Mのミステリー研究所

古今東西の面白いミステリーを紹介します。
まだ読んでいないアナタにとっておきの一冊をご紹介。

『喪失』カーリン・アルヴテーゲンのミステリ

2015-09-06 09:06:18 | ミステリ小説
                                          

裕福な家庭の一人娘だったシビラ。 彼女が親や家を捨てたのは彼女の世界を否定して
躾けや教育と云う言葉で彼女をコントロールしたり管理したりする母親と、普段は彼女に構わない父親も母親には同調し彼女の話を聞こうともしない態度に

精神的に追いつめられた結果でした。 いま社会から離れ一人で生きる彼女シビラは32歳で
ホームレスのような生活が日常でした。
ある日ホテルに無料で泊まる方法を何時もどうり隣のテーブルで食事する男に仕掛けたシビラ。男の下心を利用して部屋を取ってもらいシャワーを浴びた彼女はつい寝過ごしてしまいます。

大声でドアを叩く男の声で目覚めたシビラは機転を利かせ上手くホテルから抜け出しました。町を歩くうち新聞の広告を見てホテルで殺人があったことを知ります。

殺された男はシビラに部屋を取ってくれた男でした。男の部屋のカードキーにはシビラの指紋がありシビラが居た部屋の指紋と一致したため重要容疑者として手配されてしまいました。
カードキーの件は男がシビラの部屋を取りキーを渡されたとき実は男の部屋のキーで、わざと間違えてシビラを部屋に誘おうとした為でした。

こうして警察の手を逃れて町を彷徨うことになりますが、シビラは元々社会とは係わりを持たずにこれまで生きてきたのでさほど困難な状況というわけではありません。
寝るところは人の目が届かない場所を知っており、駅などでシャワーなど使い髪を短く切って人の目を引かないようにしていました。

こうしてホームレス仲間のような連中と連絡を取り合う合間にシビラの過去が彼女目線で語られます。
家を出るきっかけとなった一人の男性との出会いと別れ。そしてお腹の赤ちゃんとの別れ。その時シビラは18歳でした。

公園、教会、サマーハウス、学校と寝る場所を移っているときにバスの中で見た新聞の広告ビラ。そこには二人目の殺人として猟奇的な事件の容疑者シビラの写真がありました。

このあと第三、第四の殺人が続きます。 社会のシステムから距離をおき一人生きてきたシビラですが、その社会から追いつめられます。
あるきっかけで知り合った協力者の言葉もありシビラはやがて社会と闘う決心をします。 小さな協力者の手を借りて殺人者の追跡を開始するシビラ。

ストックホルムを舞台に一人の女性の運命と人生を描きながら謎の殺人者を追っていくストーリーですが、読みやすい言葉の文章とシビラの心情が良く描かれていて
最後のページまで目が離せないミステリです。


                 


                                 

最新の画像もっと見る

コメントを投稿