親交のある落語家の円紫師匠と女子大生の「私」のコンビが身の回りに起きた不思議な事や謎を解き明かす物語です。「私」が円紫師匠に語り、その話を聞いた円紫師匠が深い見識と論理的帰結により導き出した答えが謎めいた出来ごとの真相だった、と云ったスタイルの物語です。日常の謎を扱ったもので、殺人など起きなくてもミステリーは書けるとキャッチコピーのような言葉が生まれた作品でもあります。「空飛ぶ馬」に続いて「夜の蝉」「秋の花」「六の宮の姫君」「朝霧」と書かれましたが、女子大生の「私」が物語の続きと共に成長する姿も描かれています。高校の国語教師であった著者の確かな言葉使いの文章で書かれたこの本は、一種のアームチェア・ディテクテイブと云えるかも知れません。相手を思いやる心を持って行動する人を第三者が見ると意外な奇妙な行為、行動に見えてしまうことがあります。円紫師匠は深い洞察力でそのあたりを解き明かしたり「私」にヒントを与えたりします。こういったスタイルのものは古くからありますが日常の謎をテーマにしたものを広く認知させた著者の功績は大きいものと思われます。
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