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Yahoo!知恵袋で見かけたトンデモ議論(7) 尖閣諸島の「先占」はアメリカの占領により中断された?

2018-07-29 21:02:48 | 政治・社会問題
別件で調べていたら、たまたま面白いものを見つけました(笑)。

以下に引用します。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12182046567

>釣魚島(尖閣諸島)について、このような不思議な主張をする国際法学者がいるそうです。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14181342499

jesselin34さん
2017/11/3
11:26:41返信より

>72年アメリカが施政権を
例えば中国へ返せば済んだ話でしょう。
その点 日本は尖閣領有に関して無力です。
領有してから無力な時期が存在するのですから
過去の先占なんて無効だと言うことですよ。

・・・・・・・・

ここまでは、まあ単なる個人の主張だと笑ってすませられますが、問題はここからです。

jesselin34さん
2017/11/313:44:11返信より

>国際法学者でも
途中占領され実質的な施政権を失った日本には
先占が中断されてと見なす学者も居ますよ。
国際法に明るい質問者さんなら
御存じでしょう。

・・・・・・・・

寡聞にして、私はそのような主張をする「国際法学者として評価されている人」を知らないんです。

勿論、この回答者さんが何らかの誤解をしている、もしくは何らかの前提条件がある話なのに、それを省いているなどの可能性はありますけど…

こちらの回答者さんが発言の元になったソースを明らかにしてくれれば、それなりの判断もできますが

つまり、釣魚島(尖閣諸島)最終的にが中日どちらに帰属するのだとしても

アメリカが釣魚島(尖閣諸島)を占領統治したからといって

「自身が所有していない領土を与えることはできない」という大原則があるはずです。

そう、領土権を持つ国の同意がない限り、領土権の移転は行われないというのは、国際法上の通説のはずです。

にもかかわらず

アメリカの一時的占領により「先占」がリセットされるという「学説」が存在するということなのでしょうか?

ご存じの方、教えてください。


→さて、国際法をきちんと学んだ方なら誰でも知っていることだと思うのですが、そもそも「先占」というものが、他国の「征服によらない暫定的な占領」により中断されるなどということは法理からいってあり得ません。

なので、こちらで引用されている回答者の

>国際法学者でも
途中占領され実質的な施政権を失った日本には
先占が中断されてと見なす学者も居ますよ。
国際法に明るい質問者さんなら
御存じでしょう。


というのは、文句なし、ハイパーレベルのトンデモです(笑)。

そんな国際法学者がいるというなら、是非、日中、それ以外の他国を問わず、その方の著書、論文を提示してほしいものです。

また、もしいたら「偽学者」と言い切ってもいいでしょう。

説明します。

まず、「先占」とは何かということから話を始めますけど、今、手元にある国際法学者の松隈清氏の『国際法概論』(酒井書店)P168~161には、こうあります。

>(1) 征服
征服とは国家が一方的な意思でもって、兵力により他国領土を占領し、強制的に併合することである。例えば1936年のイタリアによるエチオピア征服などがその例である。征服は単なる一時的軍事占領とは異なり、相手国の抵抗が完全に終わってしまうことが必要であり、領域内にまだ一部の抵抗が継続しているような場合は征服という法現象は認められない。したがって、領土の変更があったとは認められない。いずれにせよ、こうした征服による領土変更は戦争が違法化されなかった時代の歴史的遺物であって、今日ではこうした違法行為から有効な法効果は生まれ得ないとみるべきである。

(2) 先占
国家の一方的行為による領土取得の方式には、いま一つ、「先占の法理」に基づくものがある。先占とは、いずれの国にも属していない無主の土地を、国家が自国の領土とする意思をもって、現実に占有し、実効的に支配する場合のことをいう。したがって先占により領土取得が有効になるためには、個人や個人団体ではなく、国家が先占の主体となり、領有の意思を持って、現実に無主の土地に対して実効性のある継続的な支配を行うことである。無主の土地とはいずれの国家にも属していない土地をいうのであって、住民の住んでいない土地をいう意味ではない。したがって近世、西欧諸国がアメリカやアフリカ大陸を植民地として領有宣言した時、そこには国際法の法人格をなす国家(すなわち、キリスト教的文明国)は存在しなかったので無主の土地(国家に所属しない土地)とみなし、先占の法理をもって領有の正当化をはかったのである。また実効支配とは、単に発見し、国旗を掲揚したというだけで効果を伴うものではなく、統治機構を設けるとか定住者を置くとかすることが望ましいのである。ただ土地の状況や気候条件から定住が困難であれば、定期的に巡視するか、または国家機関の行政官を随時派遣するとかして継続的支配の意思を明示することが必要である。

