社会保険労務士酒井嘉孝ブログ

東京都武蔵野市で社労士事務所を開業している酒井嘉孝のブログです。
(ブログの内容は書かれた時点のものとご理解ください)

業務災害・通勤災害と交通事故について

2018年07月19日 19時59分46秒 | 社会保険・労働保険
社会保険労務士の酒井嘉孝です。

職場に向かう途中、青信号の横断歩道を歩いて渡っていたら曲がってきた車にぶつけられたという事故であればまがいもなく交通事故ですが、通勤中の事故ですから通勤災害でもあります。

こういったケースの場合、自動車保険から治療費や休業補償を受けていくか、労災保険の給付を受けていくか選択しなければなりません。
結論から言うと労災保険にはあとで触れる特別支給金の制度があるため自動車保険から給付を受ける場合でも労災・通勤災害の手続きはとっておいた方が良いものと考えます。

相手の車が任意保険に入っていて、過失割合に争いがなければ保険会社から直接病院に治療費が払われる手続きを行うことが多いため、最初から被害者側の立て替えなどの負担はありませんが、任意保険に入っていない場合は相手の自賠責保険のみで支払われていくことになり、その限度額は120万円です。
120万円を超えた場合は本来加害者側に支払う義務がありますが加害者に支払い能力がない場合の治療費は被害者本人が立て替えていくしかありません。

業務中の交通事故、通勤時の交通事故では、加害者側の自動車保険(自賠責保険・任意保険)、被害者側の労災保険どちらをつかってもいいことになっています。
自賠責先行という考え方があり自賠責保険から給付を行っていくのが原則的です(自賠責保険の仮払い制度があるため)。ただ、自動車保険を使う場合、交通事故は100%加害者側が悪いとされず、過失割合で被害者側にも落ち度があり何割かは負担を強いられることもあります。その場合被害者側も治療費の負担が出てきます。また、過失割合に争いがあるうちは自動車保険の保険会社も治療費を払ってもらえない可能性があります。

業務災害、通勤災害の交通事故でも労災保険を使えば過失割合という考え方はないので治療費は全額支給されます。
また万が一の立て替えの不安もなくなります。
更に、労災保険には特別支給金という制度があり休業が4日以上になった場合は給付基礎日額(大雑把にいうと給料の日額)の2割が支給されるため、自動車保険側から治療費や休業補償を受け取っていても別途で労災保険からの支給を受けられます。

労災保険を先行して処理を行った場合、いったん労災保険から被害者に治療費等の給付を行い、あとで労災保険で立て替えた費用を加害者や加害者側の保険会社に請求します。
この労災保険側の処理を行うために第三者行為災害届という届を出します。
この第三者行為災害届はA4表裏2枚びっしり書くところがあります(ここは専門家社会保険労務士の出番となります)。

このように他の保険制度と絡んだ場合どの制度を利用した方がいいか社会保険労務士を含めた専門家に相談をされた方が良いと考えます。