第一句集『加古』昭和九年十一月 鶏頭陣社
一 人ごみに蝶の生るる彼岸かな
二 明くる日の事にこもれる椿かな
三 春雀ひとつよと見し土昏るる
四 牛飛んでひびく堤や桜月
五 尾を上げて尾のした昏し春雀
六 もろこしの毛のあふれ出し祭かな
七 昏かりし童寝のゆめの覚めにけり
八 竹落葉同じところに覆へりけり
九 迫ひ来るは翼もあらず夏のゆめ
一〇 夏鹿の面(おもて)を横に歩きけり
一一 父の忌にあやめの橋をわたりけり
一二 くつぬぎにもたせかけけり余り苗
一三 美しくかみなりひびく草葉かな
一四 まん中を刈りてさみしき苦かな
一五 秋風やからみかはりし水馬
一六 よこたはるからたち垣や秋の暮
一七 ひろき道みえてゐるなる囮かな
一八 寒鵜歩けば動く景色かな
一九 石の上に踏みし枯蘭や十二月
一 人ごみに蝶の生るる彼岸かな
二 明くる日の事にこもれる椿かな
三 春雀ひとつよと見し土昏るる
四 牛飛んでひびく堤や桜月
五 尾を上げて尾のした昏し春雀
六 もろこしの毛のあふれ出し祭かな
七 昏かりし童寝のゆめの覚めにけり
八 竹落葉同じところに覆へりけり
九 迫ひ来るは翼もあらず夏のゆめ
一〇 夏鹿の面(おもて)を横に歩きけり
一一 父の忌にあやめの橋をわたりけり
一二 くつぬぎにもたせかけけり余り苗
一三 美しくかみなりひびく草葉かな
一四 まん中を刈りてさみしき苦かな
一五 秋風やからみかはりし水馬
一六 よこたはるからたち垣や秋の暮
一七 ひろき道みえてゐるなる囮かな
一八 寒鵜歩けば動く景色かな
一九 石の上に踏みし枯蘭や十二月