MIYAGI VILLAGE

夏は雷、冬はからっ風、人は義理人情を重んじる・・・。

感動の結末

2007-02-05 11:38:35 | ラグビー
昨日はラグビーのMS杯決勝を観戦しに行ってきました。

熱戦に次ぐ熱戦で、俺の心は燃えまくりだった。

秩父宮は10年ぶりとなる満員札止めの大盛況。スタジアムの中に入った瞬間、その雰囲気に感動した。すごい、秩父宮に空席がない光景を見たのは初めてだった。電光掲示板の下も伊藤忠側もすべて人・人・人!!ものすごい混雑。

ラグビーファンはここ数年明らかに増えていると感じていたが、それがついにカタチとなって現れた。昨日の日本選手権一回戦もかなりの人出だったのに、二日連続でこんなに秩父宮が混むとは・・・。なんてうれしい現象なのだろう・・・。

試合開始前から、感動に包まれたスタジアムであった。

昨日は、どちらの応援をしているわけでもないので、中立な立場で観戦した。
東芝は、WH買収とかいろいろな理由で身近な存在だし、サントリーは清宮さんが監督であること、ルーキーに好きな選手が多いなどの理由で好きなチームだった。

試合結果は、東芝府中14-13サントリー、であった。

数字には表れない、多くのドラマが80分に詰まった今シーズンベストの好ゲームだった。

先制はサントリー。東芝のパスをインターセプトした栗原のごっつあんトライ。

これは前半25分くらいのトライで、事故のようなものだった。ごっつあんトライなので、取ったトライというよりは狙っていたとはいえ、運のよかったトライというべきで、ないに等しいトライであった。このようなプレーでゲームが決まることもあるから、スポーツというのはおそろしい。

というのも前半、両チームのディフェンスが非常に良く機能しており、点を取るのはかなり困難な状況がお互いの努力により生まれていたからだ。サントリーも東芝もすばらしいタックルを連発し、接点では激しさを継続していた。

昨日は風がかなり強かったので、風上の東芝は前半で10点以上は取りたかったはずだが、ラインアウトが崩壊し、得意のドライビングモールが組めなかった。サントリーのラインアウトでのプレッシャーがかなり効いていた。

しかし、31分、東芝は一瞬の隙を逃さなかった。FWではなくBKで展開した東芝は、ゴールポストのまん前を頼れる助っ人マクラウドがパスしないで一気に前進、華麗なステップで相手を置き去り、インゴールにダイブ!!

ゴールも決まって、これで7-7。東芝のBKも舐めたものではない底力を持っている。
その後、ゲームは動かず、このままハーフタイム。

後半、両チームの均衡は持続する。しかし、その試合に異変が起きたのは後半18分。PGを決めサントリーが10-7とリードしていたときのことだ。パスでつないだサントリー、俺一押しのWTB平が相手を跳ね除け、力強くライン際を疾走、いざトライというところで、東芝のバツベイが平にハイタックル(というかラリアット)をぶちかましてしまう・・・。

このプレーでバツベイは一発シンビン。東芝が14人になり、さぁピンチとなる。サントリーは試合前のプランどおり、FWで圧倒しようとゴール前スクラムを連続選択。サントリーの誇る名PR長谷川慎の意地の見せ所だった。

しかし、ここで東芝がプライドを見せ付けた。スクラムで一人少なく圧倒的に不利なのに、東芝が一歩も下がらなかったのだ。スクラムは組んではつぶれ、組んではつぶれの繰り返し。サントリーのゲームプランは崩れ去った。一人少ない相手にスクラムトライを取ることができなかったのだ。

その後、サントリーはFW戦をあきらめ、バツベイが戻ったあとの後半37分、PGを選択し、13-7と1Tでは追いつけない6点差をつけた。このまま行けばサントリーの勝ちかと思われた試合だった。

しかし、ゲームは終わらなかった。ロスタイムがなんと4分もあったのだ。
ロスタイム発表に会場内にはざわめきが・・・。

ロスタイムは東芝の時間帯だった。東芝はサントリーゴール前でFW戦を挑む。

得意のドライビングモールがついに炸裂。
サントリーはたまらず反則を繰り返し、サインプレー→ドライビングモールを東芝はひたすら繰り返し続け、サントリーは懸命のディフェンスを続ける。ラグビーファンにはたまらない意地と意地のぶつかり合い。最後の最後まで、ゲームの行方の分からないすさまじい終末となった。

東芝は幾度となく連続プッシュ。一瞬の隙を侍は見逃さなかった。4分をとうに過ぎた後半46分のラストプレイ。侍がインゴールに飛び込んだのだ。彼の名はルアンダギ・侍・バツベイ。ゴールポストの真下に彼が楕円級をたたきつけた瞬間、この熱戦に終止符が打たれた。その後のゴールはもちろん決まって14-13。会場はすさまじい熱気と歓声に包まれた。味方的関係なく、バンザイしてしまうような、すさまじい執念のトライを見た。

東芝の劇的勝利。

試合後のインタビューで東芝の富岡キャプテンは、ロスタイムの攻防について問われ、

「トライは取れなくてもかまわなかった。自分たちにはこれしかない。ドライビングモールで行こうと決めていた」と熱すぎるコメント。

めちゃくちゃかっこよすぎて、俺は一気に彼のファンになってしまった。

さらに会場が満員であることについては、「自分もはじめてなんで・・・。本当にこういうゲームができたのは、サントリーやMS杯に出場した4チームすべてのおかげ。この4チームで日本選手権も盛り上げていきたい」とコメント。

劣勢になりながらも闘志を失わない彼のキャプテンシーは本物だと思う。今年はシーズン中に父親が亡くなったが、父親の主将としての責任を果たせという言葉を守り、告別式を欠席して神戸製鋼戦に挑み、熱戦を制して試合後に号泣した富岡、熱い、熱すぎる。

対して、サントリーの清宮監督は、「こんな試合内容で勝ってもうれしくない、こんな勝ちならいらない。」と自らの敗北を認め、この試合は売れないストーリーだったと述べた。

サントリーとしてはやりたいことがまったくできなかったということだ。トライもごっつあんトライ1本のみで、FW戦は最後の最後で取りきることができず、ペナルティキックを選択するしかなかった。確かに、最後までリードしていたとはいえ、試合内容で勝っていたとはいえなかった。最後に東芝の意地を見たこともショックを大きくしたのだろう。東芝は持ち味を出して勝ったが、サントリーは勝ったとしてもそれは勝ったという事実に過ぎず、うれしくもない、ただの事実。富岡のキャプテンシーと土壇場の底力を見せ付けた東芝を素晴らしいチームだと褒めちぎるしかなかった。

サントリーが求めているのは本当の意味での勝利。清宮監督は、「ベストセラーになるようなストーリーを創る。次に流す涙はより熱い。日本一熱い涙を流そう」と熱すぎるコメントでこれまた締めくくった。

もし、次があるとするなら、それは日本選手権決勝。牙をむくトヨタ、ヤマハを押さえて、はたして再選なるか注目の一戦となる。もし再選が叶うなら、その場所は今日以上に熱い感動が待っているはずだ。

俺は海外にいるため観戦できない。
非常に残念だが、両チームの奮起を期待している。