寺

「チェロを弾かなくても、芸術体験は出来る」

お寺で出会った人の言葉。

ここ数日、僕の頭はフル回転している、色んな事で・・・
普段はコンサートが終わるとホッとすると云うより、虚無感に近いものを感じるほど、ぽけ～っと数日が過ぎる。
しかし、今回は次にやらなければいけない事が・・・やらなければいけないと思ってしまう事が多い。

福岡に戻って、
一つの打合せを終え、次の打合せまで時間があったので、
大宰府のお気に入りのお寺に行って、3時間以上を過ごした・・・なにもせず、ただ自然を眺める・・・・

小さい頃、いつも家の前に広がる森を眺めながら、一日を過ごしていた、気が向いたら、日曜大工的に色々な物を作りながら。

庭を眺めていると、一人の男性に声をかけられた、
「このお寺は有名なのですか？あまりに素晴らしい庭だから」
関西から博物館の絵巻展を見に来たと云う、元は京都の物なのに！(笑）

しばらく話をするうちにお互い音楽家である事が分かった、
彼が10代の頃からチェロのソリストとして活躍し、20歳の時にＮＹのジュリアードに行ったと云う、そしてジュリアードでチェロを弾く事より、ＮＹの街を歩く事の方が楽しくなって、チェロから離れたと云う。

とても不思議な人だ。

話が弾みまくり、寺が閉まるまで話をしてしまった、
彼の云った一言が頭から離れない、
「自分はチェロを弾かなくても、庭を眺めるだけで、石を眺めるだけで、あらゆるもので、芸術体験は出来るんだよ。全てが自分のものなんだ」


全てははかないものだ

今ある感情も、昔あった感情も、音楽も、お金も・・・

Ｕ２の「刹那に捕らえられているんだよ」と云う歌詞が頭に蘇ってきた。