基本的な話をすると、徴用工問題についての韓国大法院判決というのは「強制動員生還者」である韓国人(遺族なども含む)に対して1億ウオン(約1000万円)の慰謝料請求権を認め、新日鐵住金に賠償金の支払いを命じたものです。
全文の仮訳文があります。
http://justice.skr.jp/koreajudgements/12-5.pdf?fbclid=IwAR052r4iYHUgQAWcW0KM3amJrKH-QPEMrH5VihJP_NAJxTxWGw4PlQD01Jo
簡単にいうと、この判決は徴用工の問題について
「日韓請求権協定」に基づいて、当時の日本国政府から韓国政府に支払われた「経済協力金」(事実上の賠償金)の中に徴用工の未払い賃金、及び徴用に伴う賠償金は「含まれない」
ということにより日本企業への請求も可能だというものです。
当然、この判決(韓国側の司法判断)が認められ、新日鐵住金に限らずですけど、我が国の企業か原告側の賠償に応じるということになれば
いわゆる「従軍慰安婦」(あえて、この表現を使用します)の賠償請求権も当然ながら存在することになり
結果として韓国側から「個人の請求権」に基づく大量の戦時賠償についての「個人による請求」が我が国に押し寄せることになります。
逆に、我が国の民間が朝鮮半島に残してきた個人資産分が少なからず存在しますが
https://blogs.yahoo.co.jp/deliciousicecoffee/6054774.html?__ysp=5pel5pys44GM5pyd6a6u5Y2K5bO244Gr5q6L44GX44Gf6LOH55Sj
これについては、その親族が大韓民国側の政府、民間に対して請求できるということにはなりません。
確かに国家による請求権と個人の請求権は同じものではありませんけど
同一の内容で再度にわたり請求ができるというわけでもないんです。
朝鮮半島からの引き揚げにより現地に残された個人財産の請求権の問題は、日本国政府と大韓民国政府の間で締結された請求権協定により、それこそ解決済みとされていますので、仮に韓国側に対して訴訟を起こしても請求権協定の存在を理由にして棄却されてしまいます。
日本国政府に対して裁判を起こすこともできますが、これも恐らくは棄却されるでしょう。
「請求権協定という日韓の条約による枠組みがあるので、貴方の請求権は存在しますが、この法廷において、その権利を行使することは出来ません、ただし関係者との話し合いなどにより個別の解決を模索することなどは可能です」
といったところでしょうか?
むしろ、問題は韓国大法院判決による「強制動員生還者」である韓国人(遺族なども含む)に対して1億ウオン(約1000万円)の慰謝料請求権を認め、新日鐵住金に賠償金の支払いを命じた判決が妥当なものであるかどうかです。
韓国大法院判決は次のように判断しています
(1)本件は、不法な植民支配・侵略戦争に直結した日本企業に対する反人道的な不法行為の慰謝料請求権であり、未払い賃金や補償金を請求しているものではない。
(2)請求権協定は、不法な植民支配に対する賠償ではなく、サンフランシスコ条約第4条(a)に基づく債権債務関係の処理だけであり、植民地支配の不法性に直結する請求権まで含むものではない。
(3)請求権協定第1条により日本が韓国に支払った3億ドルの無償提供及び2億ドル借款は、同協定2条の請求権放棄と法的対価関係にはない。
(4)請求権協定の際に、日本政府は、植民地支配の不法性を認めないまま強制動員被害の法的賠償を否認した。
(5)請求権協定の交渉の際に、韓国が日本に対して8項目に対する補償として総額12億2000万ドルを要求し、そのうち3億6400万ドル(約30%)を強制動員被害補償に対するものとして算定していた事実を認めることができるが、実際の請求権協定は極めて低額な無償3億ドルで妥結し受け取ったものであり、強制動員慰謝料も請求権協定の適用対象者に含まれていたとは言いがたい。
さて、請求権協定はサンフランシスコ平和条約4条(a)の債権債務関係の処理に基づくものです。
そして、請求権協定の文言は、「平和条約第4条(a)に規定されたことを含め、完全かつ最終的に解決された」としています。
サンフランシスコ平和条約第4条
(a) この条の(b)の規定を留保して、日本国及びその国民の財産で第二条に掲げる地域にあるもの並びに日本国及びその国民の請求権(債権を含む。)で現にこれらの地域の施政を行つている当局及びそこの住民(法人を含む。)に対するものの処理並びに日本国におけるこれらの当局及び住民の財産並びに日本国及びその国民に対するこれらの当局及び住民の請求権(債権を含む。)の処理は、日本国とこれらの当局との間の特別取極の主題とする。第二条に掲げる地域にある連合国又はその国民の財産は、まだ返還されていない限り、施政を行つている当局が現状で返還しなければならない。(国民という語は、この条約で用いるときはいつでも、法人を含む。)
