1月13日、ラグビー大学選手権決勝。
そこには、号泣している自分の姿があった。一夜明けた今でも、この空虚さが信じられない。
結果は関東の33-26の勝利であった。
試合前の嫌な予感が的中してしまった。メディアは早大優位の報道であったが、俺はそんなことはないと思っていた。メディアはデータ主義であり、これまでの戦績や選手の肩書きで判断しようとする。しかし、スポーツはそれだけで決まるものではない。スポーツは筋書きのないドラマであり、ドラマの配役の演技如何ではいかようにも筋書きは変わりうるものだと思っていた。早稲田は、9月の立教戦、11月、12月の慶應戦で苦戦していた。苦戦の理由は相手ディフェンスのよさであった。もし、関東が慶應のようなディフェンスをしてきた場合、早稲田はかなり苦しくなると思っていた。
11月の慶應戦で解説を務めた関東学院・春口監督は「慶應のディフェンスがすばらしい。慶應がこのディフェンスを続ける限り、早稲田との点差は開かない」と断言していた。
俺は、このとき、春口監督が、早稲田相手に勝つ方法をディフェンス、接点で圧倒することであることに気づいていたように思う。もし、これを実践されたら・・・、それが俺の嫌な予感だった。そして、春関東、ジュニア選手権で感じた関東の圧倒的な強さが何度も頭の中を巡った。
決勝戦で関東が見せた強さは想像以上のものであった。とにかく、接点での強さ、これに尽きる。
特にラインアウト。これだ。これが決定的だった。早稲田は相手ボールはおろか、前半、マイボールを一本もまともに取ることができなかった。長身LOの西・北川を擁する関東はラインアウトに絶対の自信を持っており、ここが重要な勝負になるとは思っていたものの、まさかここまでやられるとは・・・。以前、ジュニア選手権・決勝を見に行ったときに、早稲田ボールラインアウトを関東の選手が大声を出して妨害するのは知っていたが、おそらく今日もそれがあったと思われる。ましてやこれだけ連続で失敗してしまうとなると・・・。早稲田は、繊細さを要求されるラインアウトをきっかけに終始冷静さを欠く結果となった。選手の能力に加え、メンタル面へのブローで、想像以上のプレッシャーを早稲田は受けてしまった。
ラインアウトを封じられるということは、攻撃の片手をもぎ取られることに等しい。ペナルティをもらい、タッチキックでゲイン、ラインアウト→モールorBK展開という攻撃の王道となる選択肢を完全に封じられてしまった。
結果として、早稲田は自陣からパスでゲインしていくしか方法がなくなってしまった。ペナルティをもらっても、その位置からパスで展開、縦突破していくしかトライを取る方法がなかった。ラグビーは前へパスすることが禁止されている以上、この様な場合、選手自らが突破してゲインしていくしかインゴールへ近づく方法はない。こうなってしまうと、個人の能力に頼るしか方法がなかった。
セットプレーで圧倒的に不利であり、早稲田のチャンスは数えるほどしかなかった。そんな中、矢富や曽我部は何度も縦突破を試みた。しかし、待っていたのは関東の強力なタックルであった。二人がかりで止めに来られては、さすがのスターBKでも止められてしまう。突破した後の、サポートもうまくいかず、ラックでのすさまじい勢い、関東の接点での激しさに圧倒されるばかりだった。
しかしながら、本来であれば、ラインアウトに関しては、後半に修正をして少しは競り合えるようになるはずであった。ただ、誤算があった。それはケガ人。後半開始早々、なんと主将の東条が負傷退場。ケガをおしての出場であったが、また足首をケガしてしまった。直後にはラインアウトリーダーのバイスキャプテン・彰友までが負傷、さらに東条に代わって入った松田までが負傷。修正どころか、FWは完全に崩壊してしまった。早稲田はFLにHOの臼井を入れ、応急的な措置を取るものの、もはや満身創痍の王者に攻めるだけの余力はなくなっていた。できるのは、ただ一つ。関東の切れ味鋭いランに対して、早稲田の誇りにかけてタックルに行くのみ・・・。
