に日ソ中立条約を履行意思を持っていると見なすことは出来ず、ゆえに当方としては条約の無効化という解釈をせずにはいられない

という声明を出しておけば、話は全然違ってきます。

また、スターリン自身がポツダム会談において「日ソ中立条約の残存期間中であること」を理由に、アメリカと他の連合国がソ連政府に「対日参戦の要請文書を提示すること」を要求したこと、それ自体もソ連側が、少なくともその時点までは「日ソ中立条約」が継続中であったと認識していることをあらわしています。


勿論、政治的にはソ連側にあくまでも日本と結んだ中立条約を何がなんでも守り、独ソ戦においてレンドリースなどによる支援を受けたアメリカをはじめとする連合国の要請を断るという選択肢など存在しませんでしたけど

あくまでも法的なお話に限定すれば、ベストアンサーの方のおっしゃる通り

「ソ連の一連の行動は「国際法違反」である」と結論して問題ないと思います。




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