久しぶりに中山峠を超えた。
お天気が良くて、羊蹄山が美しい。
この山は初めて登った本格的な山だ。
1990年代のある年の春、
羊蹄山の山開きの新聞記事が目に止まった。
豚汁もふるまわれるという。
豚汁を食べて、小一時間山を歩いて来ようかと、
軽い気持ちで出かけた。
時間までそろらをぶらぶらしていたら、
主催者に、
「登山者代表としてテープカットをお願いします」
と言われた。
藻岩山と三角山しか登ったことがなかったので、
断ったのだけど、
登山者代表の役をやることになってしまった。
「テープカットをしたら、
のんびり豚汁を食べて、少しだけ山を歩こう。」
と思った。
時間になった。
登山道のテープのところで振り向くと、
大勢の人が後ろにいる。
テープカットした。
大勢の登山者が一斉に歩き出す。
もの凄い勢いで山道を歩く集団の中に、
巻き込まれてしまった。
2合目くらいで戻ろう。
そう思って歩いていくと、
道はだんだん急になっていく。
景色もどんどん変わる。
3合目まで行ってみようか。
休み休み歩いていった。
4合目まで・・・
5合目まで・・・
6合目まで・・・
そうやって少しずつ登っていったら、
8合目まで登ってしまった。
もう夕方である。
それで山小屋に泊まることにした。
途中でとっぷりと日が暮れた。
道は岩場になった。
足元が見えない。
「こういうときはぐっと落ち着いて」
なんて言いながら、
お湯を沸かして紅茶を淹れて、
ティータイム。
やがて月明かりで足元も見えるようになった。
そっと歩いていくと山小屋の明かりが見えてきた。