だが、それでも俺は信じていた。東条は言っていた。信じれば勝つと。勝とうと思ったほうが勝つのだと。俺は東条たちを信じていた。そして、光明も見えていた。前半、21-0で大差をつけられた後の、終了間際の首藤、菅野の連続トライで21-12。両WTBの意地のトライを泣きそうなくらいの歓喜で迎えた。絶対にトライを取る、鋼の意識に支配された菅野のもぎ取るようなトライには鳥肌が立った。そして、後半、あいつらなら、きっとやってくれると信じていた。
しかし、後半、関東のディフェンスは衰えるどころか、さらに激しさを増していた。菅野のタッチラインギリギリのこれまた、意地のトライで点を返し、28-19と1トライ1ゴール1PG差まで再び追いついたが、その後の攻めは、今村への激しすぎるタックルをはじめとした関東の鋭いディフェンスにことごとく止められ、逆に奇跡を信じた俺たちを打ち砕く後半40分の朝見のトライ。
ロスタイム5分では到底埋められない差をつけられてしまった。最後の最後の今村のトライは、もう手遅れだった。あのとき、トライをしても、すぐに引き返し、五郎丸にボールを蹴らせようとした今村の気持ちは察するにあまりある。意地のトライというには、あまりに悲しいトライだった。
五郎丸のコンバージョン成功とともに、東条組の挑戦は終了した・・・。
そのとき、目の前にあったのは受け入れがたい現実であった。歓喜に沸き返るマリンブルーのスタンドと選手。呆然と立ち尽くす赤黒の選手たち。こんなはずではなかった・・・。
その光景が理解ができないままに時は流れた。気づいたときには表彰式だった。東条の表情は、茫然自失というか、なんというか分からない、何も考えられないという表情だった。その表情が、俺たちの失ったものの大きさを物語っていた。
東条組は「荒ぶる」を歌うことができなかった。
早稲田ラグビーにおいて、大学選手権決勝で勝つか勝たないかは、天と地よりも大きな差がある。勝った選手の代は荒ぶるを手に入れることができ、負けた代は未来永劫、荒ぶるをうたうことは許されないのだ。それは早稲田ラグビーから否定されたに等しい意味を持つ。だから、選手は言う。早稲田は負けることは許されないチームだと。
時間が経ち、沸き返る関東の選手と、静まり返り、立ち尽くす早稲田の選手を見ているうちに、俺は泣いていた。涙が止まらなかった。一緒に観戦していた仲間に声をかけられるまで、ずっと泣いていたように思う。東条たちの気持ちを思うと、涙が止まるはずもなかった。
もう本当に、悔しくて悔しくて仕方がなかった。
俺が泣く少し前に、矢富と曽我部がスタンドに挨拶に来た。矢富は涙が止まらない状態であった。メディアによると、試合終了後、矢富は、コートを着ることを拒否したという。試合が終わったことを認めたくなかったんだと思う。去年の東芝戦の後と同様、矢富は頭を下げた後、しばらく頭を上げられなかった。その姿に、観客も応える。「矢富がんばれ」と。そこにあったのは、決して望みはしていなかったが、「敗戦の美」とも言うべきものであった。
俺が泣いている間に、菅野も泣きながら観客に挨拶に来たらしい。矢富にしても菅野にしても、挨拶というよりは謝罪であった。しかし、俺たちは誰も彼らを責めてはいない。彼等は試合中、十分に役割を果たしていた。矢富の何度とない突破、菅野の執念のランとタックル、曽我部の懸命のタックル、忘れることのできないプレーだ。彼らが持っていたのは、すさまじい、責任感。負けたことに責任を感じ、そして涙が止まらなかったのだ。なんという、すさまじい選手たち、すさまじい人間だろうか。俺は彼らと同じ大学に通っていること、同じ学年で、応援を通して一緒に戦えたことを誇りに思う。そして、それと同時に、彼らの思いが俺の中にも入ってきて、涙が止まらなくなった。
(優勝した関東の選手たちがグランドを一周)
(関東の優勝を呆然と見つめる赤黒の選手たち)
(観客への挨拶を終え、去っていく矢富と曽我部)
