goo blog サービス終了のお知らせ 

Shpfiveのgooブログ

主にネットでの過去投稿をまとめたものです

夏王朝実在説について

2017-05-29 23:29:59 | 国際情勢
夏王朝について、その実在は既に中国では歴史的事実としてとらえられています。

例えば中国の中学校歴史教科書では、夏王朝について、原始社会から奴隷制社会に移行に伴って紀元前21世紀に成立した中国史上最初の世襲制王朝である、と定義しているそうです。
http://www.y-history.net/appendix/wh0203-014.html

>その最初の王都の陽城の位置は不明であるが、最近の発掘によって河南省登封県の城跡が有力とし、夏の後期の宮殿跡が河南省の二里頭遺跡であるとしている。
<『世界の教科書シリーズ5中国中学校歴史教科書・中国の歴史入門』小島晋治/並木頼寿監訳 明石書房 p.76 右図も同書より>

→実際、中国河南省偃師市の二里頭村で1959年に発見され、1960年には規模の大きな宮殿の基壇の存在も確認されている二里頭遺跡についての研究も進んでおり、その存在が殷(商)の建国(二里岡文化)よりも先行していたということ、及び殷(商)が、この二里頭を中心とする文化集団を征服し、その文化を継承したことなどは、現在では研究者の一致した見解とされています。

私自身も、おそらくはこの二里頭で発展した文化集団が後世から「夏王朝」と呼ばれる存在だったのだろうと思っていますし

近い将来は中国のみならず、我が国を含む他国の歴史教科書の記述も「夏王朝実在」という方向性で書かれるようになるのではないか?

と予想しています。

が、残念ながらこの二里頭遺跡から「文字」の出土資料が未だ発見されていません。

二里頭遺跡に存在した文化集団がどのようなものだったのか?

それが、本当に史書に書かれた夏王朝に当たるものなのか?

まだまだ解明されていない事が多く

それが「夏王朝実在」を歴史的事実と位置付けるのに、今一つ躊躇わせるものがあるように感じられます。

夏王朝に「文字」、「記録」が存在したのか?

今後の研究進展を期待したいところです。

ドイツの「戦後賠償」について

2017-05-28 20:45:04 | 国際情勢
ドイツの戦後国家賠償に対する賛美に関しての質問です。日本は各種侵略戦争時代の戦後補償や賠償問題を取り上げられるとき、よく「ドイツを見習え」という論法がなされますが、その詳細は我が国ではあまり知られていないように思います。

①ドイツはなぜ、ホロコーストやユダヤ人問題で国家補償や賠償をしたんでしょうか?その背景ってどういうものだったんでしょうか?

きっかけは「ポツダム協定」にさかのぼります。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%84%E3%83%80%E3%83%A0%E5%8D%94%E5%AE%9A

>・ソ連および西側連合国(米・英・仏などを含む連合国)は、その占領地域から賠償を徴収する。ソ連の徴収分からポーランドへの賠償は充当される。
・西側連合国はその占領地域からソ連に対して賠償を配分しなければならない。ドイツの平時経済に不必要であると判定された工業設備・資材の10%は無償で、15%は物資との交換でソ連に引き渡される。
・賠償徴収は2年以内に行われなければならない
・ソ連は西側占領地域、西側連合国は東欧とソ連の占領地域、オーストリアにおける資本の請求権を相互に放棄する。
・ソ連は西側連合軍が押収したドイツの金資産等に対して関与しない。

→これによりドイツは「連合国に対する賠償」を行うことが「正式決定」されています。

とは言え、1949年に、西ドイツ(ドイツ連邦共和国)と、東ドイツ(ドイツ民主共和国)が成立た事でし、正当な継承国が決定されない状況下のため賠償問題の解決は統一後まで一時棚上げされています。

さて西ドイツの戦後の経済復興は同時に賠償請求にまつわる議論を呼び起こし、また1948年5月にイスラエルが独立宣言をしたこともあり、1952年9月10日にイスラエルと西ドイツの間で、「ナチスの権力掌握後に発生したユダヤ人被害者」に対する補償を行う条約を締結しています。

同日にはユダヤ人対独物的請求会議とハーグ議定書を調印し、個人的請求についての合意を行いました。

こちら、ご参考までに
http://dspace.lib.kanazawa-u.ac.jp/dspace/bitstream/2297/17883/1/AN00044830-43-3-89.pdf

一応言っておくと西ドイツによる賠償はユダヤ人問題に限らず、賠償・補償請求は被害者の国籍国によって行われるものであり、個人請求は国内制定法によって定められたものに限られています。