(b) 日本国は、第二条及び第三条に掲げる地域のいずれかにある合衆国軍政府により、又はその指令に従つて行われた日本国及びその国民の財産の処理の効力を承認する。
財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定の説明書第二条より
https://ja.m.wikisource.org/wiki/%E8%B2%A1%E7%94%A3%E5%8F%8A%E3%81%B3%E8%AB%8B%E6%B1%82%E6%A8%A9%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%81%AE%E8%A7%A3%E6%B1%BA%E4%B8%A6%E3%81%B3%E3%81%AB%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%8D%94%E5%8A%9B%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%9B%BD%E3%81%A8%E5%A4%A7%E9%9F%93%E6%B0%91%E5%9B%BD%E3%81%A8%E3%81%AE%E9%96%93%E3%81%AE%E5%8D%94%E5%AE%9A%E3%81%AE%E8%AA%AC%E6%98%8E%E6%9B%B8
両国及びその国民の財産、権利及び利益並びに両国及びその国民の間の請求権に関する問題が、サン・フランシスコ平和条約第四条⒜に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認し(第一項)、この条の規定による処理の対象から除かれる一定の財産、権利及び利益(第二項)のほかは、この協定の署名の日に一方の国の管轄下にある他方の国及び国民の財産、権利及び利益に対する措置並びに一方の国及びその国民の他方の国及びその国民に対する請求権に関しては相互にいかなる主張もすることができないものとする
ここに含めてとある以上、平和条約第4条(a)以外の規定されたものも含まれているのが自然な解釈ではないでしょうか?
さらに、かつて行われた中国人元慰安婦女性による訴訟についての2007年4月27日最高裁判決にも抵触します。
https://lite.blogos.com/article/338062/?axis=&p=2
日本の最高裁は、上記サンフランシスコ平和条約について「将来に向けて揺るぎない友好関係を築くという平和条約の目的を達成するために定められたものであり、この枠組みが定められたのは、平和条約を締結しておきながら戦争の遂行中に生じた種々の請求権に関する問題を、事後的個別的な民事裁判上の権利行使をもって解決するという処理にゆだねたならば、将来、どちらの国家又は国民に対しても、平和条約締結時には予測困難な過大な負担を負わせ、混乱を生じさせることになるおそれがあり、平和条約の目的達成の妨げになるとの考えによる」と判断しました。
日中共同声明5項は、「中華人民共和国政府は、中日両国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する」としています。
この趣旨は、サンフランシスコ平和条約の枠組みと同じであり、「ここでいう請求権の放棄とは、請求権を実体的に消滅させることがまでを意味するのではなく、当該請求権に基づいて裁判上訴求する権能を失わせするにとどまるもの」とし、「債務者側(日本企業)が任意で自発的な対応することは妨げられない」としました。
「上告人(日本企業)を含む関係者において、本件被害者らの被害の救済に向けた努力をすることが期待される」と判示しました。その結果、当事者間の話し合い、努力により、裁判外の和解により日本企業が中国人被害者に和解金を支払って、一定範囲の中国人徴用工に和解金を支払う基金を設立して解決しました。
この日本の最高裁の判決は国内でも賛否両論ありますが、一つの知恵であることは間違いないと思います。
両国間で請求権放棄で協定(条約)を締結した以上、個人的権利はあるが、裁判所に請求しても、裁判所が判決を下す措置はしないという約束になっている、ということです。このような権利を、民法では「自然債務(自然債権)」と呼んでいます。
仮に我が国が韓国側の司法判断に基づく主張を受け入れるということになれば、中国人元慰安婦女性に対する2007年4月27日最高裁判決を否定することにもなります。
間違いなく中国は黙っていないでしょうし
他の、例えば東南アジア諸国などにも波及するでしょう。
我が国の韓国との関係は非常に危ういところに来ています。
余談
そういえば以前、知恵袋で慰安婦だった女性たちに対する「謝罪と賠償」をすべきだと力説し、私をネトウヨ呼ばわりした某女性投稿者の方がいらっしゃいましたが
今はどのようなお気持ちで過ごしていらっしゃるでしょうか?