頑張っていた選手を責めることはできない。自信と誇りを示せと送り出した中竹さんを責める気もない。そもそも、一介のファンに過ぎない俺に赤黒の選手を責める権利など存在しない。
今回は、関東が強かった。関東の気持ちが上回っていた。
しかし、一つだけ思うのは、早稲田が気持ちで負けたということはあってはならないことだと思う、その一点だ。荒ぶるへの思いは他の大学にはない、早稲田にしかない思いのはず。その思いを背負っているのに、なぜ関東に気持ちで負けてしまったのか、そこに今年の弱さがあったんだと思う。
慢心という言葉で片付けるつもりはない。自信と誇りを第一義に掲げる早稲田でありながら、早稲田らしからぬプレーをしている選手がいると、今シーズンずっと思っていた。そこに早稲田は穴が開いていると気づいていた。昨日も穴はふさがっていなかった。
懸命にプレーをする四年生がいる一方で、下級生の軽いプレーが印象に残った一年だった。いつもの2人は、昨日もラフプレーをしていた。彼らのセンスあふれるプレーは魅惑的であり、早稲田だけでなく日本のスターになりえると思う。しかし、本当に大切なところで体を張れないプレイヤーを俺は信用しない。どれだけすばらしいプレーをしても、早稲田らしさなしにはファンはついてきてくれないだろう。
東条組の無念を晴らせるのは彼らしかいない。彼らが意識を高く持ち、荒ぶるを追いかけなければ、東条組は浮かばれない。早稲田の品位は地に落ちる。見ている人が感動し、ともに笑い、ともに涙を流せる、ひたむきで、すさまじいくらいの情熱の塊である早稲田ラグビーを俺は見続けたい。
瀧澤、畠山、権丈、豊田、五郎丸、臼井、橋本、寺廻、松田、長尾、早田・・・、この悔しさを忘れるな。東条組の魂を胸に、自信と誇りで来年は絶対に勝って欲しい。
そして、東条組。今まで、本当にありがとう。しかし、まだ、東条組は終わっていない。日本選手権、最後まで東条組らしさを見せてくれ。俺は、絶対に見に行くから・・・。
そこには、号泣している自分の姿があった。一夜明けた今でも、この空虚さが信じられない。
結果は関東の33-26の勝利であった。
試合前の嫌な予感が的中してしまった。メディアは早大優位の報道であったが、俺はそんなことはないと思っていた。メディアはデータ主義であり、これまでの戦績や選手の肩書きで判断しようとする。しかし、スポーツはそれだけで決まるものではない。スポーツは筋書きのないドラマであり、ドラマの配役の演技如何ではいかようにも筋書きは変わりうるものだと思っていた。早稲田は、9月の立教戦、11月、12月の慶應戦で苦戦していた。苦戦の理由は相手ディフェンスのよさであった。もし、関東が慶應のようなディフェンスをしてきた場合、早稲田はかなり苦しくなると思っていた。
11月の慶應戦で解説を務めた関東学院・春口監督は「慶應のディフェンスがすばらしい。慶應がこのディフェンスを続ける限り、早稲田との点差は開かない」と断言していた。
俺は、このとき、春口監督が、早稲田相手に勝つ方法をディフェンス、接点で圧倒することであることに気づいていたように思う。もし、これを実践されたら・・・、それが俺の嫌な予感だった。そして、春関東、ジュニア選手権で感じた関東の圧倒的な強さが何度も頭の中を巡った。
決勝戦で関東が見せた強さは想像以上のものであった。とにかく、接点での強さ、これに尽きる。
特にラインアウト。これだ。これが決定的だった。早稲田は相手ボールはおろか、前半、マイボールを一本もまともに取ることができなかった。長身LOの西・北川を擁する関東はラインアウトに絶対の自信を持っており、ここが重要な勝負になるとは思っていたものの、まさかここまでやられるとは・・・。以前、ジュニア選手権・決勝を見に行ったときに、早稲田ボールラインアウトを関東の選手が大声を出して妨害するのは知っていたが、おそらく今日もそれがあったと思われる。ましてやこれだけ連続で失敗してしまうとなると・・・。早稲田は、繊細さを要求されるラインアウトをきっかけに終始冷静さを欠く結果となった。選手の能力に加え、メンタル面へのブローで、想像以上のプレッシャーを早稲田は受けてしまった。