これは個人は国際法に基づく請求の権利を持たず、また国内制定法の制定は「あくまで道徳的な義務の遂行であり、法的義務ではないという見解」によるものです。

実際に西ドイツは国際法違反を理由とした個人請求を退けていますし、この見解はドイツ統一後でも踏襲されています。

たとえば東欧諸国に在住する「強制労働」の被害者に対する補償責任を、現在でもドイツは認めていませんし、これは当時のドイツ軍が徴収した「慰安婦」に対しても同様です。
(どっかの国だと大騒ぎになりそうですが…)

1990年9月12日のドイツ最終規定条約により、ドイツの戦争状態は正式に終了しましたが、この条約には賠償については言及されていません。
なので統一後のドイツ連邦共和国はドイツの戦後問題が最終的に解決されたとしており、法的な立場からの賠償を認めていません。

現在行っている補償等は、あくまでも道義的な立場としてのものです。

②ドイツ以外に、戦勝国や敗戦国が国交や平和条約後に、戦争の国家賠償や国家個人補償をした例はあるでしょうか?あればその背景や内容に関して教えてください。

イタリアがリビア、エチオピアに対して行っています。
http://www.asyura2.com/08/kokusai2/msg/607.html

そのイタリアも、今回のリビアにおけるクーデターに一枚かんでいるようですが。

個人的にドイツも見習うとしたら国家の方針を毅然と持ち、可能な限り自国の不利にならないよう努め、やむを得ない場合には自国の「誠意」を極力アピールする、という姿勢ではないか、などと考えています。

ナイ教授「トランプの北朝鮮政策、言ったことをそのままやるとは限らない」

2017-05-27 06:26:27 | 国際情勢
ダイヤモンド・オンライン 5/25(木) 6:00配信

以下はYahoo!ニュースより
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170525-00129316-diamond-int

>ジョセフ・ナイ教授は、カーター政権、クリントン政権で要職を歴任したアメリカを代表する国際政治学者だ。彼が提唱した「ソフト・パワー」という概念は、アメリカの外交政策に大きな影響を与えてきた。ナイ教授は今、トランプ大統領の外交政策をどのように見ているのか。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵、インタビューは2017年4月17日、於ハーバードケネディスクール)

 佐藤 トランプ大統領の就任から3ヵ月が経ちました。ナイ教授はハーバードケネディスクールで「アメリカの外交政策におけるリーダーシップと倫理」という授業を教えていますが、今日までのトランプ大統領の外交政策をどのように評価しますか。

 ナイ まだ1期目が始まったばかりですから、政策そのものを評価するには早すぎると思います。ただ過去3ヵ月の政策については失望することばかりです。アメリカは「ハード・パワー」(他国へ影響を及ぼす軍事力や経済力)と「ソフト・パワー」(文化、政治的価値観、外交政策などを通じて他国からの共感を得る力)の両方を生かすことによって世界のリーダー国となってきたわけですが、トランプ大統領が「ソフト・パワー」についてきちんと理解しているとは思えません。

 トランプ大統領は、大統領に就任してまもなく、イスラム教徒が大多数を占める中東・アフリカ6ヵ国からの入国を一時禁止する大統領令に署名しました。これは、この6ヵ国の人々だけではなく、すべてのイスラム教徒を敵にまわす行為です。この入国禁止令は世界におけるアメリカのリーダーシップを揺るがすばかりか、アメリカ人としての倫理にも反するものです。アメリカは伝統的に信仰や宗教によって人を差別しないことを国是としてきた国だからです。

 これまでの90日間を見る限り、トランプ大統領の外交政策はうまくいっていないというのが私の印象です。ただ、公平を期すために申し上げておきたいのですが、どの大統領も最初の100日間は非常に苦労します。例えば、ジョン・F・ケネディは、大統領に就任して100日も経たないとき、キューバへの侵攻作戦を実行して失敗しています(ピッグス湾事件=1961年4月、米国がカストロ政権の転覆を狙ってキューバに侵攻した事件)。ところがケネディはこの失敗から多くを学び、その後、様々な外交政策を成功させていきました。トランプ大統領が、これまでの失策から学び、それを今後生かしていってくれるのかはまだわかりません。

● 実はオバマ政権と大きく違わない トランプ政権の対北朝鮮政策

 佐藤 トランプ大統領の外交・軍事政策を見ていると、「オバマ前大統領とは違うことをやってみせる」ということを内外にアピールするために、あえて強硬路線をとっているような印象をうけます。これまでの北朝鮮に対する政策をどのように評価しますか。