全文の仮訳文があります。
http://justice.skr.jp/koreajudgements/12-5.pdf?fbclid=IwAR052r4iYHUgQAWcW0KM3amJrKH-QPEMrH5VihJP_NAJxTxWGw4PlQD01Jo
簡単にいうと、この判決は徴用工の問題について
「日韓請求権協定」に基づいて、当時の日本国政府から韓国政府に支払われた「経済協力金」(事実上の賠償金)の中に徴用工の未払い賃金、及び徴用に伴う賠償金は「含まれない」
ということにより日本企業への請求も可能だというものです。
当然、この判決(韓国側の司法判断)が認められ、新日鐵住金に限らずですけど、我が国の企業か原告側の賠償に応じるということになれば
いわゆる「従軍慰安婦」(あえて、この表現を使用します)の賠償請求権も当然ながら存在することになり
結果として韓国側から「個人の請求権」に基づく大量の戦時賠償についての「個人による請求」が我が国に押し寄せることになります。
逆に、我が国の民間が朝鮮半島に残してきた個人資産分が少なからず存在しますが
https://blogs.yahoo.co.jp/deliciousicecoffee/6054774.html?__ysp=5pel5pys44GM5pyd6a6u5Y2K5bO244Gr5q6L44GX44Gf6LOH55Sj
これについては、その親族が大韓民国側の政府、民間に対して請求できるということにはなりません。
確かに国家による請求権と個人の請求権は同じものではありませんけど
同一の内容で再度にわたり請求ができるというわけでもないんです。
朝鮮半島からの引き揚げにより現地に残された個人財産の請求権の問題は、日本国政府と大韓民国政府の間で締結された請求権協定により、それこそ解決済みとされていますので、仮に韓国側に対して訴訟を起こしても請求権協定の存在を理由にして棄却されてしまいます。
日本国政府に対して裁判を起こすこともできますが、これも恐らくは棄却されるでしょう。
「請求権協定という日韓の条約による枠組みがあるので、貴方の請求権は存在しますが、この法廷において、その権利を行使することは出来ません、ただし関係者との話し合いなどにより個別の解決を模索することなどは可能です」
といったところでしょうか?
むしろ、問題は韓国大法院判決による「強制動員生還者」である韓国人(遺族なども含む)に対して1億ウオン(約1000万円)の慰謝料請求権を認め、新日鐵住金に賠償金の支払いを命じた判決が妥当なものであるかどうかです。
韓国大法院判決は次のように判断しています
(1)本件は、不法な植民支配・侵略戦争に直結した日本企業に対する反人道的な不法行為の慰謝料請求権であり、未払い賃金や補償金を請求しているものではない。
(2)請求権協定は、不法な植民支配に対する賠償ではなく、サンフランシスコ条約第4条(a)に基づく債権債務関係の処理だけであり、植民地支配の不法性に直結する請求権まで含むものではない。
(3)請求権協定第1条により日本が韓国に支払った3億ドルの無償提供及び2億ドル借款は、同協定2条の請求権放棄と法的対価関係にはない。
(4)請求権協定の際に、日本政府は、植民地支配の不法性を認めないまま強制動員被害の法的賠償を否認した。
(5)請求権協定の交渉の際に、韓国が日本に対して8項目に対する補償として総額12億2000万ドルを要求し、そのうち3億6400万ドル(約30%)を強制動員被害補償に対するものとして算定していた事実を認めることができるが、実際の請求権協定は極めて低額な無償3億ドルで妥結し受け取ったものであり、強制動員慰謝料も請求権協定の適用対象者に含まれていたとは言いがたい。
さて、請求権協定はサンフランシスコ平和条約4条(a)の債権債務関係の処理に基づくものです。
そして、請求権協定の文言は、「平和条約第4条(a)に規定されたことを含め、完全かつ最終的に解決された」としています。
サンフランシスコ平和条約第4条
(a) この条の(b)の規定を留保して、日本国及びその国民の財産で第二条に掲げる地域にあるもの並びに日本国及びその国民の請求権(債権を含む。)で現にこれらの地域の施政を行つている当局及びそこの住民(法人を含む。)に対するものの処理並びに日本国におけるこれらの当局及び住民の財産並びに日本国及びその国民に対するこれらの当局及び住民の請求権(債権を含む。)の処理は、日本国とこれらの当局との間の特別取極の主題とする。第二条に掲げる地域にある連合国又はその国民の財産は、まだ返還されていない限り、施政を行つている当局が現状で返還しなければならない。(国民という語は、この条約で用いるときはいつでも、法人を含む。)
(b) 日本国は、第二条及び第三条に掲げる地域のいずれかにある合衆国軍政府により、又はその指令に従つて行われた日本国及びその国民の財産の処理の効力を承認する。
