原発作業員 連日死傷事故 命綱や防止柵 東電、対策不備
2015年1月21日東京新聞
東京電力の福島第一と第二、柏崎刈羽(新潟県)の三原発で十九、二十の両日、作業員の死亡・重傷事故が相次ぎ、東電は二十日に緊急会見を開いて謝罪した。昨年三月から大きな事故が続くが、いずれも当たり前の対策さえしていれば防げた。東電の安全管理能力があらためて問われる。
十九日に福島第一で、高さ約十メートルのタンクの天板から安藤ハザマ社員、釣(つり)幸雄さん(55)が転落死した事故では、釣さんは安全帯は装着していたものの、命綱を固定していなかったことが分かった。同日午後には柏崎刈羽で、施設内の点検作業で写真撮影中の男性作業員(51)が三・五メートルの高さから落ち、脚などを骨折。落下防止柵はなかった。
二十日朝には福島第二で、下請け会社の作業員、新妻勇さん(48)が建屋内で機器点検に使う円筒形の器具に頭を挟まれ死亡。器具のボルトを外す際、通常は器具が急に動かないようクレーンで固定するが、手順が守られていなかった。
東電の原発では、昨年三月に福島第一で掘削作業中の作業員が崩れた土砂に埋まった死亡事故をはじめ、重大事故が少なくとも五件起きている。崩落事故では防止策が取られなかった。同十一月に増設中のタンク上部から鋼材が落下し三人が重軽傷を負った事故では、鋼材をクレーンで固定せず、上下で別々の元請け会社が作業していた。
会見で東電の姉川尚史常務は「崩落事故以降、やるべきことがやられていなかった。基本に立ち戻っていないことが、(一連の事故の)一つの重要な原因だ」と対応のまずさを認めた。
死亡事故で廃炉作業中止し点検へ
(1月20日20時42分)NHKニュース
汚染水貯蔵タンク
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東京電力福島第一原子力発電所と第二原子力発電所で、作業員が死亡する事故が相次ぎ、第一原発では、21日廃炉作業を中止して、安全点検を実施することになりました。
背景について東京電力は、記者会見で、「作業量が多くなっていることも考えなければならない」と述べ、作業の進め方や安全対策に問題がないか検討する考えを示しました。
20日午前9時半ごろ、福島第二原発で、廃棄物を処理する建物で点検作業をしていた40代の作業員の男性が、点検用の機具に頭を挟まれ、ドクターヘリで病院に搬送されましたが、死亡しました。
福島第一原発でも、19日午前9時ごろ、雨水をためるタンクの点検をしていた50代の作業員の男性が、高さおよそ10メートルのタンクの天井から転落し、20日未明になって死亡しました。
さらに柏崎刈羽原発でも、19日、作業員が足場から3メートル余り下に転落して大けがをしました。
こうした事態を受けて東京電力は、3つの原発の所長とテレビ会議で結ぶ異例の記者会見を開き、姉川尚史原子力・立地本部長が陳謝しました。
現在、福島第一原発では、廃炉や汚染水対策などのため、去年の同じ時期のほぼ2倍に当たる1日およそ7000人の作業員が働いていますが、「作業量の急増が、事故が相次ぐ背景にあるのではないかと」問われたのに対し、姉川本部長は、「作業量が多くなっていることも考えなければならない」と述べ、作業の進め方や安全対策に問題がないか検討する考えを示しました。
福島第一原発では、21日、廃炉作業のほとんどを中止し、安全点検を実施することになり、第二原発でも安全の徹底が図られるまで、作業を中止するということです。
福島第一原発では、去年3月にも、崩れてきた土砂の下敷きになって作業員が死亡したほか、11月には、タンクの増設工事中に、鋼材が落下して3人が重軽傷を負うなど、作業事故が相次ぎ安全対策が課題になっています。
【東電社長「安全確保までほとんどの作業再開せず」】
福島第一原発と第二原発で死亡事故が相次いだことを受けて、東京電力の廣瀬直己社長は、安全が確保されるまではほとんどの作業を再開しない考えを示しました。
廣瀬社長は20日午後、経済産業省の高木副大臣を訪ね、「昨年から事故があり、いくつかの対策を取ってきたにもかかわらず、こうした事故が立て続けに起きたことは、痛恨の極みだ」と述べて陳謝しました。
これに対し高木副大臣は「これまでにも事故が起きていて、今月15日には安全大会をやりながら事故を起こしたことは誠に遺憾だ」と述べて再発防止を求めました。
会談のあと廣瀬社長は「特に福島第一原発では、大きなリスクを取り除くため進めている作業も多いが、原因の究明と対策を進めるため、あらかじめ工程ありきは許されず、作業員が安心してできるという現場の声がなければ、再開を決めることはできない」と話し、現場ごとに安全を確保し、それまでは期間を決めずに福島第一原発と第二原発のほとんどの作業を止める考えを示しました。
1月20日のニュース
福島第一原発で作業員が転落 死亡
(1月20日9時57分)NHKニュース
東京電力福島第一原子力発電所で19日、タンクの点検をしていた作業員の男性が誤ってタンクの天井から転落し、その後、死亡しました。
福島第一原発では作業事故が相次いでいて、安全対策が課題になっています。
19日午前9時すぎ、福島第一原発3号機の西側に新たに設置された雨水をためるタンクで、検査のために天井に上っていた50代の作業員の男性が、誤って10メートル下の底の部分に転落しました。
男性は全身を骨折する大けがをし、福島県いわき市内の病院で手当てを受けていましたが、20日未明、死亡しました。
当時、現場では東京電力の社員を含む合わせて3人が内部の点検をしていて、男性はタンクの天板の一部を外そうとして転落したということです。
東京電力によりますと、男性は転落を防止するロープを取り付けるための安全ベルトを身に着けていましたが、当時、何らかの理由でロープを取り付けていなかった可能性があるということです。
福島第一原発では現在、1日およそ7000人と作業員を増やして廃炉に向けた作業などを進めていますが、去年3月にも崩れてきた土砂の下敷きになって作業員が死亡したほか、11月にはタンクの増設工事中に鋼材が落下して3人が重軽傷を負うなど作業事故が相次ぎ、安全対策が課題になっています。
東京電力によりますと、去年4月から11月までのけが人は40人と、前の年の同じ時期の3倍以上に増え、今月16日には福島労働局から事故防止の徹底を求められたばかりでした。
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