 ナイ トランプ大統領の対北朝鮮政策は、オバマ前大統領の政策と比べてもそれほど違いがないように思います。トランプ大統領は「中国を通じて北朝鮮に圧力をかける」と繰り返し述べていますが、これはオバマ政権の戦略を踏襲しているものです。またニューヨークタイムズ紙によれば、「トランプ大統領は、オバマ政権のときに始まったミサイル発射妨害工作(サイバー攻撃によって発射前に妨害すること)をそのまま受け継いだ」そうです。

 トランプ大統領は、口先では北朝鮮に対して攻撃的な姿勢を見せていますが、その強硬路線がそのまま政策に反映されるとは言い切れないと思います。

 佐藤 オバマ前大統領が北朝鮮に対して強硬な外交政策をとったのはどんなときでしょうか

 ナイ 2010年に韓国哨戒艦沈没事件(韓国海軍哨戒艦「天安(チョナン)」号が北朝鮮の小型潜水艇から発射された魚雷によって黄海で沈没した事件)が起きた際、オバマ前大統領は北朝鮮に対して非常に強硬な態度をとりました。北朝鮮からどれだけ抗議されようが、米韓合同軍事演習を実施し続けたのです。

 佐藤 トランプ大統領の就任後、北朝鮮はミサイルの発射実験を何度も強行しています。アメリカは今、北朝鮮に対してどのような戦略で臨むべきだと思いますか。

 ナイ 今はとにかく事態を静観すべきときだと思います。トランプ大統領は中国に圧力をかけ続けています。この政策が成果を上げられるかどうか、まずは見守ることでしょう。

 佐藤 北朝鮮情勢を受けて、韓国では核武装論が高まっているそうですが、日本でも「核抑止力を持つべき」と唱える人が出てきています。ナイ教授は日本の核武装についてどのように考えていますか。

 ナイ 日本が核武装したからといって、日本の安全がより保障されるとは限りません。少なくとも北朝鮮に対する抑止力にはならないと思います。逆に近隣諸国、特に中国を脅かすこととなり、そうなると日本の安全性は今よりも揺らぐこととなるでしょう。北朝鮮に対する最善の抑止策は、アメリカと日本、米軍と自衛隊が緊密に連携しあうことです。米日同盟に勝る抑止力はないと思います

 佐藤 大統領選挙の期間中、ナイ教授は「ドナルド・トランプ氏が大統領になれば、アメリカは孤立主義に陥る危険性がある」と懸念されていました。今も同じような懸念をお持ちでしょうか。

 ナイ トランプ大統領の実際の政策を見ていると、彼は孤立主義者でも、単独行動主義者でもないなと感じています。孤立主義というのは「世界のどの国とも同盟を結ばない」という意味ですから。確かにトランプ大統領は就任演説で「アメリカ・ファースト」を強調しました。ところが就任後、彼は立場を変え「米日同盟、米韓同盟を強化するべきだ」と言っています。選挙演説で彼は「NATOは時代遅れだ」と批判していましたが、4月12日には「NATOはもはや時代遅れではない」と考えを変えています。つまり、口先で言っていることと実際にやっていることが違うのです。「獰猛に吠える犬ほど、かみつかない」のと同じではないでしょうか。

 佐藤 つまり選挙に当選するために言っていた過激な公約を、少しずつ「調整」しつつあるということですね。

 ナイ そうだと思います。選挙中にはかなり過激なことを言っていましたが、この90日間を見ていると、言っていたことをそのまま政策としては実行しているわけではないことがよくわかります。

(引用ここまで)

→ジョセフ・ナイ教授といえばアメリカ合衆国の国際政治学者として知られ、アメリカ民主党政権でしばしば政府高官を務め、「日米同盟」の堅持を主張する、知日派としても知られる人物です。

個人的にはナイ教授の発言の妥当性よりも、自身の思惑、政治的立ち位置などによる「トランプ政権に対する否定的な評価」の方が気になりましたが、ここでは発言の内容を見てもらうことで閲覧者の皆様のご判断を仰ごうと思いました。

楊舒平さんの「発言の自由」について考える

2017-05-25 21:35:49 | 国際情勢
やはり、中国に「言論の自由」は存在しないということなのでしょうか?
https://news.infoseek.co.jp/article/afpbb_3129491/