ラインアウトを封じられるということは、攻撃の片手をもぎ取られることに等しい。ペナルティをもらい、タッチキックでゲイン、ラインアウト→モールorBK展開という攻撃の王道となる選択肢を完全に封じられてしまった。
結果として、早稲田は自陣からパスでゲインしていくしか方法がなくなってしまった。ペナルティをもらっても、その位置からパスで展開、縦突破していくしかトライを取る方法がなかった。ラグビーは前へパスすることが禁止されている以上、この様な場合、選手自らが突破してゲインしていくしかインゴールへ近づく方法はない。こうなってしまうと、個人の能力に頼るしか方法がなかった。
セットプレーで圧倒的に不利であり、早稲田のチャンスは数えるほどしかなかった。そんな中、矢富や曽我部は何度も縦突破を試みた。しかし、待っていたのは関東の強力なタックルであった。二人がかりで止めに来られては、さすがのスターBKでも止められてしまう。突破した後の、サポートもうまくいかず、ラックでのすさまじい勢い、関東の接点での激しさに圧倒されるばかりだった。
しかしながら、本来であれば、ラインアウトに関しては、後半に修正をして少しは競り合えるようになるはずであった。ただ、誤算があった。それはケガ人。後半開始早々、なんと主将の東条が負傷退場。ケガをおしての出場であったが、また足首をケガしてしまった。直後にはラインアウトリーダーのバイスキャプテン・彰友までが負傷、さらに東条に代わって入った松田までが負傷。修正どころか、FWは完全に崩壊してしまった。早稲田はFLにHOの臼井を入れ、応急的な措置を取るものの、もはや満身創痍の王者に攻めるだけの余力はなくなっていた。できるのは、ただ一つ。関東の切れ味鋭いランに対して、早稲田の誇りにかけてタックルに行くのみ・・・。
だが、それでも俺は信じていた。東条は言っていた。信じれば勝つと。勝とうと思ったほうが勝つのだと。俺は東条たちを信じていた。そして、光明も見えていた。前半、21-0で大差をつけられた後の、終了間際の首藤、菅野の連続トライで21-12。両WTBの意地のトライを泣きそうなくらいの歓喜で迎えた。絶対にトライを取る、鋼の意識に支配された菅野のもぎ取るようなトライには鳥肌が立った。そして、後半、あいつらなら、きっとやってくれると信じていた。
しかし、後半、関東のディフェンスは衰えるどころか、さらに激しさを増していた。菅野のタッチラインギリギリのこれまた、意地のトライで点を返し、28-19と1トライ1ゴール1PG差まで再び追いついたが、その後の攻めは、今村への激しすぎるタックルをはじめとした関東の鋭いディフェンスにことごとく止められ、逆に奇跡を信じた俺たちを打ち砕く後半40分の朝見のトライ。
ロスタイム5分では到底埋められない差をつけられてしまった。最後の最後の今村のトライは、もう手遅れだった。あのとき、トライをしても、すぐに引き返し、五郎丸にボールを蹴らせようとした今村の気持ちは察するにあまりある。意地のトライというには、あまりに悲しいトライだった。
五郎丸のコンバージョン成功とともに、東条組の挑戦は終了した・・・。
そのとき、目の前にあったのは受け入れがたい現実であった。歓喜に沸き返るマリンブルーのスタンドと選手。呆然と立ち尽くす赤黒の選手たち。こんなはずではなかった・・・。
その光景が理解ができないままに時は流れた。気づいたときには表彰式だった。東条の表情は、茫然自失というか、なんというか分からない、何も考えられないという表情だった。その表情が、俺たちの失ったものの大きさを物語っていた。
東条組は「荒ぶる」を歌うことができなかった。
