インテグラは「これは戦争ですらない」と切り捨てた。
戦争。
戦争とは一体何だ。そもそも何を持って戦争を定義する?
戦争
(1)武力を用いて争うこと。特に、国家が自己の意志を貫徹するため他国家との間に行う武力闘争。国際法上、宣戦布告によって発生し、戦時国際法が適用される。いくさ。(goo辞書)
「自己の意思を貫徹する」
この一点に集約するならば確かにこれは戦争だ。
肉体のほぼ全てを失った男はそれ故に、人間の本質、魂の根源に人間として最も近づいた。
失う事で大切な物に気付かされる様に、あらゆるものを削り落とされる事で本質が浮かび上がるのだ。
またそれ故に、それを喰らい、弄ぶ吸血鬼を断固として否定し「認めない」と言い切る。
そして彼は完全に己の意思を貫いた。
少佐は勝利を望み、敗北を願う。
その矛盾した意志は自らが貫徹するものであると同時に、他者へ依存するものでもある。
つまり「インテグラに殺される」事すらが彼のシナリオであったのならば、それは自殺と同義でもある。
ならばインテグラの「これは戦争ですらない」もまた正しい。
だが彼は勝利者なのだろう。
彼は「敗北する意思」すらも貫徹したのだ。命乞いなど全く無い。
一つ例を挙げると、
作家、板垣恵介は作品「バキ」中で
自己の意を貫き通す力
を「強さ」だと定義した。己の「敗北を受け入れる意志」もまた強さだと定義できるのだ。
直接的な武力を持たず、肉体も機械となった少佐はそれ故に強靭な意志を持って人間たらんとした。
遙か過去より瀕死だった男は殺される事で勝利者となったに違いない。
場面は変わって博士の研究、兼施術室。
独白の後、ウォルターと対峙する博士。
ウォルターは言い切る。
あんた(博士)も、あんたの作ったモノも、ウォルター自身も出来損いだと。
ミレニアムを作り上げたのは少佐であると同時に博士でもあるのだろう。
きっと誰も彼も嬉々として死んでしまうに違いない
以下次号。