>【AFP=時事】米メリーランド大学(University of Maryland)の卒業式で、中国人の女子留学生が母国の大気汚染や政治を否定的に米国のそれと比較するスピーチを行ったため、ソーシャルメディア上でこの女性に対する批判が集まっている。

 中国生まれの楊舒平(Yang Shuping)さんはメリーランド大学の卒業スピーチで、中国で育った後に米国に来たことは「清新な空気」を吸うようなものだったと述べたのを皮切りに、「空港の外で息を吸って吐いた時、自由を感じた」「空気はとても甘くて清新で、本当にぜいたくだった」などと語り、悪名高い中国の大気汚染や、同じく息苦しいほどの政治的発言に対する抑圧と比較するような言葉を並べた。

 楊さんのスピーチを捉えた動画は、後にユーチューブ(YouTube)に投稿されると、インターネット上での反応は迅速かつ辛辣(しんらつ)なもので、楊さんに対し中国語と英語の双方で米国にとどまれと非難するコメントが現れた。

 中国の国営メディアも悪意あるコメントを引用し、スピーチに対する批判を内包した報道が行われた。人民日報(People's Daily)の英語版ウェブサイトには「偏見を抱えた卒業スピーチ、メリーランド大学の中国人学生に批判」という見出しの記事が掲載され、最も閲覧数の多い記事となった。

 一方、中国国営英字紙・環球時報(Global Times)に掲載された記事によると、楊さんは批判の高まりを受けて謝罪したという。だが結果的に、中国には批判的な言動が存在する余地がほとんどないとする楊さんの指摘を証明したような形となった。
【翻訳編集】AFPBB News

(太字は引用者による)

→私自身、このニュースを見たときに真っ先に思ったのが

「言いたいやつには言わせておけ」

くらいの度量を、なぜ多くの中国人は持てないんだろう?

ということでした。

率直に言って、個々の中国人を見ていると私たち日本人よりも高い能力を持つ人が少なくありません。

が、そうした人たちであっても「言論の自由」というものの意味を本当に理解しているんだろうか?

と感じることはしばしばあります。

楊舒平さんが「アメリカの自由」に感激しようが、しまいが、ハッキリ言って、どうでもいいことではありませんか。

別にアメリカに限った話ではなく、近代民主主義の基本理念というのは、以下のヴォルテールの発言(といわれるもの)にあります。

私はあなたの意見には反対だ。だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る。

I disapprove of what you say, but I will defend to the death your right to say it.

楊舒平さんの「発言」に賛成だろうが、反対だろうが、そんなことはどうでもいいんです。

彼女のそうした発言を許さず、一方的にパッシングしているところが

ああ、中国には未だ民主主義が育つ気配はないんだな

と思われてしまうというのが問題の本質です。

勿論、この「事件」を知った多くのアメリカ人(の特に知識層)も、中国のそうした反応については、そのような「評価」をくだすでしょう。

そして

私がこんな発言をすることができるのも

ここが日本で、私たち日本人だからです。

ここに現在の「中国の限界」が見えるように感じました。

歴史人口学的に中国は後退している

2017-05-24 00:41:35 | 国際情勢
エマニュエル・トッドは、そう指摘しています。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20140408/262573/?ST=smart

>私は中国については、非常に悲観的だ。ほとんどの歴史人口学者はそうだと思う。その人口が膨大であるのに対し、出生率が極端に低いという問題を抱えている。中国は全員が豊かになる前に高齢化社会に突入する。

 他方、社会保障制度が未整備で、男の子を選択するための偏った人工中絶が行われている結果、男女比率のバランスが取れていない。

 経済については、膨大な輸出能力を持っている。しかし、私はこの国が自分で運命を操れる怪物であるとは思わない。共産党のビートルズ(成功した世界的スター)ではなく、西側が経済成長を実現するための輸出基地と言える。利益率を上げるために中国の安い労働力を使うことは西側にとって自然な決定だった。

 現状の中国経済は設備投資比率がGDPの40%、50%に達している。それは経済バランスから見て異様であり、スターリン時代の旧ソ連がそうであったように、経済が非効率であることを示している。

社会はどうかというと、これも非常に不安定だ。中国社会で素晴らしかったのは、平等主義だ。特に兄弟間の平等性が重視されてきた。中国で共産主義革命が起きたのも、社会に平等主義の信念があったからだ。

 ところが、近年の経済成長にともなって、不平等、貧富の格差がすさまじい勢いで拡がっている。社会には依然として平等主義の考え方が根強いため、潜在的な政治的不安定度が高まっていくだろう。中国共産党が国民に対し、ナショナリズムや反日感情を強調する理由が分かる。