早稲田ラグビーにおいて、大学選手権決勝で勝つか勝たないかは、天と地よりも大きな差がある。勝った選手の代は荒ぶるを手に入れることができ、負けた代は未来永劫、荒ぶるをうたうことは許されないのだ。それは早稲田ラグビーから否定されたに等しい意味を持つ。だから、選手は言う。早稲田は負けることは許されないチームだと。
時間が経ち、沸き返る関東の選手と、静まり返り、立ち尽くす早稲田の選手を見ているうちに、俺は泣いていた。涙が止まらなかった。一緒に観戦していた仲間に声をかけられるまで、ずっと泣いていたように思う。東条たちの気持ちを思うと、涙が止まるはずもなかった。
もう本当に、悔しくて悔しくて仕方がなかった。
俺が泣く少し前に、矢富と曽我部がスタンドに挨拶に来た。矢富は涙が止まらない状態であった。メディアによると、試合終了後、矢富は、コートを着ることを拒否したという。試合が終わったことを認めたくなかったんだと思う。去年の東芝戦の後と同様、矢富は頭を下げた後、しばらく頭を上げられなかった。その姿に、観客も応える。「矢富がんばれ」と。そこにあったのは、決して望みはしていなかったが、「敗戦の美」とも言うべきものであった。
俺が泣いている間に、菅野も泣きながら観客に挨拶に来たらしい。矢富にしても菅野にしても、挨拶というよりは謝罪であった。しかし、俺たちは誰も彼らを責めてはいない。彼等は試合中、十分に役割を果たしていた。矢富の何度とない突破、菅野の執念のランとタックル、曽我部の懸命のタックル、忘れることのできないプレーだ。彼らが持っていたのは、すさまじい、責任感。負けたことに責任を感じ、そして涙が止まらなかったのだ。なんという、すさまじい選手たち、すさまじい人間だろうか。俺は彼らと同じ大学に通っていること、同じ学年で、応援を通して一緒に戦えたことを誇りに思う。そして、それと同時に、彼らの思いが俺の中にも入ってきて、涙が止まらなくなった。
(優勝した関東の選手たちがグランドを一周)
(関東の優勝を呆然と見つめる赤黒の選手たち)
(観客への挨拶を終え、去っていく矢富と曽我部)
頑張っていた選手を責めることはできない。自信と誇りを示せと送り出した中竹さんを責める気もない。そもそも、一介のファンに過ぎない俺に赤黒の選手を責める権利など存在しない。
今回は、関東が強かった。関東の気持ちが上回っていた。
しかし、一つだけ思うのは、早稲田が気持ちで負けたということはあってはならないことだと思う、その一点だ。荒ぶるへの思いは他の大学にはない、早稲田にしかない思いのはず。その思いを背負っているのに、なぜ関東に気持ちで負けてしまったのか、そこに今年の弱さがあったんだと思う。
慢心という言葉で片付けるつもりはない。自信と誇りを第一義に掲げる早稲田でありながら、早稲田らしからぬプレーをしている選手がいると、今シーズンずっと思っていた。そこに早稲田は穴が開いていると気づいていた。昨日も穴はふさがっていなかった。
懸命にプレーをする四年生がいる一方で、下級生の軽いプレーが印象に残った一年だった。いつもの2人は、昨日もラフプレーをしていた。彼らのセンスあふれるプレーは魅惑的であり、早稲田だけでなく日本のスターになりえると思う。しかし、本当に大切なところで体を張れないプレイヤーを俺は信用しない。どれだけすばらしいプレーをしても、早稲田らしさなしにはファンはついてきてくれないだろう。
東条組の無念を晴らせるのは彼らしかいない。彼らが意識を高く持ち、荒ぶるを追いかけなければ、東条組は浮かばれない。早稲田の品位は地に落ちる。見ている人が感動し、ともに笑い、ともに涙を流せる、ひたむきで、すさまじいくらいの情熱の塊である早稲田ラグビーを俺は見続けたい。
瀧澤、畠山、権丈、豊田、五郎丸、臼井、橋本、寺廻、松田、長尾、早田・・・、この悔しさを忘れるな。東条組の魂を胸に、自信と誇りで来年は絶対に勝って欲しい。
そして、東条組。今まで、本当にありがとう。しかし、まだ、東条組は終わっていない。日本選手権、最後まで東条組らしさを見せてくれ。俺は、絶対に見に行くから・・・。