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原発処理水、 海洋放出で高まる漁業者の懸念 風評被害が深刻に、 地元漁業に壊滅的な影響か

2020年11月20日 | 汚染水

【資料・東洋経済オンライン】

原発処理水、 海洋放出で高まる漁業者の懸念 風評被害が深刻に、 地元漁業に壊滅的な影響か

                  岡田 広行 : 東洋経済 解説部コラムニスト  2020/10/29 10:10

 東京電力の福島第 1 原子力発電所事故で発生した放射性物質トリチウムが残留する処理水の処分をめぐり、10

月 27 日とみられていた関係閣僚会議の開催は見送られた。

 廃炉・汚染水対策の取りまとめに当たる梶山弘志経済産業相は 23 日、「(処分方針の決定までに残された)時間

は限られている」と述べ、遠くない時期に方針を決定する考えを示した。原発の敷地内では多核種除去設備(ALPS)

で浄化処理された水がタンクに貯蔵されているが、タンクを増設できる場所に制約があるというのがその理由だ。

 だが、経済産業省の有識者委員会報告書で「現実的な選択肢」とされた ALPS 処理水の海洋放出は、水産業関係者

の反対が強く、有効な風評被害の防止策が見当たらないのが実情だ。反対を押し切って ALPS 処理水の海洋放出が実

施されれば、「(福島県のみならず)日本の漁業に壊滅的な影響を与えかねない」(岸宏・全国漁業協同組合連合会

会長)と危惧されている。

 復興意欲をそぐ ALPS 処理水の放出

「ALPS 処理水を流したら、消費者は魚を食べないと思うよ。それが何よりも困るんだ。いちばん影響のあるわれわれにきちんと説明しないのはおかしいんじゃないか」

 福島県新地町の漁師、小野春雄さん(68 歳)は、国による説明不足を問題視する。ALPS 処理水を希釈して海

洋に放出する案が示されて以降、小野さんが所属する相馬双葉漁業協同組合でも国の説明会が開催された。

 だが、「新地町の漁師約 50 人のうちで出席したのは 5 人程度。周知が不十分で、新型コロナウイルスも流行し

ていた時期だったので、あまり集まらなかった」と小野さんは振り返る。

 原発事故翌年の 2012 年 6 月以来、福島県では「試験操業」と呼ばれる漁業が続けられている。試験操業では、

対象となる魚種や操業海域、漁法、操業期間、操業時間などが漁業関係者の合意によって決められている。獲れた

魚介類にはモニタリング検査を実施し、放射性物質の値が自主基準値以下など、安全が確認された魚種に限って出

荷されている。

 しかし、販売先の需要回復の状況を見極めながらの取り組みであることから、福島県内 3 漁協の沿岸漁業の

2019 年の水揚げ高は原発事故前の 14%、3640 トンにとどまっている。

「ヒラメ、サワラ、マコカレイ、ホウボウ、コチ、アイナメ……。福島の海は何でも獲れるんだ。それなのに自由

に漁ができないんだ」(小野さん)

 原発事故からまもなく 10 年の節目を迎えようとする現在、水揚げ高を本格的に増やしていこうという機運も高

まりつつある。

 福島県漁業協同組合連合会は 9 月に、2021 年 4 月から本格操業に移行する方針を取り決めた。本格操業の中身

についてはこれから詰めていくが、漁獲高の大幅増が狙いだ。

 県漁連に加盟する小名浜機船底曳網漁業協同組合の柳内孝之理事は「そうした矢先に ALPS 処理水の海洋放出の

方針が決められたらマイナス面しかない」と懸念する。

 一人前の漁師を育てられない

漁業の継続にも支障が出てくると心配されている。小野さんが所属する相馬双葉漁協が取り決めている試験操業(固

定式刺し網漁)は週に 2 日、網を入れることのできる回数は 1 日 2 回に制限されている。原発事故以前には週に

6 日も漁に出ていた小野さんだが、現在は自由な漁ができない。

 漁師歴 50 年以上になる小野春雄さん。汚染水の海洋放出には断固反対だ(記者撮影)

漁師になって 50 年以上の経歴の小野さんには 3 人の息子がいる。息子たちにも船の操縦や漁の仕方を教えている

が、「魚が売れなくなって漁に出られなくなったら、跡を継がせるのも難しくなる。賠償があればいいという話じゃないんだ」(小野さん)。

 小名浜機船底曳網漁協の柳内理事は「時期によって漁場も異なる。1 年通してフルに操業しないと漁業に関する

技術の習得はできず、漁師は一人前にならない」と解説する。

風評被害への賠償に関しても課題がある。相馬原釜魚市場買受人協同組合の佐藤喜成組合長(マル六佐藤水産代表

取締役)によれば、「仲買人」と呼ばれる魚市場の流通業者や水産加工業の多くについて、すでに継続的な賠償は

ないという。

 佐藤組合長の会社でも売り上げが回復しているわけではない。「原発事故前は 8 億円ほどの年商があったのに対

して、2019 年は 3 億円程度。それなのに賠償は 2016 年で打ち切られた。ALPS 処理水の放出による風評被害が

生じた場合、東電は賠償するというけれど、われわれ仲買人の被害にどう向き合っていくのか。はっきり言わない

のはおかしいと思う」(佐藤組合長)。

 

 高い追加賠償のハードル

避難指示区域外の商工業者の営業損害について、東電は 2015 年に新たな賠償方針を明らかにしている。それによ

れば、同年 8 月以降の損害に対して、相当因果関係が認められた年間逸失利益の 2 倍相当(2 年分相当)を支払

うとした。いわゆる「2 倍賠償」と呼ばれる仕組みだ。そして、2 倍賠償を支払った後も引き続き損害が発生して

いることが確認できた場合に追加賠償を続ける方針を示した。

 しかし、相当因果関係の立証はハードルが高く、追加賠償の支払いを受けるのは容易ではない。東電が岩渕友参

議院議員(共産党)に示した資料によれば、追加賠償の請求受付件数は 2020 年 9 月末時点で 997 件に上るのに対し、

合意にこぎつけたのは 28 件にとどまる。2019 年 7 月末時点での請求約 900 件に対して合意が 14 件だったこと

から、この 1 年余りの間に追加賠償はほとんど進んでいない。

 東電は、商工業者を対象としたこの仕組みには水産物販売業や水産加工業も含まれるとしている。佐藤組合長が

言うように、賠償継続がいかに困難であるかを裏付けるものだ。

 国の有識者委員会報告書によると、現行の計画では 2022 年夏ごろに ALPS 処理水を貯蔵するタンクが満杯にな

る見通しで、「現行計画以上のタンク増設の余地は限定的」とされる。敷地内外でタンクの建設スペースを確保す

ることは困難だというが、敷地計画の見直しなどの代替案について十分に検討されたとは言いがたい。風評被害対

策を徹底するとしながらも、実効性のある中身も示されていない。

 廃炉の着実な推進は重要だが、それと引き替えに水産業の担い手に重い負担を背負わせるのは理不尽だ。国や東

電は「海洋放出ありき」ではない道筋を探るべきだ。


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