 最善のシナリオは、世界が発展して同時に中国も豊かになっていくことだ。他方で、世界危機やヨーロッパの崩壊などの最悪シナリオの可能性についても心に留めておかなければならない。

 同じ社会主義国家のロシアが社会主義から脱出できたので、中国もできるのではないかという見方もあるが、いくつもの問題を解決しないと共産主義から出られないし、経済も社会も恐らく安定しない。

 GDPでの日本と中国の比較は意味がない。なぜかと言えば、中国ではいろんな階層の人たちが何とか一緒に暮らしているのに対し、日本は人口の半分ほどが大学など高等教育を受けて卒業して働くという社会構造になっている。

 中国が経済指標で先進国にキャッチアップするということと、中国が世界をリードして将来をつくっていくということは別問題。中国が米国より効率的な社会となると考えるのはナンセンスであり、単独で支配的国家になると予想するのも馬鹿げている。

 中国は共産主義体制から抜け出し、前進していると自分で思っているはずだが、私の観点からは、逆に後退しているように思う。

(引用ここまで)

→エマニュエル・トッドに限りません。

現時点では飛ぶ鳥落とす勢いで発展中の中国ではありますが、欧米の識者の多くは

おそらくは中国の発展はこのまま続くのではなく、2020年頃に重大な危機を迎えるだろう

と見ています。

実は中国経済の成長率は2011年頃から徐々に低下しており、2015年の成長率は6.90、2016年には6.59となってきています。
http://ecodb.net/country/CN/imf_growth.html

もっとも経済成長率6%台というのは国際社会の水準からいえば、今なお驚異的ともいえる数字ではあるのですが、残念ながら、この成長率は国内で毎年生み出される膨大な数の「大卒者」を吸収できるだけの仕事を創り出すのは難しいんです。

本来、親たちが子供の教育に惜しみなく多額の資金を投入してきたのは、当の子供たちが社会に出たとき「高収入」と「社会的地位」が得られることを期待してのことだったはず。

ところが、現実にはすでに正規の職につくことができない大卒者が(この成長率にもかかわらず)出始めていますよね?

この状態のまま成長率の鈍化が続くと、多額の教育資金が回収できず、それなりの学歴を持つ「無給のインターン」が大量に発生するという事態を引き起こす可能性も出てくるでしょう。

もっとも、そうした若者には積極的に国外に出てもらい、移民先の国家(無論、我が国も含まれます)で、その実力を発揮してもらい、あわせて移民先の社会で影響力を発揮してほしい、という考え方も成り立つとは思います。

が、当の中国の「年金問題」が、これに待ったをかけそうな気もしますけど。

さて

中国の経済を語る上で無視され勝ちな国営企業の問題があります。

私自身の認識としていうなら、国営企業は赤字を出し続け、膨大な負債を累積しており、行き詰まりは既に明らかな状態です。

実際にも、例えば鉄鋼などでは国営企業の労働者が解雇される自体も起きています。

そのため、国営企業は政府からの資金援助を受け、無駄な仕事を作り出してでも雇用を維持して来ましたが、それはいつまで出来るのでしょうか?

中国はかつて、リーマンショックで世界経済が混乱していた当時に4兆元の大型景気刺激策を行い、結果として世界経済を救いました。

勿論、中国はこれからの世界経済に自らが影響力を行使するための方法としてそうした政策を行ったわけで、別にボランティアではありませんけど

そのおかげで日本やアメリカなどの輸出が救われたわけですから、効果は大きかったと見るべきでしょう。

とは言え、その時の4兆元は今なお中国財政にとり回収不可能に近い債務としてのしかかっているのも事実です。

また、これまで地方政府は企業に土地を与え、銀行から地方政府の信用を元にお金を借り、事業資金に当ててきました。

その結果、地方政府の負債は膨れ上がっているとも聞きます。

簡単にいうと

中央政府、あるいは地方政府が「国営企業にお金を出し、無駄な仕事を作り出してまで雇用を増やす」

というサイクルは、そろそろ維持できなくなるはずなんです。

中国の「雇用の安定」は、実は国営企業の「無駄な仕事」により、かなりの部分支えられてきました。

それが成長率の低下により、次第に支えられなくなってきつつあるんです。

これをどう乗り切るのかが、これから問われる時でしょう。

参考文献

エドワード・ルトワック『中国4.0 暴発する中華帝国』(文春新書)