→他に領有の権原としては「割譲」なども同書では取り上げられていますが、ここでは省略します。

が、「征服」、「割譲」、そして「先占」いずれの権原であったとしても、これは一時的、暫定的なものではなく、その時点で「完成」するものです。

アメリカはロシア帝国からアラスカを割譲されましたが、そうなった以上はロシアはアラスカの領有に関するに対するいかなる権原もありません。

もし、アメリカとロシアが戦争し、結果としてロシアが勝利して、アメリカからアラスカを割譲されない限り。
(現実問題として、そんなことは起こらないと思いますけど)

ちなみに我が国にしても台湾や朝鮮半島などにしても、あくまでも敗戦という結果のあと、サンフランシスコ平和条約により「放棄」したからこそ、国際法上は我が国の領土ではなくなったのだということをお忘れなく。

敗戦がなければ、我が国が台湾や朝鮮半島などを手放すこともなかったでしょう。

なお、その後に例えば朝鮮半島などで独立運動などが起こるなどの話は別問題ですし、そうなったとしても、その領域などの結果は別の条約により定められるだけです。

正当な領有の権原により領有された土地に対する権利は、他国による暫定的な占領で覆すことはできません。

ここでは、あえて尖閣諸島の領有権について日中どちらに正統性があるかは論じません。

が、基本的な認識としては我が国は尖閣諸島の領有権の根拠として

https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/qa_1010.html#q2

>即ち,尖閣諸島は,1885年から日本政府が沖縄県当局を通ずる等の方法により再三にわたり現地調査を行い,単に尖閣諸島が無人島であるだけでなく,清国の支配が及んでいる痕跡がないことを慎重に確認した上で,1895年1月14日に現地に標杭を建設する旨の閣議決定を行って,正式に日本の領土に編入しました。この行為は,国際法上,正当に領有権を取得するためのやり方に合致しています(先占の法理)。尖閣諸島は,1895年4月締結の下関条約第2条に基づき,日本が清国から割譲を受けた台湾及び澎湖諸島には含まれません。


→と、1895年1月14日に現地に標杭を建設する旨の閣議決定を行って,正式に日本の領土に編入したことをもって「先占が完了した」としているのに対して

一方で中国側は「日本の先占が完成する以前に、当方は既に先占を完了していた」と主張しているというのが事実です。
http://www.diaoyudao.org.cn/jp/

>日本人が釣魚島をいわゆる「発見」する以前に、中国は釣魚島及びその付属島嶼に対してすでに数百年にわたって管轄を実施してきた。日本が1895年に、甲午戦争を利用し、釣魚島を秘密裏に自国の版図に「編入」し、いわゆる「先占」原則によって釣魚島を「無主地」として主権を主張した。日本のこのような行為は国際法の領土取得の関連規則に著しく背いており、中国の領土を占拠した不法行為であり、国際法上の効力を有さない。


→先に引用した回答

>国際法学者でも
途中占領され実質的な施政権を失った日本には
先占が中断されてと見なす学者も居ますよ。
国際法に明るい質問者さんなら
御存じでしょう。


→は、いわば日中両国の「先占についての主張」を真っ向から否定するものです(笑)。

それこそ基本的な話ですけど

アメリカによる沖縄地方、及びそこに含まれる尖閣諸島の占領は「征服の権原」により自国領土として行ったものではなく、あくまでも一時預かりであったのに過ぎませんし、事実、アメリカは後の「沖縄返還」により、それを認めています。

条約に裏付けられた「暫定的な占領」で、その土地による領有権を失うなら、敗戦後に占領された我が国は勿論、ドイツや、近くはイラクなども「どこであるにかかわりなく自国領土に対する権原を失います」。

そんなバカな話はないでしょう。

結論から言って、この

>国際法学者でも
途中占領され実質的な施政権を失った日本には
先占が中断されてと見なす学者も居ますよ。
国際法に明るい質問者さんなら
御存じでしょう。


→というのは国際法上の根拠を持たない妄言であるとしか考えられません。



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