財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定の説明書第二条より
https://ja.m.wikisource.org/wiki/%E8%B2%A1%E7%94%A3%E5%8F%8A%E3%81%B3%E8%AB%8B%E6%B1%82%E6%A8%A9%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%81%AE%E8%A7%A3%E6%B1%BA%E4%B8%A6%E3%81%B3%E3%81%AB%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%8D%94%E5%8A%9B%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%9B%BD%E3%81%A8%E5%A4%A7%E9%9F%93%E6%B0%91%E5%9B%BD%E3%81%A8%E3%81%AE%E9%96%93%E3%81%AE%E5%8D%94%E5%AE%9A%E3%81%AE%E8%AA%AC%E6%98%8E%E6%9B%B8
両国及びその国民の財産、権利及び利益並びに両国及びその国民の間の請求権に関する問題が、サン・フランシスコ平和条約第四条⒜に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認し(第一項)、この条の規定による処理の対象から除かれる一定の財産、権利及び利益(第二項)のほかは、この協定の署名の日に一方の国の管轄下にある他方の国及び国民の財産、権利及び利益に対する措置並びに一方の国及びその国民の他方の国及びその国民に対する請求権に関しては相互にいかなる主張もすることができないものとする
ここに含めてとある以上、平和条約第4条(a)以外の規定されたものも含まれているのが自然な解釈ではないでしょうか?
さらに、かつて行われた中国人元慰安婦女性による訴訟についての2007年4月27日最高裁判決にも抵触します。
https://lite.blogos.com/article/338062/?axis=&p=2
日本の最高裁は、上記サンフランシスコ平和条約について「将来に向けて揺るぎない友好関係を築くという平和条約の目的を達成するために定められたものであり、この枠組みが定められたのは、平和条約を締結しておきながら戦争の遂行中に生じた種々の請求権に関する問題を、事後的個別的な民事裁判上の権利行使をもって解決するという処理にゆだねたならば、将来、どちらの国家又は国民に対しても、平和条約締結時には予測困難な過大な負担を負わせ、混乱を生じさせることになるおそれがあり、平和条約の目的達成の妨げになるとの考えによる」と判断しました。
日中共同声明5項は、「中華人民共和国政府は、中日両国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する」としています。
この趣旨は、サンフランシスコ平和条約の枠組みと同じであり、「ここでいう請求権の放棄とは、請求権を実体的に消滅させることがまでを意味するのではなく、当該請求権に基づいて裁判上訴求する権能を失わせするにとどまるもの」とし、「債務者側(日本企業)が任意で自発的な対応することは妨げられない」としました。
「上告人(日本企業)を含む関係者において、本件被害者らの被害の救済に向けた努力をすることが期待される」と判示しました。その結果、当事者間の話し合い、努力により、裁判外の和解により日本企業が中国人被害者に和解金を支払って、一定範囲の中国人徴用工に和解金を支払う基金を設立して解決しました。
この日本の最高裁の判決は国内でも賛否両論ありますが、一つの知恵であることは間違いないと思います。
両国間で請求権放棄で協定(条約)を締結した以上、個人的権利はあるが、裁判所に請求しても、裁判所が判決を下す措置はしないという約束になっている、ということです。このような権利を、民法では「自然債務(自然債権)」と呼んでいます。
仮に我が国が韓国側の司法判断に基づく主張を受け入れるということになれば、中国人元慰安婦女性に対する2007年4月27日最高裁判決を否定することにもなります。
間違いなく中国は黙っていないでしょうし
他の、例えば東南アジア諸国などにも波及するでしょう。
我が国の韓国との関係は非常に危ういところに来ています。
余談
そういえば以前、知恵袋で慰安婦だった女性たちに対する「謝罪と賠償」をすべきだと力説し、私をネトウヨ呼ばわりした某女性投稿者の方がいらっしゃいましたが
今はどのようなお気持ちで過ごしていらっしゃるでしょうか?